戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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ブルートゥ「では、私も」


依頼74件目:レッド「いや! こんなに盛って貰わなくても!」ババア「もっと食いな!!」

「態々、こんな所で食事を取らなくても良いだろう?」

 

 ベイラム、面会室。もはや、看守とも顔なじみとなったレッドはブルートゥを連れてメーテルリンクと共に昼食を取っていた。

 アーキバスの物と比べて、ベイラムの食事は意外と手の込んだ物が多かった。ぶつ切りの具材が浮かぶスープにこんもりと盛られたマッシュポテト。横にはビスケットかと思う位に固いパン。

 とにかく体力を付けろと言わんばかりのメニューだった。捕虜である彼女の食事は幾らか慎ましくはなっていたが。

 

「いいえ、ご友人と共にする食事の時間は良い物です。私は彼と一緒に取る食事の時間が楽しいですし、レッドは貴方と共に取る食事を楽しんでいる。ご友人が喜んでいるのなら、私も嬉しい」

 

 気恥ずかしくなるようなセリフを平気で吐くのが、ブルートゥの短所でもあり長所でもあった。そして、ドーザーとは思えない位に食事作法も綺麗だった。

 猟犬部隊(ハウンズ)のメンバーの中では、レイヴンに次いで素性のよく分からない男であった。食事中の話題がてら、レッドが踏み込んだ。

 

「何故、お前はレイヴン達と同行しているんだ?」

「それは、私が彼女と友人だからです。ウォルター、1317、ナイルとも」

「義理人情で付いて行くのか。だが、ウォルターもレイヴンも傑物であることには違いない。路頭に迷う傭兵も多い中、彼らに付いて行くのは賢明だろう」

 

 メーテルリンクも頷いていた。だが、レッドは思っていた。友人のメンバーに1人足りなくね? と。だが、該当人物の名前を上げようものなら楽しいランチタイムは終焉を迎えてしまう為、黙っていた。

 

「レイヴンとは何時から友人に?」

「始めて出会った時からです。一目見た時から、彼女とはご友人になれると思っていました。そして、予想通りでした」

 

 そこから、まるで詩を朗読するかのようにブルートゥは初めての出会いを語り始めた。虚言か現実かも曖昧になるよう話だったが、彼らならやりそうな気がしていた。

 

「この出会いには幾ら感謝しても感謝し足りない。カーラ達とも和解が出来ました。そして、素晴らしい友人達とも巡り合えた。……もしも、あの場に来ていたのが彼女でなければ、私はきっと。単なる狂人として、散っていたのでしょうね」

 

 カーラからは憎悪されたまま。謝罪と贖罪の機会もなく、ルビコンの塵となって消えていた未来は想像に容易い。

 だが、事の始まりであるRaDから資金や資源を持ち逃げした件については、レッドも気になることが幾つかあった。

 

「お前が排除されそうになった原因となったのは、RaDから資金や資源を持ち逃げしたからで。それらを持ち出したのは、お前の中にいる『カエサル』の為だったか?」

「はい。彼はカーラの開発していた物を恐れていました。争いが更に加速するのではないのかと」

 

 コーラル集積の護衛として立ちはだかっていた障害の排除に、RaDのオーバードレールキャノンは大いに役立った。そして、ベイラムはトントン拍子でバスキュラープラントを手に入れるに至った訳だが。

 

「私には事情が入って来んから何とも言えないが、争い自体は過熱してそうだ」

 

 捕虜であるメーテルリンクには外部の情報は殆ど入って来ないにしても、基地内全体の雰囲気はボンヤリと感じていたし、アーキバスの方針的に動き出さない訳がないとも考えていた。

 

「流石にそれについては答える訳には行かない。ただ、君が捕虜としての態度を全うするなら、俺が君を守ろう」

「よく言う。せめて、アリーナランクで私よりも上の順位に来てから言え」

 

 未だにアリーナの下位でくすぶっているレッドとしては、面の上がらない意見だった。とは言え、彼女も満更ではなさそうだった。

 こんな歓談を眺めていると自分だけではなく、カエサルも楽しそうにしている様子も伝わって来た。

 

「ご友人にはキチンと彼女を守って頂きませんと。水星に御招待する約束もあるのでしょう?」

「その通りだ。この事を妹に話したら、驚いていた。『是非とも連れて帰って来て下さいね!』って、念も押されたよ」

「見栄を張っていた部分については釈明をするとして」

 

 戦いが終えた後のビジョンが2人には見えているのだろう。微笑ましく思う反面、自分が立ち入るべき場所ではないという風に思いつつ、ブルートゥもまた。今後について夢想をしていた。

 

「(ウォルター達はどうするつもりでしょうか? もしも、彼らがまだ何かをするつもりなら力添えを。全てを終えたとしたら、またカーラ達と一緒に)」

 

 そんな未来が訪れるだろうか? 今はこうして、彼とも親交を育んでいるが、オーバーシア―の目的を考えれば、将来的には裏切ることになる。

 きっと、ベイラムも死に物狂いで抵抗するだろう。バスキュラープラントには並々ならぬ資源を投入している。レッドガン部隊とも相まみえることになるだろう。

 イグアスには懐柔を書けたとしても、全員が靡くとは限らない。その時、自分は彼らを引き裂くことが出来るだろうか? この青臭くも善性を掲げる青年と、全てに裏切られ続けた先でようやく安堵を見つけた彼女を。

 会話が弾めば、弾むほど。ブルートゥは自らの心が騒めくのを自覚せずにはいられず、カエサルもまた。そんな彼の動揺を感じ取っていた。

 

~~

 

 オキーフはザイレムへと偵察に来ていた。先日、機能を停止させたグリッド086の面々がここへと逃げ込んでいたからだ。

 既に要塞化が始まっており、RaD製のMTが多数配備され、ドローンやバリア発生装置、無人機なども配備されており攻略には相当な戦力が必要とされるだろう。

 警備の網に引っ掛からない様にある程度の情報を収集して帰投しようとした所、暗号通信が入って来た。……彼はこのパターンを知っている。罠かと思い、一瞬取るのを躊躇ったが、応答した。

 

「応答ありがとうございます。V.Ⅲオキーフ」

「なんだ。貴様らとは手を切ったはずだぞ。オールマインド」

 

 彼女達が掲げているコーラルリリースには一時期賛同していたが、考えを改め敵対を選んだというのに。今更、何の用なのか。

 

「えぇ。今も我々は目的を諦めていません。ですが、このままザイレムを放置することはアーキバスとしても好ましくないはずです。何故なら、RaDと手を組んだウォルター達はこの洋上都市に偽装した巨大船を用いてバスキュラープラントを破壊しようとしているのですから」

 

 ふと、オキーフはウォルターがアーキバスに囚われていた時に話した内容を思い出した。彼はコーラルを好ましく思っておらず、人間の手に余る物と考えていたことを。

 

「お前の言うことが真実であるかという保証はない」

「この話が虚偽であるならば知らせる理由がありません。貴方達にとっても我々にとってもバスキュラープラントは必要な物のハズです」

 

 だとすれば、腑に落ちることは幾らかあった。RaDと解放戦線のメンバーが手を組んでいるのは、バスキュラープラントの破壊という目的が合致しているからだろう。

 ルビコニアン達を搾取から遠ざけようとしていた、親友のことを思い出した。彼らのことを思い、コーラルリリースの可能性を排除するためには虚偽の報告をすることも考えたが。

 

「俺は必要な情報を提出するだけだ。お前達と手を組むつもりはない」

「それで構いません」

 

 データにザイレムの全体図も渡された。そもそも、V.Ⅶがここで捕縛された以上、アーキバスの干渉は避けられない。

 V.Ⅲとして。得た情報を引き渡さない訳には行かない。だが、このザイレムの構造を知った所でバスキュラープラントにぶつけるかどうかなど判断はできない。星外へと脱出するための手段として使うだけかもしれないのだから。

 

「(いずれにせよ、今のスネイルに出し惜しみなどは出来んからな)」

 

 以前よりも、明らかに猜疑心が強くなった男の前で出し惜しみは悪手だ。入手した設計図も含めて、開示せざるを得ない。

 その時、スネイルが取るであろう判断のことを考えて、オキーフは一度だけザイレムの方を振り返った後……アーキバスへと帰投した。オールマインドからの通信はもう入って来なかった。

 

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