魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの半廻天〉   作:カメン病

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 一方その頃、どこまでも行っても大地にも宇宙にも辿り着かない果てない空が続くここは天界。ほむらにイレギュラー認定され、イレギュラー専用の干渉遮断フィールドに幽閉されたさやかとキュゥべえが会話していた。

 

 「ねえキュゥべえ……、どうしてまどかがここにいないのに……円環の理は機能してるの? 」

 

 干渉遮断フィールド以外遮るものが無く、ほぼ野?晒し状態なので二人は天界を見渡す事が出来るが、時々新しい魔法少女が転送されて来る。円環の理が機能している証拠だ。しかしまどかが地上での生活と引き換えに生み出された筈の円環の理が、全てのまどかが地上にいる今機能しているのはおかしいのではないかというのがさやかの疑問。その疑問に淀み無く答えるキュゥべえ。

 

 「それはきっと…僕とまどかの魂が融合しているせいだろう。」

 「…………は?。」

 

 予想外の答えに驚くさやか。

 

 「ほむらがかつてまどかの監視と制御の為に、自分の魂とまどかの魂を融合させたという話はしただろう?」

 

 かつてとは、ほむらが悪魔化しまどかを天界から引き摺り下ろした時だ。

 

 「ああ……、だからほむらを殺せないんだっけ。まどかも一緒に死ぬから……。」

 「実はそれより前に僕とほむらも魂を融合させているんだ。」

 「!?」

 「僕が円環の理観測実験の一環でほむらのソウルジェムに干渉遮断フィールドを張ったのは覚えているかい? 実はそれを行う条件がお互いの魂を融合させる事だったんだ。そして分離する事無く今に至るから……間接的にまどかと僕の魂も融合している状況なんだ。だから円環の理が現在機能しているのは…僕が天界にまどかだと誤認されているからだろう。」

 「………………。」

 

 自分の予想よりも凄い理由でただただ驚く…というか呆れるしかないさやか。

 

 「勿論まどか本人ではないと機能も不完全の様だけれどね。殆どの魔法少女は孵化しても地上に取り残されるままだし、運良く導かれても浄化されずそのままになってしまっている。」

 「……………………。」

 

 確かにキュゥべえの言う通り、時々転送される魔法少女がいてもそれは改変前の世界より恐ろしく低頻度だし、転送されても直後魔女になってしまっているなとさやかが思っていると……

 

 「…………さやか?」

 「え………、!!?、杏…子…!??」

 さやかが呼ばれた方を見ると杏子がいた。

 「良かった………本当に居やがった!!! ………………それと………キュゥべえ…………てめーもか。…………って事はここが天界……。」

 

 自分の中の情報と現状を答え合わせする杏子。

 

 「杏子……どうしてここに!? しかも人の姿で……。ほむらにイレギュラー判定されたの?」

 

 感動の再会もそこそこにさやかが憶測を進めると杏子が怪訝になる。

 

 「………………さやか……あんた、私の格好見て分かんねー?」

 

 杏子は何故か少し恥ずかしそうにしながら指摘する。

 

 「…………? ……そう言えば……あんた何?その悪趣味な格好……?」

 

 さやかは今の杏子のダークで妖しい雰囲気の衣装に、疑問と共に既視感を覚えた。

 

 「…私は悪魔になったんだよ。円環の理に導かれてここに来たんだ。」

 「!!!!?」

 

 さやかは思い出した、既視感の正体が悪魔姿のほむらだと。と同時に杏子の告げる事実に衝撃を受ける。

 

 「つーか……キュゥべえから何も聞いてねーの?」

 「…え?」

 「杏子が悪魔になったのは僕とまどか率いる天使達の導きさ。僕達と一緒に天界外周の遮断フィールドを壊して……まどかを天界に帰還させてもらう為にね!」

 「!!! え……」

 「円環の理がまだ機能してるのと、外周の遮断フィールドがまどか専用だったから私も来れたんだ。……キュゥべえ……あんたが提案してくれた作戦らしいな。まどかと思考を共有できんだっけ? ………………それで………本当にここから出しても余計な真似しねーんだな?」

 

 外周のフィールドを破壊するには杏子だけではなく他のイレギュラー達の力もいる。だから先ず杏子が自分と、さやかやキュゥべえ達の間にあるイレギュラー用の遮断フールドを破壊する必要があるのだが……

 

 「やれやれ、ここまで来てかい。君は既にまどかから僕と君達の利害が一致している事は聞いたんだろう?」

「………………………。」

 

 杏子が剣呑なのは痛い程理解出来るさやか。前科のあるキュゥべえに慎重になっているのだろう。

 

 「……分かった、後悔すんなよ。……今出してやる!!!」

 

 覚悟の決まった杏子が槍でフィールドを攻撃する。……がビクともしない。

 

 「……チッ やっぱかてーな……。だがその内…」

 「天晴れね…佐倉杏子。」

 「「「!!!!」」」

 

 杏子の背後からほむらがやってきた。悪魔姿である。

 

 「まさか本当に悪魔になるなんて……。貴方のさやかを取り戻そうとする愛は本物みたいね」

 さやかはほむらの台詞で、杏子が自分の為に悪魔になった事に気付きちょっと照れる。

 

 「てめー……マミとべべをどうした!?」

 

 ほむらがここにいると言う事はマミとべべはやられたという事だ。杏子はせめて安否確認をする。

 

 「大丈夫、殺しちゃいないわ。後で会わせてあげる………そのイレギュラー共の檻の中でね!!!」

 「!!」

 

 ほむらは大量のルゥしいを召喚し杏子を攻撃させる。その質量は地上の時を遙かに上回っていたが、しかし悪魔化した杏子は他愛無く去なす。

 

 「もっと前から閉じ込めておけば悪魔になる事もなかったがな………!! 詰めが甘めーんじゃねーか?ほむら!!」

 

 何だったら言い返す余裕さえある杏子。

 

 「………貴方は最後のチャンスを逃したという事よ、…私の理想郷の住人となる最後のチャンスをね。」

「!!?」

 

 予想外の事を言われて驚く杏子。

 

 「私はわざと貴方達をまどかに接触させたのよ。記憶を取り戻した貴方達の出方を見る為に。……まどかの友人達を片っ端から消し去るのも…それはそれでまどかの悪影響だしね。」

 「ふざけんじゃねー! 魔女のいる世界の何が理想郷だあ!? そんなもんは地獄って言うんだ………よ!!?」

 

 杏子がほむらの言葉に激昂するとその隙を突かれたのか、ルゥしい達の攻撃が杏子にダメージを負わせ始める。明らかにほむらが召喚し続けるルゥしいの上限を増やした。

 しかもそれは時が経つ程増えていく一方で、直ぐに防戦一方になってしまう杏子。どうやら今までほむらは全く本気ではなかったらしい。

 そして敢え無く杏子はルゥしい達に拘束され何も出来なくなってしまう。イレギュラー達を助けるどころではなくなってしまった。

 

 「杏子!!?」

 

 杏子の身を案じて叫んださやだが、同じ悪魔同士なのに一方的な杏子の弱さへの疑問も強かった。一方その答えはほむらが知っていた。

 

 「当然よね……、貴方がここに来れてるのは悪魔化のお陰じゃない。ソウルジェムを限界ギリギリまで濁らせた状態を長時間維持して、自分を円環の理に魔女だと錯覚させてるだけの……所謂バグ技のお陰。故に悪魔化も完全ではないし愛の力も使えない。最初から私に勝ち目なんてなかったのよ。」

 「!!! ソウルジェムを限界ギリギリまで…? 本当なの!?」

 「………ああ…まあ…」

 

 杏子が罰が悪そうに認める。

 

 「何て事を……! もし魔女になったら!!!」

 「勿論そうならないように細心の注意は払っているよ。地上のソウルジェムの側では常に天使達が穢れが溜まり切らないようにコントロールしているし……、それは仮に魔女化させてしまっても直ぐ始末出来る戦力でだ。」

 

 すかさずフォローかどうか分からないフォローをするキュゥべえ。

 

 「……………!!」

 

 ……さやかは自分が作戦を共有されていない理由が分かった気がした。

 

 「…………すまねえ……さやか………。……………畜生…………ここまでか…………。」

 

 自分の役目を碌に果たせず意気消沈する杏子。しかし対するほむらも勝利に酔いしれておらず何処か結末に腑に落ちない様子。

 

 「…………不可解ね……佐倉杏子……、どうして貴方はこの後に及んで私に何の懇願もしないのかしら。」

 

 ほむらが腑に落ちないのは杏子の行動。

 

 「……?」

 

 何の話か分からない杏子。

 

 「貴方は……自分が魔女化するリスクは払っているのだからさやかに対する愛は本物の筈………。だったら負けた貴方がすべきなのは私への忠誠と引き換えにさやかだけでも助ける事じゃないの? ……それとも貴方はまどか達に脅されてここに来ただけ?」

 「………………。」

 

 仮にほむらの言う通りに杏子がさやかだけを助けても、さやかに嫌われるだろう。しかし嫌われてでも愛した者は助けるべきだと言うのがほむらの理論。

 だから杏子がさやかに嫌われたくないから今の行動をしているなら叱ってやろうと思ってのほむらの質問に、その意図を知ってか知らずか杏子は答えた。

 

 「…………何言ってんだよ、さやかだけ助けても………円環の理は復活しねーだろーが。」

 「……………!!?」

 

 そもそも杏子はさやかを助けに来たのではなかった。杏子の目的は円環の理の復活……、つまり全ての魔法少女の救済だった。その事実はほむらにとって衝撃だった。

 

 「……つまり貴方は…………見ず知らずの大勢の人間を救う為にここへ来たというの……? 他人の為に生きるなんて下らないと言った貴方が………!!」

 「………………!」

 

 衝撃だったのはさやか自身もだったが、寂しさ以上に合点の方が優った。ひょっとして杏子と自分は同じ事を考えているんじゃないかと思ったのだ。

 次の瞬間天界に異常が起きた。地上から一部しか転送されずまばらだった魔女が一気に増え出したのだ。まるで洪水のように魔法少女が天界中に雪崩込む。

 

 「!!!」

 「!!??」

 「!!? これは……」

 

 異常事態というより、円環の理が正常に作動したと言う方が正しい。突然の事に驚く一同。少なくともほむらには身に覚えが無い事だ。

 

 「………見ず知らずの他人じゃないよほむらちゃん。」

 「「「!!!!」」」

 

 ほむらの背後からの声に驚く一同。その声の主が天界に帰還したからこの現象は起こったようだ。

 

 「杏子ちゃんが助けに来たのは……貴方自身。杏子ちゃんは貴方への愛で悪魔になったんだ!!」

 

 




TV版でマミさんは3話、杏子は6話、さやかは9話と退場していった中、まどかとほむらとキュゥべえは12話ずっと登場していた。だから実質この三人は異体同心だよね。魂が融合してしまうのも必然。
というよりこの三人は元々一つの人格だったけど、分裂して三人に分かれたが正解かもしれない。
その一つの人格は誰だったかって? 多分虚淵玄。作中であった三人同士の会話は彼の禅問答だった…のかもしれない。
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