戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼52件目:メーテルリンク「私、帰ったら水星のメル友ちゃんと会ってみるんだ」

 レイヴンがアーキバスに馴染んでいる間、ベイラムとRaDでは奪還作戦の仔細が詰められていた。ステルス型無人機、コードネーム『ゴースト』の性能だけを頼りにするのは危険すぎると踏んでのことだ。

 

「アーキバスもゴーストを鹵獲して、解析に回しているかもしれないからね。ペイター、鹵獲しているかどうかまでは分かるか?」

「自分がいた時には、そう言った報告はありませんでした」

 

 ペイターが追放されてから時間が経っている。その間に鹵獲している可能性は十分にあるし、対策を練られている可能性もあった。

 

「だったらよ。あの女が最新の情報を握っている可能性もあるし、聞き出せばいいんじゃねぇか?」

 

 イグアスが言う女とは、V.Ⅵメーテルリンクのことである。コーラル集積で捕らえて以来、色々と情報を聞き出したりはしているが、大した情報は持っていなかった。

 

「無駄ですよ。彼女は特別に部門を任されたりしている訳でも無いですし、ヴェスパー部隊でも下位ナンバーです。ハゲからも大した情報は与えられていないでしょう」

「えらく、評価が低いんだな」

 

 ナイルは驚いていた。ペイターと言う男は口こそ悪いが、他者の実力を見誤ることは殆ど無い。先日の会議で毛髪再生局のことを笑いもしなかったのは、該当部門が持つポテンシャルの高さを把握していたからだ。

 同様にV.Ⅱの悪口に関しては『DF-GA-08 HU-BEN』並みの弾数を所有しているが、決して彼の実力は見縊っていない。その彼が、ここまで扱き下ろすとは、ある意味珍しくもあった。

 

「私は傭兵起用担当、スウィンバーンは会計担当、ホーキンスさんは輜重部門責任者と。下位ナンバーはパイロット以外の仕事も兼任している中で、唯一彼女はパイロットと事務周り位ですよ。なんでか、分かります?」

「企業は未だに男社会で、女性が上に立つと不満を抱く者も多いから。ですか?」

 

 五花海は普遍的な意見を述べた。女性パイロットや傭兵と言うのも少なくはあるが、居ないことはない。ただ、人口比率的には圧倒的に男性の方が多いのは事実だ。

 戦闘行為は男性の方が圧倒的に優位であるし、命懸けの日々で気が立っている者達が多い中に女性を放り込めばどうなるかは想像に難くない。その中で活躍をしている、レイヴンが異常という外ないのだが。

 

「大体そんな所ですね。それなりに優秀ではあるし、第8世代の強化人間として実績は残しているけれど、男女での気質の違いは難しいんですよね」

「意外だ。彼女の評価がそこまで低かったとは」

 

 共にルビコニアンデスビートルを討伐した時は、果敢に懐に飛び込んで重要な一手を打った彼女の姿を覚えていたが故、アーキバスであまり重用されていないことに、レッドは驚いていた。

 

「あくまでヴェスパー部隊内では、という話ですけれどね。だから、任務の情報は与えられますけれど、そう言った情報は回って来ないと思います。特に『ゴースト』なんて秘匿性の高い物に関しては、情報部門のオキーフさんに回されると思いますしね」

 

 ステルス機なんて物は秘匿性の高さが、そのまま作戦の遂行能力に関わって来る。アーキバスは惑星封鎖機構の機体を鹵獲して運用しているのだから、『ゴースト』の性能を活かす為にも存在は一部の者達だけに知らされるだけになるだろう。……今回の様に情報が漏れる可能性も考えて。

 

「V.Ⅷ! ここはお前の愚痴を吐く場所じゃないぞ! あの捕虜からの情報収集が無理だとすれば、次はどういった一手を打つかだ!」

 

 会議が有益な方向に進んでいないと判断したのか、ミシガンが一喝した。実際に、ここ数日の間で彼女から有益な情報を得られていないのだから、これ以上拘泥した所で仕方がない。

 内部構造を知っているペイターが居るとしても、セキュリティに関する内情は変わっている可能性は高いし、そのまま突っ込むのは危険だと考えた。

 

「偵察を出す訳にもいかないしね。ゴーストは秘匿性を高めるためにも、何回も向かわせたくはないし」

 

 カーラとしてもゴーストは奥の手として用いたい物であったので、下見に使うと言う悠長な真似はさせたくなかった。かと言って、通常のドローン程度では撃墜されて、無駄に警戒心を高めるだけだ。

 

「構造的にも都合の良い裏口なんてありはしませんからね。そもそも、基地を通る為にはゲートも潜らないといけないですし」

「それは当たり前ですね。出入りを管理できなければ、本拠地として機能しませんから。どうすれば、ご友人の元へと向かえるか」

 

 幾ら姿を消せたとしても、まず内部に入れなければ意味がない。段取り良く進むかと思われたが、ここに来て躓こうとした所でペイターが自信満々で手を挙げていた。

 

「だから、ここでメーテルリンクを使うんです」

「使う?」

 

 ナイルが思い返した所で、彼女から情報が殆ど得られていないことは確認できているし、協力が望めるわけがないことも分かっている。

 

「はい。だって、可哀想じゃあないですか。きっと、今頃本部ではレイヴンがチヤホヤされて、ウォルターと言う老獪な策士をゲットできたことに喜び飛び回っているはずです。……多分、彼女のことはメッチャ後回しにされていると思うんですよね」

「ペイター。流石に、元・同僚が相手だとしても配慮が足りないぞ」

 

 AIであるチャティにすら戒められる程に心無い発言だった。しかし、ここにいる者達は皆が理解できてしまった。そりゃ、あの二人を捕縛できたら大戦果とも言えるだろうと。もう一人捕まっているけれど。

 

「だからね、彼女にはヒロインになって貰うんです。このベイラムから逃げ果せた、エリートヴェスパー部隊長としてね」

「へぇ、私らでプロデュースしてやるってことか。面白いね。そう言うことなら、使う機体を指定してバックドアを仕込んでやることも出来る」

 

 カーラも頷いていた。無手からの脱走は機体を選んだりチェックしたりという過程を踏ませないことも可能だし、アーキバスの拠点に導いて貰うことも出来れば、機体のスキャンや検査を踏むことでシステムに介入できる可能性もある。

 

「待ってくれ。そんなことをしたら、彼女はどうなるんだ?」

 

 ペイターの案に皆が一考している中、真っ先に声を上げたのはレッドだった。作戦の内容を問うのではなく、メーテルリンクの身を案じての発言だった。

 

「裏切り者として処分を受ける事になるかもしれませんが、私達には関係のない話です。アーキバスが自身の戦力を削いでくれるなら、手間も省けると言うもの」

「貴様! 元とは言え、彼女は仲間だったんだろう!? 何故、そんな扱いが出来る!?」

 

 激昂したレッドが彼の胸倉を掴み掛ろうとした所で、ブルートゥが間に入った。

 

「ご友人、貴方は心優しいのですね。先日の会議の件と言い、貴方はどうにも相手を知ると入れ込んでしまう性質なようです」

「ここは戦場だ。敵と味方の区別は付けろ」

 

 ミシガンが声を荒げずに注意を促す時は、決まって相手の身を本気で思っている時だ。レッドも自らの行いを反省したのか、頭を垂れて着席した。

 

「だが、ペイターの作戦は効率的だ。現状、時間を掛ければ更に違う場所。もっと言えば、星外に運ばれたりでもしたら手の打ちようがない。下見に時間を掛けている訳にもいかない」

「では、決まりだ! これより! 我々は捕虜のプロデュースを行う! 主演はV.Ⅷ! お前だ! 見事に彼女を手引きして魅せろ!」

「了解しました!」

 

 調子のいい返事をして、直ぐに仕込みは始まった。ただ一人、レッドだけが難しい表情を浮かべていた。

 

~~

 

 メーテルリンクが装着したバイザーに表示された場所へと向かうと、ベイラム社製のパーツで継ぎ接ぎに修理されたインフェクションの姿があった。

 

「(アーキバス社のパーツ性能のテストでもしていたのか?)」

 

 当然、武器等が握られている訳もなく。彼女は搭乗ハッチに飛び乗り、コックピットに乗り込んだ。最低限のチェックだけを済ませて起動させる。

 多少の違いは感じた物の。動かすには問題ないと判断して、格納庫から飛び出す。脱走がバレたのか、警報音が鳴り響いていた。

 

『捕虜が脱走した! 手引きをしたペイターも逃走中だ! 隊員達は2人の確保に向え!!』

「(アイツも逃げ果せたか!)」

 

 このバイザーに表示された先で合流できるのか。それとも、別の経路を確保しているのか。今の彼女には、他者を気遣うだけの余裕がない。進行方向には哨戒中のMTが居た。

 

「貴様は!」

「どけ!!」

 

 ブーストを吹かして得た推力を用いて、MTを蹴り飛ばした。パイロットは脱出していたのか、損傷が少ないまま機能停止に追い込んでいた。

 彼女はMTから武器と弾を拾い上げると、機体にマウントした。もしも、交戦の必要が出て来たとしても対処が出来る。

 

「(閣下、待っていて下さい。それと、ペイター。私は今まで誤解をしていた様だ。すまない。生きて再会できたら、ちゃんと謝罪をしよう)」

 

 インフェクションが駆けて行く。目指すは基地への帰還。そして、この辛酸を舐めさせたベイラムに、必ず一矢報いると決意を固めながらバイザーに表示された先へと向かって行く。

 ……最も、彼女が再びペイターと再会することがあるとすれば、出てくる言葉は確実に罵倒か批難になるのだが、そんなことを知る由もなかった。

 

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