戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼72件目:AM「私の計算は完璧です。鹵獲されたであろう兵器の弱点は把握していますし、5分前に行動するなんて切羽詰まった真似はしません」

『オールマインド。彼女はHALを入手したわ』

「セリア、ご苦労様です。データの収集と掌握は此方の方で行いますので」

 

 『HAL 826』を手に入れ、地上部へと舞い戻ったレイヴンが戦闘を再開している傍ら、地下空間の一角ではスッラとオールマインドの機体が、カーラ達の機体と向かい合っていた。

 

「アンタらか。以前、私達のことを覗いていた連中は」

「はい、その通りです。お待ちしておりました、シンダー・カーラ。チャティ・スティック。貴方達を排除させて頂きます」

 

 オールマインドが操る『MIND γ』は逆関節構造の脚部から生み出される跳躍力で、チャティのサーカスを蹴り飛ばしていた。すかさず追撃を入れようとした、エンタングルに大量のミサイルが襲い掛かる。

 幾重にも軌道を変化させる攻撃を全て避け切るのは困難であるが、下がりながらも迎撃するスッラには歴戦の技量が見て取れた。

 

「こんな所で待ち構えているなんて、アンタらは随分暇なんだね? 他にすることはないのか?」

「はい。ザイレムの制御を握りに来た貴方達を排除することが、最優先事項なので」

 

 どうやら、みすみすと明け渡してくれるつもりはないらしい。これだけ、目まぐるしく勢力が動いているのだから気付かれないかと考えていたが、想像以上に鼻が利く様だ。

 

「そう言うことだ。こんな物を制御できる連中と言えば、お前ら位だろうからな。厄介な猟犬も居ない。俺達を甘く見過ぎだ」

 

 スッラが『44-143 HMMR』プラズマスロワーを振るうと、カーラのフルコースを打ち据えた。

 自身のパイロットとしての技量を補う為に誘導性の強いミサイル系統の武器を用いる彼女は、ベテランパイロット達が織りなす近接戦を捌くのを苦手としていた。なので、予備策は幾らか引っ提げていた。

 

「チャティ! 下がるよ! アレを使うぞ!」

「了解だ、ボス」

「逃がすと思っているのか?」

 

 早々に戦いを放棄して撤退していく2機を逃す訳もなく。スッラ達が追い打ちを掛けようとした所で、レーザーとミサイルが飛んで来た。見上げれば、頭上にはフワフワと無人機が揺蕩っていた。

 

「IA-24: KITE。以前、彼女がザイレムの調査を頼んだ時に接収した無人機でしょう。プラズマキャノン装備型とレーザーブレード装備型がいる様です」

「コイツラを待機させていたのに出向いたというかのか。もしや、罠にはめられたのは俺達の方かもしれんな」

 

 空間内を飛び交うKITEの攻撃を掻い潜りながら、スッラはプラズマスロワーを用いて弾き飛ばしては、ビリヤードの様に別機体に命中させるという離れ業を行っていた。

 一方、オールマインドはKITEの回避機動を嘲笑うかのような『44-142 KRSV』の正確な射撃で撃ち落としていた。

 

「その通りさ。念の為にと思って持って来たのが幸いしたよ。チャティ! 私達のことを待ち侘びていた様だし、盛大に歓迎してやりな!」

 

 先程までチャティが操っていたサーカスは待機状態になっていた。代わりに、巨大なタンクが稼働していた。ガトリング、ミサイルランチャー、レーザー砲を身にまとった火薬庫と称するべき兵器。かつて、惑星封鎖機構が用いていた特務機体『AAS02: CATAPHRACT』だった。

 

「ほぅ、コイツはウォルターの犬共を葬った兵器か。節操がないな」

「スッラ、弱点は中心に据えられたMT部分ですが……」

 

 当然だが、弱点が露出している訳もなく。前面は装甲板でキチンと覆われていた。これにはオールマインドもうめき声を漏らした。

 

「何故、弱点をいつまでも残しておくと思ったんだ?」

「同じAIながら愛嬌の無い方ですね」

「すまない」

 

 AI同士、妙に律儀な返答を繰り返しつつ、チャティは淡々とカタフラクトを動かしていた。室内にミサイルが踊り、ガトリングが周囲を食い散らす。

 スッラやオールマインドが攻撃を加えようとするが、堅牢な装甲には攻撃が通らずにいた。

 

「ボス。上手く言えないが、この機体は動かし甲斐がある」

「そう言うのを楽しいって言うんだ。笑いな!」

 

 地上での激戦とは別に、ザイレムの地下空間でもまた激戦が繰り広げられていた。

 

~~

 

「レイヴン。なのか?」

 

 スウィンバーンは己の目を疑った。このザイレムに地下空間があることにも驚いていたが、天に向かって赤い光が放たれたかと思えば、全く未知の機体が姿を現したのだから。

 

「隊長! アレは!?」

「構わん! 撃て!」

 

 だが、直ぐに冷静さを取り戻して命令を下した。アレは動き出す前に潰さなければならない。今日まで生き延びて来た、スウィンバーンの生存に特化した本能が警鐘を鳴らしていた。

 一斉にレーザーを照射したが、レイヴンの機体を包み込む赤いバリアに遮られた。パルスバリアは緑色のハズなので、こんな防壁は見たことが無かった。

 

「すごーい。よく見える!」

「散開!」

 

 スウィンバーンの掛け声と共にLC達が散開する。彼女は右腕部の射撃武器である『IB-C03W1:WLT 011』のチャージを終えていた。出力を絞ったのか、コーラル粒子によって形成された砲撃の見た目は、レーザーの様だった。

 ただし、彼女はこの砲撃を用いて、空中機動を描くLC達の手足を遠距離で溶断していた。何が起きたか分からず撃墜されたパイロット達は辛うじて脱出をしており、レイヴン以外の機体に当たっていたLC達も異常を察知していた。彼らに動揺させまいと、スウィンバーンは号令を飛ばす。

 

「貴様ら! 持ち場を離れるな! 当初の担当通り」

「ギャァツ!」

 

 彼の制動も空しく、各所で行動している随伴機達が次々に撃破されて行く。それも手足のみを狙って撃墜する程の実力差を見せつけられながらだ。

 今までも、彼女の能力は常軌を逸していたが、新たな機体を用いた彼女は怪物めいた能力に目覚めていた。次々と友軍の反応が消えていき、最後に自分と向かい合っていた。

 

「やっほー。リベンジ、リベンジ」

「嘗めるなッ!」

 

 ハンドミサイルを放った直後のことである。推進方向には、既に赤い球体の様な物が放たれており、少しの時間を置いてコーラル粒子による爆破を起こして、ミサイルを呑み込んでいた。

 背を向けて逃げる訳には行かないと、ガイダンスが手にしたスタンロッドのチャージを始めた時には、既にHALは左腕部に赤い刃を展開して両腕部、背部兵装、脚部を寸断していた。

 

「あ……」

 

 食い下がったつもりだった。実際に1回目は勝利を収めたと思っていた。だが、自分と彼女には埋めがたい程の差があると痛感させられた。

 ならば、せめて。彼女が新しい力を手に入れたことを伝えねばと通信を入れようとするが、聞こえて来た声は。

 

「やっほー。先日ぶりぃ」

「レイヴン!? 貴様、どうやって通信のジャックを!?」

「また、持ち帰るねー」

 

 そして、いつかを思い出す宣言。あの時と違って、胴体部分だけしか残っていないガイダンスはスッカリと軽くなっていた。脱出レバーも作動せず、通信もジャックされた彼は再び彼女に拉致されていた。

 

~~

 

「ビジター。今回の調査は大変なことになっちまったね」

 

 戦闘終了後、レイヴン以外の皆が満身創痍となっている所にカーラから通信が入って来た。これには巻き込まれたノーザークも声を上げずにはいられなかった。

 

「何が調査ですか!! こんな戦闘行為に参加させやがって! 殺す気ですか! 騙すのは皺と年齢だけにしとけ!」

「ハハハハ。それだけ元気なら、ノーザークには迎えを寄こさなくても良さそうだね」

「アッスイマセン」

 

 器用なことにビタープロミスで土下座動作をしていた。戦闘直後の興奮と言うことでお目溢しを貰えたのか、迎えの運搬機がやって来ていた。だが、抗議をしたいのはノーザークだけではない。ダナムが声を上げた。

 

「カーラ。一体、貴様らはこのザイレムで何をしていたと言うんだ? それに、レイヴンの機体……」

「分かった。話すよ。このザイレムってのは、本当は都市じゃない。アンタならこれを見ればわかるだろ?」

 

 ダナムは機体に送られて来たデータを見た。記されていたのは、洋上都市ザイレムの全体図であり表面上には建物が林立していたが、地下には空間が広がっていた。そして、それはとある形を取っていた。

 

「これは、船か? しかも、こんな巨大な」

「そう。ザイレムは都市じゃない。船なんだ。コイツを用いて、バスキュラープラントにぶつけるつもりだったんだけどね。先に潜伏していた奴らが、ご丁寧に内部を荒らし回って行きやがった。修理にもかなりの時間が必要になる」

「ちょっと待って。アーキバスの連中は私達と相対していたハズじゃ?」

 

 ツィイーが知る限り、この都市に来ていた他の勢力はアーキバス位しか無い訳で、誰が工作をしていたと言うのか。

 

「企業とは別だ。この間、私達の会談をのぞき見していた奴らだよ。まぁ、起動する前に叩きに来るのは賢い選択かもしれないね」

「確かに。起動した後に対処していては、遅すぎるからな」

 

 何故、この2人はこんな当たり前の会話をしているのだろうかと。レイヴン以外の全員が思いつつも、今後の作戦に支障を来したという事実が重く圧し掛かった。

 

「でも、システムの方は掌握できた。ソフト面の異物を取り除きつつ、ハードの修理は吶喊で間に合わせるよ。皆、ご苦労だった」

 

 ヘリに破損した機体と撃破されたLCのパイロット達が載せられていく。レイヴンは去って行くツィイー達に手を振って見送った後、改めてガイダンスをHALの両手に抱えた。

 

「しゅっぱーつ!」

「ふん。好きにしろ」

 

 敗者が交渉出来る訳もなく。スウィンバーンはコックピットで揺られながら、ベイラムの基地へと帰還していく。……その道中のことである。

 

「ねぇ、スネイル。大丈夫?」

「……大丈夫。とは言わん。貴様が居なくなってから、閣下の憔悴ぶりは見ているこっちも気の毒に思う位だ」

「そう、なんだ」

 

 ここに来て、初めて彼女は気落ちしていた。すかさず、その空気を感じ取ったスウィンバーンが続ける。

 

「事の顛末は聞いたが、あの時。スティールヘイズを操縦していたのは、やはり貴様なのか?」

「うん。ラスティ、助けたかった」

 

 もしも、あの時。彼女が機体ごとアーキバスに戻って来たとしたら、ラスティへの厳罰は避けられなかっただろう。それこそ、今行っているファクトリー行きの様な懲罰が遂行されていたかもしれない。

 

「貴様は何の為に戦っている? 飼い主の為か? ルビコニアンの為か?」

「何の為……?」

 

 これほどまで力を持つ人間が何の主義も主張もなく戦っていることに不気味さを感じた。何かの為に力を手に入れた訳では無いのだと。彼女の歪な在り方にスウィンバーンは何とも言えぬ苛立ちを感じていた。

 

「自分の幸せだとか。自由だとか。そう言うのに興味はないのか!」

「考えたことない」

「考えろ!!」

 

 先程の戦場とは打って変わって、今度はスウィンバーンが攻勢に出ていた。とてもではないが、捕虜とは思えないふてぶてしい態度に、エアが大きなため息を吐いていた。

 

『仲がよろしいですね……』

 

 ウォルターとはまた違う面倒見の良さを発揮する彼とレイヴンの口論を見守りながら、エアはHALの操縦をサポートしていた。

 

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