戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】 作:ゼフィガルド
ヨルゲン燃料基地。惑星封鎖機構の補給地点であり、コーラルの調査拠点も兼ねた場所である。ベイラムグループから鹵獲した施設が流用されつつ、今日もルビコンを制圧する為の艦隊が発って行く。
「あの艦隊の燃料がここで補給されているってワケか。……ノーザーク? テメェ、何処に通信を入れているんだ?」
「ちょっとね。私の価値を高める為の下準備を」
「作戦前に勝手な真似は止めろ。俺達の存在が気取られる可能性がある」
「ちょっと位ばれても平気ですよ。ちょっと位」
ウォルターがノーザークに注意喚起を入れた。少しのミスが命取りになる程に、この燃料基地には戦力が配備されている。
地上部は多数の高機動型MTに狙撃武器を手にしたLC達が数機。更に無数のガードメカとレーザードローンが哨戒しており何人たりとも侵入を許さない厳戒態勢が敷かれている。
「LCの相手は621がするが、MTが相手でも油断をするなよ。連中のMTはBAWSの物よりも数段上の性能をしている」
「知っていますよ。連中のMTは両肩にブースターを装備、加えて光学兵器も使えるそうじゃありませんか」
「その通りだ。連中の技術は企業の数歩先を行く。奴らを撃破するごとに報酬が発生することも覚えておけ」
惑星封鎖機構の技術は企業にとってみれば垂涎物だ。燃料のほかにも撃破報酬まで設定されているとなれば、モチベーションが上がるのも至極当然の話だった。
「よっし! 行くよ! 皆!」
企業達も手をこまねく堅牢な要塞に足を運んで来たのは命知らずの与太者(ドーザー)共。
「621、ラミー、ノーザーク。ミッション開始だ。封鎖機構の駐屯部隊を排除しつつ、エネルギー精製プラントを目指せ」
「分かった!」
「やってやるぜぇ!」
「私達が一番乗りですよ!」
ウォルターの作戦開始の合図と共に3機はブーストを吹かしながら突っ走り、入り口付近を哨戒していた2機のガードメカが蹴り飛ばされた。壁に激突した衝撃で爆発し、直ぐに彼らの侵入は知れ渡った。
「コード15。所属不明機体3機と会敵。いずれも企業雇用戦力のACと推定。排除執行する」
「どきやがれぇ!!」
ラミーの機体である『マッドスタンプ』は、大豊とRaDのパーツによる継ぎ接ぎから、純正の大豊製AC『天槍』のアセンブルになっていた。
内部パーツも『三台』と呼ばれる突出したEN容量を誇る同社の重ジェネレーターに入れ替えており、両手にはこれまた大豊製のガトリングガン『虎貢(ふべん)』が握られていた。加えて、寂しかった両肩にはミサイルいっぱいファーロン・ダイナミクス社製の『BML-G2/P05MLT-10』が装着されていた。
「ヒィイイイイハァアアア!!!」
回転を始めたガトリングの砲塔から大量の銃弾が吐き出され、肩部にマウントされた10連ランチャーから大量のミサイルが舞った。
如何にコーラル中毒者のブレブレな照準とは言え、物量による面での攻撃を展開されては回避のしようがない。避け切れずに被弾したMTやドローンを始めとした汎用兵器達が次々と落ちていく。
「すごーい!」
「やっべ、コーラル吸うのと同じ位に気持ちいい……」
余りの快感からか、ラミーの目尻には涙が浮かんでいた。弾薬費も修理費も気にせず縦横無尽に暴れ回る愛機の姿は正に無敵(インビンシブル)だった。
「調子に乗るなよ!」
弾幕を掻い潜り接近して来たLCが『マッドスタンプ』を撃ち抜かんと引き金を引く。しかし、発射されたレーザーはノーザークの『ビタープロミス』の『VP-61PS』で展開したシールドに吸収された。
「私が貧相な武装で攻める位なら、こうした方が効率も良いでしょうよ。さぁ! 全滅させてやりましょう!」
「助かるぜぇ!」
LCの全身に銃弾とミサイルの雨が叩き付けられる。パイロットは瞬時に回避不能だと判断して脱出した数秒後、機体は爆破した。
「うぉおおおお! 俺は無敵の(インビンシブル)・ラミーだ!」
「想像以上だな」
ウォルターはRaDの二人に期待していなかったが、彼らも伊達にアリーナに名を連ねている訳では無かった。
ラミーは恐怖や緊張感による判断ミスは少なく、自分の選択や行動を押し付けることに長けていたし、ノーザークは自らに出来ることと瞬時の判断能力に優れていた。そんな彼らの隙を狙う者達は621が静かに処分していた。
「ラミーと言う男。コーラル中毒者でなければ、レッドガンにも欲しい男だな」
ナイルも舌を巻いていた。伊達にグリッド086の番兵を務めていた訳ではなく、彼らの快進撃が続き、その様子は映像として記録されていた。
『レイヴン、彼らがここまで強いとは意外でした。どうして、アリーナではあの様なランクに甘んじていたのでしょうか?』
「金無き子」
パイロットの腕や適性を活かせるだけの環境が揃っていなければ、才能なんて物はただの持ち腐れである。任務自体は好調に進んでいたが、ウォルターから連絡が入って来た。
「621。燃料タンクや輸送用のヘリを破壊すれば追加報酬が入ると言うのに、何故1つも手を付けていない?」
「さっき、ノーザークが置いとけって」
「何だと? 聞いていないぞ」
先の通信と言い、勝手な行動が目立つ。だが、金に執着しているハズの男が自ら追加報酬のチャンスを手放すのは奇妙な話だった。
ウォルター達が疑問の答えが浮かばない間もラミー達の破壊活動が続いていた。進行方向に居ない機体も破壊し尽くし、1機残らず殲滅した後。補給シェルパで弾薬を補充すると精製プラント前に辿り着いた。
「ソイツを破壊しろ」
「おぅよ!!」
『待って下さい! レイヴン! 後方から高速で接近する反応が!!』
ラミーが精製プラントを破壊しようと武器を構えた瞬間。3機のレーダーにアラートが表示された。咄嗟に飛び退くと、先程まで立っていた場所に数発のプラズマが撃ち込まれていた。
「コード23、現着。対象は3機、内1機は識別名『レイヴン』。リスト上位の優先排除対象だ。他の2機は見たこともない」
降り立った2機は封鎖機構のMTでも無ければLCでも無かった。通信先でウォルターが息を呑んだ。
「封鎖機構の特務機体『軽装歩兵(エクドロモイ)』。621、ラミー、ノーザーク。お前達のACで撒ける相手ではない。排除しろ」
「まさか、私達。本気で彼らのことを怒らせちゃいましたか?」
ノーザークの余裕ぶった言動に緊張感と焦燥感が隠せずにいた。だが、ラミーは怯むことなく、展開した武装の引き金を引いた。
「エクモロドイだかなんだか知らねぇが! コイツを避けれるかァ!」
ガトリングとミサイルによる弾幕。この燃料基地に配備されていた戦力を蹂躙して来た攻撃だったが、2機は中空で高速移動を行いながら手にしたマシンガンでミサイルを迎撃しつつ、肉薄すると同時にマッドスタンプを蹴り飛ばしていた。
「ぐぉ!!」
「邪魔だ」
エクドロモイの右腕に装備されたレーザーランスに展開されたエネルギー矛による2度の刺突で、兵装ごと両肩を貫かれた。誘爆するよりも先にパージしたが、両腕の機能が喪失したのかガトリングガンをその場に取り落とした。
「死ね」
そのまま、マッドスタンプのコアを貫かんとするが大きく態勢を崩した。見れば、もう片方のエクドロモイを相手取りながら、621がラミーへの攻撃をカットしていた。
「ラミー。逃げて」
「やはり、脅威対象は貴様だけか」
制御不能(スタッガー)状態から立て直し、2機のエクドロモイはレイヴン1機に狙いを定めた。その隙に、マッドスタンプはこの場を離れていた。一瞬で兵装を失ってしまった自分は足手まといでしかないと判断してだ。
「クソッたれ!」
無敵(インビンシブル)と謳いながら、この有様だ。与えられた玩具で気が大きくなっていたが、所詮は張子の虎でしか無かった。
自分よりも遥か年下の少女を戦わせて友人面をしている自分を恥じ入る程度には、ラミーにも矜持はあった。
「どうすりゃいい。俺は、どうすりゃ……」
「ラミー! どうしたんだ!?」
歯ぎしりをしていると、姿を消していたノーザークが現れた。機体には殆ど損傷が見当たらず、弾薬も殆ど消費していないだろう。
「おぉ、テメェ何処に行ってやがった!? 早く、レイヴンの野郎を助けに行け!」
「ほぅ。彼女は苦戦しておられるのですか?」
「当たり前だろ! 敵はあんな化け物なんだぞ!」
「それは丁度良かった」
ノーザークがライフルを構えた。一瞬、ラミーは意図が分からなかったが、コーラルの酔いも覚めるほどに頭が冴え渡って行く。何故、態々敵を全滅させたのか。燃料や兵器を破壊して回らなかったのか。
「テメェ……」
「これもビジネスです」
ダァンと。レイヴンと2機の軽装歩兵(エクドロモイ)が死闘を繰り広げている場から、少し離れた所に銃撃音が響き渡った。
まさか! シリアスになってしまうのか! コーラルで作られた友人の輪が!!