戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【完結】   作:ゼフィガルド

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1日休んで元気が出ました!


依頼79件目:柔らかコーラル布

「何故だ! 何故、私がこんな目に遭わねばならないんだ!」

 

 ノーザークは只管に逃げていた。ルビコンで借金を概ね返済できる程稼いだのは良かった物の、脱出する手立てがなくRaDに居候しているが、こんなことにまで巻き込まれるとは思っていなかった。

 

「自業自得だ!!」

 

 機動力ではLCで劣ることもあり、追い付かれてはスタンバトンで殴られまくっていた。内部のジェネレーターや駆動系が悲鳴を上げ、明らかに動きが悪くなっていくのを見て、流石に彼も覚悟を決めた。

 

「えぇい! レイヴンやヴェスパー部隊長ならまだしも、お前程度なら撃退してやる! これでもルビコンを生き抜いて来たんだ!」

 

 ある程度、稼いだこともあって武装に変更は見られたが、フレームの構成は以前のままだった。ノーザークは強化人間では無い為、機体の挙動が変わるのを嫌ってのことである。

 奇しくも、『MELANDER』シリーズと『VP-46』シリーズの組み合わせは、1317を圧倒したV.Ⅰフロイトも用いていた物であり、特にヘッドパーツとコアパーツの構成はまるで一緒だった。

 

「居直り強盗か! 良いだろう。元・惑星封鎖機構として是正のし甲斐がある!」

 

 今はルビコンに姿を見せない惑星封鎖機構の面々が、彼の言動を聞けばきっと、こう思っただろう。そんなのに構っている暇は無いぞ。と。

 ひょっとしたら、このルビコン3に来てから負けが立て込んでいた彼としても、勝てる可能性がある相手だった故に、柄にもなく興奮していたのかもしれない。

 

「ほざけ! 私は責められることはしとらんわ!」

 

 少し前までは、ビタープロミスの右肩には『SB-033M MORLEY』拡散バズーカを装備されていたが、今は『SG-027 ZIMMERMAN』がマウントされていた。

そして、右手には『MA-J-200 RANSETSU-RF』バーストライフルと、装備は標準的な独立傭兵と言えるだろう。

 では、彼が名だたるパイロット達ほどの腕前を持っているかと言われれば、そんな訳がない。それでもアリーナのTOP30に名を連ねる程の実力がある。一体、何処を評価されればその様な物になるかと言えば。

 

「こ、コイツ……」

 

 先程から追い付いては、LCの腕部に収納されていたスタンバトンで殴っていたが、本気で相対するとなった時のノーザークは動きが違った。

 レイヴンの様に華麗に舞う訳でも無ければ、ペイターの様な理詰めの動きでもなく、ブルートゥの様な機体性能を押し付ける動きでもない。彼は、異常に逃げ足が速かった。

 これは単に機体のスピードや推力と言った話ではない。追手の視界や意識から姿を消す動きが異様に上手かった。そして、索敵に気を取られた一瞬を狙って攻撃が飛んで来る。彼の生き様が反映された戦い方だった。

 

「私はどんな窮地でも生き延びて来た! 君の様なレイヴンの跡を付いて回るだけの糞とは違うのだよ!」

 

 恐らく、窮地に追い込まれことは自業自得だろうが、それでも一種の修羅場を潜り抜けて来たことには間違いなかった。

 これに加えて、ルビコン解放戦線とも協力をしていることを鑑みれば、現在のノーザークはゲリラ戦に長けた動きをしていた。

 

「糞、か」

 

 これに関しては1317も思うことはあった。レイヴンに助けられて以来、猟犬部隊(ハウンズ)に身を置いているが、自分が任務に貢献できている部分は少ないことは自覚している。故に、その様な悩みは既に通って来た道だった。

 

「それでも構わん。糞は、糞なりに活躍するだけだ。クソ同士、どっちが上か決めようか!」

「ほざけ! 借金のことは流せないが、クソ位は流してやる!」

 

 ビルの隙間、あるいは建物から出て来た所での強襲など。機体性能で劣る分、持てる全ての力を持って抵抗して来るノーザークを相手に、1317も全力を賭して当たっていた。

……その折である。突如として、飛来して来た高速回転体がLCに命中した。寸での所でシールドを構えたが、態勢が大きく崩された。

 

「ほぅ、今の一撃を反応するか」

「シノビ……。六文銭だと!?」

 

 レイヴンを抑え掛かっていたウチの1機がこちらに来たと言うことは。と、悪い予想が過ったが、意識を取られている場合では無かった。

 

「おぉ! 我が盟友、六文銭! さぁ、共に奴を倒そうか!」

「そうしたいのは山々だが、撤退だ。首領からの命令だ」

「了解です!」

 

 疑問を呈することも無く、六文銭と共にノーザークは即時撤退を決めていた。LCの破損部分を確認しながら、1317は考えていた。

 

「(撤退だと? 俺達が制圧すれば、ザイレムが接収されると言うのに。どうして、こんなにも判断に迷いが無い?)」

 

~~

 

「V.Ⅷ。その辺りにして貰おうか」

 

 駆け付けつけた、スティールヘイズ・オルトゥスはマッドスタンプとスマートクリーナーの残骸を傍目に、ペイターと向かい合っていた。かなり激しい交戦があったのか、LCにも激しいダメージが見て取れた。

 

「参りましたね。2機撃破できたのは調子がいいと思ったんですが」

「だから、取引だ。このまま撤退するなら見逃そう」

 

 代りに撃破された二人を見逃せということだろう。ペイターとしても反対する理由はなく、素直に頷いた。

 

「良いでしょう。パイロット達は付近に潜伏していると思いますよ。それでは」

 

 去っていくLCを見逃しながら、ラスティは周囲をスキャンに掛けた。

すると、ラミー達が周囲の建物に潜伏しているのを発見したが、何やら揉み合っている様子が見えた。何事かと思い、収音マイクを起動した所。

 

 

『うわぁ!? なんでコイツ倒れないんだ!?』

『頭パチパチ! シュワフワ! 俺は無敵(インビンシブル・ラミー)だ! オラ! お前も幸せになれ!!』

 

 音は立てていないが、何かを振る様な雰囲気を感じた。ラミーが、ノーザークを相手によくやる行為で、適当な布にコーラルを染み込ませて相手の口に押し当てる昏睡アタックだ。

 

『う、もう、』

 

 止めろ。と続けたかったのか、コーラルを吸い慣れていない相手には効果が覿面だったらしく、どさりと崩れ落ちた。

 

『ちょっと、ラミー! 何してんの!?』

『ガハハ。幸せを分けてやったんだよ! この兄ちゃん、陰気臭い顔していたからな!』

 

 ツィイーが非難するが、ラミーは気にした様子もない。一応、形の上では彼女を助けたことになるのだろうが、何処か腑に落ちない感じがあった。

 

『おい、この男は放っておいていいのか? 俺はコーラルなんて吸わんから分からんが、適切な処理とかは?』

 

 ダナムが倒れた相手を見て、疑問を呈していた。グリッド086に居ると感覚が薄れるが、そもそもコーラルは人体にとっては劇物である。

 

『あぁん? 大丈夫だろ。これだけたらふく吸っている俺が平気なんだからよ!』

『いや、お前は全く参考にならん。だが、敵対企業の連中を持ち帰る訳にも行かんしな。どうする?』

 

 放置した末、死なれたら寝覚めが悪い……ということもないが、やはり引っ掛かる物は引っ掛かる。彼らが唸り始めたのを見て、ラスティは件の建物に近付いた。

 

「皆、無事か?」

「おぅよ! 敵さんもこの通りだ!」

 

 コーラルを無理矢理吸引させられたレッドが倒れている。ラスティは少し考えた。このまま彼を送り届けても良いが、恩としては少し弱い。チラリとツィイーの方に視線を向けた。

 正直に言うと、今後の戦いを考えると彼女を解放戦線に置いておくのはあまりに危険だった。志はあれど、実力はまるで伴っていない。ならば、これはチャンスだと考えた。

 

「ツィイー。彼をレイヴン達の元に送り届けて、そのまま投降する気はないか?」

「はぁ!?」

「貴様! 気でも狂ったのか!」

 

 ツィイーが驚嘆し、ダナムが憤慨する中。1人、プカプカとコーラルを吸引しているラミーを傍目に、ラスティは説明を続ける。

 

「聞いてくれ。恐らく、今回の戦いで我々は一旦ザイレムから引くことになる。その際、拠点が無い我々がアーキバスから攻撃を受けたら一溜りも無い。解放戦線の灯を絶やさない為にも、安全な場所に匿われて欲しい。君はレイヴンと懇意だったろう? そこで、負傷した敵兵を助けながらも一緒に投降すれば……」

 

 少なくとも、ただの投降よりはずっと印象も良くなるだろう。

 流石に、ツィイーも自身の腕前が通用しなくなっていること位は理解していた。だが、仲間達が苦しんでいる手前。そんな選択をしても良いのかという疑問に、後ろ髪を引っ張られていた。

 

「そう言うことなら、これはツィイーにしかできないことかもしれんな」

 

 先程まで、憤慨していたダナムは自らの考えを改めていた。ツィイーも小さく驚き、どういうことかと説明を促した。

 

「いざという時に、レイヴンへ干渉できる存在を近くに置いておけば、我々の生存確率も上がるかもしれん。これは個人的にも親交が深い、ツィイーにしかできないことだ。もしも、皆のことを思うなら、この大役を引き受けて欲しい」

 

 清廉な烈士である彼が言うのであれば、気後れする必要はない。彼女は頷いた。

 

「分かった。そうしよう。何処まで運べば?」

「心配いらない。戦……レイヴンに通信を入れておいた。もうじき、彼女はここに来る。その時に説明を頼む」

 

 ラスティはダナムやラミーを拾うと、この場から去って行った。残された彼女は、レッドの介抱をしながら、レイヴンの到着を待っていた。

 

~~

 

「ダナム。助かる。君の後押しが無ければ、彼女はきっと賛同してくれなかったろう」

「お前の為ではない。これ以上、ツィイーを戦いに巻き込まない為だ」

 

 成人男性3人でギュウギュウになったコックピット内は、ラミーのいびきとコーラル臭漂う吐息で、実に窮屈な空間となっていた。

 

「正直に言うと意外だった。君はこういう時に、志を掲げるタイプだと思っていたから」

「俺が戦うのは企業からの搾取に対抗する為、ひいては皆が人間らしく生きる為だ。その道を選べるなら、俺だって融通位は利く」

 

 レーダーには、先程まで自分達がいた場所にレイヴンのACがやって来ているのが見えた。そして、2人を拾ってザイレムから離れていくのを見て、彼らは一息ついていた。程なくして、通信が入る。

 

『降参だ! 我々、RaDはアンタらに勝てないと判断した! このザイレムは引き渡す! だから、私達に撤退する時間をくれ!』

 

 カーラらしくない降伏宣言が発された。彼女がどういった意図で発信しているかは、ラスティ達も分からなかったが、少なくとも言葉通りという訳ではなさそうだった。

 


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