ARMORED Archive   作:暁真

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気が向いたので続いた。


依頼:カイザーPMC勢力強襲

M A I N S Y S T E M

M I S S I O N B R I E F I N G

『レイヴン、仕事です』

『シャーレの「先生」から依頼が入っています』

『今回の内容はアビドス自治区内を占領しているカイザーPMC勢力の襲撃』

『依頼人からの伝言ですが、「私の「生徒」......いや、君の「友達」を一緒に助けて欲しい」とのことです』

『カイザーPMCの保有する戦力は一国の軍隊に匹敵します、生身の貴方が向かうだけではできて時間稼ぎ程度かと』

『......レイヴン、今こそ『あれ』を使う時です』

『本作戦ではAC「ナイトフォール・ソル」を投入し、敵勢力の背後を強襲、短期決戦で一気にカイザーPMC戦力を制圧します』

『貴方のお礼のせいでタダ働きですが、商売敵の勢いを大幅に削げるというのは悪くないですね、レイヴン......失礼、ちょっと口が滑りました』

『作戦内容は以上です。.......行きましょうレイヴン、その翼はもう借り物ではなく、貴方が自らの意思で羽ばたくためのものなのですから』

 

 

 

 

『ACナイトフォール・ソル、通常モード』

「テスト飛行は一回やったきりだけど無事に動いてる、よかった」

『しっかりと定期メンテナンスは行っていましたから。見つけたのが傭兵として名の売れてきた頃で良かったですね』

 

ブラックマーケット郊外の地下、ブラックマーケットの住人でもその存在を知ることのない秘匿された格納庫に『それ』は保管されていた。

全長約10Mの鋼の巨人。かつてレイヴンとエアが戦っていた世界ではACと呼ばれた機械。

二人と同じくキヴォトスに漂着していたそれ、かつてレイヴンが搭乗していた第二の相棒とも呼べる存在を発見したのは幸か不幸か、彼女たちが漂着してから約1年後のことであった。

とある依頼の最中にスクラップのように打ち捨てられていた愛機を発見したレイヴンは即サルベージし、同じく漂着していた「ある機体」と合わせて改修を行い、此処に保管していた。

万が一に備えていつでも動かせるようにはしていたのだがまさか本当に使う時が来るとは思わず、こうして依頼を遂行する前に一度動作確認を行っているのである。

 

『コーラルジェネレータ接続問題なし、ブースターユニット、正常に稼働します』

「……ねえエア」

『なんでしょうか、レイヴン』

「……コーラルジェネレータを使っているの、忌避感とか、ない?」

『……今更なことを聞くのですね』

 

かつてエアの同胞を動力として動いていたC兵器の動力源、コーラルジェネレータ。それを使うことに忌避感はないかとレイヴンはエアに問いかける。

 

 

 

『今はもうコーラルは私であり、貴方。だからそう、私たちの存在そのものが、この機体の動力になっているのです』

「……不思議な感覚。こうして身体はあるはずなのに、体が溶けていく感じ」

『言いえて妙ですね』

 

不思議なことに実体を得ているのにも関わらず二人の性質はコーラルそのもののようで、こうしてレイヴンが搭乗するだけで動力不足で動かない筈の機体は機能を復旧し、コンソールを灯らせる。

 

『全工程確認終了。ナイトフォール・ソル、いつでも出撃できます』

「……わかった、作戦区域までの推定到達時間は?」

『10分もかかりません』

「……よし、行こうか、「エア」」

『はい、私が貴方をサポートします、レイヴン』

 

もはや恒例になっている出撃前のやり取りを交わしながらレイヴンはコンソールを操作し、エアはハッチを開放し、格納庫保護のために隔壁を下す。

AC、ナイトフォール・ソルの背部に装着された巨大なブースターユニットが赤い火を灯らせ、耳を劈くようなジェネレータの駆動音が格納庫を駆け巡る。

 

『ハッチ全開放、いつでもどうぞ、レイヴン』

「ナイトフォール・ソル、行くよ」

 

 

瞬間、音を置き去りにして。

 

鋼の巨人は、キヴォトスの空を飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『敵増援多数……この数字、敵側の動かせる全兵力が……カイザーPMCはきっと、ここで総力戦に持ち込むつもりです……!』

 

第51地区、旧アビドス高等学園本館跡地。

対策委員会一行はホシノ救出まであと一歩、というところでカイザーによる足止めを喰らっていた。

現在動ける全兵力をかき集めたカイザーPMCは何としても彼女たちを通さない心持ちのようで、戦車の主砲やヘリのタレットがその銃口を向けていた。

 

「彼女の元へ行きたいのであれば、私たちのことを振り切って行けばいい。君たちにそれができるなら、の話だが」

 

カイザーPMCの理事は如何にも余裕綽々、という様子で対策委員会一行を挑発する、が。

 

「できるさ」

「何?」

 

対策委員会一行についてきたもう一人、先生は理事の挑発に対して不敵に笑う。

 

「たった4人、いや3人でこの兵力を突破できると?カイザーPMCも舐められたものだな」

「別に私たちだけでなんとかできる、とは言っていないよ」

「ほう、ならばどうやって突破する気かね」

「心配には及ばないさ」

 

 

 

 

 

 

「たった今、最強の援軍が来たからね」

 

『何かがこちらに超高速で接近してきます!じ、時速1200km!?』

「……聞こえた、キーンって、あれは……」

「赤い、鳥……?」

 

微かに聞こえる耳障りな風切り音と共に、彼方から赤く光る何かが迫ってくる。

 

 

「なんだあれは……」

『アビドス対策委員会の皆様へ、こちらハンドラー』

「ハンドラーさん!?」

「あんたまたいきなりね!」

 

先日に引き続いて唐突に回線に割り込んできたハンドラーことエアに対策委員会達は一瞬驚くが、すぐに正気を取り戻して。

 

「ハンドラー、あれは一体?」

「ミサイル、ってわけでもなさそうですねー」

『ミサイル一発よりも戦況を変えうるジョーカー、とでも言っておきましょうか』

 

少し楽しそうに通信するエアはこほん、と一息ついた後、赤い光の正体へと通信を繋ぐ。

 

『レイヴン、作戦区域突入まであと10秒です、9、8、7……』

「レイヴン!?」

「あの、赤い光が……?」

「レイヴンだと?はっ、コケ脅しはやめておけ」

 

レイヴンの名が出たことによる反応は三者三様で、理事に至っては全く信じていない様子、だが。

 

 

『3、2、1……』

 

 

『作戦区域突入、ブースターユニット「SOL 644」、分離します。皆さん伏せてください』

 

赤い光から無骨な鋼の巨人が切り離されると同時、赤い光から極大のレーザーが放たれ、カイザーPMCの戦車隊に直撃した。

 

「なっ……!?」

「なに、あれ……」

「とんでもない威力ですね……」

『カ、カイザーPMCの戦車部隊、6割消滅!?』

「ん、流石ワタリ」

 

直撃の煙が晴れた後には焼け焦げた何かの残骸しか残らず、その威力に驚愕する者、動揺する者。

そんな反応を確認したかのように、ちょうどいいタイミングで分離された鋼の巨人、AC「ナイトフォール」は対策委員会達を守るかのようにカイザーPMC勢力の正面に着地した。

 

『ごめん、待たせた』

「ううん、ベストタイミングだよ、ワタリ」

『……もうワタリでいいや。ハンドラー、SOLの出力は?』

『レーザーはもう撃てません、巡航形態を維持し、上空の制圧を行います』

『わかった、じゃあ地上はこっちで』

 

簡易的なやり取りを交わしたレイヴンことワタリは2丁のショットガンを構え残りの地上部隊をけん制する。

 

「な、なんだそれは!?私の知らない兵器など……!」

『当然、これは私たちが今まで隠してきた、最後の切り札』

 

「……なんか、出るジャンル間違えてない?」

「いいじゃん、カッコいいし」

「先生、そういう問題じゃないと思いますよ……」

 

何故かナイトフォールを見て目を輝かせている先生をノノミが落ち着かせ、改めて対策委員会一行は前を向く。

 

『ここは私に任せて、早く』

「言われなくても」

「……べ、別にっお礼は言わないからねっ!でも、全部終わったらその時は一緒にラーメン食べに行きましょう、ワタリ!」

 

ナイトフォールが睨みを利かせている内に一行は強引にカイザーの戦力を突破しにかかる。

 

『……ラーメン』

『どうせただ働きなのだから、貰えるものは貰ってしまった方がいいですよ、レイヴン』

『そうだね、さっさと終わらせて、ラーメン、食べに行こう』

 

「ええい、先ほどは不意打ちを喰らっただけだ!所詮たった1人、この数に勝てるわけがなかろう!」

 

ようやく正気を取り戻したカイザー理事はナイトフォールを撃破すべく、控えた戦力を全てぶつける。

 

『……はあ、何度も言うけど』

『ええ、そうですねレイヴン』

 

 

 

 

 

私()は、一人じゃない

 

【メインシステム 戦闘モード起動】

M A I N S Y S T E M

COMBAT MODE ACTIVE

 

ナイトフォールの頭部が変形し、バイザーが赤く輝いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

(ねえもうどう考えても私たち出るタイミング逃がしてない?レイヴン様が全部良いところを持って行ってない?)

「ねえねえ、アルちゃん、さっきからずっと白目剥いてるんだけど」

「はあ、多分ここぞって見せ場を奪われてどうしようか考えてるんでしょ……」

 

一方そのころ、便利屋68は完全に登場するタイミングを見失っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『メインシステム、通常モード』

『カイザーPMCの戦力、全て沈黙しました』

 

あれから数時間後、「助太刀します!」と言って駆けつけてきた便利屋68達の協力もあってナイトフォールに差し向けられた戦力は全滅。

「真のアウトローはクールに去るのよ」とレイヴンにはよくわからない理論でその場を後にした彼女たちを見送った後、レイヴンは対策委員会達を待っていた。

 

『……やりすぎたかな?』

『むしろいい宣伝になるのではないでしょうか、あのカイザーPMC相手に一騎当千の大活躍。レイヴンの名が益々広まりますね』

『別に広まらなくていいよ……』

 

待っている間暇なのか、二人は機体内で観客の居ない漫才を交わしていた。

 

 

 

『……反応あり、帰ってきましたよ、レイヴン』

 

夕暮れをバックに悠々と歩いてくる対策委員会達に、レイヴンはナイトフォールの頭部を光らせて答える。

 

「ワタリ!何か言いたいなら降りてきなさいよ!」

「流石に光信号だけじゃわかりませんねー☆」

 

切れの良いツッコミを受けたレイヴンは少し緩んだ顔をしながらコックピットを開け、彼女たちの前に降り立つ。

 

「お疲れ様、成功したようでなにより」

「ワタリの協力もあってこそだよ」

『まさかこんなものを引っ提げてくるとは思いませんでしたけどね……』

 

やっぱりナイトフォールに目が行くのか、レイヴンと会話をしながら視線は機体の方に向いていた。

 

 

『ACナイトフォール・ソル、我々の保有する最大戦力です。今までは使うまでもない依頼が大半でしたので存在は厳重に秘匿していましたが……今回は内容が内容だったので、ジョーカーを切らせていただきました』

「うへぇ、おじさん一人のためにこんなすごいのを引っ張り出してきたんだー」

「友達を助けてほしい、って先生が依頼してきたから」

「ワタリならきっと応えてくれる、って思ってた」

「……照れる」

 

褒められた時の癖なのか、レイヴンは頬をむずがゆそうにかく。

 

 

『SOL 644 再ドッキング完了、そろそろ私たちも帰りましょう、レイヴン』

 

ナイトフォールの背に先ほど分離したブースターユニットが再接続され、赤い火が灯る。

 

「それじゃあ私はこの辺で、ばいばい」

『今日は本当にありがとうございました、ワタリさん、ハンドラーさん!』

 

対策委員会一行にさよならを告げ、レイヴンはナイトフォールに乗り込もうとした、のだが。

 

 

「……あれ、そういや先生は前のお礼を使って依頼を受けたんだよね?」

「そうだけど……」

「……本来は幾らかかってたんでしょうか」

 

ふと浮かんだ、素朴な疑問。

 

「……知りたい?」

「えっ」

「……ねえ、私猛烈に嫌な予感がしてきたんだけど」

 

それを解消するために、レイヴンはパンドラの箱を、開いてしまった。

 

 

 

 

 

「いちじゅうひゃくせん……ねえ、なんか最低3000万って書いてあるんだけど、気のせい?」

『正確には3241万ですね』

「は、はち桁……」

『下手したらアビドスの借金が更に増えることになってましたね……』

「……無料で、良かった……」

 

なんとも締まらない結末である。

 

 

 

 

 

 




今度こそ続かない。

書きたかった対策委員会編は書ききったので、あとは思いついた小話を気が向いたら載せていく形になると思います。




ナイトフォール・ソル(日暮れの太陽)

キヴォトスに漂着したレイヴンの愛機をサルベージ、改修する中、同じく漂着していたIB-07:SOL 644をVOBのような分離可能ブースターとして取り付けるというトンチキをやらかしたいろんな意味で凄まじい機体。コーラルジェネレータを動力源としているが、キヴォトスに漂着したレイヴンとエアは変わらずコーラルそのものであるらしく、二人が搭乗するだけでエネルギー供給無限のチート兵器と化す。至れり尽くせりだが、難点は一回出撃すると8桁の金が飛んでいくところ。

レイヴン、仕事の時間です。

  • 「ティーパーティー」からの依頼です。
  • 「セミナー」からの依頼です。
  • アビドス対策委員会からの依頼です。
  • 私からの私的な依頼です。
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