戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼44件目:スウィンバーン「もしかしなくとも、私って閣下に嫌われている?」

 ペイター達がエンゲブレト坑道へと辿り着き、最奥から地底に向って飛び降りた時のことである。都合、3回目の訪問者達になるのだが、周りにいる巨大ミールワーム達は殺気立っていた。

 

「おかしい。レイヴン達が入って来た時は興味も無さそうだったのに」

 

 ナイルがレイヴンの機体から取って来たログを確認すれば、周りのミールワームを突いたりはしているが、こんな一触即発の状態ではなかったはずだ。

 

「私には分かります。ご友人も言っています。彼らは怒っているのだと。仲間を殺され、嘆き悲しんでいるのだと」

「仲間を殺され……?」

 

 ブルートゥの言葉で何かに気付いたのか、ナイルはディープダウンのスキャン機能を使った。すると、ミールワームの肉片や体液が散乱していることに気付いた。彼女が無駄な殺生をするとは思えない。

 つまり、レイヴン達よりも後に入り、自分達よりも先に入った者達が居ると言うことに他ならなかった。

 

「恐らく、私達が入って来ることを想定してトラップがてらに仕掛けたのでしょうね。誰がやったことは想像に容易いことです」

 

 ペイターには既に犯人が予想できていた。というよりも、レイヴンの動きを察して直ぐに追従できる程、手際が良い者達は数えるほどしかいない。この場にいる者達が思い浮かべた人物達も同じだったが、敢えてブルートゥが尋ねた。

 

「誰ですか?」

「V.Ⅱスネイルです。奴の策略家としての視野とデコの広さはアーキバス随一です。ミールワーム達からもこんなに毛嫌いされて……彼には愛護精神と言う物が毛頭ないのでしょうね。今頃、奴らはケが無く先に進んでいることでしょう。こんな好き勝手を許せば、この周囲は不毛地帯になってしまいます。一毛不抜、奴を表すのに、この上ない言葉です」

 

 涼し気に見えて、余計な手間を掛けさせやがって。という、ペイターの怒りがありありと伝わって来た。

 もはや、ナイルとしても彼の反骨精神というか不敬を矯正する自信が無かった。同時に、こんな奴の世話をしているアーキバスと言う組織の強大さを改めて実感した。

 

「刺激をしないように進むぞ。連中と交戦状態になったりでもしたら、余計な手間を掛けさせられるからな」

 

 ナイルが先導しながら、ミールワーム達から威嚇を受けながらも慎重に進む。その度に彼らの肉片や体液が散見されるのだから、相当派手にやったのだろう。

 

「彼らの嘆きと怯えが聞こえてきます。あぁ、我々さえ来なければ。人々がコーラルさえ求めなければ、ここは彼らにとっての楽園だったはずだと言うのに」

 

 ブルートゥの声には本気で悲哀が混じっていた。ナイルも倫理観的に思うことはあるが、虫を相手に同情する様な感性は持ち合わせていなかった。

 一方、ペイターはミールワーム達のことなど気にもかけず、頻りに周囲にスキャンを飛ばしていた。この際に放つ、周波が彼らを刺激するのか威嚇の声が大きくなっている気がした。

 

「おい、ペイター。あまり刺激をするな」

「いや、ひょっとして。ここにいる連中ごと、私達を生き埋めにしようとトラップが仕掛けてあるんじゃないかと思いまして。……冷静に考えれば、帰り道にも使うのですから、多分ないとは思うのですが」

 

 現状、レイヴン達が向かった先に正規ルートで向かっているのはベイラムの部隊だけだ。もしも、ここのルートを潰してしまえばアーキバスは少数でベイラムの部隊を迎え撃つ必要がある。……となれば、帰り路にも使われるはずだ。

 

「だと言うのに、連中はミールワームを刺激していたのか。いや、コイツら程度なら踏みつぶして行けると考えてのことかもしれんが」

 

 ナイルのディープダウンと比べれば小さくはあるが、それでも通常のワームと比べれば巨大と言う外ない。

 もしも、これがルビコニアンデスワームの様にビームを照射して来たりすれば脅威にもなるだろうが、機体の残骸すら見当たらないことから、そう言った類のことは出来ないのだろう。

 

「傲慢と言う外ありませんね。あぁ、ご友人も嘆いています。彼らの悲鳴が聞こえてきます。心苦しいですね……」

「先に急ぎましょう。もしも、ハゲ達が通過しているなら、レイヴンが危ない!」

 

 文脈的に考えてスネイルのことを指しているのだろうが、ペイターも相当に怒っているのか、名前呼びすら止めていた。ついでに、レイヴン以外はどうでも良いらしい。

 人格には問題しかないのに、この中で唯一LCを使いこなせているのが、本当に何かの間違いだろうと思いつつ、ナイル達は先を急いだ。

 

~~

 

「どわぁあああああああ!?」

 

 スウィンバーンは悲鳴上げながら逃げ惑っていた。こんな規格外の動き方をする機体を見たことがない。今はパルスアーマーで防いでいるが、これが剥がされたら間もなくコーラルによる照射がガイダンスを貫くだろう。

 一方で、レイヴンとラスティもまた防戦を強いられていた。先程と違って、アイビスの動きは大振りな物になっているが、攻撃範囲と速度が向上しており、相手の懐に飛び込めずにいた。

 

「戦友、恐らく先の戦いで懐に入られる危険性を学んだのだろう」

 

 ラスティの想像通り、実際にアイビスは先程の戦いで学習していた。飛翔をすれば懐に潜られ、耐久値を削られると。

 故に、アイビスは舞うにしても極めて低空で行い、ACの頭部をギリギリ霞めるくらいの高度から擦れ違いざまにコーラル刃で切り付け、あるいはビットによる薙ぎ払いを行っていた。

 

『レイヴン、先に組んだパターンはまるで役に立ちません。ですが、無理に再起動させているのであれば、耐久値はさらに下がっているはずです。どうにかして一撃さえ与えれば』

 

 一度、大破している状態で無理矢理動かしているのだ。幾ら、コーラルの力で再起動させたとしてもフレームやパーツにはガタが来ているのは道理だった。

 被弾しては不味いからこそ、ここまで極端な機動を繰り広げているのだろう。ならば、自分達がやることは一つだけだった。

 

「うん。あの子、焦っている。一発、入れてやろう」

「なにか! 何か策はあるんだな!?」

 

 こんな戦場に放り込まれたスウィンバーンは正気を保つので精いっぱいだった。彼の実弾武器は動いているアイビスにはまるで当たらないので、逃げ回る外ない。勿論、スタンバトンが届く訳もない。

 状況が思考の余裕を削ぎ落としている中、真っ当な作戦が思い浮かぶ訳もない。故に、思い浮かぶのは無茶な作戦ばかりだった。

 

「スウィンバーン。手伝って貰えるか? とっておきの策がある」

 

 この期に及んで、ラスティが出した案は無茶苦茶な物だった。だが、レイヴンとスティールヘイズの装甲を考えれば、この役を担えるのはガイダンスだけだった。……このまま戦い続けても嬲り殺しにされるだけだ。

 しかし、彼は決して勇士でもなければヴェスパーの矜持を背負った戦士でもない。逃げ出したい衝動に駆られた彼の、背中を押したのは。

 

「スウィンバーン。私達を信じて」

 

 この場には全くそぐわないレイヴンの激励だった。そして、人を疑い続けた末に手に入れた洞察力で気付いた。彼女の声色は疲労と緊張で若干震えているということが。覚悟は決まった。

 

「わ、私もヴェスパー隊長だ! 小僧共! 見ておけ! これ位の修羅場の切り開き方! 私のガイダンスで案内してみせよう!」

 

 そう言うと彼は、距離を取りながらミサイルや『EARSHOT』を放った。当然、射程距離が離れていればアイビスは容易に回避できる訳だが、それはアイビスの攻撃も同じ様に回避できると言うことだった。

 スティールヘイズにせよレイヴンにせよ接近戦に強い機体は機動力も高く、クロスレンジで交戦をすれば反撃を食らう可能性がある。ならば、近距離戦ならば容易く処理できるガイダンスの始末に向かうのは当然の流れだった。

 

「来るぞ……!」

 

 幾ら装甲が薄いアイビスとは言え、加速を乗せた上で突撃を食らえば、それ自体が攻撃となる。周囲にオービットを展開しつつ、両腕部の発振器からコーラル刃を展開して一撃必殺の構えを取る。

 一連の攻撃を食らえば、重量級の機体ですら一溜りも無い中。スウィンバーンはミサイルもスタンバトンも捨てて、パルスアーマーを展開したままアサルトブーストを吹かした。

 

「うぉおおおお!」

『アイビスの思考に乱れあり』

 

 アイビスからしても向かって来るとは想像できず、勢いを付けた故に急激な方向転換も出来なかった。

2機は正面からぶつかり合う。衝撃でパルスアーマーが消えた一瞬の隙に、ガイダンスは空いた両の手でアイビスの両腕を掴み取った。

 

「やれぇ!!」

 

 アイビスの動きが固定されるが、振り解かんとブーストを吹かし、あるいは両腕部の発振器からコーラル刃を出現させてガイダンスの腕を焼き切る。……が、レイヴン達はそれ以上に早かった。

 

「スウィンバーン、貴方のことを誤解していた。貴殿はヴェスパー部隊でも随一の勇者だ」

「だから、これで終わり!」

 

 アイビスの頭上から『SG-027 ZIMMERMAN』の散弾が降り注ぎ、収納されたオービットごと両肩を潰し、スティールヘイズの『Vvc-774LS』レーザースライサーがアイビスをバラバラに引き裂いた。

 

『3人とも離れて下さい! 爆発します!!』

 

 先の爆破とは比べ物にならない威力で、アイビスの内燃料であるコーラルに引火して爆発した。今度は、幾ら環境にコーラルが満ちていたとしても再起動は適わないだろう、徹底的な破壊だった。

 

「やったのか!?」

 

 両腕が断ち切られたガイダンスで周囲をスキャンしたが、何も見つからない。スウィンバーンは改めて安堵の息を吐いた。

 戦いは終わった。後は目的物を回収するだけだが……ふと気づいた。そう言うことならば、目の前のレイヴンをまた相手取らねばならないのではないかと。

 

「……戦友。君の目的もバスキュラープラントか?」

「え? ウォルター? どうしよう?」

 

 呑気に通信を取っている様だが、繋がっていない様だ。彼女に指示をする者がいなければ、障害にはなり得ないのでは? ……いや。何故、繋がらないのだ? こんな重要な局面で? と、疑問を抱いた刹那のことである。

 彼女の機体が飛び退いた。瞬間、『VE-60SNA』から放たれたニードル弾が強力な放電が行われた。一体、何が行われたか分からずラスティとスウィンバーンが言葉を失っていると、周囲に多数のMTが降りて来た。

 

「ご苦労様です。ラスティ、スウィンバーン。それと、バカ犬も」

「か、閣下!? これはどういうことですか!?」

「見て分かりませんか? 貴方達の援護に来たのです」

 

 だったら、どうして先の戦いで助けてくれなかったのか。……いや、彼らが言う援護とは目の前のレイヴンに対することだろうと直ぐに理解した。

 既にレイヴンの機体はAPも限界で残弾も無ければ、戦う為の余力を残していなかった。それでも、問うた。

 

「ウォルター達は?」

「後で会えますよ。先程の一撃を避けたのは見事ですが、その様子では抵抗も出来ないでしょう。大人しく付いて来るならば、飼い主も丁重に扱いましょう」

『レイヴン、先程から通信が途絶えている理由ですが……拠点の方に、映像が残されていました』

 

 エアがデータを再生する。すると、そこには1317が迎撃に使ったであろうLCが撃墜される様子が映し出されていた。交戦している相手は今までに見たこともない機体だった。

 

「惑星封鎖機構のLCとは散々に交えたが、どの機体も挙動が素直すぎる。パイロットの実戦経験の少なさが透けて見える」

 

 奇妙な機体だった。頭部は『HD-011 MELANDER』、脚部は『LG-011 MELANDER』とベイラム社製の物を使いながら、胴体は『VP-40S』、両腕は『VP-46S』とアーキバス社製の物を使っていた。

 武装もまた各社の物で混成されており、まるで独立傭兵が使うACの構成(アセンブル)だった。しかし、周囲に待機しているMT達はアーキバスのカラーリングであり、この機体の主の所属先を表していた。

 

「馬鹿な。こんなにも一方的に……」

 

 LCから脱出した1317は拘束され、同じ様に拘束されたウォルターと共に何処かへと護送されて行った。どうやら、スネイルの言葉はブラフではないらしい。

 

『1317も決して技量は低くないパイロットですが、ここまで一方的に』

「大人しく付いて来てくれると嬉しいんだけれどな。ほら、何かあったらペイター君も怒っちゃうし」

「奴の名前を出すな! 虫唾が走る!」

 

 ホーキンスが穏やかに降伏勧告を行った所、スネイルの怒声が遮った。相思相嫌、見事に互いのことを嫌い合っていた。

 

「戦友、大人しく従ってくれ。頼む」

 

 元より、この状況を切り抜けられる訳もなく。レイヴンは渋々と言った様子で頷いた。

 

「分かっ――」

 

 返事をしようとした瞬間、周囲を取り囲んでいたMT達が爆散した。何事かと、射線を振り返ってみれば、そこには数機のACが並んでいた。

 

「テメェら、誰に断ってアホ犬に手ェ出してやがる!?」

「イグアス!?」

「間一髪。だったようですね」

 

 そこにはイグアスのヘッドブリンガーと五花海の鯉龍。そして、彼らを率いるかのように先頭に立つ大型の四脚AC。

 

「どうやら、アイツらは遠足が楽しみで待ちきれなかったらしい! だがな、引率を置いて先に行くとはどういうことだ! 集団行動は基本だぞ!」

「ベイラムの歩く地獄か! 先日のワーム排除から、こんなに早い再会になるとは!」

 

 ここに来て、正面から攻略を進めていたベイラム部隊が間に合ったらしい。これにはスネイルも不快そうな声を漏らしていた。

 

「時代遅れの斜陽企業らしく、頓挫していれば良い物の。メーテルリンク! ホーキンス! V.Ⅳ! 構いません! 彼らを撃退しなさい!」

 

 先日まで、共に肩を並べて戦った者同士が交戦に入る。このルビコンにおける勢力の縮図の様な光景が繰り広げられる中、レイヴンはコッソリと戦線から離脱しようとして。

 

「貴方は私と共に来るのですよ」

「あ」

 

 スネイルのオープンフェイスに、至近距離から『VP-66EG』スタンガンを打たれて、機体は強制放電を起こして機能を停止した。

 混戦を呈している戦場を背後にしながら、スネイルは数機のMTを連れて、静かに去って行った。……自分達が使ったエンゲブレト坑道へと続く道に。

 

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