戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】 作:ゼフィガルド
~もしも、621がノーザークだったら~
「おじいちゃん。カードから勝手にコーラルが引き出されているから、私が止めて来ますよ」
「セリア!」
「独立傭兵の力となるために、このカードの暗証番号を引き出していただきたい、オールマインド」
「カウンターハックを受けました、あなたの預金が引き落とされていきます、ノーザーク」
「200COAMしか残高がないのかい……」
「このルビコンで、コーラルを入手しても……お前のような、借金も踏み倒す屑は……もうどうしようもない、帰って来るな」
「ご友人とは呼べません、あなたを招いた覚えはありません、不愉快だ……。」
「この犬は俺が始末しておいてやろう、馴染みのよしみだ、ハンドラー・ウォルター」
「制御装置も逃げはしないでしょうからサッサと探してくださいレイヴン」
「屑よ、お前に警句は要らん、金は返せ、そして散れぃ!」
ウォルターも中指を立てた! 痛快不愉快劇!!
フレンドの話が大概面白くていつも戦慄している……。
「何だこれは。たまげたなぁ……」
ベイラムの上層部は、レッド達の機体から送られてくるザイレムでの交戦状況を見て、目を疑っていた。
当初の予想としては、消極的な戦闘を繰り広げていることを理由に、この場に呼び出したウォルターを糾弾するつもりだったが、レイヴン達は一つも手加減をしていなかった。
『ウォオオオオオオオ! 企業の走狗め!! 死ねぇえええ!』
『お前が死ねぇえええええええええええええ!』
IQが焼き尽くされたかのような低次元な罵り合いを交わしながら、LCとRaDの戦闘用に改造された重機がぶつかっていた。
そんな彼らの戦闘領域を全て吹き飛ばさんばかりにミサイルが殺到したが、LCの背部から射出されたフレアに誘導されて空中で爆散した。存在感を誇示しながら、現れたのはラミーが駆るマッドスタンプだった。
『お前を倒して、俺はアリーナで一気に駆け上がるぜ!』
『デブでも食ってろ! ピザ!』
2体の重量級を相手に立ち回るペイターは、レーザーと一緒に品性をまるで感じられない罵詈雑言を吐き出していた。
一連の映像を見ているのは上層部の面々とウォルターだけではない。ミシガンとナイル、それからイグアスも見ていた。
「ウチの猟犬部隊(ハウンズ)は相手が馴染みだからと言って、手加減する様な理性のある奴らだと思ったのか?」
「それはもう狂犬部隊なのでは?」
久々に、ナイルは元居た部隊を見ていたのだが、以前にもまして凶暴になっている気がした。自分が抜けたことに若干の責任感を感じるレベルで。
上層部の面々は下唇を噛んでいた。このままではウォルター達に負い目を被せることが出来ない。僅かながらの可能性に掛けて、彼らはミシガンの方に意見を投げた。すると、彼は直ぐに察した。
「流石にプロレスでもここまで派手な暴れ方は出来まい! これで八百長や談合を行っていると言うならば、このルビコン全土がリングになっているだろう!」
あまりにも当然の返答だった。何せ、戦闘の余波でザイレムに林立している建物が面白い位に破壊されて行くのだ。この襲撃はあまりにも成果が出ている為、評価しない訳には行かないのだ。
「そう言うことだ。この活躍は俺達の恭順の証だと思って貰おう」
もはや、付け入る隙なども無い程のスタンス。ベイラムの上層部の者達は小声で話し合っていた。『一体、どういう仕掛けがあるのか』と。あるいは『我々が裏を読み過ぎているだけでは?』等。これらを聞き取れていたイグアスは思う。
「(多分、アイツら何も考えてねぇよ)」
実際にその通りであり、ウォルターやミシガン達の口元を注視すれば若干釣り上がっているのが見えた為、イグアスも釣られて笑いそうになるのを頑張って堪えていた。
「まぁ、らしいと言えば。らしいか」
唯一、笑っていないナイルは呆れた様子を見せながらも、何処か懐かしむような表情でザイレム大決戦を眺めていた。映像内ではレッドや五花海の泣き言が流れていた
~~
ペイターだけではなく、1317やブルートゥ。レッドや五花海もザイレムに上陸していたが、そんな彼らを出迎えたのは、キャンドル・リングを始めとした解放戦線の面々だった。
「お前達如き、帥父が出るまでもない」
「そう言うことだ。我々がお相手しよう」
ミドル・フラットウェルが操るツバサの背部兵装から『IA-C01W3:AURORA』による光波キャノンが放たれ、一同に襲い掛かる。それぞれを分断する様に放たれ、1対1の状況を作り出していた。
「私の相手は、貴方ですか。帥叔殿」
「この中で、一番アリーナランクが高いのは貴様だからな。私が相手をするのが道理だろう」
ブルートゥはツバサと向かい合っていた。ミルクトゥースは元々、戦闘用の機体ではなく作業用に用意された機体である。ACでありながらも高速機動による戦闘は苦手としている所だが、作業用故の頑強さは決して侮れるものではない。
何よりも。この機体でアリーナランク8位まで上り詰めた、彼の操縦技術こそ恐ろしい物だと判断してのことだった。
「良いでしょう。さぁ、ミルクトゥース。カエサル。共に踊りましょう! 今日は絢爛豪華な舞踏会です。私も張り切りますよ!」
手にした『WB-0010 DOUBLE TROUBLE』の2枚のチェーンソー刃が、彼の喜びを代弁するかの様に回転音を上げ始めた。ツバサが手にした銃器から放たれる弾丸を叩き落しながら、近付く中。ブルートゥには確かに聞こえた。
『征服、せよ』
産声とは思えない程に、重厚な声だった。声を上げることになれていないのか、少しばかり掠れていたが、聞き取れた。
「さぁ! 行きましょう! ご友人!」
出撃する前に掛かっていた暗澹たる気分が晴れ渡って行くようだった。彼の操縦に一切の迷いも曇りも見られなかった。
そんな戦いの傍ら、困惑を深めながら戦っている者達もいた。ユエユーを操縦するツィイーは、攻撃をしてこないハーミットに対して苛立ちをぶつけていた。
「貴様! 何故、戦わない!」
「俺は、女子供と戦わない! そう決めている!」
「ふざけるな! 戦場に立った以上、私も戦士だ!」
背中にハンマーをマウントし、代わりに取り出したのは『WS-5000 APERITIF』包囲型ハンドミサイルだった。射撃適性の低いBASHOフレームでは銃撃には期待できない為、こういった誘導武器を使った方が強い。という、入れ知恵をしたのはRaDだろう。
放たれた大量の小型ミサイルは、まるで生物の様にうねりながらハーミットへと接近していく。恐るべき追尾性で幾らか被弾してしまうが、制御不能(スタッガー)へとは陥らなかった。
「レイヴンにでも憧れた口か!? 君では彼女になれない! 機体を降りろ!」
「さっきから、私を女子供の様に扱うのを止めろ!」
「お前は女子供だろうが! この! 馬鹿者が!」
再び放たれた包囲分裂ミサイルに対して、レッドはアサルトブーストを吹かした。ハーミットの装甲が一部消し飛ぶが、むしろ突っ込んだことでミサイルの誘導が切れた為か被害を抑えつつ、彼は至近距離で『SG-027 ZIMMERMAN』の一撃をユエユーの両腕に命中させて消し飛ばしていた。
「畜生!」
先日の戦いから、まるで良い所が無いツィイーは自らの未熟さを呪いつつ、ザイレムの奥地へと逃げて行く。レッドも追いかけようとしたが、目の前に1機のタンクが立ちはだかっていた。
「よぅ、レッド。見ていたぜ、まるでクソ親父みたいだったじゃねぇか」
「ヴォルタ……先輩」
ツィイーの敗走を予め予想していたのか、キャノンヘッドが待ち構えていた。レッドは息を呑んだ。アリーナランクは高くないにしても、ヴォルタのアセンブルが強力だと言うのはレッドガン部隊内では有名な話だったからだ。
「悪ぃが、こっから先には行かせねぇぞ!」
彼もまた『SG-027 ZIMMERMAN』を手にしていた。ベイラムを代表する武器を用い、吐き出される大量の散弾が周囲を食い散らしながら、袂を分かった者達同士の戦いが始まった。
少し離れた場所。宙を舞う重4脚AC鯉龍は、放たれる砲撃を掻い潜りながら、ミサイルをばら撒いていた。だが、地上を激走するキャンドル・リングはあらゆる攻撃を避けていた。
「こんな軽快な機動をするタンクは見たことがありませんね」
「企業の様に肥え太った機体では、捕らえるのも難しいだろうよ」
所詮は解放戦線と見縊っていた部分はあれど、アレはベイラムが存分に人員を投下するから制圧できる話であって、個人で相対すれば彼らの技量は十分に企業に対しても通じる物だった。……あくまで、個人の範囲だが。
「そうでしたか、申し訳ございません。私達は普通の暮らしをしていただけのつもりなので。貴方達貧相な連中には、そのように見えてしまうのですね」
「謝罪は要らないぞ。貴様の命で償って貰えば良いのだから」
周りが喧嘩と言わんばかりの様相を繰り広げている中、彼らだけは企業とルビコニアンと言う冷涼な殺意の下で交戦を続けていた。そして、残った1317はと言えば、逃げ惑うノーザークを追跡していた。
「なんで、私を追いかけて来るんですか!? 他にも、追うべき奴はいるでしょう!? なんで、私なんですか!?」
「レイヴンの通帳を調べて見たら! 貴様! あの子からどれだけ搾取しているんだ! ペイターでなくても言うぞ! このクソ野郎!!」
1317ですら声を荒げていた。今は、エアや保護者が多数いるので引っ掛かりはしないが、彼女の通帳を遡って行けば搾取されていた時期がしっかりと記録に残っていることを、彼は知っている。
「今はもうしてないでしょうが! あの子も気にしていない! だから、ノーカウントです! ノーカウント!!」
「する訳無いだろ! 馬鹿が!!」
多分、殺されはしないだろうが、捕まったが最後。再び借金まみれの生活になりかねないので、ノーザークは全力でザイレムを駆けずり回っていた。