戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼76件目:大乱闘ルビコンブラザーズ

 ベイラムからの依頼を快諾したことにより、ナイルを除く猟犬部隊(ハウンズ)のメンバーは、G3五花海とG6レッドを引き連れてザイレムへと進んでいた。

 

「ヴォルタ先輩とも戦うことになるのかもしれないんですか」

 

 レッドもこの任務には難色を示していた。RaDには元G4であるヴォルタが働いていることは、皆も知っていることだった。一方、彼の就職を支援した五花海と言えば、大して気落ちした様子も見せていなかった。

 

「ルビコニアンデスワームの時も元気に救援に駆け付けてくれましたし、遠慮する必要はありません。何なら、快気祝いに一発ぶち込んでやりましょうか」

「良いですよねぇ。私、ベイラムのこういうノリ好きですよ」

 

 彼の軽口に対してペイターが口を挟んだ。だが、レッドは知っている。五花海の軽口はむしろヴォルタを信頼しているからこそ叩ける物であると言うことを。そんな胸中の思いを代弁する様に口を開いたのは、ブルートゥだった。

 

「可哀想なお友達。貴方の場合は、ガチで実行するから逆にソリが合わないと思うのですが」

「え? ガチで実行とは?」

「スネイルを殺し損ねました!」

 

 五花海は詐欺師である。ノーザークの様な小物ではなく、ベイラムの経済圏を混迷へといざなう程の傑物であるが故に、人間観察も得意としている。だからこそ、分かる。これはジョークじゃなくて、ガチでやったことのある奴だと。

 イグアスとヴォルタもミシガンに食って掛かることはあったが、一定の恩義を感じているが故の戯れの様に思っていたし、実際に彼らが総長を殺そうとしているのは見たことが無い。……故に、ペイターの異質さには五花海も乾いた笑いを漏らしていた。

 

「中々、ヴェスパーと言うのはファンキーな人材を飼っている様ですね」

「(五花海先輩が困惑しているのを初めて見た)」

 

 G2であるナイルからも報告を聞いていた身としては、作戦上仕方なく。という風に考えていただけに、ここまで忌憚なく話すことは予想外だった。

 場が何とも言えない空気になった所で、抗議の声を上げたのは、やはりペイターだった。

 

「何ですか、この微妙な空気! ブルートゥ! 貴方のせいですよ!」

「可哀想なお友達。少しは、自分を顧みましょう」

「てか、前から気になっていたんですが。何ですか、その『可哀想なお友達』って!? 人のことをおかしな奴みたいに表現しましてからに!」

 

 その通りだよ。と、レイヴン以外の全員が同じ感想を抱いた。ただ、彼の共感性皆無の理詰め作戦のお陰で事態が進展したケースが幾つもあるので、一概に非難できる物でもなかったが……。

 

「それは、かつての同僚に対してあのような仕打ちをしたことに関しても。おかしくはないと?」

 

 レッドが堪らず声を上げた。メーテルリンクと交流を育んでいる彼としては、実際の所。ペイターが何を考えているのかは気になっていた。いや、期待していた。

 

「はい。必要なことですから。でも、おかげでウォルターも1317も帰って来ましたし、結果は万々歳でしょう?」

 

 実際に結果だけを見れば、ベイラムとして何一つとして指摘することが無い物だった。ウォルター達を奪還した上、ヴェスパー部隊長をも再び捕縛出来たのだから。ひいては、レイヴンが心置きなく離れるお膳立てとしても機能していた。

 おかげで、こうしてRaDとルビコン解放戦線と言う不穏分子に対して戦力を向けられるのだから、やはり糾弾できる要素が無い。その渦中で、心に深い傷を負った者が居たとしても、企業としては些事でしかないのだから。

 

「ご友人。貴方と彼とは価値観が違うのですから、無理に理解せずとも大丈夫ですよ」

「……そうだな。うむ。そうしよう」

「皆違って、皆良い!」

「流石レイヴン! 良いこと言いますね!」

『レイヴン。良いことを言っている様に思えますが、そんな標語で流して良い物ではないと思います』

 

 多分、会話の流れを把握できていなくとも何となく会話を〆たいと考えたのか、レイヴンは良さそうな言葉を吐いていた。ペイターだけが同意していたが、この差異は埋められる物でも認められる物でもないので、空しく響くだけだった。

 彼らが無駄話をしている間にザイレムが見えて来た。向こう側もこちらを感知したのか、数機のACが出撃して来た。カーラの声が響く。

 

「よぅ、ビジター! どうしたんだい! ウチに遊びにでも来たのか!」

「いえ、我々はザイレムを接収しに来ました。こんな巨大建造物を放置しておくわけにはいきませんからね」

 

 五花海が返答をした。あくまでこれは建前でしかなく、彼らが企業の威光程度でビビる筈もないと踏んでいた。実際に、その通りだった。

 

「おいおい! ビジターと仲良くしている間に、上の奴らまでコーラルキメちまったのかい! じゃあ、先達としてアドバイスをくれてやるよ! 酔いを醒ましてから来やがれ○○○○!!」

 

 聞くに堪えない俗語(スラング)で締めた。となれば、もう残りは何をするか決まっている訳で、周辺一帯にドルマヤンの号令が響いた。

 

「消えゆく余燼にしてやれぇえええええええ!!!」

 

 警句として用いていた言葉は、より具体的にアグレッシブな運用のされ方をしていた。一切にミサイルを始めとした攻撃が襲い掛かり、慌てて全員が回避挙動を取る中、レイヴンが用いているHAL826が弾幕を潜り抜けてチャージを終えていた右腕を突き出していた。

 

「いぇーい!」

 

 『IB-C03W1:WLT 011』から放たれた、コーラル粒子による照射がザイレムに林立した建物と配備された機体達を景気よく焼き払っていた。パルスバリアは貫通し、無人機は撃墜され、砲台は沈黙し、MT達は吹っ飛んでいた。

 あまりの威力にG3とG6が愕然とするが、ザイレムの戦力はまるで士気を下げる様子が見当たらず、次々とドーザー達が出て来て迎撃に当たっていた。

 ペイターがゲラゲラと笑い、ブルートゥが感慨深く頷き、レイヴンがノリノリで蹂躙している中、このテンションに付いて行けないレッド達は頭を痛めていた。

 

「1317! 説明を求める!」

「連中のノリだろうな。少なくとも、懇意の勢力だからと言って手加減するような思考は持ち合わせていないらしい」

 

 ベイラムの企てとしては、ザイレムの戦力を削りつつウォルターとの関係を悪化させようと言う目論見があったようだが、そんな雰囲気はまるで見当たらない。あちこちで爆発が起きているのを見るに、確実に戦力は削れているとは思うが。

 

「いやはや、ここまで遠慮が無いとは思いませんでした。最も、彼女が好き勝手に出来る訳でもなさそうですが」

 

 五花海の指摘通り。彼女とHAL826を脅威に感じたのか、3機のACが彼女を抑えに掛かっていた。

 

「戦友! こうして相対するのは初めてだな!」

「あー! ラスティ! それに、六文銭とおじいちゃんも!」

「いざ! 尋常に!」

「レイヴン、エア。年甲斐もない話かもしれんが。その機体には! 不思議と高揚感を覚える! 覚悟!」

『あぁ。もう無茶苦茶ですよ』

 

 幾ら新機体に乗っていると言えども、エース級が3機掛かりで抑えに来たら、彼女としても対応する外ない。代わりに、残った面々がザイレムに取り付こうとするも弾幕が厚くて中々に乗り込めずにいた。

 最前線でミサイルとガトリングをばら撒いているマッドスタンプ以外にも、リング・フレディのキャンドル・リングやヴォルタのキャノンヘッドから絶え間ない砲撃が続いていた。

 

「俺は無敵(インビンシブル)・ラミーだぞ! 企業の奴らも敵じゃねぇ!」

「今更、ここに来て仕事増やすんじゃねぇ。殺すぞ!!!」

「ああ! 帥父! あんなにも楽しそうで!!」

 

 トリガーハッピーに陥っているのか、砲台を務める3人は随分と楽しそうだった。相手をする側は堪ったモンじゃないが。

 そんな混沌とした様子が繰り広げられているにも関わらず、ペイターは悠々と弾幕を回避しながらザイレムに上陸していた。と同時に、襲撃を受けていた。

 

「死ねぇえええええええええ!!」

「うわぁ!?」

 

 パルス刃が、直ぐ横を通り過ぎた。何事かと思ってみれば、そこにはベイラムとアーキバスのフレームを用いた混成機体であるビタープロミス。即ち、ノーザークが居た。コックピットでペイターは満面の笑みを浮かべた。

 

「貴方は! ノーザークですね! 死ね! カス!!!」

「うわぁー!!」

 

 いつぞやのアーキバスの接収作業を邪魔された恨みが噴出したのか、ペイターもまた本気でノーザークを殺しに掛かっていた。

 だが、彼も一応仲間だとは見なされているのか、建物の陰から飛び出して来た、BASHOフレームの機体に邪魔された。手に巨大な破砕用のハンマーを装備した、リトル・ツィイーの機体だった。

 

「大丈夫か! ノーザーク!!」

「おお! ツィイー! 我が盟友!!」

「邪魔者がゾロゾロと! まとめて消し飛ばしてやりますよ!!」

 

 三下みたいなセリフを吐くが、これでもヴェスパー部隊長を任せられていた身である。ツィイーやノーザークで抑えられる訳もなく、苦戦を強いられている中で1317達まで追い付いて来るのだから、いよいよ解放戦線の進退が窮まったかと思えば、奥の方から大型の機体がバーナーを振り回しながら近づいて来た。

 

「うぉおおおお!! 破砕してやるぞ!!」

 

 猛々しく吠えたのはインデックス・ダナムだ。燃えるツルハシ(バーンピカクス)の名を体現したが如き機体、スマートクリーナーはペイター達を破砕せんと猛烈な勢いで突っ込んで来た。

 

「カーラ。まるで舞踏会の様だ。私は楽しい、友人達も喜んでいます。カエサル、見ていますか。コレが楽しいという光景です」

「なにも楽しくない!!!」

 

 ブルートゥが恍惚とした表情で語る中、地獄と言わんばかりの激戦区に放り込まれたレッドは悲鳴を上げる外なかった。

 

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