戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】 作:ゼフィガルド
レイヴンは気軽に、フラットウェル達が意を決して飛び降りた先には空間が広がっていた。大破した作業用機械が横たわり、上層から落ちて砕けた岩などが散乱する中、足元を這い回る存在がいた。
「あー! ミールワームだ!」
レイヴンやフラットウェル達にとって見慣れた、ルビコニアン達の食糧でもあるが、食用の物とは比べ物にならない程に大きかった。
「帥叔。フラットウェル、ここにいる者達は同志ツィイーが拾って来た物よりは小さくはあるが」
「明らかに異常成長している」
この場はコーラルが潤沢に存在しているというのか。あるいは、潤沢にある場所から漏れ出てここまで来ているのか。
レイヴンがACのマニュピレーターを使って突いたりして遊んでいる様子を、先の半壊状態のACはジッと見ていた。恐らくは、と思ってエアが声を上げた。
『セリアさんですか?』
『はい、エア。また会えて、嬉しいですよ。出来れば、素直に付いて来て頂けると嬉しいのですが』
「でけー!」
ミールワームも突かれて鬱陶しくなって来たのか、上体を起き上がらせて、口を大きく開いて威嚇していた。
『レイヴン。今は任務中です。遊んでないで、先へと進んで下さい』
「分かったー」
チラチラと後方のカメラを確認しながら一同は、半壊したACへと付いて行く。その間もフラットウェルと六文銭は警戒態勢を続けていた。
一方のレイヴンはと言うと。周囲を見回しているが、警戒の為ではなく壁を這っていたり、天井に張り付いているミールワームを探す為だった。
「ここってミールワームが多いんだね」
『そうね。ここには人間という天敵も居ないし、コーラルが満ちていることもあって、この子達には居心地が良いんですよ』
「そうなんだ! 詳しいんだね!」
エアよりも長く存在していることもあって、セリアはこの周辺の事情にも詳しかった。一方、彼女の声が聞こえないフラットウェルからすれば1人で会話をしているレイヴンが不審に見えたらしい。
「誰と話している? 入口で話していた友人か?」
「ううん、今話しているのはセリア。あのACを動かしているの」
「……まさか、先程の随想録にも載っていた女性のことか?」
「うん!」
レイヴンの与太話。と思うには、あまりにも色々なタイミングが符合し過ぎていた。こうして自分達を案内していることも含めて、彼女の思惑が知りたい。
「レイヴン。彼女に問うてくれないか? 何故、我々を導いてくれるのだと」
「???」
『フラットウェル。もっと、噛み砕いて説明しないとレイヴンには理解できませんよ』
フラットウェルとしても自分が尋ねたい意図が伝わってないことは察したらしい。どれほど咀嚼して話せばいいのかと悩んでいると、代わりに六文銭が口を出した。
「レイヴン。セリア殿は我々に何をして欲しいと言っている?」
意味は殆ど変わらないが、かなり噛み砕いた形になった。その女性が返事をしてくれているかどうか、レイヴンと彼女の友人にしか知り得ないことなので、反応があるまで黙っている外なかった。やがて、セリアが口を開いた。
『コーラルリリース。サムに言えば、分かる筈よ』
「コーラルリリース?」
『直訳でコーラルの解放という意味ですが、企業からの搾取体制から解放する。ということですか?』
エアとしても全く取っ掛かりが無い為、こんなあやふやな質問をするしかなかったが、セリアは間を置いてゆったりと答えた。
『そんな矮小な視点での話じゃない。エア、きっとこれは貴方に興味深い話だと思うの』
『私にとっても。ですか?』
『えぇ。よろしければ、私達の計画を手伝ってくれませんか?』
あまりに突拍子の無い勧誘だった。受ける気はないが、エアはこの交渉を材料にして情報を引き出そうと考えた。
『参加するかどうかは計画の詳細を聞いてからです。まず、何をしてどうなることを目指すのですか?』
『私達と皆の垣根を崩すこと。このルビコンには嘆きと悲しみが満ちている。私は、サムも含めた皆と共存したいと考えています』
「???」
先程から、エアとセリアの会話が進んでいるがレイヴンには一つも理解できていない為、退屈になって来たのか壁を這っているミールワームをACのマニュピレーターで突いていた。
そんな様子を見たフラットウェルが察しないはずもない。多分、レイヴンでは理解できない話をしているのだと。それでも律義に尋ねた。
「レイヴン、彼女は何と?」
「分かんない!」
案の定な答えが返って来たが、引き返すことは出来ない。故に、彼らは進み続ける。すると、景色が変わって来たことに気付いた。
今までは岩肌が露出し、ミールワーム達が蠢いている景観が続いていた。しかし、進むに連れて周囲は舗装され人為的な手が加わった景観へと変貌していく。やがて、開けた場所に出た。
『着きました。ここが、コーラルの集積する場所』
フラットウェルと六文銭は言葉を失っていた。目の前には都市が広がっていた。建物があり、行き交う為の道路がある。周囲は照らされていた。
「予想は正しかったということか」
フラットウェルは興奮していた。どの企業よりも早く、自分達はこの場所へと到達したのだと。探索を開始しようとした所で、六文銭が制した。
「帥叔。我々以外に動く者達がいる」
「何?」
既に他の企業が先んじているのかと言われれば、そうでは無い。錆の浮いた無人MTが今でも稼働していたのだ。設置された用途は侵入者排除だろう。
だとすれば、セリアと名乗る存在が自分達をここに連れて来た理由も理解した。障害を排除しろと言うことだろう。
「セリア。ここにいる者達を排除するために我々を連れて来たのだな?」
『はい。と言っても、私の声は聞こえないのでレイヴン。お願いしますね』
「そうだってさー」
今まで、何が起きるかは分からなかったが、今からやるべきことは簡単だった。3機は武器を構えて、飛び出した。同時に無人MT達から警報音が鳴り響き、直ぐに交戦の音に上書きされた。
~~
ネペンテスが破壊されてから数時間後。ベイラムの部隊が降下し、深度1以降の調査に当たっていた。未だにアーキバスは様子見に徹している。
探索にはレッドガン部隊も投入されており、五花海、イグアス、レッドは部下を引き連れて進んでいた。
「イグアス、レッド。気を付けて下さい。ここから先は通信も通じませんし、何があるかも分かりません」
「はい!」
「ッチ。あのアホ犬、何処に行きやがったんだ?」
イグアスは悪態を吐きながらも不自然に思っていた。砲台を破壊した後には、調査の任務が入るのは当然だと言うのに、彼女は何処かへと姿を晦ませた。
全ての調査が済んだ後に始末されることを危惧して、先んじて手を打ったかもしれないが、彼女ならばそんな姑息な手は通用しないと考えていた。
「あるいは、彼女ですら身を引く何かが……回避ッ!」
五花海の指示に反応出来た者は壁際に身を寄せたが、反応が間に合わなかった者の機体は撃ち抜かれて爆散していた。
「何が!?」
レッドが興奮気味に叫んだ先には、大型の二脚兵器が大銃を構えていた。数機破壊したことを確認すると、直ぐに背中を見せて逃げ出して障壁の向こうへと姿を消して行った。
「被害確認! 脱出は間に合っていますか!」
「何とか。だが、怪我が酷く……!」
「ここが入り口付近だということが幸いしましたね。レッド、彼らを連れて入り口付近まで下がりなさい。そして、総長に報告と相談を。方針が固まるまでは、先走る真似は控えるように」
「わ、分かりました!」
五花海の命令に応じて、レッドは負傷者が入ったポッドを抱えて入り口まで戻って行く。彼の愛機であるハーミットの姿が消えるのを見てから、イグアスは言う。
「アイツを死なせない為か?」
「いえ、邪魔なので。彼が居ても足手まといにしかなりませんから」
憎まれ口などではない。僅か一瞬の交差の中で、五花海は脅威を感じ取っていた。引き連れて来ているMTのパイロットはいずれもベテランばかりであるが、奥地に辿り着くまでにどれだけの犠牲が出るか。
だが、進むしかない。ただでさえ、コーラル競争においては出遅れているベイラムが逆転をする為には先んじる外ないのだ。
「それじゃあ、行くとするか!」
イグアスが叫ぶ。彼の号令に呼応するようにしてMT達も駆け出し……間もなくして、惑星封鎖機構が残して行った兵器達との交戦が始まった。