戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】 作:ゼフィガルド
地上部でヘリアンサスが激走する中、ビルを飛び移りながらHCと激戦を繰り広げているオールマインドの機体『MIND γ』の左腕部が宙を舞った。
「所詮はAIだな。一般隊員は相手取れても、我々にとっては大した敵ではない」
このHCは近接戦用に調整されているらしく、基本的には遠距離戦をメインとしているオールマインドとは相性が悪かった。
「流石に執行尉官クラスともなれば、操縦技術も見事な物です」
後退しながら『44-142 KRSV』を連射し、『45-091 ORBT』が追従しながらレーザーを放つが、HCの左手に握られたパルスシールドによって弾かれていた。
MIND γの距離を取っての攻撃は避けられ、あるいは塞がれる。パルスキャノンを放ちつつ肉薄して来るHCは直ぐに距離を詰め、右腕部のレーザーブレードを展開した。
「終わりだ」
『44-142 KRSV』が弾き飛ばされ、レーザー刃で袈裟切りにされた。通常のACなら、パイロットは痛みを感じる間もなく蒸発していたことだろう。だが、彼女はAIである。
HCのパイロットも油断していた訳ではないが、機体の機能を停止に追い込むだけのダメージを与えたので距離を取ろうとした一瞬、MIND γはクイックブーストを吹かして跳躍し、HCに組み付いた。
「えぇ、終わりです。さようなら、脆弱な規格しか持たない存在」
「クソ!!」
惑星封鎖機構の尉官はこれから何が起きるのかが分かり、レーザーブレードで切り払おうとしたが、時は既に遅く。オールマインドの手によってMIND γのジェネレーターは暴走しており、やがて限界を超えて。機体の燃料や弾薬の全てに引火して、大爆発を引き起こした。当然、HCを巻き混んでのことである。
……暫しの時間を経て、静寂が訪れる。辺りには、2機の残骸が散らかるばかりだった。
~~
「流石はアーキバスの部隊長を務めていただけにあるか」
HM型のLCに搭乗している尉官は、小さく感嘆を漏らしていた。
惑星封鎖機構の技術からすればACは旧技術も良い所だ。特に四脚は図体がデカいだけで、浮く位しか能がないと見下していた。HM型の空戦能力と比べるべくもないと考えていたが。
「なるほど、これが惑星封鎖機構の尉官クラスか。相当な手練れと見受けする」
スウィンバーンも惑星封鎖機構と相対したことはあったが、HM型やHCの様な上位機を渡される尉官クラスと交戦するのは今回が初めてだった。
少なくとも、ヴェスパー部隊長クラスの強さはある。恒久的に発揮している飛行能力は厄介だった。
「これだけの能力を持つ人間を殺すのは惜しい。どうだ、我々の元に戻って来ないか? 優秀な人材を必要としている。根無し草の傭兵稼業などに身を窶すよりかは、よっぽど有意義だ。会計責任者だった貴様には分かるだろう?」
もしも、アーキバスに戻れるならと考えたこともあった。しかし、スウィンバーンは何処で何をするべきか、心に決めていた。
「私の能力を評価してくれることには感謝する。だが、もう決めたのだ」
「そうか。残念だよ!」
HM型から大量のミサイルが射出される。ガイダンスは『VP-61PS』パルス・シールドの展開タイミングを合わせて、イニシャルガードで幾らかは防いだが、ヒットボックスの大きさもあって全ては防げない。
負けじと『HML-G2/P19MLT-04』ハンドミサイルで応戦するが、HM型の機動には追い付けない。更にいやらしい所は、ガイダンスの装備も理解しているのか近接範囲には決して入ろうとしなかった。
「貴様らのデータは収集済みだ! お前に、俺は捉えられない!」
バズーカとライフルを織り交ぜながら、確実にガイダンスのAPを削り取って行く。スウィンバーンも機体を動かしながら、チャンスを窺っていた。
「(オールマインド女史から反応が途絶えたのも気になる。ブルートゥとスッラの方は……)」
WEEVILやLC達を撃破した後には、ヘリアンサス達の相手をしている様だった。猛スピードで迫り来る破砕機を相手に、平然と側面に回り込んで蹴りを入れていくスッラの技量にも驚いたが、真正面からぶつかり合っているブルートゥにも舌を巻いた。
「仲間の心配をしている場合か!」
再びHM型から発射されたミサイルがガイダンスを襲う。クイックブーストを吹かして避ければ、ライフルとバズーカが飛んで来る。かと言って接近を試みれば、機動力で翻弄される。
『リペアキット。残数0』
システム音が告げる。リペアキットも使い切ってしまい、いよいよ後がなくなっていた。
認めなければならない。自分では、目の前のHM型には勝てないということを。もしも、自分が以前のままであったら意地を張るか、あるいは尻尾を撒いて逃げていたかもしれない。だが、猟犬部隊(ハウンズ)のスウィンバーンは違った。通信機を入れる。
「ブルートゥ!! スッラ!! 助けてくれ!」
~~
恥も外聞もない叫びだった。しかし、彼の叫びが聞こえたのか2人はほぼ同時に動いていた。
『情けなくはあるが、言って貰わねば分からんからな!』
「その通りです。ご友人とは言え、心中迄を理解するのは不可能ですから! カエサル! 行けますか!」
『エアとオールマインドの真似事にはなるが!』
ミルクトゥースの『WB-0010 DOUBLE TROUBLE』で機能停止に追い込んだヘリアンサスの一機が稼働し、破砕を受け持つ車輪部分が高速で回転し始めた。その間、ブルートゥは残骸や破片で即席のレールを組み上げていた。
「スッラ! 軌道修正は任せます! さぁ、ご友人! 我々の隊長達の舞台へ飛び入り参加を!」
『刮目せよ!!』
ブルートゥが作り上げた即席のカタパルトを、カエサルが操るヘリアンサスが突き進む。
倒れない様に失速しない様に調整をしながら、やがてガイダンス達が交戦している戦域へと近付いて行き、LCや無人機の残骸で盛り上がった部分を通過して宙へと飛び上がった。
「行け」
そして、最後の一押しと言わんばかりに。スッラはアサルトブーストを吹かして、爆走中のヘリアンサスを蹴り飛ばした。その先に居たHM型のパイロットは驚愕していた。
「!!」
このパイロットの判断力は非常に優秀だった。ヘリアンサス型を避けられないと分かった瞬間に脱出レバーを引いていたからだ。その上、スッラ方面に跳べば握りつぶされることも分かっていたので、彼が捕縛できない方面に脱出していたのだ。
程なくして、HM型はヘリアンサスの歯車に舐め上げられ、空中で爆散した。それと、同時にガイダンスもビルの屋上に着地していた。
「危ない所だった。後は、レイヴン。お前だけだぞ」
~~
「畜生! 秩序を乱す野蛮人共め! どうして、貴様らなどに俺が!」
2度の失敗を経て、なおもHM型を任されることから特務少尉の技量が並大抵の物でないことは確かだった。だが、相手が悪かった。悪すぎた。
「エア! コーラルブレード展開!」
『このまま、上空の強襲艦まで行きます!』
変形したNULは、翼に展開したコーラルブレードで特務少尉のHM型の飛行ユニットを切り落としていた。まるで、撃破する必要もないと言わんばかりの鎧袖一触ぶりだった。
「クソ! クソ!! クソ!!!」
高高度で飛行ユニットを失えば、後は落ちるしかない。幸いにしてブースターは生きているので全力で姿勢制御に勤めれば死ぬことは無い。……戦いの舞台にすら上がることが許されないまま、特務少尉の機体は落ちていく。
そして、強襲艦へと肉薄したNULは次々と攻撃を加えていく。コーラルミサイルとキャノンを放ち、翼状に展開したブレードですれ違いざまに船体を切り裂いていく。子機やLCを失っている強襲艦が落ちるのは時間の問題だった。
『レイヴン。この辺りにしておきましょう。この損傷なら、退避するだけの余裕はある筈です』
強襲艦から小型の飛行艇が飛び出していく。彼らが強襲艦の爆破に巻き込まれない様に見届けた後、レイヴン達は地上へと戻った。