戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼48件目:中間管理パイロット スネイル

「V.Ⅱスネイル。まだ、ルビコンで戦果を挙げられていないのですか? 挙句の果てにベイラムにコーラル集積を取られるとは。打開策はあるのでしょうね?」

「はい。プランは幾らでも用意しており……」

 

 スネイルが策略家として、パイロットとして辣腕を振るおうと。スポンサーや上層部には頭を下げる外ない。彼らがいなければ、自分達は戦うことすら出来ないのだ。

 

「それに惑星封鎖機構から鹵獲したLCの転換は捗っていないそうじゃないか。困るね、彼らを退ける為に私達がどれだけのコストを投じたと思っている?」

「機種転換は急いでおりますが、戦場では乗り慣れた機体の方が戦果を上げやすいこともありまして……。習熟訓練も急がせていますが」

「その過程を飛ばす為に強化人間なんて物があるんだろうが。あの実験の為に、私達が各方面にどれだけ資金を払っているか。役立ててくれないと困るよ」

 

 机上の空論ばかり並べる上層部に対して思うことはあれど、再教育センターや強化人間などの研究を進められるように根回しを進めてくれているのは、彼らだった。なので、ひたすらに頭を下げるしかない。

 平身低頭。プライドの塊である彼としては、如何に業腹であるか。そして、これは査察に託けたイビリなのだということも察していた。

 

「善処いたします。必ずや、ベイラムからはバスキュラープラントを取り戻します」

「報告に上がることを楽しみにしているよ。それと、先程から気になっていたが、この少女はなんだ? 君の趣味か?」

 

 基地内に放り出す訳にもいかず。スネイルは案内がてら、そのまま連れて来ていた。通常ならば避けていたが、彼女の能力を用いようと考えてだ。

 

「彼女は、報告書にもあったレイヴンです。ルビコンにおける、最強の独立傭兵。先日、捕縛に成功しました」

「冗談は程々にしてくれ。こんな年端も行かぬ少女が、レイヴンなハズがないだろう。素直に愛人と言ったらどうだ」

「自分もそうだから?」

 

 今まで、沈黙を守っていた彼女が初めて口を開いた。スネイルは一瞬理解が遅れたが、上層部の男の顔が引き攣ったのを見て察した。

 

「な、何を言っているんだ」

「アイリス、イヴ、カーネーション、サクラ。って言うの? その子達」

 

 女を囲う。ということは、昨今の情勢的には珍しくもない。なんなら、社会的ステイタスの一つとしても数えられる位だ。

 だが、小児愛好者となれば話は別だ。周りから侮蔑の視線は避けられない。道徳的、倫理的な非難はあれど、一番の理由は趣味が悪いからだ。

 

「スネイル! 貴様、どういう教育をしている!」

「どうかされましたか? 捕虜の戯言など放っておけばいいのです。まさか、アーキバスの上層部に名を連ねる者が、ロリコンであるはずがないでしょうしね」

「ふん、当たり前だ! こんな寂れた惑星で何時までも油を売っていないで、さっさと成果を上げて来い!」

 

 捨て台詞を残しながら、上層部の男は足早に去って行った。彼の姿が消えるまでスネイルは姿勢を正していたが……見えなくなった後は、高笑いを上げていた。

 

「ハハハ! ロリコンか! あの男! 面白いことを聞いた! レイヴン。貴方の能力はそう使えば良いのですね!」

「???」

 

 何がおかしいのか、まるで分らないレイヴンは首を傾げるばかりだったが、暫く彼女は上機嫌なスネイルにアーキバス内を案内されていた。

 

~~

 

『レイヴン。先程の行動は、スネイルに恩を売ろうとして?』

「別に?」

 

 先の一件で気に入られたのか、レイヴンは独房に入れられることも無く、アーキバスの拠点内を自由に動き回ることを許可されていた。最も、行動を逐次監視する物理的な首輪を装着されてのことだが。

 

『それにしても意外でした。傲岸不遜の権化であった、彼もまた。社会の仕組みには逆らえないのですね』

「ぷふー」

 

 すれ違うスタッフ達は、彼女のことを二度見していく。パイプに入ったコーラルを吹かしている首輪付の少女。なんて物が目を引かない訳がない。

 

『幸い、彼らは私のことを認知できていません。口に出しては不味い言動に関しては、こちらで考えますので、レイヴン。貴方は迂闊に口走らないようにお願いします』

「あへあへ」

 

 エアと話しているのかヤク中が鳴き声を上げているのか判断し辛い所だった。これは彼女との会話をカバーする為の演技……という訳ではなく、多分。通常営業でしかない。

 ウォルターの所に行こうとも面会は許可されていない。なので、こうして徘徊している訳だが、誰も関わって来ようとはしない。

 

【何だ、コイツ。気持ち悪いな……】

【クソッたれ。ベイラムの野郎、ベイラムの野郎! 直ぐにでも取り返してやる!】

【今日も閣下は禿げているなぁ。明日はもーっとハゲるだろうなぁ】

【家に帰りてぇ……】

【あー、ペイター死んでくれねーかなー】

 

 戦場に身を置いていることもあって、すれ違う者達の思考は攻撃的思考を浮かべていることが多かった。レイヴンはパイプにコーラルを多めに入れようとした所で、腕を掴まれた。

 

「貴様! ここは公の場だぞ!」

「あ、フィヒンバーンだ」

「呂律も回っとらんじゃないか!」

『彼も無事だったんですね』

 

 通行の邪魔になると言うことで、レイヴンは壁の方まで引っ張られた後、彼から懇々と説教を受けていた。

 

「良いか? 人生はまだまだ続いて行く。だと言うのに、クスリなんて物に手を出してしまえば、今後の未来を閉ざしてしまうことになりかねない。パイロット達の中には感覚が開けると言う者もいるらしいが、そんな物はまやかしだ! 第一、生きる為に戦っているというのに、戦う為に寿命を縮めては元も子もないだろう!」

『どうして、この人。倫理観がマトモなんでしょうね?』

 

 戦場において、人は暫し狂気に支配されやすい。死と隣り合わせという現実が、良心や常識と言う枷を外してしまうのだ。

 故に、なおもコレらを持ち続けられるということは相応の実力者ということでもあり、スウィンバーンもまたヴェスパー部隊の隊長格だった。

 

「少しは理解したか?」

「ばっちりー!」

「しとらん奴の常套句だろ!! ふん、報告書もまとめたし。ガイダンスの修理には時間も掛かる、暫く私が付いて見張っておくから、コーラルなど吸うな」

 

 スウィンバーンはレイヴンからパイプを取り上げた。彼女は不服そうにしていたが、渋々と言った具合で従う姿勢を見せると同時に。腹の虫が鳴った。

 

「解放されてから何も食っとらんのか?」

「検査の為に食うなって」

「あぁ。そう言うことか。……仕方ない、付いて来い」

 

 食堂。というにはレーション位しか置いていない場所に向って、スウィンバーンはレイヴンを連れて行った。

 

~~

 

 彼女とは違い、ウォルター達は独房の中にいた。自分達が拷問に掛けられたり、ログでも読んだ再教育センターという場所に送られていないのは、レイヴンが取引に応じたからとは聞いていた。

 

「(621がその様な取引や駆け引きが出来るか。簡単な質疑に答えたか、もしくはエアがサポートをしてくれたか)」

 

 彼女ならば、レイヴンをサポートしてくれるだろう。だが、問題は彼女がどの様に扱われるかだ。リバースエンジニアリングの様に原理を解明するためにバラされる可能性は低いと考えていた。

 

「(これだけ便利な物ならば、そのまま使った方が良い。幸いと言うべきか、621は所属場所に拘らない。V.ⅣやV.Ⅶの存在を考えれば、折り合いも悪くはないハズだ)」

 

 自分達を助けるためにアーキバスに下ったとすれば、ウォルターが抱えている目的から反する方向に向かってしまう。それは、彼としても望む所では無かった。

 

「で、貴様らは何を企んでいる?」

「誰だ?」

 

 思案に耽っていた為か、独房の外に人がいることに気付かなかったらしい。彼は簡素な食事を乗せたプレートを運んでいた。

 

「V.Ⅲオキーフ。事情聴取だ。ハンドラー・ウォルター。お前はこのルビコンで何をしようとしている?」

「お前に話す必要はない」

 

 ウォルターがシラを切ると、オキーフは懐からタブレットを取り出した。画面を操作すると、食堂でスウィンバーンと共に食事を取るレイヴンの姿が映し出されていた。

 

「今、彼女には首輪が付けられている。周囲の音声や風景の収集。いざとなれば、爆破させることも可能だ。他にも、こんなことも」

 

 再び画面内を操作すると、レイヴンがしゃっくりをしてレーションを喉に詰まらせていた。スウィンバーンが慌てて、彼女の背中を叩いている。

 馬鹿げた光景に見えるが、やろうと思えば誤飲という形で始末することも出来ると言う脅しだった。

 

「俺が動揺するとでも?」

「彼女の死に動揺する感傷を持っていなくとも、彼女が失われれば、どちらにせよ進退は窮まるだろう?」

 

 レイヴンと言う最強の手駒が無ければ、どちらにせよ。ウォルターは今後の仕事が遂行不可能となる。……だが、話してしまえば自分が処理される可能性は高くなる。

 

「オキーフ。お前は確か、第2世代の強化人間だったか? 今は、コーラルの焼き付きを中和する為に第9世代の手術を受けたと聞いた」

「その程度は知っているか。それがどうした?」

「お前は、コーラルがこの世にあって良い物だと考えるか?」

 

 コーラル。惑星ルビコンで見つかった新資源。情報導体から薬物としてまで、幅広い用途で使われているが、発火性や中毒性を含めて危険物としての側面も多い。……そして、これらを巡っての戦いが繰り広げられている。

 

「存在に罪はない。……と言いたいが、人間が御せる存在ではないとは考える」

「そうだ。これらは人間には早すぎた物だ。誰かの人生を狂わせ、戦いを招く物。この世にあってはならぬ物。俺は、そう考えている」

 

 目的は言っていない。ただ、己の考え方を言っただけだ。オキーフは暫し考え込む素振りを見せた後、ウォルターの独房にプレートを差し入れた。

 

「尋問のつもりは無かった。お前と個人的に話したいと思っただけだ。だが、あの首輪に付けられている機能は本物だ。お前も彼女を守る立場にいると言うことを覚えていた方が良い」

 

 自分の立ち振る舞い次第で、レイヴンという芽を潰される可能性もあると言うことだ。それは、避けねばならない。その為には自分も動かねばならない。

 ひとまず、食事を取らねばならないが、目の前に並ぶ物に自白剤や毒物の類が入っている可能性もある。……しかし、食わないという選択肢はなく、ウォルターは慎重に口元へと運んでいた。

 

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