戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

5 / 167
依頼5件目:アライ虫ミルワーム

 エンゲブレト坑道。ルビコンにおいて幾つか設置されているコーラルのウォッチポイントであり、開発中期から存在していた拠点であり歴史は古い。

 長年の採掘により埋蔵量が見込めないとしても、惑星封鎖機構が警備を配置するのは、この拠点に歴史的価値を見出しているからなのかもしれない。

 

「あるいは。まだまだ、コーラルが眠っているのかもしれないな」

 

 付近に待機していた3機のACにウォルターからの通信が入った。

 1機は裏社会の暗殺者として名を馳せた六文銭の『シノビ』。もう1機は、ルビコン解放戦線の若き女性戦士ツィイーの駆る『ユエユー』。最後の1機は、戦場を舞う鴉(レイヴン)が駆る機体。

 

「レイブン。私、貴方の機体名を知らないんだけれど、何て言うの?」

「知らなーい。考えてなーい」

「アリーナで見た時の登録名も『No name』となっていたが」

 

 パイロットにとってACとは生死を共にする相棒の様な物である。機体を判別する為の名前は業務に欠かせない物であるし、何よりも愛着が湧く。

 

「何か良い名が思い浮かぶといいな。言葉には力が宿る故」

「は~い」

「世間話は任務終了後の楽しみにとっておけ」

 

 ウォルターに促され一同は坑道へと入って行く。岩肌が剥き出しになっている部分も多く、当時の整備事情が伺い知れるようだった。

 

「最低限とは言え警備は配置されている。閉所での戦闘ともなれば、いつもと勝手は違うだろう。油断するなよ」

「拙者のシノビが先行しよう」

 

 やはりと言うべきか、惑星封鎖機構は他の調査拠点や企業達の相手に戦力を割いていることもあり、配備されている警備の数は多くない。

 スニーキングの心得があるのかシノビが先頭を行き、最後尾に621が付いた。間に挟まれたツィイーは、件の巨大ミールワームの入った鉄格子を抱えており、武装類は背中にマウントしていた。

 

「あぁ、ちょっと。暴れないで」

 

 今まで大人しかった巨大ミールワームだが、この坑道に入ってから何かに反応する様に頻りに体を震わせていた。

 

「坑道内に眠るコーラルに反応しているのかもしれんな」

『私でも微かに感じる程度ですが……』

 

 コーラルの存在については敏感であるはずのエアですら微かにしか感じ取れないのだから、やはり埋蔵量は相当に減っているのだろう。

 あるいはもっと別の何かに反応していたのかもしれない。例えば、六文銭のレーダーに引っ掛かった惑星封鎖機構のMTに。

 

「な!? 貴様らは!!」

「切り捨て御免!!」

 

 至近距離でショットガンが放たれた。MTのパイロットは寸前の所で脱出レバーを引けたようだが、潜入がバレるのは時間の問題だろう。ウォルターから通信が入った。

 

「お前達の侵入が惑星封鎖機構に伝わった。現地の相手戦力を考えれば、潜入に徹する必要はない。突破しろ」

 

 僅かに開けた場所に出るや、六文銭と621は共に並んで散弾をばら撒きながら突破していく。

 閉所では散弾が跳ね回り、破壊を撒き散らして行く。さながら暴風の如き進撃だった。ガタガタと揺れる鉄格子を抱えながら、ツィイーは何とか後を追っていた。

 

「(この二人が居れば、ルビコン解放戦線も自由を……!)」

 

 戦場における一瞬の油断は一生の後悔へと繋がる。MTと汎用兵器群しか見掛けなかった。先陣を切っている六文銭とレイヴンが全てを打ち倒しているから。

 開発中期の歪な突貫工事で生まれた高所の足場。破壊の暴風を避けて、迎撃の構えを取っていた惑星封鎖機構の狙撃LCが居た。

 

「ツィイー!」

 

 如何に察したのか。アラートが鳴るよりも先にレイヴンが身を翻したが遅い。ユエユーを撃ち抜かんとレーザーが放たれた。脱出レバーを引くよりも先に直撃は避けられない。

 自らの死を覚悟したツィイーであったが、抱えていた鉄格子の扉が開いた。巨大なミールワームが宙に躍り出た。

 

「ミ“ッ」

 

 レーザーが直撃したミールワームは鳴き声こそ上げた物の、焼けることも爆ぜることも無かった。威力と熱を吸収し、形を保ったまま奈落へと落ちて行った。

 狙撃に失敗したと判断するや、LCは即座に撤退しようとしたが視界が反転し、凄まじい衝撃に襲われた。肉薄した621の機体に蹴り落されたのだ。

 

「同志ツィイー! 無事か!」

「私は無事だ! あのワームが私を守って……」

 

 遥か猊下。落ちて行ったワームがどうなったかは想像も出来ないし、確かめに行くことも出来ない。アレだけ焼いたり、廃材を食わせたり、身を削ぎ落として食した挙句、邪魔だから捨ててこいと言われてこんな所に連れて来られ、最期は自分を守って……と思うと、ツィイーの目頭に熱い物がこみ上げて来た。

 

「一寸の虫にも五分の魂……! きっと、あの虫けらなりに恩義を感じていたのだろう。誠に天晴れ!」

 

 同じ様に感じ入っている六文銭を傍目に見ながら、目的地である最奥部に向かう際、エアが語り掛けて来た。

 

『レイヴン。私には一方的に搾取された挙句、人間の事情で追放され、恐怖から逃げ出そうとした所で流れ弾が当たった不幸な話にしか思えないのですが』

「私も飼いたかった……」

 

 当人達にとってはハートフルストーリーとして捉えている話でも、部外者からすれば不条理コメディにしか見えない物であった。

 脅威となる存在は、あのLC位だった様で後は順当に蹴散らしながら、パルスバリアで守られているだけの装置を破壊して、何事もなく帰途に付く。筈だった。

 

「621。ソイツを破壊しろ」

「うん」

 

 ウォルターの指示に従い、感知装置(センシングデバイス)を破壊した刹那。周囲と空気が震えた。

 

「何事だ!?」

『レイヴン! 強いコーラル反応が』

「コーラルの逆流だと…!? 馬鹿な、この程度の刺激で! 急いで脱出しろ!!」

 

 周囲のいたるところから赤い奔流が噴き出す。ACさえも蝕む光に捕まれば、二度と帰っては来れないだろう。

 

「何が起きている!?」

 

 通信を受けてやって来た惑星封鎖機構の者達も戸惑う外なかった。一体、何が起きているのかと。

だが、彼らの判断は早かった。全域に通信を飛ばしているのか、621達の機体にも音声が流れて来た。

 

「コード23! コーラルが噴出しており侵入不可能! 各員! 脱出せよ! 続行不可能! これは、システムを介さない現場隊長である私の独断だ!!」

 

 621達の進撃により中破に留まった者達が、MTから出て来た兵士達を拾い上げながら脱出していく。

 ただ、1機。誰にも見られない場所でコールを送っている者がいた。例の狙撃LCに乗っていたパイロットである。

 

「こちら技研遺物捜査員! 例の物を入手した! 早く、回収してくれ!」

 

 皆が一目散に逃げ去って行く中、彼の救助を聞く者はおらず。コーラルの奔流に飲まれて消えるしかないという絶望に包まれていると。機体が浮かび上がった。

 

「え?」

 

 機体のカメラを確認すると。そこには自分を撃破したAC達がいた。何処かへと連れていかれているようだが。

 

「621。また何かを持ち帰ろうとしているのか?」

「うん! 今度はLC! 何か珍しい物を持っていたし!」

「通信は俺も傍受していた。持ち帰って来い」

 

 赤い奔流を後目にしながら連れ去られて行く。少しでも死期が伸びるなら。と、LCのパイロットは縮こまっていた。

 

~~

 

「ウォルター。お前の飼っている猟犬は手癖が悪すぎる」

「マシにはなっている。以前程、ゴミは拾って来なくなった」

 

 格納庫。ウォルターとナイルは鹵獲したLCの機体を分析に掛けていた。

 惑星封鎖機構が所有する戦力で規格からACとは異なっており技術力の差が見て取れた。加えて、この機体が持っていた武器についてである。

 

「プラズマライフルと言えば、VCPLが思い浮かぶが。この武器はカタログには無い。ウォルター、貴様は何か知っているのでは?」

「……これはあくまで試金石だ。本命の規格を作る上での試作品に過ぎない」

 

 コーラルの奔流。どの企業でも生産されていない武器。果たして、大豊からの依頼は陽動作戦だけだったのか? ナイルの疑問は尽きなかった。

 分かることがあるとすれば。ウォルターの猟犬は随伴機を失うことも無く、この様な機体を鹵獲して無事に生還出来るほどの能力を持っているということだが。

 

「コーラル吸え吸え吸え吸え吸え吸え吸え」

「捕虜の虐待は禁じられ…オ”ォ”ェ”!」

 

 そんな彼女はLCに乗っていたパイロットにいつも通りコーラル吐息を吐いていた。

 機嫌が悪いのか、ミールワームの顔から呼気を送り込んでいた。吐息に混じって赤色っぽい粒粒の何かが振りかけられている。

 

『レイヴン。何故、虫の糞を吹きかけているのですか?』

「プェッ!!」

 

 ギリギリの良心が働いたのか捕虜の顔に吐き掛けることはなく、その辺に吐いた痰からは赤い煙と異臭が立ち込めていた。

 その様子は間違いなくドーザーその物であったのだが、やはり彼女がレイヴンであることは間違いない。

 

「全く。俺は何時までここに居れば良いんだ?」

「ベイラムグループから交渉が無い限りはそのままだ。……愉快な遠足だとでも思ってくれればいい」

 

 G1ミシガン。レッドガンの総長であり、友人でもある男から聞いた話を思い出す。曰く、面白い男がいるのだと。ソイツは猟犬を連れて、ルビコンで何かを為そうとしているのだと。

 そんな彼の口癖とも言える言葉を思い出し、ナイルは苦笑いしていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。