戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼67件目:表裏一体

 Radから帰還したウォルター達は盛大に歓迎された。アーキバスからレイヴンを取り戻したのだと、現場にいる者達の士気は大いに上がった。更に、朗報はこれだけに終わらなかった。

 

「ウォルター。俺達に付くと言うのは本当か?」

「もはや、個人で立ち回っていても仕方がない。幸い、俺達は歓迎されているようだ。バスキュラープラントも確保できている様だし、ベイラムに付かせて貰う」

「よろしくね」

「そうか。これを知れば、上の連中は泣いて喜ぶぞ!」

 

 ミシガンは多くは言わなかったが、星外にいる上層部へと伝えた。すると、通話口からは上機嫌な返事があった。

 

「分かっていたとも。流石、ハンドラー・ウォルター。趨勢を見極めるのは得意な様だ。貴方共々、手厚くもてなそう! 消極派の連中も直に黙る。総長、必要な資源は逐次送って行こう。期待しているぞ」

 

 まるで、この結果が予め分かっていたかのような言いようだった。直ぐに、ウォルターは一つの可能性が思い当った。カーラ達がいた部屋に潜んでいたという、セリアの存在だ。

 

「(既にリークされているのか? だとしたら、この対応はどうにもおかしい。あるいは、俺達を油断させる為に知らないフリをしているのか)」

 

 経営に携わる者達はいずれも腹芸に長けている。現場のことは知らなくても、損得勘定については決して油断はできない。

 だが、バスキュラープラントは個人で管理できる物ではなく、ベイラムに頼らざるを得ないのが実情だった。

 

「この報せを聞けば、アーキバスの連中はどれほど悔しがるだろうな! 連中もルビコン解放戦線を焼いている場合じゃないと気付くだろう! そうなれば、いよいよ衝突は避けられん! その時まで、やれることは済ませておけ!」

「手伝わなくても良いのか?」

「ただの工事にお前達の手は必要ない!」

 

 ある程度、ウォルター側の事情も察してくれている様な裁量だった。ミシガンだからこその裁量と考えても良さそうだった。上層部としては雁字搦めにしておきたくはあるだろうが。

 アーキバスの時と違い、レイヴンは拘束具の類は一切付けられていない。速やかに検査は行われたが、体内に発信機の類なども見つからなかった。

 

「いやー。G2は未だに忙しいですが、これでようやく猟犬部隊(ハウンズ)再結成ですね! レイヴン。向こうではどうでしたか? あのハゲに酷いことされませんでしたか?」

 

 久々の再会がてらに、ペイターがいつもの様に痛罵を吐いていたが、レイヴンは不快感を顕にしていた。

 

「ペイター、その言い方。よくない」

「え、あ、はい」

 

 いつも愉快そうにしている彼女ではあるが、キチンと怒りの琴線も存在している。以前、ハゲの歌を熱唱していた時は大爆笑していたので、大丈夫かと思っていたペイターとしては、完全に予想外だった。

 出鼻を挫かれたペイターが間の悪さを誤魔化すべく、チラリとブルートゥの方へと視線を向けた。

 

「ご友人。誰とでも仲良くしようとする心は素晴らしい物です。きっと、V.Ⅱとも良好な関係を築いていたのでしょう。よろしければ、お話を聞かせて貰えませんか?」

「良いよ!」

 

 一転して、彼女に満面の笑顔が咲いた。そして、彼女は話し始めた。

 アーキバス内では大抵スネイルと一緒にいたこと。上層部や役員との対応にも同行して、色々と聞かれたこと。

 

『そのせいでシュナイダー社は探りを入れられて摘発されていましたが……』

 

 エアによる修正や矯正もあったが、何も知らなければ不自然過ぎるので敢えて喋らせていたことも多々あった。そもそも、口止めする前に彼女が口に出してしまうことも多かったが。

 

「スネイルの部屋で一緒にご飯食べたり、色々と話をしたりしてね。それと、毛髪再生局の人達も優しかった!」

「私の事とか話していましたか?」

 

 もはや殺意の域でやり取りをしているペイターではあるが、実際の所。どう思われているのかは、やはり気になっていた。

 

「次会ったら、必ず殺す。って言っていた」

「ッチ。先、殺しときゃ良かった」

「可哀想なお友達。貴方にご友人の様な優しさが少しでも身に付いていれば」

 

 殺人未遂までかまして来たんだから、ある種当然の返事ではあった。

 ただ、疑心暗鬼。猜疑心の塊とも言えるスネイルが、彼女を重用していた様子は伝わって来た。これは単に能力の高さだけではなく、彼女の人柄も含めてのことだったのだろう。故に、ペイターは意地の悪い質問をした。

 

「そこまで仲が良くても、V.Ⅳの方が大切だったと?」

「ううん。どっちも大事。今も同じ」

 

 状況がラスティを助ける選択肢を取らせただけであり、彼女にとってはどちらも同じ位に大事な人間だった。だからこそ、ブルートゥは彼女の優しさに感心すると同時に不安を覚えざるを得なかった。

 

「ご友人、貴方の優しさは素晴らしい物です。……ですが、時に築き上げた親交は、距離を開けてしまった時に容易に転じてしまう物です」

 

 それはRaDから距離を取り、カーラから排除依頼までされた彼だからこそ、実感を持って注意できることであった。そのことに、ほんの少しレイヴンの表情が陰った。

 

~~

 

 ベイラムの気勢は対立企業であるアーキバスにも伝わっていた。即ち、レイヴンがベイラムに奪還されたことが判明していた。

 すっかり、空席の目立つようになったヴェスパー部隊長達の会議場。臓腑が潰されかねない程、重苦しい空気の中。スネイルが口を開いた。

 

「ルビコン解放戦線の連中は、レイヴンをベイラムに引き渡した訳ですか。概ね、命乞いと言った所でしょうか」

「可能性としては、そんな所でしょう」

 

 スウィンバーンも言葉を選びながら相槌を打っていた。ほんの少しのヘマで、破裂しかねない程にスネイルは不機嫌だった。

 モニタにはルビコンの勢力図が映し出されていたが、解放戦線の拠点は全て潰され、ベイラムとアーキバスと二分される形になっていた。

 

「バスキュラープラントの延伸工事は奴らにやらせましょう。成果が出始めた所で掠め取ってしまえば良い。このルビコンに蔓延る奴らの拠点を潰して行く。幸い、ファクトリーは順調に稼働しています。アーキバスの兵力を使う必要はありません」

 

 ファクトリーが順調に稼働している。という文言から、捕らえられた解放戦線の兵士や査察に入った企業の関係者達は、人間性を消された上で機体のパーツに加工されてしまったのだろう。

 ベイラムの物量で押し潰す為の対策としては、あまりにも外道であり、スネイルの尋常ならざる怒りが伝わって来た。

 

「スネイル。あまり、外道に身を落とし過ぎるな。戻れなくなるぞ」

 

 流石に、彼の所業に対して思うことがあったのかオキーフが戒めた。だが、スネイルは悪びれた様子も無かった。

 

「土人共の扱いとしては上等でしょう? 飢えて干からびるだけの虫けら共が楯突いて来たのです。踏み潰してやる所を有効に活用しているのですから。そう言えば、V.Ⅲ。貴方は裏切り者と仲が良かったですね?」

 

 彼の眉間には青筋が浮かんでいた。もはや、言葉は届きそうになかった。スウィンバーンもホーキンスも余計なことは言わなかった。

 

「ヴェスパー部隊長達、それぞれに無人機達を付けます。ベイラムの拠点の制圧に乗り出して下さい。ちなみに、使い潰してくれても構いません」

「分かった。こちらで適宜運用させて貰おう」

 

 ホーキンスは淡々と述べると席を立った。オキーフも同じ様にして去って行く。誰もがスネイルから距離を取っている中、スウィンバーンだけが最後まで残っていた。

 

「閣下は、あの娘がこんな所業を望んでいるとお思いですか?」

 

 もしも、V.Ⅶを知る人物がこの光景を見たら驚愕していたことだろう。普段、スネイルに媚びへつらっている彼が口答えをしたのだから。瞬間、スウィンバーンの頭部に鈍い痛みが走った。ガシャンと音を立ててグラスが砕けた。

 

「貴様も、私を裏切るつもりか!?」

「貴方を裏切ろうと考えたことはありません! 苛烈で冷酷ではありますが、貴方の慧眼は尊敬していました! だが、今の閣下は怒りに身を任せているだけの様にしか思えないのです! あの娘が奪われたことがショックなら! いつもの様に! あの娘を取り戻す為の神算鬼謀を御教授くださいよ! こんな、関係者に八つ当たりするだけの下策ではなく!!」

 

 後半は歯の根が噛み合っていなかったが、それでもスウィンバーンは咆えた。常識や倫理観に基づいた発言なら、スネイルはマトモに聞こうともしなかっただろう。

 だが、彼の言葉には畏敬が籠っていた。スネイルへの確かな信頼があるからこそ、現状の彼が許せないという憤りがあった。

 

「口答えをするな! さっさと行け!!」

「閣下!!」

 

 これ以上、話をするつもりはないと言わんばかりにスネイルは出て行った。去って行く背中を追いかけるだけの気概は、スウィンバーンには残っていなかった。

 

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