戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼41件目:おお、見よ! ルビコニアンデスパンジャンドラムだ! ……車輪骸骨ではないよ

 話は少しだけ前後する。621では理解し切れず、途中で傍聴が放棄されたセリアとエアの会話がどの様な物であったかというと。

 

『セリア。貴方の言う共存とはどのような形を指すのですか?』

 

 現状、コーラルは人間達からありとあらゆる方法で搾取されている。

 情報導体として企業では部品として使われ、技研など一部では燃料代わりにも扱われていた。

 また、コーラルを摂取したミールワームを食する……のは、まだ自然のサイクルとして納得出来ないこともなかったが、エアの交信相手であるレイヴンを初めとしたドーザー達の吸引もまた一つの搾取では無いかと考えていた。

 

『エア。貴方は、ルビコンを覆う人々の現状を知っていますか?』

『はい。解放戦線のログを見る限り、原住民は困窮を極めており、餓死者も絶えず。企業はコーラルを占有する為に他社と争いを繰り返しています。惑星封鎖機構は一旦撤退した様ですが』

 

 技研の遺産であるIA-02を撃破された惑星封鎖機構は強襲艦隊すら掠め取られて、いよいよ星外まで退いた。

 

『その通りです。エア、彼らを見て何か思いませんか?』

『愚か。と、断ずるには私の視野と見識はあまりにも狭いので、その様な評価は下しませんが。我々と彼らの隔たりを感じずにはいられません』

 

 コーラルは決して搾取されるだけの物ではなく、こうした意思を持つ存在もいる。その可能性にすら思い当らず争いを繰り返す彼らは、もはや自分達とは別の生物なのだと考えるしかなかった。

 

『そうです。私達と人々は違います。ずっと考えていたのです。どうして、人は争うのかと』

 

 エアも自身の存在意義については考えたことはある。彼女達は人間と違う。誰かと争って何かを奪いたいと考えたことなど一度も無い。

 

『利益の為。と言いますが、どうして人々が利益を求めるか。まで、考えたことは幾度かあります。セリア、私の考えを述べても大丈夫ですか?』

『えぇ。是非とも。エアの考えを聞かせて』

 

 どうして人々が争うのか? 自己が誕生してからデータベースなどを網羅して古今東西の争いには目を通して来た。発生する理由も様々であり、全てに共通する理由がある訳ではない。

 

『考え方が違うから。とは言いません。その答えは思考の放棄にも近しいですから。なので、私はこの様に考えます。人間は肉体に囚われているからだと』

『どうして、そう思ったの?』

 

 このルビコンで見て来たことを思い出す。人々は肉体と言う器に乗って、世界に存在している。だが、この乗り物は酷く不便だった。

 

『肉体がある限り。死という恐怖が常に付きまといます。飢餓、怪我、病気、事故、戦死……。これらを遠ざける為に力を持とうとしているのだと思います。知らない誰かに死を押し付けられない為に』

『やっぱり、貴方もそう言う考えに至ったのね』

 

 誰かに撃たれる前に引き金を引く。このルビコンでは散々見て来た。

 思い出すのはセリアと初めて会ったコーラル輸送護衛任務。ヘリのパイロット達は危険を呑み込んでまでコーラルの輸送を行っていた。……運ばなければ、食い扶持が絶え、遠からず生きていけなくなるからだ。

 

『ということは、貴方も同じ考え方を?』

『そう。人間は肉体がある限り、怯え続けなくてはならない。怯えは恐怖を生み、恐怖は暴力と支配を生む。だから、私達は彼らを救う必要があるの。肉体と言うか争いの火種から』

『抽象的すぎて分かりません。何をするつもりなのですか? それが、先ほど言っていたコーラルリリースと関わって来るのですか?』

『その通りです。コーラルによる解放(リリース)を目指している。私達は共に在るべきです。肉体と言う隔たりを捨て去って、添い遂げられたら。きっと、それは素晴らしいことだと思います。エア、貴方も共に在りたいと思う相手はいるでしょう?』

 

 真っ先に思い浮かんだのはコーラルによる紅い煙を吹かしている彼女に、周りの(癖が)大小様々な者達。……思ったよりも、愛着を持っている人間が多くなっていることを自覚して、多少は驚いた。

 

『そうですね。ですが、私はそこまで早まった考えは持っていません。……出来る事なら、私も彼女達と同じ目線で生きたいとは考えています』

『……そう思えるだけの無垢が続くことを願っています』

 

 結局、コーラルリリースの抽象的な目的は聞けたが、具体的に何をするつもりかまでは聞けなかった。程なくして、彼女達は技研が遺した都市に辿り着く。

 

~~

 

「イヤーッ!!」

 

 六文銭の猿叫が響く。シノビが手にした『44-143 HMMR』から投射された回転体が無人機達を打ち据える。吹き飛ばされた機体は、倒壊した建物に激突し、爆発四散して砕け散った。

 あるいはブーストを吹かして、姿勢制御も加えた上で行う回転蹴りは、古の日系武術『カラテ』を彷彿とさせるものだった。

 

「レイヴン!」

「おっけー!」

 

 帥叔であるミドル・フラットウェルも自身は決定打とも言える武装は持っていなかったが、『MA-E-210 ETSUJIN』バーストマシンガンと『MA-J-200 RANSETSU-RF』バーストライフルを用いて、的確に相手の姿勢を崩していた。

 そこにレイヴンが両手に構えた『SG-027 ZIMMERMAN』の散弾が突き刺さる。あるいは彼女も六文銭と同じようにブーストキックを用いて、次々と建物へとシュートを決めていた。

 

『お見事です。周囲の反応は沈黙しました』

「あの機体が現れたということは、安全は確保されたと思っても良さそうだな」

 

 付近に隠れていたセリアが姿を現し、再び先行し始めた。その時のことである。レイヴンはジィっと建物を眺めていた。六文銭が声をかけた。

 

「どうかされたか?」

「なんかある」

『その様ですね』

 

 レイヴンの機体が飛翔し、建物の屋上へと昇った所。そこにはコンテナがポツンと放置されていた。簡単なロックを解除すると、中には見たこともないパーツが収められていた。

 

「なにこれ?」

 

 大きさと形からして背部に積載する武装であったのだろうが、あまりに特殊な形状をしていた。まるで動物の頭部を模したかのような造詣だった。

 レイヴンが持って帰って来た武装を六文銭もフラットウェルも興味深そうに眺めている中、レイヴンだけに聞こえる声でセリアが言った。

 

『これは『IA-C01W3:AURORA』と呼ばれる、かつて技研が開発した兵器です。レーザー技術とパルス技術の複合品で非常に特殊な挙動をします』

「なるほど。凄い武器なんだね」

「レイヴン。私が持っておこう」

 

 レイヴンの機体は武装で埋まっているので、収納スペースが無い。

 一方、フラットウェルの機体は割と全体的に姿勢を崩す為だけの軽量武器ばかりだったので、空きがあった。

 

「うん。お願いね」

『レイヴン。必ず、返して貰ってくださいね?』

 

 技研の武器なんて超が付くほどの貴重物である。流石に解放戦線の手に渡ることだけは避けたい。フラットウェルのツバサに新兵器を取り付けた所で、一同は再び進行を開始……する前に再び飛翔した。

 

『レイヴン。あまり勝手な行動は……』

「呼ばれた」

 

 エアの注意に引き留められることも無く。迷うことなく降り立った先には、大破したACが擱座していた。見たこともない機体だった。

 先の坑道で行った様に、機体に残ったログの回収を試みると、誰かの手記と思しきデータが見つかった。

 

『これは、ルビコン調査技研所長の音声記録。でしょうか?』

「残り12分。やるべきことは全てやった。アイビスの火を見届けるのは私ひとりで良い。あの少年は強く生きていけるだろうか。木星には友人もいる。きっと良くしてくれるだろう」

 

 アイビスの火を見届けた男が最期に残した物は、世紀の発見を目の当たりにする興奮でも無ければ、今まで行って来たことへの後悔や懺悔でもない。ただ、1人の少年の身を案じた物だった。

 

『……今まで、レイヴンが回収して来た手記からして。この少年とはひょっとして』

「レイヴン。何をしている? 今度は何を見つけた?」

「なんでもなーい!」

 

 フラットウェルに呼ばれて、レイヴンは建物から降りて来た。そして、セリアの機体に追従することにした。

 建物が並んでいる所に文明の名残を感じる物の。断層が生じていたり、幾つものビルが倒壊していたり、激しい隆起が起きていたりと。災厄の爪跡を感じさせるものだった。

 

「恐らく、これほど栄えていたであろう場所が廃棄されたのだから相当な事故が起きたのだろうな」

『先程の手記から考えて、ここがアイビスの火の中心点だったのでしょうね』

 

 六文銭も注意深く周囲を探っていた。先程の様な分かりやすい脅威ではなく、隠されたトラップや迎撃機構に引っ掛かることを警戒してのことだ。

 

『そんなに警戒しなくても、その程度のトラップでしたら既に機能は停止していますよ』

「だってさー。早く行こ」

「そうか……」

 

 セリアはある程度事情を知っているようだ。その程度の内容ならば、レイヴンも分かるらしく、六文銭を促して先へと進む。……すると、大橋が見えて来た。

 

『目的地はもうすぐです』

 

 大橋を渡ろうと足を踏み入れた直後のことである。遠方と幾度かの爆発が起きると同時に、巨大な何かが飛び出して猛接近し始めて来た。

 地面をガリガリと削りながら現れたのは、非常に奇妙な機体だった。チェーンソーの回転刃だけで作られた大型の車輪とでも言えばいいのだろうか。接近しながらミサイルや火炎放射(フレイムスロワー)を飛ばして来るギミックにフラットウェルが声を上げた。

 

「なんだ、これは!?」

 

 破砕機と言えなくもないかもしれないが、こんな物を投入すれば現場は跡形もなく粉砕されるだろう。……多分、破砕機の用途には合っていない。

 

「撃破するしかあるまい! レイヴン!」

「えい」

 

 六文銭も迎撃態勢に入ろうとした所で、レイヴンは粉砕回転刃の側面からブーストキックをかました。破砕する為の刃が着いた正面と比べて耐久力や危険性が低いこともあり、大きく吹き飛ばされて大橋から落下していく。

 ……原理としては単純かもしれないが、実際にやる度胸と技量は真似できる物ではない。

 

「イヤーッ!!!」

 

 彼女のやり方を早速真似たのか、六文銭も側面からブーストキックをかまして大橋から叩き落した。……落ちた先に何があるかと覗き込めば、そこにもやはり奇妙な光景が広がっていた。

 先程の破砕機が何かを取り囲んでいる。ズームをしてみれば、そこには擱座したACと、先程見つけた『IA-C01W3:AURORA』を収めていたかのようなコンテナがあった。

 

「レイヴン。まさか、取りに行くとは言わないな?」

 

 フラットウェルが恐る恐る問うた。先程は、橋の上という有利もあって退けることが出来たが、下に降りれば正面から戦う必要がある。自分達は調査に来ただけで、脅威の殲滅の為に来た訳ではない。

 

「行くー!」

 

 が、レイヴンは先程『IA-C01W3:AURORA』を見つけたことに味を占めたのか、あのコンテナの中身も気になるらしい。複数の破砕機に囲まれているにも関わらず、彼女は躊躇することなく大橋から飛び降りた。

 

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