戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼36件目:決着

 6本の足を折るべく、最初に行動を起こしたのはメーテルリンクだった。レッドとカーラと行動しながら、彼女は背部兵装にマウントしていた『HI-32: BU-TT/A』に武装を切り替えていた。軽量のパルスガンでは豆鉄砲にしかならないと判断してのことである。

 

「シンダー・カーラ! 貴方の武装で奴の甲殻を剥がして欲しい!」

「おいおい、私は引率の先生かい? まぁ、良いさ」

 

 カーラは技術者である為パイロットとしての腕は劣る。それを補うべく、彼女の武装は機体を追尾するミサイル装備に偏重していた。本人が直接狙いを付けられなくても、武装の性能で当てるという考えである。如何に相手が足を動かせると言っても、体幹に近い部分は大きく動かせない。

 

「まずは、食前酒とスープから」

 

 両手に装備した『WS-5000 APERITIF』は異質な外見をしていた。ハチの巣の様に張り巡らされたハッチが一斉に開いて、大量の小型ミサイルが飛んでいく。

 更に、両肩に装備された『WS-5001 SOUP』からも計60連のミサイルが射出された。何発かは宙を舞うコーラル弾や流れ玉によって爆散したが、AC1機が織りなせるとは思えない程の弾幕が次々とルビコニアンデスビートルの第1関節へと着弾する。

 

「続くぞ! ヴェスパー!! 合わせるのはお前達の得意技だろう!」

 

 爆風と破片を浴びせられ続け、熱によってジリジリと表面が焦げ、熱で脆くなっていく。すかさず、レッドがアサルトブーストの加速を乗せて『MAJESTIC』のダブルトリガーを引いた。射出された砲弾が脆くなった甲殻と衝突し、破片が零れ落ちた所に爆風と破片が襲い掛かり、内部に突き刺さる。

 

「お前に言われるまでもない!」

 

 タイミングを合わせるようにして、インフェクションもアサルトブーストを吹かして露出した部分を切り裂いていく。目の前で甲殻の一部が再生されて行くのを見て、彼女は決断した。

 

「うぉおおおお!!」

 

 『HI-32: BU-TT/A』の発振器部分が熱を帯びる。本来は使用にクールタイムが必要であるが、ここまでして開いたチャンスを無駄にするわけにもいかず、兵器への負荷を無視した上で刀身を発生させ続けた。

 甲殻に覆われていない柔らかい部分をパルスブレードで切り裂く。過負荷に耐え切れず赤熱して、オーバーヒートに至ろうとした所で『HI-32: BU-TT/A』を投げ付けて、マウントしていたパルスガンで照射し破壊した。

 爆発が起こり、千切れかけていたデスビートルの筋繊維が更に破壊され、外れかけた所に留めの一撃を加えるようにして大量のミサイルとバズーカが殺到して、第1関節より下の部分が千切れ飛んだ。

 

「へぇ、アーキバスの奴らも無茶をするんだね」

 

 良い子ばかりだと思っていたカーラとしてはちょっとした発見だった。一方、無理をしたメーテルリンクのインフェクションは推力を失い、落下しようとしていたが中空でレッドのハーミットが彼女の機体を受け止めていた。

 

「見事だった! 今回は特別だが、無茶をするな」

「そうでもしなければ、我々の攻撃力では足りなかった。他の者達は……」

 

~~

 

 スウィンバーンは五花海とラミー達と一緒に動いていた。ラミーのマッドスタンプの攻撃力は目を見張るものがあり、両手の『DF-GA-08 HU-BEN』から吐き出される銃弾の雨が、ルビコニアンデスビートルの甲殻を削り取っていた。

 

「どうしますか、お利口さん? このままでは、私達は中毒者以下ですよ?」

「ふん! ならば、さっさと近付くぞ!」

 

 スウィンバーンは自機ガイダンスの特徴である四脚を生かして、空中機動を活かしながら近づいて行く。手にしている火力は申し分ない。今は、片方の『EARSHOT』を失ってはいるが、両手の『MAJESTIC』は健在だ。

 対空迎撃と言わんばかりにコーラル弾が降り注ぐが、地上部分から放たれるラミーのガトリング弾に落とされて行く。そうして、生まれた間隙を縫って脆くなった甲殻部分まで接近して『EARSHOT』を放った。

 

「ぐっ」

 

 ヘルメット越しでも響く耳鳴りを起こす程の一撃。甲殻を抉り、内部の筋肉まで穿つが、切断までは至らない。身体の一部が露出したことにより、筋繊維に赤い光が迸り、即席のレーザー砲が放たれた。

 あわやガイダンスを貫くかと思った攻撃だったが、スウィンバーンは衝撃と共に攻撃を回避していた。何が起きたか一瞬理解できなかったが、先程までの位置に五花海の機体『鯉龍』がいるのを見て察した。

 

「貴様! 私を蹴り飛ばしたのか!」

「直撃を避けれたのだから、感謝してくださいよ!」

 

 甲殻が修復されるよりも先に、鯉龍はアサルトブーストの加速を乗せて左腕を振り被る。『PB-033M ASHMEAD』に杭が装填され、ルビコニアンデスビートルの内部深くに撃ち込まれた。筋肉を突き破り、体外へと貫通した。

 

「虫は漢方にも使えますからね! 後で、キチンと拾って上げますよ!」

「ふん! この検体は我々、アーキバスが引き取る物だ! 貴様らに渡す分は無い!」

「じゃあ、俺はその場で食わせて貰おうか! 見ろよ! このプリプリな肉付きをよ! 美味そうじゃねぇか! 我慢出来ねぇ!」

 

 ポッカリと空いた穴を中心に、3人は手持ちの火器を叩きこんだ。間もなくして、彼らが担当する足の第1関節も吹き飛んだ。

 

~~

 

「V.Ⅴ! それと、チャティ・スティック! 俺に付いて来い!」

「分かった。合わせるよ」

「了解した。G2ナイル。お前に従おう」

 

 こんな状況でありながら、ナイルは内心感動していた。コイツら、ちゃんと言うことを聞く、と。決して自分を放って一斉に一つの目標に集ったりもせず程よい立ち位置で動いてくれている。

 チームで動くとはこういうことだ、決して同じ戦場にいるだけでは無いのだ。周囲に撒き散らされるコーラル弾の迎撃に関しては、ホーキンスやチャティの対応は慣れた物だったが、ともすればルビコニアンデスビートルの脚を破壊するのは自分がやり遂げねばならないと考えていた。

 

「(念の為に、俺もパイルバンカーを譲り受けた甲斐があった)」

 

 普段の得物とは違うが、自身がこの討伐に直接参加する可能性も考えて装備して来た。彼の予想は正しかったということだ。

 

「ナイル、V.Ⅴ。他の者達の攻撃を見る限り、第1関節の節目を狙い、そこを断ち切ると言う戦い方をしている。既にカーラやラミー達も切断に成功している様だ。俺達もその方向で行こう」

「その案を採用しよう! 第1関節に攻撃を集中! 耐久が脆くなった所で、俺がこのパイルバンカーで吹き飛ばす!」

「いいね、大胆で効果的だ!」

 

 ホーキンスも賛辞を送りながら、彼らの行動は先の2グループと比べて実にスムーズだった。レイヴンの様に声が聞こえる訳ではなく、歴戦の経験と勘による動き方にチャティが採取したデータを用いて的確に行動を合わせていた。

 ルビコニアンデスビートルも払う様にして足を動かすが、肥大化した体では足を上げることが出来ず、容易くG2のディープダウンに取りつかれた。

 

「ホーキンス。アンタ達の動きはとても合わせやすい」

「良いね。チャティ君だっけ? 君もアーキバスに来ない?」

「……それがジョークかどうかは分からないが。悪い気分ではないな」

 

 ホーキンスのリコンフィグから、チャージされた『VP-60LCS』レーザーキャノンと『Vvc-760PR』が放たれ甲殻を弾き飛ばした。

 すかさず、チャティは背部兵装の『BML-G1/P07VTC-12』を放つ。垂直に発射されたミサイルは露出した内部に命中し、ルビコニアンデスビートルの筋繊維を次々と傷つけて行く。露出したことにより、筋繊維から自損も厭わない勢いでコーラルによるレーザーが放たれるがナイルは肩部の分厚い装甲を使って受け止めていた。

 

「まぁ、こんな物か」

 

 柔らかい肉の部分にパイルバンカーをぶち込んだ。トドメと言わんばかりに、チャティが放った『WR-0999 DELIVERY BOY』のコンテナから発射されたミサイルが傷口へと侵入していき、内部からズタズタに引き裂いて第1関節より下の部分を吹き飛ばしていた。

 五花海達のコンビネーションよりも更に洗練された動きで、ナイル達もまた担当する脚部の破壊に成功していた。

 

~~

 

「ヴォルタ! 戦場に立つのは久々だろう! 俺達がお前のリハビリに付き合ってやる! 聞いているか! G5!」

「しょうがねぇな。機械いじりばっかりして腕も鈍っているだろうしな!」

「冗談言うんじゃんねぇ! お前こそ、レイヴンに仕事取られて、ヘッドブリンガーの動かし方忘れているんじゃねぇだろうな!」

 

 イグアスはいつになく上機嫌だった。どういう形であれ、こうして再び相棒と一緒に戦場に立てるとは思っていなかったからだ。

 

「さぁ! 愉快な遠足の始まりだ!」

 

 いつかの失敗した任務を思い出す。多重ダム襲撃。容易い任務だと高を括った挙句、まさかの新入りと喧嘩を始めて撃破されるという笑えない経験があった。今度は肩を並べて戦っているのだから、何が起きるか分かった物では無かった。

 

「ミ”ィイイイイイ!!」

 

 先程、足を破壊されたことから警戒されており、自分達には巨大なサイズのミールワーム達が差し向けられていた。1匹1匹は大したことがなくとも、数が集まれば厄介であるが。

 

「邪魔だゴラァ!!」

 

 ヴォルタのキャノンヘッドが虫達を轢き潰していた。虫の駆除方法としては、最も一般的な方法であった。3機は有象無象を蹴散らして目標へと接近する。

 コーラル弾が殺到しているが、弾速も誘導も、普段戦場で見掛ける物よりは遅い。だとすれば回避できない道理もなく、先と同じ様にミシガンは脚部へと取りついて『SG-027 ZIMMERMAN』の引き金を引いた。甲殻が弾け飛んだ隙に離れながら『EARSHOT』を撃ち込めば、肉が爆ぜて抉れる。

 

「G5! ベイラム特性のピンを刺してやれ!」

「おうよ!」

 

 イグアスの気勢に呼応するかのように『PB-033M ASHMEAD』は装填された杭を吐き出した。第1関節の継ぎ目を貫いただけではなく、イグアスはさらに追撃を加えた。

 

「じゃあな。虫けら」

 

 『MAJESTIC』の砲弾が傷口へと入り込み、内部で爆散して砲弾の破片を撒き散らしてズタズタに引き裂いた。そして、ヘッドブリンガーが退避すると同時に、キャノンヘッドが吠えた。

 

「吹っ飛べ!」

 

 両肩に装備された『SONGBIRDS』が火を噴き、4発の砲弾が千切れかけていた繋ぎ目を跡形もなく、吹き飛ばした。

 

~~

 

「俺達はあんな連携を仕掛ける柄でもない」

 

 1317とペイターを随伴させたオキーフは静かに言った。元より、この3機は空戦を得意とする者同士。ならば、地上部からチャンスを重ねて……という、まどろっこしい方法を取るつもりは無かった。

 

「じゃあ、3人で虫を捌いてしまいますか!」

「良いだろう。そっちの方が早く済みそうだ」

 

 ペイターのLCの腕部からブレードが展開された。彼に合わせるようにして、1317もブレードを展開する。オキーフは自らの立ち位置を決めて2人に言った。

 

「露払いは俺がする。お前達で好きにやれ」

「ありがとうございます!」

 

 掛け声と共に2機のLCがブーストを吹かした。対空迎撃として大量のコーラル弾やレーザーが放たれるが、いずれも彼らを捉えるには至らない。

 オキーフの援護射撃もあり、背中の有機砲門は次々と潰されて行き、瞬く間に2機のLCに張り付かれた。

 

「イィイイイヤッホォオオオ!」

「テンションが高いな!」

 

 ペイターはまるで空を舞う様に動いていた。LCの操作性や挙動が余程性に合っているのか、ルビコニアンデスビートルの関節部分に刃を差し入れて次々と筋繊維を断ち切って行く。

 その反対側から1317も刃を走らせ、2人が合流した所で、体との接着部分が殆ど失われた第1関節から下はガタガタになっていた。

 

「合わせて下さい!」

「応!」

 

 2人はブーストを吹かして、加速を乗せた蹴りを叩きこんだ。ブチリと音を立てて、第1関節より下の部分が千切れ飛んだ。

 

「……ペイター。お前には、アーキバスは少し狭すぎるのかもしれないな」

 

~~

 

「こうして、戦友と共に動くのも3度目か」

「うん! ラスティ! 行くよ!」

『2機だけでの対処となりますが』

 

 一度破壊されて再生された足は強化されていた。真っ赤な足からはコーラルが噴出しており、幾重ものレーザーが放たれていたが鴉と狼を捉えるには至らない。彼女達にとって、虫は餌でしか無いのだ。

 『SG-027 ZIMMERMAN』の連射で罅が入った個所を、ラスティのスティールヘイズが『Vvc-774LS』レーザースライサーで切り裂いていく。赤い甲殻が剥がれ、肉が焼き切られた所にリロードを終えたレイヴンの『SG-027 ZIMMERMAN』が突き刺さる。

 

「ギィイイイイイイイ!」

 

 足を振り回すが2機にはまるで当たらない。彼女らの行動はまるで別々だと言うのに、一つの流れの様に延々と続けられていた。

 

「戦友。君とならどこまでも羽搏いて行ける!」

「そうだねー!」

『全く問題はないようです』

 

 途中、幾度も甲殻を再生したというのに修復速度を上回るレベルの攻撃を加えられ、残された最後の足も吹き飛ばれた。エアとしても空恐ろしさを感じるレベルでのコンビネーションだった。

 

『下敷きにならないように離れなさい!』

 

 スネイルからの命令が響く。バランスを完全に失ったルビコニアンデスビートルは地面に伏せたが、断ち切られ、あるいは破壊された場所から再生が始まる。

 早くも筋繊維が編まれ始めている所で、この戦いが始まって以来沈黙を守って来た男からの通信が入って来た。

 

「ご友人、皆。お待たせいたしました」

 

 現れたミルクトゥースの風貌は異様だった。機体の背後には幾多ものロケットブースターを重ねた巨大なブースターが取り付けられており、左腕の部分には制御用のアームが取り付けられているだけだった。

 だが、やはり一番目を引くのは右腕に装備された6基の巨大な大型チェーンソーだった。それらは縦に並んだかと思えば、やがてリボルバーの弾倉のように円の形を取り、高速回転を始めた。大量のエネルギーが送られ、回転している刃から炎が立ちこめる中、背中のロケットブースターが火を噴いた。

 

「ギィイイイ!」

 

 地に伏せながらも、ルビコニアンデスビートルは顎に集中させたコーラルの照射で焼き払おうとするが、接近スピードが速すぎて照準が定まらない。

 ならば、顎で断ち切らんと勢いよくハサミを閉じるがこれもまた擦り抜け、やがて回転刃は眼前まで近づいて来た。

 

「ご友人達に感謝を!」

 

 ルビコニアンデスビートルの顔面を貫き、肉体を掘り進む。ロケットブースターの排熱で周囲のコーラルの爆破を招きながら、糞袋をも突き破り、ありとあらゆる体液を浴びながら肛門から突き抜けて行った。

 全身に入った罅からコーラルの赤色光が漏れだし、あちらこちらで爆発が起き、最後に全身が赤色の光に包まれると。盛大な爆発を巻き起こした。

 

『生体反応ロスト。レイヴン、ルビコニアンデスビートルの沈黙を確認しました』

『お疲れ様です。ルビコニアンデスビートルの沈黙を確認しました。この戦い、我々の勝利です』

 

 エアが確認した事実は、スネイルからも告げられ全員に通達された。

 アイスワームとルビコニアンデスビートル。コーラルへの道に立ちふさがっていた2体もの脅威を排除した事実を呑み込むには、暫しの時間が必要だった。

 やがて、それらを実感できるやパイロット達からの歓声が次々に巻き起こった。

 

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