戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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 今日は色々とあるので、かなり早めに上げます。


依頼37件目:次への一歩

 IA-02とルビコニアンデスビートルの討伐。コーラル集積への道を阻んでいた2体自身が正にコーラルの脅威その物であった。

 片や逸脱した技術力の化身、片やコーラルが秘める変異性の象徴。どちらも研究対象としては垂涎の品であり、各社の回収班と分析班が日夜作業を続けていた。……そんな調査結果をコッソリと吸い上げている者達が居る。

 

『スッラ。ケイト。あのルビコニアンデスビートルについて興味深いことが分かりました』

 

 Cパルス変異波形と呼ばれる存在である『セリア』は企業が解析した情報を抜き取り、スッラ達に渡していた。

 

「あの怪物は大量のコーラルを浴びせれば生まれる存在。という訳ではなく、人為的に脳が傷つけられた結果、成長を抑制する部分が壊れていたそうだ」

「あの個体はレイヴンおよびルビコン解放戦線の者達が投棄した存在です。作戦中に光学兵器を受けていましたが、その時の損傷が原因でしょう」

 

 通常、生物と言うのは一定の大きさに収まる様になっている。体積が増えるに連れて体重は増えるが、筋力は比例して増える訳ではない為、大きくなり過ぎれば、自重に潰されるからだ。

 あのルビコニアンデスビートルがどうやって活動していたかはまだまだ疑問が残る所ではあるが、生物として歪な変態だったということは言うまでもない。

 

『サムはいつもそう。自分の手に余る物はなんでも放り出すんですから』

「指導者と言うのは臆病な位で丁度良い。AM、俺達はこれからどうするつもりだ?」

「コーラル集積への道が開けても、簡単に先へと行ける訳ではありません。待ちましょう。私達は彼らが開いた後を歩いて行けばいい」

 

 消極的ではあるが合理的ではある。姿をジッと隠し、目的物が見えた所で襲い掛かって、掠め取る。姑息と言えば聞こえは悪いが、最も労力の掛からない方法ではあった。

 

『同胞達の住処が近付いて来る。きっと、あの子達も来るのでしょうね』

 

 セリアが思い浮かべたのは、自分以外のCパルス変異波形である存在だ。人に裏切られたことも無い無垢さは、懐かしさと共に憎らしさすら覚える物であった。

 

~~

 

「ナイル。まさか、お前がここに留まるとは思っていなかった」

 

 2体のワーム討伐作戦後。作戦に参加したパイロット達による打ち上げ会が行われる訳もなく、また元の陣営同士に戻り暫しの休憩を挟んでいた。

 これを機会にナイルは元の鞘に戻るかと思われたが、結局ウォルター達と共に行動をすることを選んでいた。

 

「上層部から否定的だったのもあるが、もう一つ理由がある」

「なんだ?」

「これから先、コーラル集積に向けての競争が激しくなるだろう。だとすれば、ベイラムは兵士達を使い潰すかもしれん。その時、誰が止めてやれる?」

 

 アーキバスは傍観を決め込むだろう。IA-02から分かる通り、コーラルに関係する遺物はいずれも曰く付きで、人々の命を刈り取る物ばかりだ。逸って数を減らす上に、脅威まで取り除いてくれるなら急ぐ必要もない。

 これまでの無謀とも言える作戦を見て来たウォルターとしては納得がいった。もしも、ベイラムが無茶をしようとした時。止められる戦力があるとすれば、自分達に他ならないと判断してのことだろう。

 

「ミシガンとやり合うことになるかもしれんぞ?」

「上等だ。俺は、アイツがファーロン・ダイナミクスに居た頃から殴り合っていた」

 

 自分の帰属先を想うからこそ、敢えて戻らないという選択も尊重されたのだろうと。矛を交えることも厭わない友情に、2人が微笑んでいる傍ら。

 

「なんで、私が停職処分を受けているんですか!? 1317、説明をしてください。私は今、冷静さを欠こうとしています」

「オキーフ殿から預かった説明によれば『上官への侮辱、暴言、不敬』『アーキバスが依頼した作戦の妨害』『同僚との不和』『ハゲの歌を熱唱した』等。クビにならないだけ有難く思えとのことだ。後、デュアルネイチャーは企業の所有物だから没収されたぞ」

「なんでハゲの歌を歌ったことがバレているんですか!?」

 

 作戦が終わって古巣で変わらぬ縁を確認して来たナイルとは打って変わって、ボロクソな扱いを受けていたペイターであったが、全て自業自得だったので彼の悲嘆に同情する人間は誰も居なかった。

 追放されて見返す所か、ガチで追い出される方向に進んだ奴もいるのだから笑えなかった。

 

「うきゃぱぱぱぱ」

 

 そんな彼らの苦悩やら悲鳴やらは露知らず。彼女はコーラル塗れの肉片を齧っていた。企業の回収班や企業班が使えないと判断したルビコニアンデスビートルの肉片である。

 

『あの、レイヴン。それ食べても大丈夫なんですか?』

「あぷぷーぷりぷりー」

 

 相当に強力な物が詰まっているのか、いつもより大分キマっていた。というか、アレだけ激闘を繰り広げた怪物の破片を口にしようという神経が、まず信じられなかった。

 

『ブルートゥ。彼女を止めて下さい』

「おや、ご友人は食事をしているだけだと言うのに。ですが、えぇ。私の中のご友人も止めた方が良いと言っている気がしますね。止めましょうか」

 

 自分の声が聞こえる故の贔屓もあるのだろうが、最近はペイターよりもブルートゥの方がマシなのではないかと、エアも考え始めていた。

 視線がややロンパリ気味になりつつ、口と鼻から垂れ流しになっている赤い物を拭き取って水を与えている姿は甲斐甲斐しくもあった。

 これでは猟犬部隊(ハウンズ)と言うよりかは、単なる保健所と言った様相を呈している所に通信が入った。相手は……ベイラムからだった。

 

「先日の作戦は見事だった! ナイル参謀も健壮で何よりです。そして、ベイラムからの依頼がある! 内容はウォッチポイントへの先行だ!」

 

 コーラル集積に関して先に動き出したのは、やはりと言うべきかベイラムだった。目的物が目の前にあると言うのにレイヴンを噛ませて来る所を見るに、彼女への信仰は相当に強いらしい。

 

「G6。何故、ベイラムは我々に依頼を? てっきり、自分達で先に行く物だと思っていたのだが」

「はい。先日の2大脅威討伐作戦のことが上層部にも伝わり、レイヴンだけではなくブルートゥも評価されてのことです」

 

 ナイルは少し考えた。ベイラムの上層部もルビコニアンデスビートルの様な脅威が眠っている可能性を前に突っ込むほど、愚かではないらしい。そして、あわよくば手に入れたい。ならば、自社の戦力を浪費するのは好ましくはない。

 餅は餅屋。化け物には化け物をぶつけると言う原理でレイヴン達を先行させればよいと考えたのだろう。これはナイルとしても部下達を死なせずに済むという点はあったのだが。だが、依頼するには相応の理由があるのだろう。

 

「ただでは潜れない理由があるんだな?」

「……はい。ウォッチポイント・アルファには侵入者を排除するための砲台『ネペンテス』が設置されています。偵察に向かったドローンは塵になりました」

 

 ナイルの憂慮は的中していた。ドローンが破壊されるまで録画していた映像で見られる光線の出力は、MTならば容易に消し飛び、ACですら数発も耐えられない物だった。

 もしも、ベイラムが功を焦り闇雲に部隊を突っ込んでいれば、どれほどの人命が光に呑まれて消えていただろうか。そう言った意味では、レイヴンは命の恩人とも言えるかもしれない。

 

「仕事の時間?」

 

 フラフラと頭を振りながら問うている姿は頼りない所ではない。彼女の声が聞こえていたのか、通信越しでもレッドが言葉に詰まる様子が感じ取れた。

 

「レッド。勘違いするなよ。621は自分でこの立場を選んでいる。憐れみは見当違いだ。第一、コイツはお前より強い」

「分かっている。だが、割り切れない部分もあるだけだ」

 

 ウォルターからの注意喚起は厳しくありながら、彼が入れ込んでしまうことを防ぐ様な一面。翻って自分が戦場などで感傷に浸ってしまう可能性を断ち切る旨の発言は、上官であるミシガンを彷彿とさせた。

 

「621。依頼を受けるか?」

「受けるぅ~」

「そうか。ならば、頼むぞ。無事に帰って来てくれ」

 

 赤ら顔はしているが返事は存外ちゃんとした物だった。受諾の旨を告げるとレッドとの通信は切れた。ウォルターが皆に言う。

 

「今回の任務は複数人で行っても意味が薄い。621だけでの任務となる。後のメンバーは待機だ」

 

 複数人で行った所で砲台の餌食が増えるだけで何ら攻略に寄与する部分は無い。レイヴンにとって久々の単独任務であり、企業のコーラル集積への本格競争の幕開けになろうとしていた。

 

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