戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】 作:ゼフィガルド
解放戦線を潰した後に繰り広げられるのは、必然的にベイラムとの対峙である。惑星封鎖機構から押収した兵器の数々に加えて、大量の捕虜を獲得したアーキバスは、欠員したヴェスパー部隊長達を補って余りある戦力を手に入れていた。無人機達はその代表と言っても良い。
「アーキバスの連中が来たぞ!」
ベイラムの拠点の一つ『壁』。もはや、どの勢力が何度取り返しては奪われ手を繰り返したかも分からない場所。
V.Ⅲの愛機バレンフラワーに率いられた無人機を主力にした部隊とベイラムの守備部隊による攻防が繰り広げられていた。
「コイツら。無人機か!」
守備部隊はACもMTも『SG-027 ZIMMERMAN』を握っており、物量を活かした攻撃で無人機達を破壊していくが、彼らはまるで被弾や死を恐れずに突っ込んで来る。時には機能停止した仲間を盾の様に用いながら、捨て身同然の攻撃を前に守備部隊は次々と撃破されて行く。
その中で、脱出したパイロットの1人が機能停止に追い込まれた無人機に近付いた。少しでも次の戦いに貢献するべく、情報を得ようとしていた。
各所が破損しており、誘爆の可能性も否めないが、戦闘後には回収されてしまうことも考えて、データを持ち帰るなら今しかないと考えた。機体の前面部分は破損しており、多少の工作で開けることが出来た。
「……え?」
現れたのは予想していなかった物だった。機体を動かす為のパーツだけが詰まっているかと思っていたが、そこは従来のMTと変わらないコックピットの空間になっていた。
だが、それもパーツと言えたのかもしれない。寸断された四肢の先端はケーブルに繋がれており、頭部に被せられたヘルメットからも大量のケーブルが伸びていた。機体を動かす為のCPUとしての有機物がそこにあった。
「狂ってやがる……」
どれだけ合理主義に染まれば、ここまでの外道が行えると言うのか。
敵対していた存在ではあったが、目の前の存在を憐れんだのか。男は拳銃の引き金を引いた。乾いた音がして、CPUとなっていた有機物は活動を停止させた。
脱出しようとした所で、無人機達がこちらに向かって来るのが見えた。自らの末路を予想して脂汗が噴出したが、無人機達の前に四脚ACが降り立った。
「壁の内部を攻めろ。ここには何もない」
隊長格と思しき者の命令を受けて、無人機達は壁の内部へと進んで行った。四脚のACは、機能を停止させた無人機の方を一瞥した後、自らも壁の内部へと向かった。
「(もしかして、助けてくれたのか)」
真偽の程は分からないが、脱出したパイロットは予め決められていた合流地点に向かって走り始めた。
~~
アーキバスの攻勢はグリッド086にも及んでいた。元より、ストライダーの供給の件と言い、ルビコン解放戦線にも協力していることから快くは思われていなかったらしい。ルビコニアン達を一掃せんとする、企業の敵意がありありと伝わって来た。
「恐らく、我々を匿っていることを察したのだろう」
フラットウェルの推測通りだった。ここまで解放戦線の拠点を潰したというのに、幹部や重鎮が捕まっていなければ、何処かに匿われていると思うのが普通だろう。RaDには疑われる要素が十分にあった。
「多分、アンタらを追い出した所で攻撃は続けられるだろうね。ウチはエルカノやBAWSと違って、企業と言うには微妙な所だし」
工場への攻撃は企業同士の泥沼化を避けるために忌避される傾向はあるが、ここは企業と呼んでいいか微妙な場所だった。
カーラの言葉に反応したのか、ルビコン解放戦線の面々もドーザー達にも不安が走る。徹底抗戦した所で勝ち目はない。
「か、カーラの姐さん! 何か起死回生の策はないんですか!?」
「当たり前の様に一員ヅラをしているが、独立傭兵であるならば、逃げればいいのでは?」
半ば狂乱状態に陥ったノーザークが縋る様な声でカーラに助けを求めていた。そんな彼に対してチャティが冷静な指摘をしていた。
「チャティ、こうなったらコイツも私らの一員だ。ちょっと働いて貰おうか」
「え? ま、まさか! 私を対アーキバスの先鋒に!?」
「お前なんか動く的にしかならねぇよ」
カーラからの要請にノーザークが慌てふためき、ヴォルタが吐き捨てるように言った。
実際、ノーザークのパイロットとしての技量は高くはなく、アーキバスとの戦いに出した所で碌な活躍は期待できないだろう。何なら、背後から味方を撃ちかねない気さえした。
「ちょいと重要な物を回収しに行くんだ。少しでも戦える奴が欲しい。それと、非戦闘員達を運ぶ準備もしときな。引っ越すからね」
「グリッド086以外に場所があるのか?」
インデックス・ダナムはグリッドの構造を始めとした事情に詳しい。多くのグリッドが打ち捨てられている中、この086は数少ない居住にも耐え得る場所だった。ここを捨てて、次の場所が直ぐに見つかるとは思えなかったが。
「ある。場所は洋上都市ザイレムだ」
「ザイレム? あの場所に何があるというのだ?」
「以前に訪れた時は、無人機達がいたが」
実際に、あの場所へと向かったことのあるドルマヤンとリング・フレディとしては、引っ越し先に適しているとは思わなかった。
「それ以外にもとびっきりの物があるんだよ。先んじて、確保するために護衛が欲しいんだ。アーキバスと戦うよりはマシだろ?」
「えっと、つまり。動かしても問題ない程度の戦力を使いたいってコト?」
ツィイーが不安げに声を上げた。インビンシブル・ラミーやヴォルタは襲撃に来る無人機達を撃破しているし、ラスティも機体の外装をカムフラージュしたオルトゥスを用いて迎撃に当たっている。
ドルマヤンやフラットウェルも兵士達の士気を下げたりしない為にも重要だし、リング・フレディも六文銭も護衛として必要な存在だった。つまり、カーラの言うザイレム確保は『あまり』で行う必要があった。
「待ってくれ! ツィイーは実戦経験も少ないんだ!」
「でも、ACを動かせるなら数少ない戦力だ。ダナム、アンタも戦力としては微妙だから、そっち方面で動いてくれ」
アーシルの抗議を跳ね除けて、カーラはツィイーとダナムの二人を指名した。いずれもアリーナ下位であり、戦力としてはあまりにも心許なかった。
「良いだろう! 俺に出来ることがあるならば、従うぞ!」
十分なやる気に対して、全くパイロットとしての技量が追い付いていないことに、フラットウェルは何とも言えない表情をしていた。
一方で、思いっきり不満な表情をしていたのはノーザークである。カーラが向かわせる先に何もない訳がない。
「ね、姐さん。後1人位、付けて貰えませんか? そう。例えば、レイヴンとか! 彼女がいれば100人力ですよ!! というか、彼女だけ向かわせればよくないですか!?」
言外に、この2人では頼りにならないと言っているも同然だった。これに対して、抗議の声を上げたのはツィイーであった。
「先日も迷惑を掛けたばかりなのに? というか、彼女の機体ってアーキバスに拿捕されたままじゃ?」
「だから、私も協力の要請は諦めていたんだけれど。まぁ、直接動く奴が言うんなら、連絡位は入れてやるか」
~~
「621。仕事の時間だ。カーラから調査依頼が入っている」
ベイラム基地内。シミュレーターを用いて、ペイターと新機体の訓練に励んでいた所に、ウォルターが仕事を持って来ていた。
「こんな時期に調査依頼とは、暢気ですねぇ」
ペイターが軽口を叩いていたが、勿論これは本心ではない。むしろ、こんな時期の依頼が重要でない訳がない。
「え? 何処の?」
「ザイレムだ。以前も調査に訪れたことがあるだろう?」
あの時は、徘徊していたドルマヤンの保護も同時に頼まれていたが、またも赴くことになるのかと。
「ベイラムから許可は出るんですか?」
「直接、アーキバスと交戦したりするわけでは無いから問題ない。それに、新しい機体の慣らしも必要だ」
レイヴンが今までに使っていた機体はアーキバスに拿捕されたままだ。ベイラムで新たに機体を組んだが、シミュレーターで動かすのと実際に動かすのはまた別物である。
強化人間である彼女ならば、習熟に多くの時間は必要としないだろうが、それでも慣らしは必要だった。
「行くー!」
「分かった。では、今から向かってくれ」
「うん!」
いつも通り、二つ返事で引き受けて彼女は格納庫へと走って行った。ルビコン内では、ベイラムとアーキバスの苛烈な戦闘が続いている。
「……私達の出番も、もう少ししたら。ですかね?」
「恐らくはな。場所がザイレムとなるなら、尚更」
先んじてカーラ達が一手を打ったのだろう。願わくば、これらの動きがアーキバスに悟られないことを祈りつつ、ウォルター達は通信室に移動していた。