戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼66件目:ベイラム現場「現場の声を聞け!」ベイラム上層部「上層部の苦労も分かれ!!」

 ベイラムグループ。複数の企業から成る巨大企業であり、それだけ多くの思惑が錯綜していた。この会議で話されていることは、ルビコンで接収したバスキュラープラントの取り扱いについてだった。

 ルビコンに押し入ってまで獲得したかったコーラルではあるが、これに関しては連日、紛糾していた。

 

「このまま延伸工事を続けるべきだ! そして、コーラルの生産体制を整えて、新製品の開発に他企業への販売。今まで、投資した資源を考えても十分にペイできる!」

 

 細かい違いはあった物の、概ね彼らは二つに分けられる。

 1つ。バスキュラープラントの延伸工事を続け、コーラルの利権を獲得すべきだという者達。新資源であるコーラルを独占することによって得られる利益は莫大なものになるだろうと見込んだ、積極派。

 

「いや、コーラルに関しては未知の部分も多い。もしも、取り扱いを誤って再びアイビスの火を起こせば、企業の信頼にも関わる。このバスキュラープラントを土産にして、アーキバスと講和を結ぶべきだ」

 

 2つ。バスキュラープラントを条件付きで譲渡して、自分達は身を引くと言う物だ。こちらは今後に掛かる消費を省き、コーラルを持つ限り背負い続ける危険性を放棄することが出来ると言う案を推す消極派。

 

「何を弱気なことを言っている! ここに来るまで、どれだけの損耗があったと思っているんだ!? 何も獲得せずに帰れるか!」

 

 積極派としては、この新資源を用いて作られた画期的な兵器群は魅力的だった。生物兵器としても転用可能なら可能性を考えるならば、専売と研究をしたいと思うのは自然なことだった。

 

「そもそも、惑星封鎖機構が入って来た時から撤退方針で話し合っていたのを、急に転換出来る訳無いだろう! 今も延伸工事を続けている様だが、無駄に資金を使うばかりだ! しかも、今後アーキバスが奪還しに来る可能性だってあるんだぞ!」

 

 消極派が言うことも最もだった。アーキバスはヴェスパー部隊長達を欠いたりもしているが、惑星封鎖機構から押収した兵器群は未だに健在であり、脅威であることには変わりない。

 そもそも、ベイラム全体としては惑星封鎖機構が介入した時点では消極派が多数だった。如何に損耗を抑え、アーキバスとの落し所を探るつもりだったが、想像以上に上手く行った。いや、上手く行ってしまったと言うべきか。

 

「ここまで来たなら態々引く理由もない! こんな幸運、今後もめぐって来るとは限らないんだ。それに、話を聞けばレイヴンの飼い主の確保にも成功しているらしいじゃないか」

 

 レイヴン。通常、上層部の話し合いに現場の者達が持ち出されることは稀だが、ルビコンを舞う鴉だけは別だった。

 壁を越え、惑星封鎖機構を退け、怪異を打ち倒し、迎撃砲台を潰し、ルビコンにおけるコーラル獲得競争を導き続けた存在。状況を揺るがしかねない戦力として、注目しない訳が無かった。

 

「だが、件の鴉はアーキバスに確保されたままなのだろう? 我々に矛を向ける可能性もある。それを良しとして、連中が気勢を上げて攻め込んで来ると言う流れも大いにあり得る。早めに手を打つべきだ」

 

 故に、消極派の意見は無視できるものでは無かった。アーキバスなら、本人の意思を無視しても運用できる術があるのは知っているからだ。

 本格的な反転攻勢を見せる前に、有利な条件で話を付ける。という方向に持って行きたいらしい。

 

「恐れるな! 猟犬にとって飼い主は絶対だ。ミシガンは奴にとって、古くからの友人だと言うそうじゃないか。それだけじゃない、参謀であるG2も長らく奴らと行動を共にしていた! これはもう、レイヴンがベイラムに協力する気があるとしか思えない!」

 

 積極派の意見もまた考慮に値する物だった。レッドガン部隊の参謀と常に行動を続けていたことや、ウォルターがミシガンと懇意であること。……いずれも、レイヴンの意思1つで翻る物だが。

 こうした紛糾が続くことで意思統一がなされず、現場の延伸工事は遅々としたものになって行く。……当然、これを望まない者もいる訳で。会議の資料を出力する為に使われていたモニタの映像が突如として切り替わった。

 

~~

 

「これは、よろしくありませんね」

 

 あらゆるネットワークから情報を収集しているオールマインドからして、現在の状況は好ましくない物だった。グリッド086で行われている会談はバスキュラープラントの破壊を示唆する物であったからだ。

 

「グリッド086を襲撃するか? 今なら、一網打尽に出来るぞ」

『スッラ。私がそれを許すとでも?』

 

 セリアの声は重く沈んだ物だった。ウォルター達の排除は気にすることで無いにしても、ドルマヤンまで巻き添えになるのは許せないらしい。

 

「分からんな。コーラルリリースを経れば、誰もが死ぬのだろう? 少し早く殺すことの何が問題だ」

『コーラルで焼かないと、サムを拾えないの。だから、手出しは駄目よ』

 

 セリアは自らの脅威を示す様にして、エンタングルの火器管制システムに侵入していた。碌に照準を付けられなくなっているのを見て、スッラは鼻で嗤っていた。

 

「今、ここで彼らを襲撃するのは得策ではありません。むしろ、この様子を見届けて貰いましょうか。セリア、力添えを」

『心得ました』

 

 RaDのシステムは強靭の一言である。ルビコンにおける技術者の最先端を走るカーラと彼女が生み出したAIにより構築されたネットワークは、何者の攻撃も侵入も許さず、キッチリと代償を払わせる為のカウンタープログラムまで仕込まれている。

 電子戦におけるキルゾーンとも言える彼女の領域に、オールマインドは立ち入っていた。彼女一人だけなら返り討ちに遭っていただろうが、今は違う。

 

『オールマインド。気を付けて下さい。そのプログラムは解除させる為に仕込まれている物です。解こう物なら、逆ハックされますよ』

「危ない所でした。引き続き、お願いします」

 

 警報を始めとした、ありとあらゆるトラップを潜り抜け侵入した痕跡さえも残さず、見つけさせず。幾重にも仕掛けられた包囲網を潜り抜け、彼女達はウォルター達の会談光景を収めていた。

 

~~

 

「規模を限定したアイビスの火って。どういうことですか? コーラルの発火はコントロールできる物なんですか?」

 

 質問したペイターも、実際の所コーラルと言う物はよく分かっていない。新時代の資源であると言うことや一部兵器にも使われていることは知っているが、性質自体はよく分かっていない。

 

「コーラルには真空状態になると、急激に増殖すると言う特性がある。企業がバスキュラープラントを延伸させるのは、これが目的だ」

「宇宙区間にまで伸ばした後で、吸い上げたコーラルを晒せば一気に数を増やせるからな。だから、惑星封鎖機構は星外へと持ち出すのを禁じた」

 

 ウォルターの説明に1317が補足を加えた。増やす手段があることは分かったが、その為にはバスキュラープラントの延伸を待たねばならない。

 

「ちょっと待てよ。そんなに悠長なことをしている暇はあるのか? 外ではアーキバスの連中も来てんだろ?」

 

 ベイラムの延伸工事が進んでいないのは、イグアスを始めとして多くの者達が知っていることだ。何なら、アーキバスが攻め込んでくる方が早そうだった。

 

「無い。だから、俺達はベイラムと手を組む。その為に621を迎えに来た」

「よろしく!」

 

 話の殆どを理解して無さそうなレイヴンがイグアスにサムズアップをしていた。あまりにもいい笑顔を浮かべる物だから、何となくイラっとして彼女の額にデコピンを食らわせていた。

 

「いたい!」

「一通りの話は聞かせて貰った。ある程度の規模で焼けば、我々の生活も苦しくはなりそうだが、企業達を追い出す為には仕方のないことか。……エアは、同胞とも言えよう者達を焼くことについて何か意義は?」

 

 レイヴン、ブルートゥ、ドルマヤン以外に声が聞こえないと言うこともあって、会話に参加していなかったエアだが、彼に促されて声を上げた。

 

『思うことが無い訳ではありません。同胞達が焼かれること、私達の様な存在が生まれる可能性を潰してしまうことは残念に思います。ですが、私達が利用される環境を無くすことで、改めて共に歩んでいけるなら。この痛みを耐えましょう。今は、1人ではありませんので』

「耳が痛ェ。……ひょっとして俺に気を使って喋ってなかったのか?」

『はい。どうも、強化人間であれば無条件で聞こえる訳ではないので』

「分かった。気遣いを続けてくれ」

 

 エアの声が耳鳴りとして聞こえる為か、イグアスは頭を押さえていた。彼はレイヴンの方やブルートゥの方をチラチラと見ながら、辺りを見回していた。ヴォルタ怪訝な顔をしていた。

 

「おい、イグアス。そんなに痛むのか?」

「なんか。アホ犬とブルートゥだったか? の方を見ると、耳鳴りじゃなくて頭がズキズキするんだよ」

「感じ取れない存在を、無理に感じ取ろうとしている故かもしれませんね。席を外しますか?」

 

 ペイターが心配する程だから、よほど苦しそうな顔をしていたのだろう。イグアスも耐えかねたのか、頷いた。

 

「あぁ。後、もう一つ。なんか居やがる様な――」

「チャティ! 周囲のシステムをダウンさせろ!」

「了解だ。ボス」

 

 真っ先に反応したカーラがチャティに命じて周囲の機器をシャットダウンさせた。何が起きたか分からず多くの者達が混乱する中、幾らか事情を理解している者もいた。

 

「……まさか、セリアが?」

 

 ドルマヤンも事情を聴いていたが、まさかこんなに近くまで来ているとは思っても居なかった。一方でカーラは目の色を変えて作業に打ち込んでいた。

 

「とりあえず、アンタらは早めに戻りな。ここに長居するのは得策じゃない。あぁ、クソッ。どうやって、私達の目から逃れてやがった!」

「そうさせて貰おう。621、戻るぞ」

「うん。じゃあ、またねー」

「では、カーラ。ご健闘を」

 

 カーラの形相も気にしないで、手を振っている彼女とブルートゥ達の様子は煽っている様に見えなくもなかった。セリアのことを聞かされていないイグアスは戸惑いながらも、ウォルター達と共にベイラムの拠点へと戻ることにした。

 

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