魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの半廻天〉 作:カメン病
ここは叛逆の物語後の世界。悪魔ほむらの手により円環の理は失われ、地上には魔女が蔓延る世界。
「うう…………………痛い……………………。お父さん……………お母さん……………誰か……………助けて………………………!」
マミが事故にあって死にかけている。他の世界線でも見られたマミの魔法少女になる直前の光景である。
「本当に助かりたいですか?」
「!?」
「それはどんな代償を支払ってでも?」
他の世界線に漏れずインキュベーターが勧誘しに来る。しかしそのインキュベーターはキュゥべえではない。白い姿の彼と違って黒い姿をした彼女は………
「私はルゥしい! 私と契約して魔法少女になってくれませんか?」
『ルゥしい』……キュゥべえに代わり改変後の宇宙を管理する、悪魔ほむらの使い魔だ。
時は流れて。
見滝原中学校から下校中の鹿目まどか・暁美ほむら・佐倉杏子・志筑仁美。この世界線でこの四人は同じクラスに通う友達同士である。
「え!? 本当?仁美ちゃん!」
仁美の報告に驚くまどか。
「ええ本当ですの。昨日……上条君に告白しましたところ………、……………何と……その………、OKを頂いてしまって……。」
仁美の恋の成就に三者三様のリアクションをする他三人。
「おめでとー仁美ちゃーん!!」
「良かったわね志筑さん。」
「やれやれ……やっとか……。待ちくたびれたっつーの!」
基本的には祝福のリアクションであり、仁美がさやかを出し抜いた事を気にする素振りは無い。
「今度お祝いしよー。」
「ありがとうございます皆さん………。……………何だか照れ臭いですわ…………。」
寧ろ一番浮かれていないのは仁美の方。照れているのもあるが、何だか見ようによっては落ち込んでいるようにも見える。
「………仁美? 何だか元気無くね?。」
その様子を心配する杏子。
「……もしかして罪悪感かしら、杏子を出し抜いてしまった事に対する。」
ほむらが仁美の業に言及した。しかしさやかではなく杏子に対しての。
「……はあ!?」
「……ええ!? あれ……本気で言ってたの?杏子ちゃん!!」
まどかの言う『あれ』とは、いつか杏子が仁美に『いつまでも手を拱いていたら私が恭介に告白しちまうぞー』と発破をかけていた事だ。
それを真に受けられて焦る杏子。
「ちげーって! 上条は私のタイプじゃないし…。」
「そっか……。」
杏子の否定に胸を撫で下ろすまどかと、修羅場になりかけたその光景を眺めてクスクス笑うほむら。ほむらもジョークのつもりだったようだ。
「ふふ……、杏子さんのあの後押し……私は嬉しかったですわよ。………………私が元気無いのはこれから皆さんとの時間が減るかもと思って……。」
仁美の悩みの種は恋人と友人の付き合いのバランスについてだった。
「確かにそうだねー。」
同意するまどか。
「でも……水を差すようで何だけど、上条君はいつもバイオリンの稽古で忙しいのでしょう? だったらそこまで影響は無いと思うけど。」
ほむらが鋭い事を言う。この中では誰よりも上条を知らなそうな割に。
「そうだな……。私も後押ししといて何だが、仁美はそれを我慢出来んのか?」
上条との付き合いは過酷なものかもしれない事を心配する面々に、仁美は気持ちだけは受け取っておく姿勢だった。
「心配してくれてありがとうございますわ。………でも大丈夫、私は彼のそんなところが好きで告白したのですから……。」
「…………………………。」
仁美の覚悟を感じてそれ以上の心配は止める三人。
「そっか………。それはそれで嬉しいけど……ちょっともどかしいねー。」
「ま……… しかしどの道あいつは寂しがるだろうなー。私らは上条と付き合いないからいいとして……、あいつからしたら親友二人に取り残された感じだろうからな。」
ここに来てやっとさやかの心配をし出す杏子。
「?」
「…………………。」
「………………? 杏子さん………、誰ですの?あいつって。」
誰の事を言っているのか分からない仁美に問い質される杏子。
「……………………………あれ?、誰の事考えてたんだっけ?私………。」
しかし問い質された直後に自分もさやかの事を忘れてしまう杏子。
「……………………。」
今この場にさやかを覚えている者はいない。………ほむらを除いては。