戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】 作:ゼフィガルド
「頭領とチャティはザイレムの掌握に行ったそうだけれどよ」
グリッド086は再びアーキバスの攻撃を受けていた。以前までの襲撃とは比べ物にならない程に戦力が投下されており、本気度が伺えた。
迎撃に当たっていたラミーのスコアもとんでもないことになっており、あちらこちらで咆哮が上がっていた。
「みんな!! “コーラル”キメろぉぉ!!」
「コーラルパチパチボーン!!」
「あぷぷぷぷ」
ドーザー達を煽動しているのは、ルビコン解放戦線のトップであるサム・ドルマヤンだった。彼らの扱いを熟知しているのか、戦場の恐怖をコーラルで凌駕した動きは驚異的という外なかった。
BASHOフレームと言う旧時代のACを用いながら、投下される無人機達をパルスブレードで次々と切り裂いていく姿は、老いを感じさせない獰猛な立ち回りだった。LC達も距離を取って狙撃銃で撃ち抜こうとするが、ミサイルや砲弾の雨が決してそれらを許さない。
「アーキバスのゴミ共が! 手間増やすんじゃねぇ!」
「帥父。気兼ねなく舞って下さい! 後ろは我々に!」
ヴォルタのキャノンヘッドとリング・フレディのキャンドル・リングの砲撃が、狙撃体制を取ろうとしたLC達の動きを制限していた。
これらの存在を排除せんとするエースである2機のヴェスパー部隊長に対しては、3機のACが対応していた。
「新機体の調子はいいみたいだな。『レオン』?」
「なんのことかな! V.Ⅲ!」
オキーフのバレンフラワーと一騎打ちを繰り広げているのは、見慣れない軽量機体だった。
エルカノがシュナイダー社から回されたフレームを研究、解析して新たに作り上げた『ALBA』シリーズで構成された機体『スティールヘイズ・オルトゥス』を用いているのはラスティだった。
「新たな翼で何処まで羽ばたける? それとも、鴉に夢でも見たか?」
「私が彼女に対して夢を見るなど、おこがましい。だが、生かされた以上! 私にはルビコンに自由を齎す使命がある!」
『BML-G1/P29CNT』から発射されたマイクロコンテナミサイルに対して、『EL-PW-01 TRUENO』から発射されたニードル弾が突き刺さり中空で爆発した。
しかし、空中戦の駆け引きに秀でたオキーフは、直ぐに距離を取って『Vvc-760PR』のチャージショットをオルトゥスの進行方向に向けて放っていた。
このまま突っ込めばプラズマ爆風に巻き込まれてしまう。回避した機動の先には、『MA-J-200 RANSETSU-RF』から放たれた弾丸が迫っていたが、ラスティは『Vvc-774LS』で切り落としていた。
「自由か。是非とも見てみたい」
オキーフは攻撃の手を緩めることはなく、『Vvc-70VPM』から放たれたプラズマミサイルがグリッド086の上空で爆破を引き起こしていた。
一方、V.Ⅰのフロイトはシノビとツバサの2機を相手に押し気味に戦っていた。数の有利を物ともしない、未来視とさえいえる動きで彼らを翻弄していた。
「ツバサの方は御しやすいが、シノビは面白い動きをするな。まるで、こちらに動きを読ませることを前提に動いている様だ。これも日系の技術か?」
「そんな所だ。ここまで直ぐに対応されるとは思ってもいなかったが! 貴様、サトリか?」
嵌め手。と呼ばれる一連の所作であったが、最初の内はフロイトの虚を突くことが出来ていたが、直ぐに対応をされていた。
「ほぅ、そう呼ぶのか。お前達を倒したら、次はトップにでも相手をして貰おうか」
「六文銭。奴の好き勝手にはさせんぞ!」
「応!!」
グリッド086ではルビコニアンの粋とアーキバスの粋とも言える者達による決戦が行われていた。その戦場の傍ら、安全地帯へと女子供を避難させたアーシルは願っていた。
「(ツィイー、ダナムさん。それと、独立傭兵の人。そっちも無事にいてくれ。私達もなんとか生き延びてみせる!)」
~~
「動きが遅いぞ! レイヴン!」
『HML-G2/P19MLT-04』から放たれたミサイルが、レイヴンの機体へと猛進する。以前までの彼女なら余裕で逃げ切っていたが、今は何とか当たらずに済んでいると言った具合だった。
恐らくだが、ベイラムから回された機体が彼女の動き方に合っていないのだろう。そう判断したスウィンバーンは攻勢を強めた。時間を掛ければ、彼女は機体を完璧に扱いこなすと判断してのことだった。
『レイヴン。焦らないで下さい。機体の重量が違うのですから、いつもの調子でブーストを吹かしても推進距離が違います』
「ん」
建物を遮蔽物として用いながら、ガイダンスとの距離を詰めようとするのだが一向に詰まらない。しかし、態勢を立て直す程に距離は開けない。
「こうもあろうかと、貴様がシミュレーターに残したデータは研究し尽くした。挙動や癖まではそう簡単に変えられまい!」
人間、自らが敗北した記録と言うのは目を逸らしたくなる物である。だが、スウィンバーンは不屈であった。自らの醜態と無様さから目を逸らさず、来るべき時に備えていた。彼の勤勉さは、正に今。結実していた。
だが、レイヴンもまた彼の動きには釣られまいとしていた。ハンドミサイルによる牽制にも限界はあるし、『EARSHOT』はまず当たらない。虎視眈々と機会を窺っているが、この戦場を立ち回っているのは彼女だけでは無かった。
「畜生! 畜生!」
アームを寸断されたツィイーは逃げ回るしか出来ない。機動力の差があっても追いつかれないのは、普段から入り組んだ場所で行動をしているが故だろう。と言っても、捕縛されるのは時間の問題でもあったかもしれない。
ノーザークも逃げ回りながら思い出したように攻撃をしているが、まるで効果を上げていない。唯一、ダナムの建造物破壊による攻撃は、LC達の進撃を妨げたりはしていたが撃破には至っていない。
「レイヴン! 貴様が降伏をすれば、この3人を見逃してやろう! 閣下も貴様の御帰還を所望しておられる!」
【レイヴーン! 助けてくださーい!!】
『ここにいる者達は自らの意思に従って、赴いた者達です。降伏する必要はありません』
【助けて―!!】
ツィイーやダナムが闘志を奮い立たせている中、ノーザークの悲鳴と助命だけが響いていたが、誰も聞く気はなかった。
とは言え、戦闘を長引かせれば有利になるのはスウィンバーン達の方である。機体を捕らえれば人質として使えるし、LC達も攻勢に加わることが出来る。
焦ってはならないが、早期の決着が望まれるのも事実だった。ダナムが破壊して回っている周囲の建物の状況を見た上で、彼女はガイダンスに向き合った。
「行くよ」
『サポートは任せて下さい』
背面のブースターが火を噴く。有効打を与えられる距離まで肉薄できると踏んだ上でのオーバーブーストだった。これに対して、スウィンバーンの反応は早かった。彼女がOBの挙動をしたと同時に『EARSHOT』を放った。
耳を劈く一撃は当然命中しないが、回避の為に取った挙動で少しだけ推進距離が落ちるのを見た。続けて、放ったハンドミサイルは『SG-027 ZIMMERMAN』によって撃ち落とされた。
「うぉおおおお!」
いつの日か。彼女と初めて相対した時のことを思い出した。あの時も、この重ショットガンによってガイダンスは散々に打ちのめされた。
OBの加速を乗せた一撃に対抗するべく『VP-61PS』を展開した。一番出力の高い瞬間からずらす様にして、2連射が放たれた。幾らか軽減されたが、凄まじい程の衝撃が来た。……だが、制御不能(スタッガー)には陥らなかった。
「……足りない!」
『レイヴン! 回避を!』
「貰った!」
ベイラムは彼女の活躍に惚れこみ、『SG-027 ZIMMERMAN』を量産した。しかし、数を配備する為に構造を幾ら簡略化したことで生産性と引き換えに性能が下がっていた。彼女を信奉する余り、得物を劣化させていたのは皮肉と言う外なかった。
これらの猛攻を凌いだスウィンバーンは、チャージによって露出させたコアロッドをレイヴンの機体に突き立てた。凄まじい放電が行われ、衝撃値が迸った所にハンドミサイルが突き刺さる。
『制御不能(スタッガー)!?』
エアが悲鳴を上げた。殆どの攻撃を避けるレイヴンが、制御不能(スタッガー)に追い込まれたパターンは少なく、彼女もまた立て直すのに時間を必要とした。
このままでは撃破される。再び、スタンバトンのコアロッドにチャージされて行くが、ふと2機に影が覆い被さった。何事かと思えば、彼らに目掛けて建物が倒壊しようとしていたのだ。
「レイヴン! 今の内に逃げろ!」
『ダナム! そうか、彼が!』
彼は逃げ回りながらも、自分達の戦いの方も見ていたのだ。タイミングを見計らって、この様な攻撃をして来たのだろうが。
「わわっ」
『レイヴン!?』
スウィンバーンは慌てて回避したが、機体の姿勢制御に勤めていたレイヴンは倒壊する建物を避けられない。巨大な質量が彼女に降り注いだ。
~~
『レイヴン。無事ですか?!』
「ん……」
レイヴンは気絶から目を覚ました。押し潰されたかと思っていたが、自分達は生きていた。ザイレムから景色は一変しており、何かの内部に居るようだった。
『どうやら、ザイレムには地下があった様です。この空間は一体』
「……こっち」
エアも困惑する中、レイヴンは大破した機体を無理矢理に動かして何処かへと向かおうとしていた。足取りに迷いはない。
『レイヴン? この場所を知っているのですか?』
「知らない。でも、呼ばれている」
ボロリとアームが落ち、レッグが欠けた。それでも進んだ先にはハンガーがあった。何故、この場所を彼女が知っているのだろうか? と考えた時、ふとエアは地表とのデータを見比べていた。
『ここは、最初に貴方が呼んでいると言っていた場所で』
「いた」
ハンガーには機体が格納されていた。あまりにも異質なシルエットと雰囲気を放っていた。真っ赤に塗装された機体は血塗られている様に思えた。そして、何処となく既視感を覚えもした。レイヴンは迷うことなく機体を乗り捨てた。
『まさか、この機体に乗り込むのですか!?』
「うん。エア、サポートをお願い」
武装もフレームも何もかもが未知であると言うのに、レイヴンは当然の様に乗っていた。一体、いつから存在している機体だと言うのか。電源を立ち上げ、OSが表示される。
『IB-C03。HAL 826。これは、技研の』
技研の兵器だと言うのに有人仕様で作られていることを疑問に思いはしたが、動力源を調べて、彼女はさらに驚いていた。
『これは、コーラルジェネレーター!? まさか、レイヴンを呼んでいたのは』
「多分ね」
赤い粒子が舞う。エアと違い、言葉を持たないコーラル粒子の群れは叫んだりはしない。ただ、言いようのない不快感が二人を襲った。
『使う。のですね?』
「ん」
顔をしかめながら、彼女は右腕を掲げた。チャージされたビームが天井を突き破り地表までの道を作った。HALが舞う。その軌跡に赤い残滓を残しながら。