戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

61 / 167
AM「最大チャージした時に消費される弾薬の数も2倍になりました」
スッラ「は?」


依頼60件目:AM「KRSVの総弾数を2倍にしました。これで継戦能力が向上しました。代わりに」

 先日、命からがらコーラル集積を脱した六文銭とフラットウェルはRaDに身を寄せていた。すると、彼らの元に集う様にしてルビコン解放戦線の面々が集まって来たので、随分と賑やかなことになっていた。

 指導者であるドルマヤンが元・ドーザーであったことも幸いしてか、住民達の折り合いは比較的良好な物であった。

 

「昔、鼻と口と耳からコーラルを吸引したバカが海へとダイブした瞬間に爆発してな。汚い花火だった」

「ヤベェ! 昔の連中ヤベェ!」

「帥父。摘まみのミールワームの刺身です」

「付き合ってらんねぇ」

 

 ラミーを始めとしたコーラルで頭がパチパチ弾けている連中はドルマヤンの武勇伝にゲラゲラと笑っている横で、リング・フレディがミールワームの刺身を出していた。元・G4のヴォルタは根が真面目なこともあって早々に反社喫煙会から脱していた。

 グリッド内を歩けば、ドーザー以外にも子供の姿が目立つようになっていた。走り回る彼らを注意していたのは、解放戦線に所属する青年のアーシルだった。

 

「コラ! 走り回るんじゃない。私達はRaDの厚意で間借りできているんだ。彼らに迷惑を掛けてはいけないぞ!」

 

 楽しい時間を邪魔されたことに対して不服を漏らしながらも、子供達は言うことに従っていた。その姿に、ヴォルタは古巣の上司を思い出していた。……彼と比べたら、随分と優男であるが。

 だが、自制の利かない子供と言うのは大人が何をしようと騒ぐ物で、叱られていた子供達の中で、1人の少年が突然駆け出した。

 すると勢いが余って躓き、その身が構造物の外へと投げ出される。誰もが凍り付く中、唯一動いたヴォルタが彼の首根っこを掴んでいた。

 

「騒ぐんじゃねぇ。ゲンコツすっぞ」

「ごめんなさい……」

 

 流石に生きた心地がしなかったのか、少年は素直に謝罪した。他の子達が心配して駆け寄る中、アーシルはヴォルタに頭を下げていた。

 

「ありがとうございます! もし、貴方がいなかったらと思うと……」

「言うことはちゃんと聞かせとけ。いざって時は殴ってでも覚えさせろ。その方が、ソイツの為にもなる」

 

 本当にしてはいけないことは時に言葉では理解できない物だ。暴力に頼る、という訳ではないが痛みを介さなければ覚えないこともある。

 ベイラムに居た頃、散々に味わった痛みを思い出して頭を擦った。かつての相棒は、佳境に入ったコーラル競争の中でどの様に振舞っているのか。頭領であるシンダー・カーラも多忙な様で、遠からず内に自分達も関わるだろうと言う予感はあった。

 

「(もう一線は引いているんだし、これからは商売に専念したいのによ)」

 

 いずれ、自分もRaDが使っていた販路を使って何かしらを売り込んで行きたい。商品の開発をするにしても、営業をするにしても現場に身を置くことには意味がある。

 来るべき時に備えて、自室に戻って一寝入りしようとした所で騒がしいことに気付いた。手癖の悪い奴でも入っていたら、叩きのめしてやろうと勢いよく扉を開けると、そこには珍妙な集団がいた。

 

「なぁ。2人とも、これって本当にRaDやルビコン解放戦線の為になるのか?」

 

 部屋の中央には、何故か勝手にヴォルタのツナギを着込んでいる解放戦線の妹分であるリトル・ツィイー、撮影ブースを整えている六文銭、シャッターを押しているノーザークがいた。

 

「勿論です。キャンペーンガールの存在はどの組織でも重要ですから。世のロリコ……元気な少女が好きなおじさん達の好感度ウハウハで支援もドバドバです。流石にカーラ姐さんはガールと言うにはキツイですから」

 

 恩を仇で返すが如き暴言を吐き出す辺りは、実にノーザークだった。最近は調子が良いのか、スーツなども新調したらしく小綺麗になっていた。

 

「イメージ戦略も重要なのだ。『こんな可愛い子がいる組織を攻めているなんて、企業は非道な者達の集まりだ』と思わせれば戦果よ。戦わずにして勝てるなら、それが一番だ」

 

 六文銭は真面目くさった顔で何か言っていた。ヴォルタとの体格差からか、ツィイーが彼のツナギを着るとブカブカになる。胸元辺りが危険なことになっているが、ノーザークはギリギリ破廉恥封鎖機構に引っ掛からない感じで撮影していた。

 

「グフフ。続きはファンボ、じゃなかった。支援金を出してくれた人と言うことにしましょう」

「いいや、テメェらにやるのはコレで十分だ」

 

 ここまで来て、ようやくノーザーク達はヴォルタが帰って来たことに気付いた。子供相手には手を出せなくても、カスが相手なら話は別だった。支援金ではなく、ゲンコツを貰ったノーザークは転げ回っていた。

 

「何故、私だけが! そこの六文銭もやられなければおかしいだろ!」

「面倒くせぇ。コイツ、明らかに何か出来る奴だろ」

 

 ルビコン解放戦線における上澄みと喧嘩する気力は無かったらしい。部屋主が帰って来たことに慌てて、ツィイーがツナギを脱ぎだそうとしたので六文銭とヴォルタは止めに掛かった。

 

「あ、いや、その。この2人に言われて!」

「せめて、俺が出て行ってから着替えろ!」

「左様。無暗に見せる物ではない故」

 

 六文銭が言うのはなんだか腑に落ちない所があるが、ツィイーが皆を追い出そうとした所で、また1人。新たな人物が入って来た。

 

「六文銭、仕事の時間……って、何が起きていたんだ?」

 

 事情がまるで分からないミドル・フラットウェルは眉をしかめていた。これに対して、六文銭が直ぐに対応した。

 

「仕事と言うことは」

「『レオン』から緊急通信だ。合流地点に向かうぞ」

「了解した」

 

 先程までの馬鹿面は何処にか。戦士の顔へと豹変した六文銭達にツィイーが問うた。

 

「レオン。って、誰のこと? 帥叔が出向くほどの相手なの?」

「あぁ。我々の切り札だ」

 

~~

 

 ラスティの逃走は迅速と言う外なかった。隔壁が落ちるよりも、隊員達が待ち伏せするよりも先に駆け抜け、あるいはハックして最短経路で格納庫に辿り着いていた。当然、ここにも待ち伏せはあったが、彼はレイヴンを抱えながら突き進む。

 

「この野郎!」

 

 流石に彼女に攻撃を当てるわけには行かないと踏んだのか、隊員達はスタンバトンに持ち替えて、ラスティを昏倒させようとするが全て返り討ちにあっていた。

 そして、スティールヘイズのハンガー前へと移動すると、ポケットから取り出した機器をレイヴンの首輪へと当てると、ガタンと地に落ちた。

 

「戦友、悪いが一緒について来て貰う。この命、私1人の物ではないのでな」

『彼女を人質にするつもりですか!?』

 

 ここ数日間のスネイルや他ヴェスパー隊長、研究員達からの重宝ぶりを見るに、アーキバスにおける彼女の価値は非常に高い物になっていたのだろう。

 ラスティが彼女を連れて帰った理由もここにもあったのかもしれない。彼女が役立つ存在になるかというのは、あまりにも賭けの部分が大きかったが。

 

「解放戦線に?」

「そうだ。行くぞ!」

 

 予め待機状態にしていたのか、スティールヘイズの立ち上がりは早く。脱出の際には、手あたり次第に格納庫の機体を攻撃していた。特に、スネイルのオープンフェイスは入念に切り裂いていた。

 

「これで追っては来れまい!」

 

 先日の侵入騒ぎも収まって、気が緩んでいたのも大きかった。初期対応の遅れは、そのままラスティの脱出成功率にも繋がった。

 追手を許さないスピードで基地から離れようとしたスティールヘイズだったが、目の前に1機。先回りする機体があった。

 

「なるほど、V.Ⅳか。シミュレーターでの手合わせは飽きていた頃だ」

 

 アーキバスと敵対他社のパーツを組み合わせた混成機体を駆る企業所属のパイロットは一人しかしらない。息を呑んだ。

 

「V.Ⅰフロイトか。スネイルめ、相当にお怒りの様だな。だが、こちらにはレイヴンが乗っているんだぞ」

「そうか、丁度良い」

 

 フロイトが駆るロックスミスは、何の躊躇いも無く接近してから『SB-033M MORLEY』を放った。拡散された成形炸裂弾がスティールヘイズの装甲に叩き付けられる寸前で、回避運動を取ったが。

 

「ラスティ! ダメ!」

「良い動きだ。だが、まだ恐怖から逃れていない」

 

 回避した先には、既に『Vvc-770LB』のレーザー刃が置かれていた。通常の乗り手ならば、そのまま切り裂かれていただろうが、ラスティは直前で姿勢制御を行うことで、攻撃を回避した。

 ただし、相当無茶な挙動をした為か、機体内部は相当に揺れた。追い打ちを掛けるようにして、ロックスミスは既にアサルトブーストを吹かしてからのキックを放っていた。

 

「ガハッ!?」

「機体は軽さで動かすんじゃない。感覚だ」

 

 V.Ⅳラスティはアーキバスの中でもエースパイロットと呼ばれている存在である。フロイトと対峙することがあっても勝負は出来ると考えていたし、事実シミュレーターではある程度渡り合えていた。

 しかし、現実は違った。AC同士の戦闘は機体の損傷だけではなく、中のパイロットへのダメージも存在しているのだ。シミュレーターにそんなフィードバックが付いている訳がないし、あるとしても安全が優先されて実戦には程遠い物になるだろう。自分と彼には途方もない程の開きがあった。

 

「ラスティ!?」

 

 レイヴンの声が遠のく。彼の視界は明滅からブラックアウトへと移ろうとしていた。意識を手放す瞬間、彼が最後に見たのは自分に代わってスティールヘイズの操縦を始める戦友の姿だった。

 

~~

 

『レイヴン、このまま投降しましょう。V.Ⅳがどうなるかは分かりませんが、少なくとも貴方は助かります』

「ダメ」

 

 言葉を濁していたが、エアでも分かっていた。こんな謀反を起こした人間が投降した所で無事でいられるわけがない。ほぼ、確実に銃殺刑が待っている。

 かと言って、このままでは捕縛は免れない。ならば、戦うしかない。武装編成はいずれも彼女があまり使わない物であったが、強化人間である以上。動かせないことはない。改めて、ロックスミスと向き合った。

 

「……雰囲気が変わった。そう言うことか。こんな、直近で望みが叶うとは思わなかった。それじゃあ、始めようか」

 

 上空で2機の閃光がぶつかり合う。ルビコンにおけるトップ同士の、シミュレーターではない実戦が始まっていた。

 




 まさか、フロイト戦を書くにあたって。公式からロックスミス強化が入るとは思わないじゃないですか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。