戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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 最近、ディスコードでフレンドと一緒にボケ倒したスッラ、ドルマヤン、コールドコールの話をしている。

「全ては消えゆく余燼に過ぎない」「おお、セリア!」

 徘徊しつつ、女性を全てセリア認定するドルマヤン。

「ハンドラー・ウォルター。また、犬を飼ったのか」

 621を毎度、新入りと見なすスッラ。

「なるほどな。そういうこともある」

 何も分かっていないまま、定型句だけ吐き出すコールドコール! でも3人ともAC乗りとして滅茶苦茶強い! 誰か止めろ! ルビコン3G! 


依頼55件目:謎の美少女傭兵「ほならね。自分がハッキングしてみせろって話ですよ。私はそう言いたいですけれどね」

 アーキバス基地で起きている事態は、V.Ⅱスネイルが速やかに下手人を撃破したことにより終結する。と、思われていたが。

 

「スネイル閣下! 何者かにより、ウォルターと1317の両名が連れ去られています! 首輪の反応も偽装されて……!」

「どこまで私を愚弄する気だ! 警備共は何をしている!?」

 

 コックピット内ではスネイルの怒声が跳ね回っていた。物理的な危害は無いにせよ、傍にいるレイヴンの鼓膜には著しい負担が掛かっていた。

 

「耳いたいー」

『ですが、脱走作戦に関しては順調な様ですね』

 

 と、すれば厄介なのは、彼女達が置かれている状況だった。スネイルと共にいる為、逃げ出すことも出来ない。オープンフェイスの機能を停止させた所で、周囲のスタッフに救助されるだけだ。

 一頻り、怒鳴り散らしたスネイルは幾分か冷静になったのか、一つ溜息を吐いた。

 

「1317とかいう木っ端は奪還された所で痛手にすらなりはしません。飼い主であるウォルターを取られたのも、まぁ。いいでしょう。一番重要なモノは手元に残っていますからね」

 

 侵入者がどれだけ優れていようが、傍にいるレイヴンを奪還することは不可能と踏んでのことだった。隊員達が基地内の探索に当たる中、スウィンバーンから通信が入って来た。

 

「閣下! ウォルターと小僧に逃げられたと言うことは、レイヴンの首輪が!」

「心配いりません。私の方でリンクを切っています。爆死することはありません」

「ならば、良かったです。今回の下手人は、やはりV.Ⅷの」

「奴はヴェスパーなどでは無い! クソだ! 路上に打ち捨てられた糞便だ!」

「おぉ。あ、はい」

 

 やり方の悪辣さがベイラムらしくは無く、アーキバスに対してここまで効果的な攻撃が出来る人間……というか、メーテルリンクを陽動に用いることが出来る人間など、極僅かしかいない。

 

「部隊長達も捜査に当たりなさい! 私は下手人が出て来ないか、外で網を張っています」

「分かりました! ホーキンス殿! 行きましょう!」

「分かった。今回ばかりは私も庇う気はないね。少し痛い目を見せないと」

 

 スネイルのブチギレは普段から見慣れたものであるが、戦場においても穏やかさを保っているホーキンスが、物静かに怒りを滲ませていることにスウィンバーンは息を呑んでいた。

 普段、怒らない人間が怒った時ほど恐ろしい物は無い。果たして、その痛い目は少しで済むのだろうか。

 

「……ホーキンス。こわい」

「貴方には彼の声が聞こえているんですね。あそこまで怒っているのは、久々に見ました。当然のことですが」

 

 だが、スネイルは見つかる可能性は低いと踏んでいた。これだけの捜査網を潜り抜ける相手が、人員を増やした程度で見つけられるとは思わなかったからだ。故に、彼は僅かな手勢を引き連れて基地外周に留まっていた。

 

「来い。貴様程度、返り討ちにしてやる」

『自らを囮にしますか。レイヴンと言う保険があるにしても、大した度胸です』

 

 無論、彼も何の保険も無く身を晒している訳ではない。レイヴンと一緒に搭乗している故、相手側が抹殺を目論んできた場合は彼女のことを盾にするつもりでもあった。

 待機がてらに各方面に指示を出しているスネイルの傍ら、特にできることのないレイヴンはヘルメット越しに欠伸をしていた。

 

~~

 

「そうか。レイヴンはスネイルと共に」

 

 既にゴーストの内部は過密状態だった。もしも、戦闘に陥れば内部で頭をぶつけたりして、死亡に繋がりかねないような危険な状態である。

 救出されたウォルターは現状の説明を受けて頭を悩ませていた。アーキバスもレイヴンを高く評価した故に、絶対に取り戻せない場所に置いたのだろう。

 

「あるいは、スネイル個人がレイヴンを気に入っている様に見えた。何としてでも、手元に置いておきたいのかもしれない」

 

 レイヴン程、自由では無かったが基地内で行動をしていた1317は2人の様子を幾度か見ていた。とてもではないが、捕虜に対する物とは思えない程の厚遇と重用ぶりが目立っていたらしい。

 

「きっしょ。ハゲでロリコンとか終わっていますね」

「可哀想なお友達の貴方よりはマシじゃないでしょうか」

 

 ペイターが息を吐くように暴言を吐き出し、ブルートゥが諫める奇妙な光景だった。だが、彼らにとっても意外であった。自分達に散々辛酸を舐めさせて来たレイヴンの扱いが、ここまで丁重な物だとは思わなかったのだ。

 

「とは言うが、連中も621には甘い汁を啜らせて貰ったはずだ。加えて、V.Ⅳを始めとしてヴェスパー部隊長達とも折り合いが良い。手元に置いとけば、それなりに役立つことは確かだ」

 

 態々、処分したり再教育を施す必要もないと判断されてのことだろう。更に、彼女はパイロットとしての技能以外にも能力を持っている。

 

「読心能力。スネイル辺りは特に好みそうですね」

 

 ペイターもスネイルが各方面の遣り取りに苦心していたことを覚えている。相手の建前を無条件で引き剥がせる彼女の能力も考えれば、重用されることは自然な流れだった。

 

「では、ペイター。今回はビジターの救出を諦めると言うことか?」

「チャティ。このゴーストの武装はどのようになっていて?」

「ステルス機能を特化させている為、武装は殆ど積んでいない。強いて言うならプラズマスロアー位だ」

「よし。ならば、ここで引き返しましょう。この武装ではオープンフェイスに太刀打ちできません」

 

 薄情な様だが、合理的ではあった。既にウォルターと1317は救出されており、ある程度の目標は達していると言っても良い。加えて、レイヴンが危険な目に遭う可能性も低いとなれば、態々。自分達が危険を冒す必要もない。

 基地内で脱出ルートを進んでいるが、明らかに哨戒しているMTの数が増えている。これ以上の滞在は危険だった。

 

「それでいいのか? ペイター。もしかしてだが、レイヴンがスネイルと共に乗っているなら、エアが何とかしてくれる可能性があるんじゃ?」

 

 1317としては、今後警備が強化されるか、あるいは手の届かない場所へと映される可能性も考慮してのことだった。

 もしも、彼女と共にエアが乗っているのであれば、機体を乗っ取るか。あるいは機能停止に追い込むことも出来るのではないかと考えた。

 

「流石にそれはスネイルとアーキバスを嘗め過ぎです。彼の機体にハッキング対策が施されていない訳が無いですし、エアの能力を過信するのはあまりに危険です。ブルートゥ、彼女と交信は取れますか?」

「少しだけ試してみます」

 

 周囲への感覚を伸ばす為に、ブルートゥはレイヴンもやっている通りにコーラルの吸引を始めた。徐々に感覚が開いて行き、MTが駆動する音や放送に混じって、微かに響いてくる声があった。

 

『この感覚は……ブルートゥ。でしょうか? 居るのですか?』

「はい。ご友人、ようやく会えましたね。既に、こちらではウォルターと1317の救出に成功しました。そちらは脱出出来そうですか?」

『お恥ずかしながら、このオープンフェイスのソフトウェアは既存の物とは全く違っている様で、ハッキングで機能をダウンさせることは難しいと思います。私も未熟な様です……』

 

 あのエアですら攻略が出来ない代物であるらしい。ならばと、ペイターは決断を下した。

 

「よし、引きましょう。欲張りすぎて、全てを手放すよりかはマシです」

「俺もペイターと同意見だ。……出来れば、取り戻したくはあったが」

 

 ウォルターとしても口惜しいが、脱出までの安全を考えれば仕方がない範囲だった。これらの話はブルートゥを通じて、エアにも伝えられた。

 

『そうですか。申し訳ありません。私がもっと動けていれば』

「気にすることはありません。貴方は引き続き、ご友人のことを見守っていて下さい」

「不思議な感覚だ。俺には誰と話しているか、全く見えない」

 

 チャティは疑問を呈しながらも淡々と脱出ルートを辿って行く。その中で、気になる物を見つけていた。大破したインフェクションが端に寄せられている。

 今は、MT達がこぞって探索に駆り出されている為か、この機体が運ばれるのは安全が確保されてからになるのだろう。ブルートゥが口を開いた。

 

「このままでは、我々に騙された彼女が不憫です。懲罰を受ける前に持って帰りませんか?」

 

 ペイターはポカンと口を開けていた。確かに、放置されているインフェクションから彼女を持ち帰ることは容易だろうが、そんなことをすればどんな報復がもたらされるか。

 

「い、嫌ですよ!? 彼女が我々のことを許す訳無いでしょうが!?」

「では、猟犬らしく判断はウォルターに委ねましょうか。如何なさいますか?」

 

 ここに来るまでの経緯やメーテルリンクの扱いについては、一通り話は聞いている。このままでは再教育を施されるのは仕方ない事として、彼女を持ち帰るメリットを考える。

 まず、これだけの事態を起こしたのだからアーキバスへの人質としては使えないだろう。だが、戻ることも出来ない以上は覚悟を決める。ということはあるかもしれない。

 

「元が強化人間で優秀ではあるのだろう。持って帰るぞ」

「え!!?」

「流石です。チャティ、お願いします」

「了解した」

 

 ブルートゥの指示に従い、インフェクションの傍へと近寄って、コックピットを開く。中にはメーテルリンクが収まっていたが、俯いたまま呆然としていた。立ち上がる気力もないらしい。

 

「コックピットに入れるのだけは止めて下さいね。暴れられたら堪った物じゃないので」

「了解した」

 

 メーテルリンクを摘まみ上げて、手の上に乗せると。チャティが操るゴーストは静かに基地を去って行った。……アーキバスの厳戒態勢は夜明けまで続いていた。

 

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