戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼47件目:レイヴン「ピーチ姫?」

「閣下、検査の結果が出ました。彼女は確かに読心能力を持っています。それも、極めて高いレベルの」

「ほぅ、どの程度の能力ですか?」

 

 強化人間部門で行った検査の結果が出た。レイヴンが言っていたのは事実であり、本当に彼女は読心術を持っていた。

 

「能力のオン、オフは利かない様ですが、彼女は周囲に塗り潰されない程の自我と処理能力を持っています。情報を取捨する能力に優れており、なおかつ表層だけではなく、深層における行動の起こりまで聞き取れる様です」

 

 直ぐに説明を促さず、スネイルは一旦考えた。報告を聞いているだけでは、如何に彼とは言え情報を処理しきれない可能性がある。

 故に、一旦聞いた情報を自分なりに咀嚼して、吐き出した答えがあっているかどうかを確認するプロセスを経て、初めて自らの中に根付くことを経験から把握していた。

 

「例えば、私がトランプでスペードの2を伏せたとします。そして、彼女に当てて見ろ。と言った時、内心でハートの8と思っても、キチンとスペードの2を当てられるのですか?」

「はい。閣下のおっしゃる実験も行った所、100%の的中率でした。我々は複雑な行動の際、必ずプロセスを脳内で構築します。彼女はその構築段階から聞き取れる様です」

 

 フィクションめいていて、一笑に付す様な内容だが、本当に彼女がそう言った能力を持っているのなら腑に落ちることは多かった。

 今まで、多数の任務で見せて来た、相手を翻弄するような動き。先んじる動きも、相手の行動を読んでいたとすれば頷くことも出来た。

 

「ご苦労。この研究結果を、他の強化人間にも流用出来ないかを講じなさい。それと、レイヴンをここに」

 

 スネイルからの命令を受けた男は返答をして、部屋から出て行った。スネイルの鼻息は俄かに荒くなっていた。想像以上の拾い物をしたと。

 それから、十数分後。再び、彼の部屋に訪れたレイヴンは、パイプに入ったコーラルを吹かしていた。

 

「ただいま」

「貴方が虚偽を話していないことは分かりました。なので、腹芸をした所で無駄でしょう。単刀直入に申し上げます、私に協力しなさい。そうすれば、ウォルターとあの男の安全を確保しましょう」

 

 敢えて、アーキバスに協力しろという言い方はしなかった。

 自室でヤクを吸うと言うかなりの無礼を働かれながらも、冷静に交渉しているのは、それだけ彼女の存在に価値を見出しているからだ。

 

「んー。2人が大丈夫なら、いいよー」

「話が早くて助かります。ならば、私が案内をしましょう。付いて来なさい」

 

 彼女の能力が何処まで本当なのか。早速手に入れた物を試したいという好奇心に駆られる姿は、スネイルらしからぬ物だった。

 

~~

 

「おや、珍しい組み合わせだ。戦友、一体どういう経緯が?」

「彼女は私達に協力してくれることになりました。V.Ⅳ、貴方の手柄ですよ」

 

 質問に対して、スネイルが返答した。だが、ラスティは驚いた様子もなく、笑顔を浮かべたままだった。

 

「そうか、遂に戦友がこちらに来てくれることになったのか。スウィンバーンも喜ぶに違いない。これからもよろしく頼むぞ」

「うん!」

 

 コーラルを吹かしていることもあって上機嫌なのか、声量はかなり大きかった。

 

「行きますよ」

「じゃあね」

「また、後程に」

 

 スネイルが歩を早めた為、レイヴンも後を付いて行く為にラスティとの会話を切り上げた。……そして、彼の姿が見えなくなった後に尋ねた。

 

「奴は何を考えていた?」

「ウォルターと1317を守るためだろうな。って、言っていた。スネイルに対しては特に何も」

 

 そんな物、態々。心を読まなくても把握できることだ。自分に対して何も思われていないのは、いつものことに対して抱く感慨も無いのだろう。

 

「この程度なら、私でも推測が可能なことです。他の者は……」

 

 何か読み辛そうな考えを持っている奴や、外面が良い奴はいないだろうか。手段と目的がやや逆転しつつも、スネイルに目を付けられた人物はと言えば。

 

「スネイル。と、レイヴンか」

 

 任務帰りなのか、通常運行なのか。非常にかったるそうな表情をしたV.Ⅲのオキーフだった。情報部隊に所属することもあって、情報の重要さを知っている為か、彼は自らのことを決して話そうとはしない。

 彼の底知れなさは、スネイルですら警戒心を抱く物であったが、今は違う。チラリとレイヴンに目配せをした。

 

「彼女も協力してくれることになりました」

「そうか、心強いことだ。それよりも、今日は上層部が抜き打ちで視察に来るぞ。注意しておいた方が良い」

 

 内心で舌打ちをした。恐らく、バスキュラープラントの件が上にも伝わったのだろう。だが、彼らに対する弁明とこれからの方針は既に控えている。何も恐れることはない。

 

「分かりました。では、彼らの迎えに上がりましょうか。レイヴン、付いて来なさい」

「はーい」

 

 むしろ、丁度良い機会だと思っていた。奴らが自分に対して、普段何を考えているのか、丸裸にする良い機会だ。……どうせ、低俗で無責任で無思慮なことを思い浮かべているに違いない。

 

「オキーフは何を考えていたのですか?」

「眠い。ってさ。後、スネイルの生え際が後退しているって。俺も、こんな風になるのかって、嘆いていた」

「……まぁ、勝手に覗き込んだのはこちら側の責任ですから」

 

 人は口に出さないことで保っている均衡もある。怒りよりも、あんな関心を持って無さそうな人間でさえ自分の頭部をチェックしているのだという事実に、若干のショックを受けつつスネイルは上層部を迎えに行った。

 

~~

 

「来たか! 早速だが、今後のベイラムについて、お前達にも話しておこう!」

「バスキュラープラントも手に入れたが、依然としてルビコンではアーキバスも強いからな」

 

 ナイルとしても、ベイラムの方針は気になった。アーキバスが健在である以上、バスキュラープラントが奪われる可能性もあるのだ。

 また、ルビコン解放戦線や完全に撤退をしていない惑星封鎖機構など。不安要素は幾らでも残っていた。

 

「その通りだ! お前達の話によれば、G13達はアーキバスに囚われたそうだな! だが、上層部はこれをチャンスだと捉えた!」

「チャンス?」

「そうだ! 我々でレイヴンを奪還する! バスキュラープラントだけではなく、レイヴン達すら奪われたとなれば! いよいよ、奴らの間抜けぶりが全宇宙に広がると言う訳だ!」

 

 ナイルからしても断る様な話でもない。以前より、ベイラムにはレイヴン崇拝の動きがあった。実際、アイビスが回収されて技研の遺産に関する脅威を把握すればするほど、これらを撃墜した彼女の評価が上がって行くばかりだ。

 ここで、敵対者達に攫われた彼女を奪還したとなれば、ベイラムの威光には箔が付き、相応に士気も高揚するだろうとは考えられた。……何より、貸しを作ってしまえば、彼女としてもベイラムに従う外なくなる。

 

「良いですね! 囚われた姫君を助けるなんて、まるで王子の様ですね!」

 

 ペイターもノリノリではあるが、彼もレイヴンのことは心配しているのだろう。だが、事はそう簡単な話ではない。救出したから再び独立傭兵と言う立場に戻ることは難しいのだ。

 

「ウチからはイグアスとレッドを出す! G2! 指揮は、お前に任せる!」

「了解した。ミシガン」

 

 古巣に戻って来たら直ぐに次の仕事だ。真っ当に進めればウォルターの意に反することになりかねないが、跳ねのけることも出来ない。どうした物かと考える中、ブルートゥは考えていた。

 

「(カーラ、貴方のご友人がピンチです。何もしないとは思いませんが、今。何をお考えになられているのでしょうか?)」

 

~~

 

「(ボス、この場はベイラムが治めるらしい。道中で、面白い物も拾った。これより帰投する)」

 

 集積コーラル。ベイラムの機体が多数哨戒している中、惑星封鎖機構から鹵獲したステルス機を動かしているチャティ・スティックは内部のコックピットに2人の人間を収容して、地上に向っていた。

 

「まさか、RaDが鹵獲をしていたとは」

「おかげで、拙者らも帰還できる訳だが」

 

 搭乗機体を破壊されたミドル・フラットウェルと六文銭がコッソリと救難信号を出していると、偶然。斥候に来ていたチャティに拾われていた。

 ストライダーの件もあって、多少は存在していた繋がりが良い方向に働いてくれたらしい。

 

『流石にアーキバスから取り戻すのはしんどいね。ウォルター達とも通信が繋がらないし、あっちも捕まっているだろうしね』

 

 このままでは自分達の目的を果たせない。幸いにして、ベイラムグループが奪還作戦を目論んでいる様だが、企業の手に落ちれば自由に動くことは適わなくなるだろう。

 

「不味いな。そうなると、我々も動きづらくなる」

 

 フラットウェルとしても由々しき問題だった。ルビコン解放戦線において、レイヴンは貴重な戦力だ。彼女が企業の走狗となってしまえば、いよいよルビコニアンは搾取されるだけの存在となる。

 

「帥叔。なれば、我々で奪還するしかないだろう。レイヴン達にとっても悪い話ではないはずだ」

『……企業の手に落ちる位なら、アンタらが囲った方がマシか。一旦、引き返してから考えるよ』

 

 今はまだ、ベイラムも集積コーラルの探索に人員を割いている。チャティのステルス機は姿を消したまま、入り口が防がれる前に脱出をしていた。

 

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