戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼6件目:果たして襲撃される基地は惑星封鎖機構だけで済むんだろうか?

「やぁ、戦友。調子はどうだ?」

「元気―!」

 

 見りゃ分かる。ウォルターとナイルに加えて、先日の坑道破壊工作で捕虜となった封鎖機構エージェントの3人は同じ感想を抱いた。

 通信相手はアーキバスの強化人間部隊『ヴェスパー』の4番隊長であるラスティだ。壁越えの一件以来、621とは懇意であり、彼を通して依頼を受ける事も数多くあった。

 

「それは良かった。実は、つい先日。ペイターと一緒にスウィンバーンの枕元にミールワームの玩具をこれでもかと設置してみたんだ。その日の朝は、彼から沢山の元気を貰ったよ」

「受ける―」

「ヴェスパーと言うのは随分と暇な様だな」

「用件は何だ?」

 

 ナイルが嫌味を吐いた所で、ウォルターが本題に入る様に促した。もう少し話を聞きたかったのか、621は不機嫌そうな顔になった。

 

「では、説明に入らせて貰おう。アーキバス系列シュナイダーグループからの依頼だ。惑星封鎖機構のルビコンにおける補給基地、ヨルゲン燃料基地を叩いて貰いたい。これはベイラムにとっても悪い話ではないはずだ」

「そうだな。連中に手を焼かされているのは俺達も同じだ」

 

 現在のルビコンの概ねは惑星封鎖機構によって支配されていた。

 ヨルゲン燃料基地もベイラムグループのコーラル調査拠点だったが、封鎖機構の艦隊により僅か1日で制圧された。

 

「この燃料基地を叩いた所で、痛手になるのか?」

 

ウォルターが問いかけたのはラスティに対して、ではない。惑星封鎖機構のエージェントに対してだ。

 

「分からない。俺達の様な末端には情報は殆ど与えられていない」

「彼が噂の封鎖機構のエージェントか。戦友、君はいつも面白い物を拾って来る。まぁ、重要なのはどれだけの損害を与えられるかではない。連中を叩くと金になることを、ルビコン内に知らしめたいのさ」

『要するに広報活動ですね。この惑星には企業所属から独立傭兵まで様々なパイロットが居ますから』

 

 一攫千金を求めて入星して来たパイロットは多い。その多くはルビコンの土に還るか、惑星を蝕む貧困に吞まれる。だが、一部の者達は企業を相手に立ち回り富と名声を築いている。今、通信を受けている621は正に代表と言っても良かった。

 話を聞いていた封鎖機構のエージェントは、軽蔑を隠そうともせずに言い放った。

 

「バカが。この独立傭兵の力が特異なのは認めるが、有象無象が惑星封鎖機構に楯突いた所で無駄に死体を増やすだけだ」

 

 侮蔑を含んではいたが事実ではあった。報酬に釣られて、力量に見合わない依頼を受けて命を散らした者達は少なくない。

 そう言った者達の多くは自らの実力を見誤った故であり、その原因の多くは一部の英雄とも言える存在の華々しい活躍を耳にしてしまったからだ。俺にも出来る、と。

 

「仮に、この依頼を621が成功させたとしても、他のパイロットでは怖じ気づくんじゃないか?」

 

 鴉(レイヴン)による襲撃で痛手を被った。となれば、惑星封鎖機構も対策に力を入れるのは自然な流れだ。広報として使うには知名度も実力も十分だが、むしろ十分すぎることの方が問題だった。

 

「だから、戦友に頼みたいことがある。君はRadの連中とも仲が良かったな?」

「うん。ラミーおじさんとノーザークおじさんとも通信しているよ」

 

 RaD。グリッド086を根城にしている与太者(ドーザー)の集団であり、頭目であるシンダー・カーラはウォルターとも因縁浅からぬ仲だ。

 コーラル中毒者も大量に所属している集団であった為、多少のドンパチ後は直ぐに和解して、好意的に受け入れられていた。

 

「頼みたいことがあるんだ。この任務、彼らを随伴させて欲しい」

 

 ……暫く、全員が押し黙った。沈黙に耐えかねたのか、エアが再びデータベースにアクセスをして、該当人物の情報を読み上げていた。

 

『無敵(インビンシブル)・ラミー。アリーナ最下位であり、搭乗ACも殆どが作業用のパーツで固められています。控え目に言って、多少マシなMT程度かと』

 

 傭兵支援システムである『オールマインド』によって運営されている戦闘シミュレーター『アリーナ』。

 収集された様々なパイロットと機体データと摸擬戦を行うことができ、今までの戦績からランキング付けをされるのだが、インビンシブル・ラミーは最下位に名を連ねている。

 

『ノーザークは自分の金と他人の金を区別しない独特の経済感覚を備えており、借金を抱えては踏み倒している。ランキングの説明ではなく、手配書でしょうか? ランキングも26位と。ラミーよりはマシかもしれませんが』

 

 あくまでマシと言う程度である。現在はグリッド086において他のドーザー達と同じ様にロクデナシライフを満喫している。

 一応、ランキングに載らない傭兵達も数多くいるので、名を連ねている時点で凡百よりは腕が立つということでもあったが、ウォルターは理由を察したのか答え合わせをする様にして返した。

 

「621を活躍させ、こいつらに功績を被せるということか?」

「流石、ハンドラー・ウォルター。察しが良い」

 

 強い奴が華々しい活躍をするのは当たり前のことで、それはスクリーンに映るフィクションの世界と何ら変わりない。

 だが、自分達が見下しあるいは嘲っていた者達が栄光を浴びたらどう思うか? 悔しいと思う反面、同時にこうも思うだろう。なんだ、アイツにも出来るなら俺にだって、と。更にナイルが補足を加えた。

 

「この2機が作戦に成功すれば、惑星封鎖機構に対する脅威には陰りも付くだろうからな。企業が攻勢に移る切っ掛けにもなるだろう」

「『歩く地獄』の参謀も聡明だ。故に、彼らとパイプを持ちながら惑星封鎖機構を相手取れる君しか、頼める相手が居ないんだ。良いか?」

「うん!」

 

 相変わらず来る任務は拒まずなスタンスだった。依頼のマネジメントをするウォルターも頷いていた。

 

「このまま惑星封鎖機構に居座られたらやり辛くはなる。だが、この任務は俺達の一存では決められない。二人から許可が取れたら、折り返し連絡を入れる」

「分かった。期待しているよ」

 

 通信を切るのと同時に621は直ぐに通信を開いた。かなりの頻度で連絡を取っている為か、直ぐにつながった。

 

「おぉ! レイヴンか! 聞いてくれ! 最近、スゲェ発見したんだ! コーラル吸った後の小便飲むと、またコーラル摂取できるんだぜ! 俺は、これで3回位摂取できたぜ!!」

「永久機関!」

『絶対にやらないで下さいね?』

 

 開幕から最低だったが、621はケタケタと笑っていた。脳内に響くエアの声はいつもよりドスの利いた物になっていた。これだけでも最低だったが、ここからさらに別の声が入る。

 

「やぁ、621。また、私のビジネスに投資してみないか? ラミーの話を聞いて考えたんだ。コーラル中毒者の排泄物を集めて分離できれば、何回でもコーラルを楽しめるんじゃないかと。ただ、その為の機材に投資が必要で」

「ウチの621に下らんことを吹き込むな」

 

 流石にウォルターも堪りかねたのか、珍しく怒りを滲ませながら注意した。その背後では、女性の快活な笑い声が聞こえて来た。

 

「コイツらは皆ビジターのことを気に入っているから、つい騒いじまうのさ。で、ウチに何の用だ? 仕事の話か?」

 

 カーラに促され、ウォルターは先程の依頼の件を話した。返事は、カーラを含めたドーザー達の大笑だった。

 

「やるぜ! なんたって、俺は無敵(インビンシブル)・ラミーだ! 惑星封鎖機構なんかぶっとばしてやる!!」

「ふむ。私が惑星封鎖機構に対して立ち回ったとすれば、得られる信用はどれ程の物になるか! 引き受けましょう!」

 

 ノッリノッリだった。コーラル中毒でストッパーと言うストッパーが外れている連中に制動を期待したのが間違いだった。

 

「よし、じゃあ注文された品はそっちに届けてやるから。燃料、弾薬、修理費はそっちで持ってくれよ」

「了解した」

 

 話は実にスムーズに進んだというのに、ウォルターは眉間を押さえていた。1人だけでも大変なのに、他にも似た様な物が来るのかと。

 

『レイヴン。先の会話で気になったことがあったのですが。ノーザークと思しき人物が『また』と言っていましたが、以前にも投資を?』

「うん。ミールワーム養育セットの開発って」

『……後で、実用性の有無を確認させて貰います』

 

 ほぼ100%騙されている気がしつつ、来るべき燃料基地襲撃の段取りを考えると、この場にいる621以外の全員が頭を痛める外なかった。

 

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