戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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 これにて50本目です。皆さまに支えられて、ここまでやって来れました。これからも頑張って行きたいです


依頼49件目:ご友人

「RaDのシンダー・カーラだ。アンタ達に相談がある。ビジターとウォルターについてだ」

 

 彼女から相談を持ち掛けられたのは、ベイラムで行われていたレイヴンの救出作戦の計画が難航していた頃である。

 

「彼らの救出依頼ですか? それについては、我々も頭を悩ませている所です。なんたって、あの基地の脅威が一番分かっている、私がいるのですから」

 

 散々、好き勝手をして来たので戻るのは難しいであろうペイターだが、彼もアーキバスに身を置いていた人間だ。基地に置かれた防衛力や脅威については、この場にいる誰よりも詳しい。

 

「へぇ、参考までに聞いてみたいね。どれだけの戦力が置かれているんだい?」

「まず、常にドローンとMTが哨戒しており、どのルートにも穴が空かない様になっています。加えて、警報が入れば基地内の戦闘配備は5分もあれば整います。加えて、基地には常にヴェスパー部隊の隊長が1人は控えています」

 

 正面切って乗り込めば全面戦争となり、互いに損耗は避けられない。潜入や工作への対策もバッチリと来たら、いよいよどうした物か。ここに五花海が更に付け加えた。

 

「おまけにG13達が何処に収容されているかも分かりません。打つ手なしです」

「諦めんのは、まだ早いよ。コイツを見な」

 

 モニタに表示されたのは、見慣れない機体だった。どの企業から出ているフレームを使っている物でも無ければ、MTでもない。唯一見覚えのある、イグアスだけが声を上げていた。

 

「コイツは、お前の所に襲撃駆けて来たステルス機じゃねぇか」

「そう。あの時、潰した機体をウチで回収して使わせて貰っている。コイツの脅威に関しては、アンタもよく分かっているだろ?」

「まぁな。でも、スキャンを掛けられたら一発で分かるだろ?」

 

 隠匿性能が高く、カメラやセンサーにも引っ掛からず肉眼でも確認は出来ない。唯一、スキャンを掛けられた時だけは姿を現してしまうが、当然の様に彼女は対策を打っていた。

 

「そこに関しては、パイロットにチャティを乗せることでカバーしている。ザックリ言うと、相手のスキャンに反応して偽装のデータを送り込むってモンだ。だから、機体の目には何も映らない。……ただ、交戦をすると熱量などの反応で直ぐにバレるけどね」

「相手のスキャンに即座に反応できるのは、AIである俺以外には無理だろう」

 

 人間の反応速度では追い付かないこともAIでなら対応できるということか。潜入や工作には打って付けの機体であり、レッドガンの面々はRaDの技術力に戦慄していた。この緊張感を誤魔化す様に、G6レッドが疑問を投げた。

 

「潜入までは出来るでしょうけれど、レイヴン達が何処に収容されているかは把握しているんですか?」

「まさか、こういった事態の為にウォルターが何か仕掛けを?」

 

 ナイルが思い当る可能性を述べたが、違うよと。と、カーラは短く告げた。

 

「信じられない話だけどね。レイヴンの場所だけは分かるんだ。何者かが、位置情報をこちらに送信している」

 

 何重も発信元を偽装した上で、彼女がアーキバス基地の何処にいるかが表示されたが、どうも常に移動している様で特定の場所にいる訳ではないらしい。

 この見取り図が何処を指しているかを把握しているペイターは暫し、考え込んでいた。

 

「可哀想なご友人。何かご存知で?」

「いや、この場所。確か、基地内にあった『毛髪再生局』と言う場所なんですよね。あそこに行く用事があって、レイヴンを連れ回せる奴なんて、一人位しか居ないんですが」

 

 『毛髪再生局』というワードを聞いて、レッドガンの面々は一斉に噴出した。通信越しではカーラが大声をあげて笑っていた。

 

「も、毛髪再生局!? なんだい、そりゃ!」

「一応、真面目な部門なんですよ。ほら、戦闘や強化手術の関係で、髪の毛が生えて来なくなった者達のメンタルケアを施す目的があって創立されたそうです。地味に利益も出しているみたいですけれど」

 

 美容などは本人のメンタルに繋がる場合も多い。特に、頭髪と言うのは一目で分かる変化なので、失ってしまうことで均衡が崩れる場合さえあるのだ。

 ペイターが笑わないで解説している所を見るに、この部門の重要さを把握している様だが、体育会系の集まりであるレッドガン部隊が気にする訳も無かった。生真面目なレッドでさえ、笑いと困惑の両方を浮かべた奇妙な表情をしている。

 

「V.Ⅷ。まさかと思いますが、ここに通っているのは。V.Ⅱですか?」

 

 独自の情報網でスネイルに関しての情報を集めていた五花海は、いつものニヤケ面を更に綻ばせながら問うた。

 

「はい。なので、あのハゲがレイヴンを連れ回しているということです。これは厄介ですよ」

 

 一方でペイターは、いつもの様に嘲笑と侮蔑の混じった笑いを吐く訳ではなく、V.Ⅱスネイルが見張っているという脅威について真剣に検討していた。

 流石に事態の重大さを把握したのか、皆も笑いを引っ込めている中。唯一、感情を処分し切れないイグアスだけが堪えていた。

 

「(待てよ。なんで、全員一瞬で笑いを引っ込めてんだよ!? ハゲと毛髪再生局だぞ!? 五花海もニヤケているだけだし!)」

「G13の位置情報を送信している者に協力は要請できないのか? ……いや、待て。そもそも、彼女の協力者は誰だ?」

 

 レッドが当然の疑問を浮かべた。レイヴンがこんな情報を送信できる隙も技能もあるとは思えない。だとすれば、誰が? という、彼の問いに対してナイルが答えた。

 

「ミシガン、カーラ。これは極秘の情報だ。決して、口外しないことを条件に協力者に付いて、俺達が知っている限りのことを話す」

「言ってみろ」

 

 普段は語気の荒いミシガンが静かに促す。却って、威圧感が増して皆が押し黙る中、ナイルはブルートゥに目配せをした。

 

「彼女。の存在については、私が一番詳しいと言えるでしょう。そして、これは同時にカーラへの謝罪にも繋がる話になります」

「話しな」

「ありがとうございます。……我々、旧世代の強化人間は施術の際にコーラルを用いられました。その影響か、彼らの声が聞こえるのです」

「声……。ひょっとしてよ、そいつは耳鳴りみたいな奴か?」

 

 ブルートゥの話に反応したのはイグアスだった。彼も旧世代の強化人間であり、耳鳴りと言う形で音は聞こえていたが。

 

「多くの者達は聞こえない、または彼の様に耳鳴りにしか聞こえません。ですが、私やご友人の様に一部の者達には声が聞こえるのです。コーラル波形の中に産まれた、精神体の声を――レイヴンにはエアという姿を持たないルビコニアンのご友人がいます。そして、私にも同様のご友人が」

 

 俄かに信じがたい話だった。企業の者達からすれば、コーラルとは新資源でしかなく、そこに人格が発生するとは思っても居なかったからだ。

 

「ブルートゥ。だったら、アンタがウチの所からレールガンを盗んだのは」

「はい。貴方がコーラル集積に向かう為に、障害物の排除を目的として作っていることは分かっていました。カーラ、貴方は根無し草の私を拾って居場所と生きる糧を与えてくれた大切な友人です。ですが、孤独だった私に寄り添ってくれたご友人を守るべく、あのような行為に及びました」

 

 旧世代の強化手術は成功率も低く、術後にも後遺症が残る可能性が高い。故に被検体は、社会的に孤立していたり、居なくなっても問題のない者が選ばれることが多い。

 誰にも知られること無く死んでいく絶望の中で、寄り添ってくれた存在が居たとしたら、それはどれだけ掛け替えのない存在になるだろうか。

 

「ブルートゥ。それは、俺にとってのボス達みたいな物か?」

「はい。……この話は妄言と切り捨てて下さっても構いません。ですが、彼女には心強いご友人が付いていることは間違いありません」

 

 ブルートゥの身の上話が真実かどうかは別として、ナイルやペイターも頷いていることから、本当に実態を持たないルビコニアンと言うのは存在しているのだろう。でなければ、現在のレイヴンが情報を送って来れると思えなかった。

 

「なるほどね。なんで、アンタがあんなことをしでかしたのか。ずっと分からなかったけれど、そう言った経緯があったんだね」

「信じてくれるのですか?」

「嘘にしちゃ辻褄が合うことが多いからね。アンタが、友人を選んだってのが分かった。それで十分だ。で、ビジターについているのがエアってのは分かったけれど、アンタについている奴の名前は何ていうんだ?」

「すみません。彼はコミュニケーションを取れる程、発達していないのです。基本的にはご友人と呼んでいるのですが、名前で呼ぶ時は『カエサル』と呼んでおります」

「あ、名前があったんですね」

 

 ペイター達も聞いたことがなかったが、キチンと名前もあったらしい。

 エアから送られてくる情報もある。潜入する為の手段もある。だが、重要なことはまだ決まっていない。即ち。

 

「誰が行くかは決まっている! ペイター! ブルートゥ! お前達二人だ!」

「は!?」

「道理です。彼女の声を聴けるのは、私だけですから」

 

 そして、アーキバス基地の構造を知っているのもペイターだけである。この人選は必然とも言えた。ミシガンの決定を突っぱねる理由が何一つとしてない。

 彼らを近くで見ていたナイルには分かるが……この2人、相性が良くない。特に多重ダム防衛の時なんかは酷かった。

 

「ペイター。2人乗りとなって操縦が困難になることを想定しているなら心配ない。コックピットは改造済みだ」

「……本当は嫌なんですけれどね!!! レイヴンを助けに行くならね! 友人としてごねる訳には行きませんからね!」

「可哀想なご友人。この期に及んでも、その程度のことで葛藤するとは」

 

 自分の好き嫌いを押し殺す程度には、彼にもレイヴンを助けたいという気持ちはあるらしい。だが、未だ分かっていないことも少なくは無かった。

 ウォルターと1317の居場所。そして、救出ルートの確保。基地からの脱出、まだまだ講じるべき所は多いが、取っ掛かりが見つかった会議は、RaDという勢力も含めて更に煮詰められていった。

 

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