戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼81件目:メーテルリンク「なりすましは、やめようね!」

 RaDと解放戦線のメンバーが次々と立ち去っていく中、レイヴンはレッドを抱えたツィイーを回収して、帰投していた。

 

「レッドもコーラル吸っている!」

「いや、これは何と言うか。そう、事故なんだ!」

 

 流石にコーラル中毒者だけにあって、使用したかどうかは直ぐに分かるらしい。実際の所は、ラミーに無理矢理吸引させられていた訳だが。

 

『事故ですか。怪我をした際に、痛みを軽減させる為に薬物を使うと言う話を聞いたことはありますが』

 

 ザッと知覚する限りでは、戦闘の疲労はあれど怪我は見当たらない。だとしたら、吸引した理由は増々分からないのだが。

 

「うぅ……」

「あ! ほら! 目を覚ました! 大丈夫か!?」

 

 無理矢理話題を逸らす様にして、ツィイーはレッドに声を掛けた。だが、本人からすれば、いきなりこんな所に居ても訳が分からない。

 とりあえず周囲を見回す。レイヴンが機体を操縦していて、ツィイーが心配そうに見ている。そして、室内はギュウギュウだ。

 

「誰か、状況説明を求む」

「えっとだね」

 

 ツィイーの説明によれば、建物内で拘束された後、ラミー達が駆けつけたのは良い物の、そこで戦闘の余波に巻き込まれ気絶していた彼が暴れない様にコーラルを吸引させ、昏睡させた後。通りかかったラスティが救助要請を出してくれていた。ということらしい。

 

『何故、気絶している人間にコーラルを吸引させる必要が?』

 

 エアは話を整理していたが、不自然な点が多すぎる為か整合性が取れずにいた。一方、レイヴンは納得したらしく笑顔を浮かべていた。

 

「そうなんだ! ツィイーが助けたんだね!」

「え? あ、まぁね」

「そうなのか。……感謝する」

 

 拘束される前にしんみりした会話をしていたこともあって、ツィイーは気まずくなっていた。真実は、仲間が昏睡アタックをかましたからなのだが、介抱していたのは事実なので良しとすることにした。

 そして、ザイレムから皆が撤退したこと。自分は捕虜として投降する為に同伴していることも一緒に告げた。

 

「ツィイー。良いの?」

「うん。私じゃ居ても足手まといだしね。それに、気絶していたアンタを介抱してから投降すれば、少しは心象も良くなるだろう?」

「ふむ。打算ありきだとしても、見捨てなかったことに関しては人道的観点からも評価が出来る。レイヴン、ザイレム攻略の尽力した貴様の口添えもあれば、どうにでもなるだろう」

 

 レッドは思いつく可能性を述べたが、もしもそうなれば。ウォルターの猟犬部隊(ハウンズ)は解放戦線、アーキバス、ドーザーの超混成部隊になる訳だが。

 

「そうなんだ! ツィイー。よろしくね!」

「あぁ、こちらこそ。と言っても、他の奴らみたいにACは乗れないけれど」

 

 もしも、ベイラムの預かりになれば彼女がどういった扱いを受けるか。ということを考えれば、レッドは口出しをする気にもなれなかった。

 まるで、本当の姉妹の様に朗らかに話をする二人を見て、気が咎めたのか。彼はそっと視線を逸らしていた。

 

~~

 

 帰投した彼女達を待っていたのは、一同からの歓待だった。バスキュラープラント延伸に関して、懸念事項であったザイレムを少数精鋭で制圧してみせたのだから。モニタ越しに、上層部から惜しみのない感謝を送られていた。

 

「ハンドラー・ウォルター。私は君達のことを信じていたが、出資者の者達がうるさくてね。無茶をさせたようで申し訳ない」

「問題ない。納得して貰えたか?」

「勿論だとも! この実績があれば、文句を言う者もいまい。十分に休んでくれ。報酬も口座に振り込んでおいた」

 

 手短に通話を切ったのは、少しでも早く成果物の確認をしたいからだろう。バスキュラープラントの脅威を排除しつつ、更には自分達の物になる。となれば、逸る気持ちも分からなくはない。

 だが、ウォルター達は分かっている。あのカーラが簡単に手放す訳がないと。彼らの様子を察したのか、五花海が口を開いた。

 

「如意算盘ですね。全く、現場を知らない者達は気楽でいいことです」

「なにそれ?」

 

 全く、聞き慣れない文化圏の言葉が出て来たので、レイヴンが尋ねた所。レッドが丁寧に説明をし始めた。

 

「まだ成果物が手に入っていないのに、入手したような気分になることだ。気が早いと言えば、分かりやすいか?」

「???」

『なるほど。そう言った意味なのですね』

 

 エアには十分に通じたが、レイヴンにはまるで理解した様子が無かった。

 そんな言葉を口走るということは、この場にいる者達は上層部がザイレムを手にすることは出来ないと予想している様だ。

 

「俺達はザイレムの入手という仕事は果たした。使える様になるかまでは、知ったことではない。俺の方でも用事が出来た。少し席を外させて貰う」

 

 ウォルターが退出したのに続く様にして、猟犬部隊(ハウンズ)の者達も出ていく。彼らにあてがわれたスペースは、随分と賑やかな物になっていた。

 

「レイヴン。貴様、また連れ帰って来たのか!」

 

 捕虜となったツィイーは、部屋内で作業をしていたスウィンバーンと鉢合わせていた。流石に機体までは宛がわれていないが、元会計の経歴を生かしてウォルターの出納帳を管理していた。

 

「うん。ツィイーは凄いよ、ミールワーム取りが凄いの」

「……レイヴン位の年頃なら許されるだろうが、貴様位の女子の趣味が虫取りというのもなぁ」

「は? そこまで追い詰めて来たのは、誰だと思っているんだよ」

 

 間の悪さに関しては天性のものを持っているスウィンバーンは、初手でツィイーの地雷を踏み抜いていた。彼は正論や一般常識を吐きはするが、未だに配慮の足りない所があった。

 男ばかりの空間に久方に女子が加わったことで華やかになるかと思われたが、スウィンバーンでなくとも問題視する者はいた。真っ先に声を上げたのは、1317だった。

 

「男だらけの空間に女子2人。というのも、風紀的な物としては如何か。ペイター、お前はどう思う?」

「え? レイヴンを女性として見ているんですか? 引きますね……」

「可哀想なお友達。人の上げ足を取ることばかりに終始してはいけません。1317の気遣いと言う物を少しは理解しましょう」

『どうせ、分かって言っているのだろうがな!』

『え? 私以外に……』

 

 今回の件を経て、増えたメンバーはツィイーだけでは無かった。エアの反応を聞いて、ブルートゥは改めて紹介をした。

 

「彼の声を聴きとれるのはレイヴンとエアだけになりますが、改めてご紹介を。私のご友人、カエサルです」

『多くを語る必要もあるまい。だが、気になることはある。どうすれば、貴様の様に機器への介入が行える?』

『どうすると言われましても。私は自己流で覚えただけで、誰かの手解きを受けた訳では』

「私の目には、ブルートゥとレイヴンが見つめ合って笑みを浮かべている様にしか見えんが」

 

 スウィンバーンだけではなく、他の者達にもそう見えるので非常に奇妙な光景であった。いよいよ、この多頭飼育めいた光景はパピーミルとも言える物だったかもしれない。

 

「この調子なら、メーテルリンクもここに来そうですね。ハハッ!」

「お前、よくもそんな軽口が叩けたな……」

 

 ペイターの軽口に1317は青褪めていた。もしも、本当に来ることがあればいよいよ、女性陣だけでも隔離しなければならないと。彼は誰に具申するべきかという算段を立て始めていた。

 

~~

 

 ザイレム。あちらこちらに真新しい戦闘跡がありながらも、ベイラムの調査部隊は内部の探索を進めていた。伏兵や罠が無いかも含めて、注意深く進んでいく。

 

「おい、この機体。見たことも無いぞ」

「RaDが作った訳じゃないだろうが」

 

 待機状態の機体達はいずれも見たことが無い物ばかりであり、技術解析に回せば更なる進歩が得られそうな品の数々だった。やがて、調査隊は奥地へと進んでザイレムの機関部へと辿り着いていた。

 慎重に、カウンター罠などが仕込まれていないかを警戒しながら、アクセス権を入手しようとした矢先のことである。

 

『ザイレムのシステムはオールマインドによって制御されています。繰り返します。この巨大船のシステムはオールマインドによって制御されています。コレがプログラムソースです』

 

 突如として告げられたアナウンスは自己主張に満ちたものだった。自身の能力を見せつける様に誇示されたプログラムコードを斜め読みした、調査部隊員の1人は言う。

 

「これは、本当にオールマインドの傭兵管理システムに使われている奴だ。コードに、よく癖が表れている」

「だとしたら、何で奴らが?」

 

 独立傭兵の支援システムにしか過ぎない彼らが、何故この様なことをしているのか。どうして、このザイレムを制御しているのかはサッパリだった。

 気にせず、彼らがハックを始めようとした所で警告音が鳴った。待機していた無人機達が動き出した。

 

『プログラムへの不法アクセスを確認。アクセスをシャットダウン。必要権限レベルの上昇。侵入者を排除します。オールマインドの沽券に掛けて、処分します。ベイラムのバーカ。オールマインは完璧で究極の管理システムです』

「クソッ。プランB! 脱出に切り替える!」

 

 調査隊はこの事態をも予想していたのか、直ぐに脱出プランに切り替えたが、ザイレム内の各所のシャッターが下り始めた。間もなくして、ザイレムでは第2の戦闘が始まろうとしていた。

 

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