戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】 作:ゼフィガルド
「それで、この間ね。1317の部屋に悪戯がてらにレイヴンのパンツを入れたんですけれどね。アイツ、何も慌てることなく洗濯機に持って行きやがったんですよ。枯れ過ぎでしょ!!」
ベイラムの面会室。惑星封鎖機構とアーキバスが手を組んだこと、そして先日の事件もあって、元・アーキバスヴェスパー部隊長であるペイターへの敵愾心も俄かに高まっている中、彼は特段気にした風もなく。捕虜となっていたV.Vホーキンスと談話に興じていた。
ベテランである彼も周囲の空気は察していたが、かつての部下が時間を割いてまで来てくれている手前、小言を挟むつもりにもならなかった。
「どうやら、そっちでは楽しくやっているみたいだね。君の活き活きしている様子が伝わって来るよ」
「ホーキンスさんも一緒にどうですか? V.Ⅶもいますし、もう一度ヴェスパー部隊長で固めるのも悪くないじゃないですか!」
「遠慮しておくよ。そっちの皆をまとめるのは大変そうだ」
敬遠とかじゃなくて、普通に嫌そうだった。幾らホーキンスでも、ペイタークラスの連中を何人もまとめるのはキツイと判断していた。
「そんな! だったら、もう後はスウィンバーンに押し付けるしかないじゃないですか!!」
「スウィンバーン君可哀想。……にしても、彼の変化にも驚くよね。昔はもうちょっと気が弱いというか、気障だったというか」
ホーキンスが知るスウィンバーンは、部下などの仕事も率先して行うこともあり、慕われていた様に思える……が、実際は自分以外の誰かが仕事をやることに対する不信感の強い、小心者と言う印象があった。
今の彼も頻りに注意をしたり、小言を口にしたりと。小うるさい面はありながらも、幾らか態度が軟化した様には思えた。
「そんなに変だとは思えませんけれどね。企業で生きていく上には弱みって、中々見せられないですしね。強いだけでやっていけるのはV.Ⅰ位ですよ」
ペイターの言う通り。技量だけでやっていけるパイロットは少ない。雇用主との交渉や周囲に呑まれない為のコミュニケーション術など、弱みを見せれば搾取されかねない。
そう言った意味で、ヴェスパー部隊長として部下の信用を得ながら、されど失態を見せない為に出張る。と言うのは、珍しくもないムーヴだった。これに対して、ホーキンスは苦笑いしていた。
「理解はできるけれど、同情はして無さそうだよね」
「私はスウィンバーンではないので、彼のロジックは理解できても心情は理解できませんから!」
こういった他者に無関心であることも生きていく上では強いアドバンテージになる。誰かの感情や思惑に引っ張られ過ぎず、時には生き残るために薄情とも言える選択も取れるからだ。
こうやって話してみれば、集団や組織には向いていない人柄だと言うのに、アーキバスと言う企業には恐ろしい位にフィットしている人間だった。
「もしも、スネイルが君を追い出していなかったら。と思うと、今頃どうなっていたんだろうね?」
「さぁ? 多分、惑星封鎖機構にHC辺りを申請して乗り回していたと思いますよ? あ、今はHM型がありますけれどね!」
実際にそうなっていた様な気はする。こうして、思い返してみればとある人物との出会いを契機に、ヴェスパー部隊長達は大きく変わった様に思える。ホーキンスとしては、彼女のことも尋ねざるを得なかった。
「そうかい。そう言えば、彼女とスネイル。今はどうなっているんだい?」
見張りの者達も表情に緊張が走る。ここから先は、余計なことを言えば強制的に面会を終了させられてしまうかもしれない。そんな空気だった。
「ホーキンス殿、申し訳ありません。そこは喋れないので」
「分かったよ。じゃあ、元気かだけ聞いてもいいかい?」
「元気ですよ!」
果たして、ペイターの言葉をそのまま受け取って良いのかどうかは微妙だったが、とりあえずは元気だと思うことにした。
結構長い時間話していたこともあり、退室を促された。また来るとだけ約束して、ペイターが面会室から出ると。あまり以外でもない人物と鉢合わせになった。
「貴様は、ペイターか。一体、ここに何の用だ?」
未だに彼に対する警戒心を剥き出しにしているのは、G6レッドだった。
戦場の人間にしては身綺麗にしていたので、彼が誰に会いに来たかを察して、ペイターはニヤケ面を浮かべていた。
「私の上司と面会していたんですよ。ベイラムは捕虜の扱いが丁重で良いですね。それこそ、男女問わずにね」
「当たり前だ。私達は貴様らみたいに外道な振る舞いはせんからな」
「貴方が面会するだろう相手も、同じ企業に所属していたのですがね」
誰と面会するのかを察されていたレッドは口を噤んだ。これからの逢瀬を邪魔する気にもならず、歩を進めようとした所で呼び止められた。
「待て。少し質問をしていいか? かつての上司の面会には来たんだよな? 貴様にも帰属意識があったと言うのなら、彼女を陥れたことに関して思うことは無いのか?」
レッドは疑問に思っていた。ペイターはアーキバスの面々と折り合いが悪いのかと思っていたが、スウィンバーンやホーキンスとの接し方を見るに必ずしもそう言う訳ではない様だ。
「無いですね。陥れておいて『あの時は本当に悪いことをしたと思っている』なんて、白々しいじゃないですか」
「……謝罪する気は?」
「無いですね。私はレイヴンや皆を助けるために必要なことをしたまでです。貴方が私に恨みを抱こうと、彼女が私を殺しに掛かろうと。仕方のないことです」
開き直っている。とは少し違う様に思えた。自分の選択がどの様な物であるかを把握しながら、付随する責任から目を背けようとはしていなかった。
レッドとしても憤りの行き場を無くしていた。もしも、これでなお自分の罪の所在をはぐらかすつもりなら、軽蔑さえしていたが。ペイターにはその様な気配も感じなかった。……その姿には、何処かG2を思い出させるような実直さを感じていたからだ。
「では、私はこれで」
ペイターは会話を切り上げて、猟犬部隊(ハウンズ)にあてがわれている部屋へと戻った。
室内では、ウォルターが仕事をしている傍らスウィンバーンが補助をし、ツィイーが間に入って色々と質問をしていた。ソファではレイヴンが寝こけている。
「ねぇ。スウィンバーン。どうして、ウォルターはこんなに色々なパーツを買えるの? 私達はベイラムとかアーキバスのは買えなかったのに」
「基本的にレイヴン達は独立傭兵と言う扱いだからな。ただ、今となってはベイラムに与している以上、アーキバスのパーツが買えるのは不思議と言う外ないが」
「ルートは幾らでもある。ここら辺は伝手の問題だ」
ウォルター程の男ならば、幾らでも持ってそうな物だった。猟犬部隊(ハウンズ)の修理用のパーツから、弾薬の管理。更には各方面からの事務作業などを、今まで一人でやっていたことを考えると、彼もまたレイヴンに並ぶ傑物など意識せざるを得なかった。
「ウォルター。ベイラムからの要請はまだですか?」
「もう直ぐ出るはずだ。ルビコン外のベイラムから催促が来ていたから、応えていた所でな。話もまとまった。それに対する準備もな。HAL826の修理が間に合わなかったことだけが心残りだが」
あまり日数は経過していないが、惑星封鎖機構&アーキバスがどれだけウォッチポイント・アルファの防衛機能を修繕しているかが気になった。
以前の様にエンゲブレト坑道から向かう訳にも行かないだろうし、正面突破になるとすれば。またもレイヴンに降下して貰う必要がある。
「ただ、アレだけ簡単に突破された物をそのまま修理しているだけとは思えませんしね」
あの時、レイヴンはペイターとお喋りしながらネペンテスの砲撃を避けて降下したのだ。その時のデータ位は回収できているだろう。つまり、次の突入は対策を施されているハズだ。
オールマインド達から譲渡されたというA.NULと言う機体がどれほどの性能を持っているかは分からないが、そこまで信頼を置けるものかと考えていると。内線が鳴った。ペイターが取った。
「ウォルター。次の作戦日程が決まった。レイヴンを連れてブリーフィングルームに来てくれ」
「了解しました」
相手はナイルからだった。ウォルター達も頷き、寝こけているレイヴンを起こしてから目的の場所へと向かった。