戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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レイヴン「あぷぷー」
エア「なんでこれを見せたんですか?」
ウォルター「カーラの趣味で無理矢理持たされていた。娯楽映像作品なんて物が手元にある訳がないだろう」


依頼63件目:ウォルター「621。暇なら、コレでも見ておけ」レイヴン「イルブリード?」

「V.Ⅳが?」

 

 シュナイダー社の調査から帰還したスウィンバーンは、ホーキンスから事の顛末を聞いていた。ラスティが裏切り、レイヴンを誘拐したと。

 

「途中で解放戦線の援護が来て、逃走を許してしまった。もう、スネイルの怒りは今までに見たことがない程の物だ。落ち着くまで、接するんじゃないぞ」

 

 間の悪いスウィンバーンでさえ理解できる程にホーキンスの表情は固かった。だが、動揺しているのは同じヴェスパー部隊長である彼らも同じだった。

 

「ラスティ。どうして、貴様が……」

 

 ペイターと同じく要らんことをして来たりもする人間だったが、コーラル集積での共闘の際には自身を信じてくれたことが忘れられない。アレも、その場限りのリップサービスに過ぎなかったと言うのか。

 だが、何処か冷静に思考が働く部分があった。もしも、ラスティが解放戦線の人間であった場合を考えると、レイヴンに危害を加える様なことはしないという確信はあった。

 

「(あの小娘は戦力的には申し分ない。それに、解放戦線と折り合いも悪くなかったはずだ。……だからこそ、今回の悲劇が起きているんだろうが)」

 

 少なくとも要求が通らなければ人質に危害を加える。ということはしない。だとすれば、問題は彼女が協力するかどうかに掛かって来る。

 彼女は良くも悪くも自由なので、打算や合理性が通用しない面が大きい。すると、今度は自分達に矛を向けて来る可能性もあるのだ。

 

「(撃てるのか?)」

 

 何も知らない敵を撃つことに関しては、何かしらの感慨を抱く時期はとうに過ぎている。だが、共に過ごして来た相手ともなれば難しい。

 自分はホーキンスの様に割り切ることは難しく、スネイルの様に冷徹に計算だけで動けるタイプではない。オキーフに関しては何とも言えない。

 

「(31戦目が実戦になることは避けたいが。我々がルビコンでやって来たことを考えれば、当然の報いかもしれんな)」

 

 コーラルの搾取による貧困と飢餓は、この惑星にどれだけの悲劇を生んで来たか。今更、自分達が被害者を気取る訳には行かない。

 事態の全てを受け止めることは難しいながらも、今回の事件の関係者達と懇意であったスウィンバーンは彼らへの信頼と共に、少しずつ冷静さを取り戻していた。

 

~~

 

「フロイト!! 出撃前の大言壮語はどうした!」

 

 一方、スネイルは怒り狂っていた。帰還したロックスミスは大破も良い所で、追手に付けた者達も捕縛され、ラスティ達を取り逃したともなれば順当な反応ではあった。

 

「次に戦う時は負けん。ただ、地上部に解放戦線が潜んでいたことも考えれば、調査不足じゃないか?」

 

 フロイトは悪びれることも無く、淡々と指摘をしていた。あの時、後詰めにヴェスパー部隊の隊長格を付けていれば、また違っていたのではないかと。それをさせないために格納庫に居た機体達を破壊してから脱走したのだろうが。

 

「……今まで、大人しくしていたから見逃してやってはいた。だが、害虫は1匹残らず排除するべきだった。シュナイダー社の件と言い、奴らは我々を嘗めた。思い知らせてやる!!」

 

 アーキバスにとってルビコン解放戦線は取るに足らない存在だった。精々、周辺を漂うハエ位の存在だった。しかし、今回の調査でシュナイダー社との関係及び、エルカノ社まで関与していることが分かった。

 こうなれば、弱小のレジスタンスとして扱う訳にはいかない。ベイラムの様な企業を相手にする物だと考えなければならない。既に上層部と話も付いている。

 

「どうするつもりだ?」

「強襲艦隊を使って、連中の拠点を潰して回る。所在地は幾らでも聞き出せる。捕まえた者達の数は居るからな」

 

 今回の件で検挙された人間は数知れず。尋問や拷問に関しては、アーキバスも得意とする所だ。スネイルは席を立った。

 

「八つ当たりで情報を聞き出せるのか?」

「最近はレイヴンがいたから鈍っていましたが、腕が錆びつかない様にすることも大事でしょう」

 

 その考えで行う拷問は情報収集ではなく、ただのサディストの趣味ではないか。ただ、個人の嗜好にまでは興味はないのかフロイトは黙って見送った。

 

~~

 

「ウォルター! どうした! 映画の感想が言いたくて俺を呼んだのか!」

 

 先の通信でRaDから情報を入手したウォルターは、ミシガンと話がしたいと言うことで個室に呼び出されていた。周りにいる者達もレッドガンの隊員達であり、余計なことを漏らしたりしないと言うことを信用してのことだった。

 

「グリッド086に621は居る。カーラから聞いた」

「お前達の通話記録は取っているが、こんな映画の感想の何処に情報を入れていたんだ!」

 

 ウォルター達の通話記録はクソ映画の好みを話すだけの物であり、621の情報は何処にも入っていない様に見えた。

 

「あの映画。『イルブリード』は全6章とエピローグからの構成になっている。『TOY HUNTER』を6章目、『女王ミミズの復讐』は2章目、そして、『死を呼ぶホームラン』は1章目となっている」

 

 配備されていた警備兵の中に視聴していた者もいたのか、若干顔がニヨニヨしていた。そして、暗号自体は非常に単純な物だった。

 

「なるほど、それぞれの章と好みを並べると『621』になる訳か。活き活きしているとかは、居るかどうかを確かめていたと言うことか。G5の奴にでも聞かせてやれば早々に看破していたかもしれんな!!」

「いや、無理だと思うぞ。ペイターと一緒に映画を楽しんでいる奴に業務の話を考えさせるのは酷だろう」

 

 人が楽しんでいる時に水を差さない気遣いが変な所で発揮されていた。だが、ここでミシガンに一つの疑問が浮かんだ。

 

「だが、何故RaDにG13が? アーキバスが奴らに引き渡すとは思えんが。以前の奪還作戦でなおのこと、警備も厳重になっているはずだ」

「それこそ、アーキバスの方で何かがあったのだろう。621が自ら脱走したとは思えない」

「幾らパイロットとしての技量が高くとも身体能力は大したことが無いからな! そこに警戒も加われば、正に隙は無い!」

 

 ミシガンの言うことも道理だったが、ウォルターは知っている。621がアーキバスに馴染んでいたこと、そこでの生活を楽しそうに話していたことも鑑みれば、そもそも逃げる必要が無く、敵対する可能性すらあったこと。

 

「そう考えると、G13がRaDに辿り着いたことも本意でない可能性は高いだろうな。そう考えると思い付く可能性は一つ」

「……誘拐か?」

 

 ACに乗っている時は手に付けられない存在だとしても、生身であれば一人の少女でしかない。問題は、誰がそんな凶行に及んだかということである。

 

「誘拐をするにしても条件が多すぎる! まず、生身での誘拐程度なら簡単に捕縛される! 続いてACなどを使った逃走も現実的ではない! お前達が使っていた機体でもあれば、話は別だろうがな!」

「あの機体はカーラ達が特別に改造したものだ。同じ製品を流通させるような真似は決してやらないだろう」

 

 あの機体は世界に2つもない物であり、なおかつ正面に陽動があったからこそ、機能していた様な物だ。

 

「では、G13の様に機体を用いての逃走か? あの精鋭が集まった基地から脱出するなんて芸当、それこそ奴でも無い限りは出来ないだろう!」

「もしも、出来るだけの力量を持つ者がいるとすれば隊長格クラスに限られるだろう。少なくとも下位Noでは不可能だろう。上位Noの連中には勝てない」

「そうすると、上位Noがやったと言うことか? ……いや、1人。G13と懇意の存在がいたな!」

「V.Ⅳか」

 

 彼女のことを戦友と呼び慕っていた存在。パイロットの技量としては申し分のない物であり、彼ならば単身での脱出とレイヴンの誘拐を両立できると考えていた。

 

「まず、G13がアーキバスに戻っていないことから犯人は逃走に成功した物だと思われる! だが、RaDが誘拐犯を受け入れるとは思えない! アーキバスとの敵対は避けたいだろうからな! では、この犯人を保護した連中は誰か! ちなみにベイラムでは無いぞ! そうならば、俺に報告が入るからな!」

「この二つ以外の勢力で、RaDと言う地元集団に縁がある者達。……ルビコン解放戦線か?」

 

 レイヴンとの仲も比較的良好ではある。犯人がV.Ⅳと決まった訳ではないが、アーキバスに身を置きながらルビコン解放戦線とも関係がある者。という想像が立てられた。

 

「いずれにせよ、アーキバスから取り戻すよりはずっと楽になったな! 俺達が行けば面倒なことになるだろう! ウォルター! ウチの奴らを使ってもいい! さっさと飼い犬を迎えに行け!」

「良いのか?」

「構わん! G13を取り戻す為と言えば、上の奴らも快諾するだろうよ! 俺とナイルは現場から離れられんが、他の奴らは好きに使って良い! お前達の機体も整備してある!」

「感謝する」

 

 話はスムーズにまとまった。だが、こうなっては少なからずの問題もある。……いよいよ、猟犬部隊(ハウンズ)のベイラム帰属が避けられなくなり始めていた。

 




 今日はかなり早めに投稿。
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