戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】 作:ゼフィガルド
「まず、IA-02については私達アーキバスが主体で当たります。スタンニードルランチャーが我が社の製品である事。そして、主砲の射手をV.Ⅳが勤めることを考えれば、当然の分担です」
スネイルの提案は筋が通っているかの様に思える。実際、指揮系統は統一された方が混乱なども起こさずに済むのだが、これに対して意見を出したのは五花海だ。
「そちらにはG13もいるし、IA-02に関してはある程度のデータも出そろっている。一方、私達が担当になるだろうルビコニアンデスワームの方は未知の要素が多い。不測の事態に備えて、こちらにも幾らか人員を割いて欲しい」
「許可しません。アイスワームの脅威については散々説明されたハズです。ルビコニアンデスワームは未知の生命体であるだけに、フレキシブルな対応が求められます。その点、そちらはG1という現場指揮官がいるのですから適任だとは思ったのですが……」
そこから先は言葉にしなかったが、言外に何を言っているかは直ぐに察せられた。やっぱり、ベイラムでは無理でしょうか? と。
「構わん! この人員の割り振りに文句はない!」
「そうだな。ベイラムにもっと摩耗を押し付けるような形になると思っていたが」
指揮権がアーキバスにある。ということは、現場で動くベイラムに負担を押し付けることも出来るのだが、スネイルの提案には特に不条理は見当たらない。ミシガンもウォルターも納得していた。
「我々の目的はベイラムを潰すことではなく、コーラルを手に入れることです。仮に貴方達を使い潰したとして、排除し切れなかった片方の脅威が今度は我々に向かって来るのですから」
「人員を効率よく活用することがお互いの為になるってことか。互いに納得できる作戦を提示してくれるんなら、私から言うことは無いよ」
カーラも頷いていた。この理詰めの提案には多数の納得と共に反論を封じる側面もあった。五花海としては少しでも戦力を回して欲しかったのだが、ミシガンも納得している以上、何も言えなかった。
「幾度か偵察にも出しましたが、今の所2匹は特定の場所で留まっているそうです。恐らく、ルビコニアンデスワームの方もアイスワームと事を構えるのは得ではないと判断したのでしょう」
「あぁ? 虫けらに知能なんてあるのかよ?」
「少なくとも。相手を考えずに噛みつく狂犬よりは利口でしょうね」
イグアスの疑問を挑発混じりに返しながら、スネイルはモニタに映像を表示させた。アイスワームは待機状態にあり、少し離れた場所でルビコニアンデスワームがモゴモゴと口を動かしながら全身を震えさせていた。
「スネイル殿。ルビコニアンデスワームが生物と言うのなら、餓死を狙うと言うのはどうでしょうか? 雪原付近には食料となり得るものが存在していませんし、アレだけの体躯ですから生命活動を維持するだけでも相当なエネルギーを必要とするはずです」
レッドの提案には数名が頷いた。機械と違って生命体であるなら破壊以外にも排除する方法はある筈だ。兵糧攻めは最たる例だった。
「ほぅ、貴方は狂犬と違って論理的な様ですね。勿論、我々も考えました。ですが、この生物は殆ど食事と思しき活動を行っていません……少し前に、燃料基地で食い溜めした。というのもあるかもしれませんが」
621が気まずそうな顔をした。あの任務の結果は彼女にとって後悔が残る物であったのだろう。多数の犠牲を出し、コーラルも失われた。アーキバスにとっても痛手である筈だが、スネイルの顔は涼しい物だった。
「片方だけに注力しても、残った方が脅威になるだけだからな。やはり同時に討伐する外ないのだろう」
ウォルターの言った想定を皆が考えた。
もしも、IA-02を倒すのに注力したとすれば、撃破され次第ルビコニアンデスワームがコーラル集積に向けて突き進むだろう。そうなったら、自分達に食い止める術はない。
では、ルビコニアンデスワームを撃破したとしても。IA-02が変わらず守り続けているだけだ。この2体が揃って拮抗している状態で、撃破をしなければ自分達はコーラル集積に辿り着けない。
「色々と策を出していますが、特効薬的な物は存在しません。そんな物、既に企業内の作戦立案部で散々話されています。我々が出来ることは準備を整えての討伐以外、あり得ないのです」
そもそも、ここで提案される程度の内容はベイラムとアーキバスでも散々話されていることだろう。今、話していることは詰めだけだ。
「難しいことはない! お前達は電極の入った針で標本採取をして、俺達はアイツの尻に爆竹を突っ込めばいいだけだからな!」
「簡単に言ってくれるよ。でも、やるしかないのだろうな」
ラスティが諦観を含めながらも頷いた。全員が決意を新たにする。ここに集まった者達は企業及びコーラル獲得競争の上位陣ばかり。メンバーとしては最高に近く、これ以上を望むのも困難を極めるだろう。
「準備は整えて来ました。2日後、ルビコニアンデスワームの方の動きに特別な挙動が見られなければ、作戦を決行しましょう」
「了解。RaDの方でも、オーバードレールキャノンとグラインドブレードの運び入れを始めるよ。護衛に幾らか手勢は引き連れて行くけれど、討伐作戦に投入できる戦力じゃないことだけは言っておくよ」
全員が了承した。あまりに長い時間を掛けても惑星封鎖機構が態勢を立て直して攻めてくる可能性もある。グズグズはしていられない。
受け取るべき情報を受け取った各員は、それぞれの場所へと戻って行く。最初で最後になるかもしれない共同作戦に向けて動いていた。
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「なるほど、当日はそう言った風に動くのか。俺達は何をすればいい?」
「ナイル。お前達には、惑星封鎖機構が介入してこないかどうか。あるいは……スッラ達が現れないかという警戒も頼む」
今回の作戦は各勢力から精鋭が派遣される。ルビコンの統治を狙っている惑星封鎖機構としては一網打尽の機会である。
「話を聞いている限りでは、V.ⅠとV.Ⅲは参加しないのか?」
「奴らには惑星封鎖機構への攪乱と偵察と言う任務がある。本作戦を遂行にするにあたって必須とも言える役割だ」
1317達もナイルと同じく周辺での警戒に当たるが、殺到されては元も子もない。それらの大本を絶つ役目を担っているのだから、ヴェスパー内でも相当なエースだろうと言うことは予想できた。
「なぁ、レイヴン。皆は私に対して何か言っていたか?」
「メーテルが帰ってくんな。だって」
「あの野郎!! メンヘラの分際で調子に乗りやがって! もう許さないぞ! 勝手に此処でアイツの秘密をばらしてやる!!」
「何やっているの?」
「まずはですね。スネイルに告白する練習でしょう? それと、なんか水星にメール友達がいるとかも言っていましたね。文面では、自身は惑星間を渡航する令嬢だとか書いていました!」
「何で知っているの?」
「覗きました」
『本当にどうしようもない男ですね』
どうして同じヴェスパー同士なのに、ここまで差があるのか。というか、あの会議場にいた彼女は真面目そうな人間にしか見えなかったというのに裏では結構ハチャメチャをしているのだなと、エアは感心していた。
『私には内心というのが聞こえないのですが、レイヴンには彼女がどんなことを考えていたか、憶えていますか?』
「早く帰りたい。って、ずーっと繰り返してた」
『意外と不真面目なんですね……』
仏頂面を下げながらも真面目に取り組んでいる様に見えたのは、さっさと終わらせたかったからなのか。本質の部分では、案外ペイターとも似ているのではないかと思った。
「……あと、ホーキンス殿は?」
「ペイターのことを心配してた。迷惑かけてないかだってさ」
そんな、共感性皆無の男でも自分を心配してくれる人間には多少なりとも情があるのか目頭を押さえていた。
「今、久々に泣きそうになっています。ちょっと、この感傷に浸らせて貰えますか」
「分かった!」
実際の会話では、その後に陳情していたのだが、態々知らせる必要はないだろうと。ウォルターはそっと口を閉じていた。
嵐の前の静けさとも言える穏やかな時間が流れている。この時間の期限は明日まで。明後日にはルビコン史上最大の作戦が幕を開ける。