戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】 作:ゼフィガルド
「なるほど。あの洋上都市は、巨大船と言う訳ですね。RaDとルビコン解放戦線の連中は星外への脱出を試みている可能性もあると」
偵察任務から帰還したオキーフはスネイルに報告書を上げていた。その中には、オールマインドから渡されたザイレムの設計図も含まれていた。ただし、彼女が話した内容は含まれていない。
「どうする? 連中がルビコンから立ち去るならば、態々追い打ちを掛ける必要もなくなると思うが」
「まだ、決まった訳ではありません。ですが、これらを用いた所で企業との勢力図を覆せる訳ではありません。実際に、逃げる為に使うのが合理的ではあるのでしょう。……あるいは、我々に対する怨恨が深ければ、バスキュラープラントにぶつけると言う使い方も出来るかもしれませんが」
感情や怨恨で行動するならば、相手に痛手を与える選択としてあり得る話だった。ただし、この作戦を取った場合はRaDやルビコン解放戦線の連中は拠点を失うことにもなりかねないが。
「バカげている。第一、そんなことをすれば延伸したバスキュラープラント内に蓄積されたコーラルに引火して、ルビコンの連中諸共道連れだ」
「逆に言えば、道連れと言う手法としては使えるという話でもありますね。……。オキーフ、この事をベイラムにもリークしなさい」
現状、ベイラムはアーキバスに対してのみ戦力を割いており、ルビコニアン達に関しては無干渉のスタンスを取っている。だが、彼らもまたコーラルを搾取していることには変わりなく、ルビコニアン達にとっての怨敵ではあった。
「了解した」
ベイラムに伝わればどうなるか。バスキュラープラントの延伸工事を進めている彼らとすれば、少しでも懸念は排除したい所だろう。だが、アーキバスとの対決以外に戦力を割いている余裕はない。……とすれば。
~~
「ザイレムの確保。だと?」
「上の方から通達があった。先日、グリッド086を追い出されたRaDと解放戦線の連中が、ザイレムを拠点としてバスキュラープラントへの攻撃を企てているそうだ。だが、我々は連中を相手にしている余裕はない!」
ミシガンからの通達を聞きながら、ウォルターは直ぐに下手人達が思い浮かんだ。スッラ達だ。
カーラ達に撃退されたと聞いて、今度は企業の力を使うことにしたのだろう。どういった形で彼らを煽動したかは定かではないが。
「猟犬部隊(ハウンズ)を向かわせろと言うことか?」
「そうだ! ベイラムに帰属してから、貴様らは目立った戦果を上げていない! 先日ザイレムから未知の機体を持って帰って来たこと! そして、捕虜にしたヴェスパー部隊長を引き渡さなかったことも含めて、上層部はお前達の恭順を疑っている!」
流石にベイラムも自分達を手放しで歓迎する程の間抜けでもないらしい。あるいは、以前からウォルター達と懇意であったRaDやルビコン解放戦線との交流を断ち切ろうと言う思惑も含まれていたかもしれない。
この依頼を断れば、いよいよ彼らとも敵対しかねない。バスキュラープラントの延伸工事のことを考えれば、企業の協力は欠かせない。
「忠義を示せと言うことか。……RaDにはG4もいるが」
「レッドガン部隊を抜けた時点で、こういった対立が起きることは予想していたことだ! 第一、奴も心配される程柔ではない!」
ミシガンの方は、かつての部下を手に掛けるかもしれない可能性を含めて、織り込み済みだった。ベイラムからの信頼を得る為にも本気で挑まねばならないミッションとなるだろう。
「分かった。任務を引き受けよう」
「そうか! では、今回のミッションにはG3とG6を応援に付ける!」
G5ことイグアスを回さなかったのは、ヴォルタと結託するのを避ける為だろう。もしくは、以前にRaDへ訪れた時に懐柔されたかもしれないと言う懸念も含めての選出だったかもしれない。
このことは直ぐに猟犬部隊(ハウンズ)に伝えられた。真っ先に反応したのはペイターだった。
「大丈夫なんですか? RaDが排除されて、ベイラムが制圧すれば。ウォルター達の目的は頓挫してしまうでしょう?」
「あぁ。だが、バスキュラープラントの延伸工事も完了しておらず、ザイレムの修理が終わっていないとすれば、目的を前倒しすることも出来ない」
だからこそ、早めに打診して来たのだろう。この任務の優先度はかなり高く、遂行の為にモタ付いていればやはり怪しまれてしまう。
「では、予めカーラ達に通達をすると言うのは? そうすれば、後々の奪還作業も行いやすくなるとは思うが」
「そんな奇妙な動きを察しないとでも?」
1317の提案が通る程、ベイラムもバカではない。彼らの衝突と摩耗を経なければ、ウォルター達に降り注いだ嫌疑は晴れることはない。
だからと言って、簡単に蹴散らせる相手ではない。ルビコン解放戦線にはV.Ⅳのラスティやドルマヤン。RaDには鹵獲した兵器の数々が稼働している。一筋縄ではいかない相手ばかりだが。
「よっし、次はカーラ達とだ!」
『凄いですよね。演技が一つも入っていないんですから』
レイヴンは特に拒否感なども見当たらず、やる気バッチリだった。多分、手加減はするが蹴散らすことに躊躇いは一つもないだろう。この迷いの無さは、皆としても羨ましくあった。
そんな彼女に拍手を送る人物がいた。かつて、RaDとガチで敵対したことのある男、オーネスト・ブルートゥだった。
「流石です、ご友人。ここまで気兼ねなく喧嘩を売れるとは。カーラへの信頼が見て取れます」
「いや、ただの馬鹿だと思うんですよ」
感極まっている彼に対して、ペイターがツッコミを入れても届く気配は見当たらない。ウォルターは暫し考えた。
「以前もグリッド086に押し入ったらしいな。まぁ、一応連絡は入れておいてやるか」
応援に付けられるレッドガン部隊のことも考えて、どの様な段取りを組むかという考えを捨てた。このままレイヴンを暴れさせた方が疑いも晴れるだろう。せめてもの情けとして、コッソリと連絡を入れた。
~~
「ボス。ビジターがベイラムの依頼に従って、ウチに喧嘩を売って来るらしい」
「【悲報】レイヴン氏。我々に矛先を向ける」
チャティが淡々と読み上げた報告に、絶望したノーザークは慌てる段階を通り過ぎて冷静になっていた。これに関して、カーラは大笑いしていた。
「大方、ウォルターがベイラムに尻を叩かれたんだろうさ。おい、バカ共! リベンジマッチのいい機会だ!」
「よっしゃぁあ!! 今度こそ、ぶちのめしてやる! 俺はインビンシブル・ラミーだぞ!」
「消し炭にして、余燼にしてやるぞ!」
ノリの良いドーザー達の悉くが号令を上げた。その先頭に立っていた、サム・ドルマヤンがあまりにも馴染み過ぎていた。
このノリについて行けないルビコン解放戦線のメンバーが呆然とする中、ヴォルタとラスティの二人は難しい顔をしていた。
「(あのクソ親父のことだ。ムカつくが、G13を回せば殺されることも無いレベルで撃退されると踏んでいるんだろうな。嘗めやがって)」
「(戦友。もしも、君が来ると言うのなら、初めて相対することになるな。……不思議だ。君には負い目ばかりがあると言うのに、借りを返したいと思うよりも先に、君より高く羽ばたきたいと思う自分がいる)」
奇妙なことに、考えていることは全く違うと言うのに2人して握り拳に力が入っていた。この中で、沈黙を貫いている六文銭に対してチャティは声をかけた。
「六文銭。何故、ビジターと戦うと言うのに皆は喜んでいる?」
「果し合いだ。我々の戦友とも言える相手が出向いて来るのであれば、一矢報いたいと考えるのが性だ。不謹慎ではあるが、拙者も昂っている!」
互いに排除し合う戦闘行為に、何故ここまで楽しみを見出せるかは理解が出来なかったが、先日のカタフラクトを操縦したことを思い出して、チャティは何処か納得にも近い感慨を抱いていた。