戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼64件目:彼女の道

 レイヴンが目を覚ましたという報告はRaD中に伝わった。ドーザー達は勿論、解放戦線のメンバーも詰めかけて、病室は賑やかなことになっていた。

 

「ツィイー、久しぶりー」

「うん、久しぶり。また、会えるとは思っていなかった。痛む所とか無い?」

「だいじょぶ!」

 

 運び入れた時に検査はした。その時には、異常は見つからなかったが、何が起きるか分からないのが人体だ。特に強化人間なんて、常人とは違うのだからツィイーが心配するのは当然のことだった。

 

「お前が倒れるなんてよっぽど無茶したんだな。ルビコニアンデスビートルの時も、そんなに無茶してなかったのによ!」

「フロイト。凄い強かった!」

 

 ラミーとは先日の2大ワーム討伐の際に顔を合わせていることもあって、久しぶりと言う程でも無かった。疲労困憊で倒れる程の激闘を繰り拡げたというのに、危機感や焦燥感を抱かせない笑顔だった。

 RaDと解放戦線のメンバーが入れ替わり立ち替わり、彼女の身を案ずる中、ひっそりとラスティが部屋を出た所で、部屋の前にいたミドル・フラットウェルと鉢合わせになった。

 

「居た堪れないのか?」

「はい」

 

 あの歓談とも言える空気にその気がなくとも、まるで責められている様な気分になった。この場にいる資格がないと思い、静かに姿を消そうとしていた。

 帥叔も引き止める気はなく、彼が去ろうとするのを黙って見守っていたが、その進行方向に1人の男が。

 

「おぉ! 貴方はレイヴンの親友ではありませんか! 丁度、よかった。何故か、私だけには彼女が目を覚ましたことを伝えて貰えなくて!」

「いや、それは君の行いに問題があるんじゃ……」

 

 このルビコンに似つかわしくない程に身なりを整えた男。相応の苦労を経た訳ではないので、衣装に着られている様な印象も受けた。口先と幸運だけで全てを乗り切って来たルビコンきってのカス。ノーザークであった。

 

「さぁ、一緒に見舞いに行こう! 人数が多ければ多い程、彼女も喜ぶに違いありません!」

「いや、私は遠慮しておく。同じ病室だから、顔は見飽きられているだろうから」

「そんなことはありません。ささ、行きますよ。というか、私を救うと思ってやれ! 1人で行って『お前来たの?』みたいな顔されたら辛いんですよ!」

「だから、私は」

 

 半ば押し切られる形で病室に踵を返すラスティ達を見ながら、フラットウェルは静かに微笑んでいた。

 

~~

 

 そして、多くの人達と交流をした後のことである。静けさを取り戻した病室に、カーラとドルマヤンが訪れた。

 

「ビジター、調子の方は良さそうだね」

「うん!」

 

 多くの見舞が来たこともあり、強化人間特有の回復力と相まって彼女はほぼ全快状態になっていた。レイヴンは純粋に喜んでいるが、エアはそうでは無い。

 

『サム・ドルマヤン。貴方達が訪れたと言うことは、恐らく今後の身の振り方を聞く為。ですよね?』

「その通りだ。だが、改めて君達には事情を説明せねばならんな」

 

 サム・ドルマヤン。このルビコンにおける抵抗勢力のリーダーであり、誰よりも先にCパルス変異波形と呼ばれる存在との交信に成功した男。故に、コーラルの本質を知っている。

 

「説明?」

「コーラルリリースと呼ばれる物を何処まで知っている?」

『いえ、殆ど何も。抽象的なことしか聞いていないので』

 

 ワード自体は何度も聞いているが、いずれも抽象的すぎて何を行うのかはまるで分らない。ただ、肉体がどうだとか言っていた気はする。

 

「セリアは私達をコーラルの潮流に招きたいと言うことらしい。つまり、我々の肉体を焼き払おうとしているのだ」

『……え?』

「おいおい、随分と物騒な計画を立てている奴がいるもんだね。私達を焼き払って、ルビコンを支配しようって算段かい?」

 

 カーラはジョークがてらに茶化した。それだけ現実味の無い話であったが、半世紀前のアイビスの火と言い、コーラルにはそれらを引き起こすだけのポテンシャルを秘めている。

 

「いや。我々をコーラルの中で生き続ける精神体に仕立て上げたいと言うことらしい。人間の肉体はあまりにも脆弱と言うことでな」

 

 ラスティは自分の体を見下ろした。今回の戦いでも分かったが、人間の肉体は脆い。多少のことで直ぐに使い物にならなくなってしまう。

 

『馬鹿げている。自分のエゴの為に皆を焼き払うなんて』

「彼女はそう思っていないらしい。そうすることで、争いや恐怖から解放しようと考えているらしい。……魅力を感じないわけでは無かった。だが、私1人の判断で賽を投げることは出来なかった」

 

 貧困と飢餓に見舞われているルビコニアンなら魅力的な提案と感じられなくもないだろう。だが、恐怖することも当然だった。

 

『ということは、セリア達はバスキュラープラントを用いて何かを画策しているのでしょうね。ですが、スッラやケイトは何故協力しているのでしょうか?』

「分からん。だが、我々としてはあの施設の存在は好ましくない。排除するつもりでいる。RaDも協力してくれるそうだ」

「何故、RaDが?」

 

 ラスティが問うた。技術者集団のドーザー達と言うことで、彼らにとってもコーラルは魅力的な物だと考えていたが。

 

「私達とウォルターはコーラルを観測する集団『オーバーシアー』に所属しているんだよ。だから、コーラルの怪物である『ルビコニアンデスビートル』が現れた時も駆けつけただろ?」

『アレは利益目的で協力していた訳では無かったんですね』

 

 そもそも、何故彼女達がアイスワーム達の討伐に協力してくれたかは疑問だったが、その時はコーラルを目指す者として納得していた。手に入れてからの、目的はまるで違っていたが。

 

「ウォルター達。『オーバーシアー』と言おうか。彼らは、コーラルは人の手に余る物として処分したがっているようだが、そんなことをされたら生きていけなくなる。バスキュラープラントから吸い上げたコーラルを燃料にして焼き払うと言う過激な案もあったが、反対させて貰った」

「もしも、バスキュラープラントの増築と運用が早ければ、私達もそうせざるを得なかったけれど、ベイラムがチンタラやっているお陰で今の所だと穏便に済ませることは出来そうだ。……ただ、それでもルビコンに残り続けるって懸念はあるけれどね」

 

 コーラルを監視している『オーバーシアー』とルビコニアン達の妥協点が見つかる程度に、事態の進行は緩やかだったらしい。

 

『バタフライエフェクトと言う訳ではないでしょうが、レイヴンがベイラムの損傷を抑えて、アーキバスと対立できる程に戦力を残していたことも大きそうですね』

「そう考えれば、今日の状態は彼女が運んでくれたものなのかもな」

「えへへ」

「私にはビジターのご友人の声が聞こえないから、会話から弾かれている気分だ」

 

 ご友人。という言い方に、エア達は猟犬部隊(ハウンズ)の一員を彷彿とさせて、笑顔を浮かべていた。だが、直ぐに彼らの表情は引き締まった。ドルマヤンが真剣な面持ちで彼女達に尋ねる。

 

「さて、問題はここからだ、レイヴン。君がアーキバスでどんな生活を送って来たかは、エアから聞いている。少なからず思い入れも生まれたことだろう。その上で問いたい、君はどちらに付く?」」

 

 分水嶺だった。ルビコン解放戦線とウォルター達に付くか、アーキバスに付くか? もしも、彼女が攫われることが無ければ前者を取っていただろう。

 だが、今の彼女は知っている。アーキバスにも快く迎え入れてくれた者達が居ること。自分を頼り、大事に思ってくれる人達がいたことを。

 

「一応、ベイラムも残っているけれど。……ま、これに関してはウォルターがちょっと考えているみたいだから除外しとこう。さ、ビジター。どうする? アンタがアーキバスに戻っても、私達は責めたりしない。ここで止めることもしないよ」

 

 カーラの宣言とは裏腹に、ラスティ達は息を呑んでいた。彼女とフロイトに敵対されれば、自分達は太刀打ちできるのだろうか。

 

『レイヴン。貴方が決めて下さい。私は共について行きます』

 

 もしも『オーバーシアー』がコーラルを焼き払うつもりであったのなら、エアはこの選択に対して慎重になっていただろうが、今の所。どちらに付いても自分は存在できる。

 周りの者達が固唾を飲んでいる中、自分だけは立場に翻弄されないという安心感に、若干の罪悪感を覚えてはいた物の。

 

「ビジターにとっても簡単な問題じゃない。直ぐに答えを出す訳には行かないだろうし、考える時間も……」

「私、カーラや皆と一緒に行く」

 

 いつもの様な安請負ではない。彼女なりに考えた故の決定だった。……その割には、少し決断が早かったのを気にして、ラスティが口を出した。

 

「本当にアーキバスに戻らなくても良いんだな? スネイル達とも敵対することになるんだぞ?」

「アーキバスとは戦う。でも、スウィンバーン達は敵じゃない」

「企業と人を分けるか。甘い考えだけれど、ビジターにはそれが出来るだけの力があるからね」

 

 スネイル達と戦うのではない。彼らを従えている企業と戦うと言う意思を見せた。当然、彼らは簡単に分離できる物ではない。

 

「うん。私、スネイルやスウィンバーン達のことも大事だと思っている。でも、ラスティやカーラ達のことも大事に思っている」

 

 瞬間、ラスティは目を伏せた。未だに胸中を占める罪悪感が、彼女から目を背けさせたのだろう。

 

「ビジター、そいつは一番きつい道だよ。悪い企業から解放されました。なんて、簡単な話にはならないからね?」

「それでも」

 

 やる。という意思を感じさせる瞳だった。カーラも結論を分かっていたかのように笑い、ドルマヤンも感慨深げに頷いた。

 

「よっし! そう言うことなら、大手を振って会わせられるね!」

『誰とですか?』

「ウォルター達とだよ。ほら、迎えが来てんだ。行ってやりな」

 

 壁面のパネルにはウォルターを始めとした猟犬部隊(ハウンズ)の面々が映し出されていた。彼らの姿を見たレイヴンは満面の笑みを浮かべながら、着替えを始めた。ラスティとドルマヤンがズッコケた。

 

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