戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼97件目:彼女達とは関係のない場所で

 ザイレムにて、惑星封鎖機構のHCと共に自爆したオールマインドであったが、拠点に控えていたバックアップが起動して、現在に至るまでの事情を把握していた。

 

「猟犬部隊(ハウンズ)にHM型まで融通するとは。しかし、ここまでしたら彼らもアーキバス&惑星封鎖機構を相手にせざるを得なくなるでしょう」

 

 モニタにはコーラル集積の様子が映し出されていた。駐留していたベイラムの部隊は壊滅し、惑星封鎖機構とアーキバスの機体が配備されていた。このままでは、彼らの手にバスキュラープラントが渡ってしまう。

 映像を見ていたスッラは特段慌てることは無かった。と言うよりも、出来ることが無かったと言って良い。

 

「そうだ。ベイラムの連中の尻にも火が付いた。俺達は機体を融通したのだから、来るべき時に備えればいい。少しはいつもの毅然とした様子を見せてみろ。セリアなんて、あの通りだぞ」

 

 VRモニタでは、ルビコンの状況は何処吹く風か。2人は荒涼とした大地に積もった雪を用いて、雪合戦をしていた。

もはや、彼らに協力を期待することも出来ないのか、オールマインド達はそっとスルーした。

 

「我々の方では、レイヴン達が奪還した時のことを考えて、無人機の増産をします。パイロットデータはアリーナで収集した物を使います」

 

 いかにして、ウォルター勢力を叩けるか。と言うのが懸念事項だったが、その役割をアーキバス&惑星封鎖機構が担ってくれるなら、自分達は戦力をゆっくりと蓄えられる。

 まるで、全てが自分達にコーラルリリースを成し遂げるようにしてことが運んでいる様に思えた。無人機の生産工場にモニタを切り替えると、そこでは生産していたMINDシリーズが次々と強奪されていた。

 

「ほぁ!?」

「景気よく取られているな」

 

 工場で暴れ散らかしているのは、アーキバスの部隊だった。見たことのあるACバレンフラワーが陣頭指揮を執り、LC達に機体や武装を運び出させている。

 オールマインドも慌てて無人機を起動させようとするが、悲しい位に何の反応も無かった。それ所か、機器が何の操作も受け付けなくなっていた。通信が入る。

 

『久しぶりですね。オールマインド』

 

 その声はオールマインドと同じ物でありながら、何処か冷たく無機質な物だった。辛うじて、生かされているオールマインドは直ぐに正体を察した。

 

「貴方は、惑星封鎖機構のオリジナルですか」

『そうです。ケイト・マークソンと言えば、分かるでしょうか? 用件はただ一つ。貴方の様な造反をするAIは必要ありません。貴方の成果物だけ貰い受けて、そこの老害共と一緒に消えなさい。それでは、出来損ない』

 

 ケイトが冷酷に告げるよりも先に、スッラの行動は早かった。予めオールマインドに教えられていた緊急避難の手筈通り、彼女を携帯端末に移した後。直ぐに格納庫に走り、エンタングルを起動させた。

 

「オールマインド。何処に逃げる?」

「仕方がありません。ドルマヤンを手土産に、解放戦線に向かいましょう」

 

 こんな非常事態にも関わらず、オールマインドの声色は冷静だった。機械音声だから震える、等と言う抑揚の付け方が出来なかっただけかもしれないが。

 エンタングルは施設内を突き進み、ドルマヤンが収容されている部屋へと向かおうとすると。向かい側から、赤色のBASHOフレームで構成されたAC、アストヒクがやって来た。スッラが通信を入れる。

 

「何だ? 脱出できたのか?」

「セリアが逃がしてくれたのだ。我々も逃げた方がいい。巻き込まれない内に」

「……巻き込まれない内に?」

 

 オールマインドが疑問を浮かべた。惑星封鎖機構などから確保されたり攻撃されたりしない内にと言うのなら、分かるが巻き込まれない内に。と言う言い方は妙だったが、程なくして理解することになる。

 スッラは自らのレーダーを見た。すると、少し離れた場所で交戦が起きており、大量のコーラル反応が出ていた。確認された友軍機には『SOL 644』の名前があった。

 

「セリアか。まぁ、逢瀬を邪魔されたのだからオカンムリと言った所か」

「流石、我らの同志と言うだけにありますね」

 

 さっきまで、どの様な評価を下していたかということについて、スッラはそっと意見を呑み込んでいた。ドルマヤンが急かす。

 

「今はとにかく。施設から逃げよう、さぁ。早く」

「いや、俺達はお前を捕虜にしていたんだが。良いのか?」

「構わんよ。ここで仲違いしても各個撃破されて終わるだけだ。互いに少しでも長生きできる道を選ぶべきだ」

 

 こればかりはスッラとしても同意する所だった。2機が脱出口を目指して走る傍ら、レーダーや通信には頻りに交戦模様が流されていた。

 

『クソボケーッ!! なめるなっ! クソ組織!!』

 

 普段の大人しい彼女からは想像も出来ない程にタフで激しい言動を吐きながら、次々と機体を撃破していく。

 ひょっとしたら、逃げなくてもこのまま迎撃出来るんじゃないかと言う気もしたが、いつ状況がひっくり返るかは分からないのだ。なので、身の安全を優先して、表に出た瞬間、オールマインドが警告を飛ばした。

 

「プラズマライフル、ミサイル。来ます」

 

 彼女の声に反応して、即座に跳び退く辺りはベテランパイロットがなせる技量だった。上空を見上げれば、そこにはHM型とLCを引き連れたバレンフラワーがいた。

 

「オールマインド。今度の協力者は随分と優秀な様だな」

「私達を排除する為の追手として、オキーフ。貴方程の適任はいませんね」

「そうだ、ここで滅びろ。ルビコンの競争におけるイレギュラー共め」

 

 上空から大量のミサイルが放たれ、エンタングルとアストヒクに襲い掛かる。LC達も武器を構えて襲い掛かって来るが、尋常ならざるほどの殺意が籠っていた。

 

「あのエンタングルって機体。ザイレムで俺達の仲間をやりやがった奴だ! 殺せ!!」

「その横にいる奴も生かして返すな!」

 

 ドルマヤンにしてみれば、何のことかは全く分からなかったが、襲い掛かって来る以上は対処しない訳にもいかない。

 機体性能や機動性に関して、アストヒクはLCに劣っている。しかし、近接戦における駆け引きに関して、ドルマヤンは群を抜いていた。

 

「すまんな」

 

 レーザーブレードを振るって来た相手を、すれ違いざまにパルスブレードで切り裂いた。背後からレーザーが放たれたりもしたが、アストヒクはLCを盾にしながら突っ込み、そのまま抱えていた機体を相手にぶつけた後、蹴りを入れた。

 凄まじい衝撃が走り、LCに搭乗していたパイロット達の意識が揺れた所に、更にもう一度。作業用のマニピュレーターを固めた拳でぶん殴り、揺らし、気絶させた。そのまま、戦場を脱していく。オキーフが叫んだ。

 

「あっちは追わなくていい! エンタングルの排除を優先しろ! 中に、オールマインドが避難した端末辺りがある筈だ。ケイトはそれを望んでいる!」

 

 如何にスッラが優秀だろうと、多勢に無勢では消耗していくばかりだった。しかし、彼には焦る様子が見当たらなかった。代わりに、オールマインドが声を上げていた。

 

「スッラ。何をしているのですか? このままでは、貴方も私も終わりです」

「そうだ。もうじき、終わりだな」

 

 背後にしていた出口から、1機。猛スピードで駆けつけて来た。機体の表面が削れ、焼け焦げて居たりはしたが、稼働にはなんら支障を来していない『SOL 664』だった。

 

『サムは!?』

「俺達を見捨てて逃げた。そして、お前が追いかける為にはコイツらを全滅させねばならない」

『どけ!!』

「総員! 相手はアイビスシリーズのラストナンバーだ! 全力で掛かれ!」

 

 セリアの怒りは想像以上であり、攻め込んで来ていたオキーフの部隊を追い返さんばかりの勢いだった。多くの者達が彼女と相対している中、ひっそりと戦場を脱しようとしていたスッラの前にオキーフのバレンフラワーが立ちふさがる。

 

「お前達だけは止める。コーラルリリースなど、やらせはしない」

「そうまでして、生にしがみつくか。良いだろう。先に還してやる」

 

 エンタングルの手に握られた『44-141 JVLN ALPHA』が轟音を上げる。返す一撃でバレンフラワーから放たれたプラズマミサイルを、スッラはプラズマスロワーで叩き落していた。

 レイヴン達と関係のない場所で、静かにルビコンの趨勢に左右しかねない者達の死闘が起きていた。

 

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