そんなわけで次話投稿です。
ではどうぞ
「どうだい晴明?多分問題ないと思うけど」
「あぁ。魂魄どちらにも異常なし。単純に気を失っているだけだね。もうすぐ目を覚ますと思うよ?」
「いやー晴明がいるとその辺が楽で良いわ~」
天元様のご指名で始まったこの任務、星漿体の護衛と抹消。
しかしそれは晴明が保有する術式"魂魄呪術"により、星漿体を使わずとも達成可能であるとして
星漿体の護衛を継続する理由は大きく2つある。
1つ目は星漿体の少女 天内理子の安全を考慮してだ。
いくら晴明が"魂魄呪術"で星漿体無しで天元様の問題を解決できるとしても、それを正直に言ったところで『はい、そうですか』と敵側 『Q』と盤星教 が納得して手を引く筈が無いからだ。
いやもしかしたら盤星教は掲げている教義『純粋な天元様を信仰する』というものからしてワンチャン手を引く可能性が無いわけではないが、まあ期待しない方がいいだろう。
そのため今後も天内理子に対して放たれるであろう刺客に対処するため、護衛は継続するというのが
そう、晴明は"魂魄呪術"を三人に明かしたすぐ後に天元様に会いに行っている。
術式を使って肉体情報をリセットし星漿体の必要性を一刻も早く無くすことで、万が一にも『同化は実行する』なんて事を強行されないようにするためだ。
天内理子の護衛に向かう際に悟と傑と共にいなかったのはれっきとした理由があったのだ。
決して悟にモフられた腹いせに「てめぇら二人だけで行けやコラァ!!!」などとは考えてはいない。
ホントダヨ?セイメイ、ウソ、ツカナイ(棒読み)。
2つ目の理由は晴明の"術式の隠蔽"だ。
"魂魄呪術" 魂と肉体に作用するそれは正しく、存在の根幹に干渉する術式だ。
攻撃能力と言う点ではそこまで高くない(なお敵に触れた時点で魂を弄れば
晴明は"魂魄呪術"を『他者を害する』という目的で使用したことは全くと言って良いほど無い。術式を使うのは大抵が"呪霊を祓う"か"救出・救助"を目的としたものばかり。
けれど、その汎用性と利便性は悟の『無下限呪術』を遥かに凌駕する。
分かりやすいのは"治療"に関してだろう。
呪術界において治療と言うと真っ先に浮かび上がるのは"反転術式"だ。
本来は
正のエネルギーが齎す恩恵は凄まじい。
まず治療という部分において、これ以上の力はまず存在しない。極まった者が使用すれば"欠損部位"すら瞬く間に再生する事すら可能とする。
そしてこれは
晴明の術式"魂魄呪術"の術式反転『回帰』。
術式順転『転変』が魂と肉体を改変、つまり変化させるとするならば術式反転はその逆だ。
すなわち"戻す事"が『回帰』の真髄だ。
この"戻す"という解釈は、実は範囲がとんでもなく広い。
"反転術式"による"欠損部位"の再生は可能ではあるが、それは文字通り"可能"なだけで実際に再生させられるだけの術師は現状、存在しない。
唯でさえ高等技術である"反転術式"を使えるだけでも称賛されるというのに、欠損まで再生可能とするのは呪術全盛の平安時代においても数少ない。
晴明達の同期である家入硝子は自身だけでなく他者にも"反転術式"をアウトプットすることで治療が可能だが、それは欠損の再生を意味しているわけではない。
そんな使用者が少ない"反転術式"を完全に上回るのが、術式反転『回帰』だ。
ちなみに"戻す"という言葉を聞いて、一番最初に連想するのは何だろうか?
欠損の再生?
病の治癒?
状態の回復?
全てだ
術式反転『回帰』はその全てを可能とする。
失った腕を。
患った肉体を。
毒された身体を。
晴明にとっては、それは障害足り得ない。
そして究極的に"戻す"という事象が行き着く先は1つ。
■■な■■■■だ。
だがこれに関しては置いておこう。
話を戻そう。
そもそも晴明は"魂魄呪術"を使用する事が極端に少ない。そのため戦闘に使用する機会は滅多にないが、日常的には術式を多用している。
"魂の観測"と"肉体の隠蔽"だ。
魂と肉体への干渉を行えるという事は、逆説的に魂と肉体を"知覚"している事と同義だ。
それ故に晴明は天元様の肉体情報を捉えて術式の行使が可能であり、気を失っている者の状態の意識情報を認識することで逆算して"いつ目覚めるか"を読み取ることすら出来る。
"肉体の隠蔽"については晴明の出生に関係している。
安倍晴明の母は「葛の葉」というのは有名だが、その真相についてはっきりとした情報は無い。一説によれば、葛の葉の正体は
だがこの世界においては、それは紛うこと無き真実なのだ。
正確には複数の要素が重なったことにより生まれたのが「葛の葉」なのだ。
大きく関わったのは"畏怖"と"信仰"だ。
"畏怖"は葛の葉自体に対するもの。"信仰"は葛の葉を神使とする宇迦之御魂神へのものだ。
葛の葉自体に"畏怖"の感情が向けられたのは"狐"という存在であることが最も大きい。
皆様は人を騙す妖怪として挙げるならば、何を思い浮かべるだろうか?
脳裏を過ぎるのは"狸"と"狐"ではないだろうか?
つまりは"化け狐"だ。
古来の伝承より、インドや中国をはじめとしたアジアでは狐が人を化かすと信じられていた。化け狐とは長く生きたことにより妖怪と化した狐のことであり、怪談や民話などで幾度となく登場している。
中でも有名なのは海を渡り国を滅ぼしてきた伝説の大妖怪「白面金毛九尾の狐」であろう。
いわゆる"九尾の狐"だ。
それほどまでに"狐"という存在に対する感情は大きいのだ。
ならばそれは呪霊になるのが自然ではないかとも思えるのだが、ここで"信仰"の要素が加わるのだ。
日本の伝承において狐は、農耕神である稲荷と密接に関係している。日本古来の世界観は山はそれ自体が山神であって、山神から派生する古木も石も
今でこそ科学が発達し食料の安定供給が為されているが、1000年も前の時代において食料とは生命線そのもの。
特にお米、すなわち穀物の確保は最上級に位置するものだ。
そして稲作には穀物を食する鼠や、田の土手に穴を開けて水を抜くハタネズミが与える被害がつきまとう。
狐は穀物を食い荒らすネズミを捕食すること、狐の色や尻尾の形が実った稲穂に似ていることから狐が稲荷神の使いに位置付けられたとも言われる。
1000年前の人々にとって自分達の食料を鼠などの被害から守ってくれる狐の存在は、恐怖よりも先に感謝・崇拝する存在なのだ。
以上の特殊な事情が幾つも複合された結果、葛の葉は呪霊よりも精霊に、精霊よりも神霊に近い存在としてこの世に生まれ落ちた。
そんな葛の葉を母として生まれた晴明も、その特徴を受け継いでいる。
それが以前に悟達に見せた"耳と尻尾"だ。
神霊に近しい葛の葉と人間のハーフである晴明には、生まれた時から狐耳と尻尾が備わっていた。
けれど悲しいかな。大多数の意見が尊重される人間社会において、晴明の存在は異端として扱われる。
その筈だった。
だが晴明の術式が全てを解決してしまった。
術式順転『転変』により自身の肉体を改変する事で、容姿を人として見られるようにしたのだ。
それも術式を自身で知覚する4~6歳の間に、だ。
これには"
皆ならどうだろうか?
"あなたは転生した際に将来『安倍晴明』と呼ばれる存在になりました!そして使える能力は魂と肉体を操る力だよ!"
こんな風に言われて、まず最初に自分の魂を弄ろうと思うだろうか?一歩間違えれば死への一方通行なのに?
断言しよう あり得ない。
そんな危険性のある力なら、最初に自分以外で"実験"したいと考えるのが普通ではないか?
【転生】とはすなわち、強制的な
ましてやそれが『
"孤独"という感情を。
だがそんな
"期待に応えたい"
"もっと自分を愛してほしい"
そんな風に思う事は、間違いだろうか?
つまりはそういう事だ。
自身を育ててくれている愛しい父と母が、自分の容姿が母の特徴を受け継いで困っている。
両親がではなく、
そして手元には
自分を愛してくれる両親に、俺も愛を以て返したい
自身の本質を理解し、それを達成する手段があるとはいえ、齢六歳にして"魂魄呪術"を無意識下で使用して成功させてしまった晴明はまさしく"魂と肉体の専門家"と言える。
そしてそれは、現代においても変わらない事実だ。
閑話休題
以上の理由から、俺の
傲慢にも助ける命を選択し、時には"救わない"事すら視野に入れて動く。
それは"
「あ、起きた」
・・・・・・・・・いけない、
今は星漿体である天内理子ちゃんの護衛に就いているんだ。切り替えないとね。
というか悟?いつの間に理子ちゃんを抱えているんだ?俺が意識を逸らしたのってそんなに長くないと思うんだけど?
「オラァアアアアアアア!!!」
おぉ~凄いな。
つい先程まで気絶していたとは思えない叫び声を響かせながら、理子ちゃんは悟に平手打ちをお見舞いした。
しかも平手打ちをする時の勢いで悟の腕の中から抜け出すと同時に、彼女なりの武術の構えをしている。
どうやらこちらを未だ敵だと思い込んでるらしい。悟に対抗するつもりみたいだ。
でも仕方ないね。爆発で気を失った直後、目を覚ましたら誰かの腕の中にいるんだから。そりゃ味方と思う訳ないか。
「下衆め!!妾を殺したくば、まずは貴様から死んでみせよ!!」
理子ちゃん?それは最終的に全滅するまで敵がいなくなるよね?
ある意味では最適解、なのかな?
「理子ちゃん、落ち着いて。私達は君を襲った連中とは違うよ」
「嘘じゃ!!嘘吐きの顔じゃ!!
あー・・・傑の笑顔に罅が入ってる。
前髪を馬鹿にするのは良くなかったねぇ理子ちゃん・・・。
あ、二人が理子ちゃんの体を持ち上げて引っ張ろうとしてる。流石にそれは見過ごせないかな。
「二人とも駄目だよ。任務の護衛対象にそんな扱いをしたら、後で夜蛾先生に怒られるよ?」
「けどさぁ晴明?俺一発殴られてるし、これでお相子ってことで良くね?」
「私も同感だね。他人の身体的特徴を馬鹿にするのは良くない事だ。それなりの罰が与えられても仕方ないと思わないかい?」
「傑まで・・・一先ず理子ちゃんを降ろせ。話はそれからだ」
二人とも不満そうな顔をしているが、渋々ながらも理子ちゃんをソファに降ろしてくれた。
「二人ともお疲れ様。すまないね、合流が遅くなってしまって。それと改めて、初めまして天内理子さん。【東京都立呪術高等専門学校】から護衛として派遣された土御門晴明と申します」
俺は悟に"反転術式"による治癒を施しながら理子ちゃんに話し掛ける。
「護衛、じゃと?」
「はい。今回はこちらの不手際で
「う、うむ・・・」
流石に理子ちゃんも真正面から頭を下げられては強く言い返すのは躊躇われるらしい。
それに本来、この謝罪はあって然るべきものなのだ。
仮に"魂魄呪術"という裏技で天元様の術式関係をクリアできたとしても、流出してはならない『星漿体』という重要機密の情報が漏れてしまっているのだ。どう考えても100%こちらに非がある。
悟と傑の二人は俺が謝罪することに不満があるようだが、まあそれは仕方ない。
秘匿事項である星漿体の存在が外部に流出したのは恐らく上層部が原因だ。そうでなければこれほどの機密が外部に漏れるなどまずあり得ない。
だとしても、だ。自分達に非が無いとしても、それが原因で彼女達が被害を受けたのは確かなのだ。相応の対応は必要だ。
「お嬢様!!」
理子ちゃんが俺の謝罪を見て困惑している間に、世話係である黒井さんが到着した。
「黒井!!」
「お嬢様、その方達は味方です」
「う、む・・・どうやらそうらしいのぅ・・・ところで黒井、何に乗っておるのだ?」
「これは、前髪の方の術式です!!」
「その言い方やめてもらえます?」
どうやら黒井さんから見ても傑の第一印象は「前髪」らしい。確かに特徴的だからな、無理もない。
「『呪霊操術』。文字通り、取り込んだ呪霊を操れるのさ」
「思ってたよりアグレッシブなガキンチョだな。同化でおセンチになってんだろうから、どう気を遣うか考えてたのに」
「俺は悟に『気を遣う』なんて発想があることに驚いているよ」
「あ?」
「冗談だよ悟。そんな怖い顔をするなって」
その冗談に心を救われた俺としては、いつまでもその"在り方"を失わないでほしいけどね。
「フンッ!!如何にも下賎な者の考えじゃ」
「あ?」
悟~落ち着いてね?
「いいか。天元様は妾で、妾は天元様なのだ!!」
理子ちゃんは語り始める。
まるでソレ以外に、己の価値が存在しないかのように。
少なくとも俺には彼女の宣言が、人として己に価値を見出している様には見えなかった。
「貴様のように"同化"と"死"を混同している輩が居るが、それは大きな間違いじゃ」
いいや違う。そんな筈がない。
天元様の術式を直に見て、その術式効果を調整した俺だから理解できる。
そしてなによりも。
俺はこんな幼気な少女が、笑いながら"
「同化により妾は天元様になるが、天元様もまた妾となる!!妾の意思!!心!!魂は同化後も生き続け 」
「やめなさい」
俺は否定しなければならない。
「それ以上自分を貶める発言は やめなさい」
俺が生きてきたのは、目の前の少女のような存在を許さないためだ。
例え話をしよう。
もし世界を救うために1人の少女を犠牲にしなければならないとすれば、君はどんな選択をするだろうか?
少女を犠牲にして生きるか?
少女を犠牲にせずに世界諸共に死ぬか?
あるいは
「君は
少女と世界の、どちらも救うのか?
「そんな生き方を、誇らないでくれ」
「 私は」
それは葛藤だった。
「生まれた時から
至極当たり前の感情だった。
「私にとっては
"世界を救うために、君の犠牲が必要なんだ!!"
それは14歳の少女が背負うには、あまりにも重い
「お母さんとお父さんがいなくなった時のことは覚えてないの。もう悲しくも寂しくもない」
許してはならない。
「だから同化で皆と離れ離れになっても、大丈夫って思ってた」
この少女が犠牲になることでしか存続出来ないような世界を、許容してなんかやらない。
「どんなに辛くたって、いつか悲しくも、寂しくもなくなるって」
だから決めた。
「・・・でもっ、でもやっぱり。もっと皆と・・・一緒にいたい」
泣きながら"こんな世界は嫌だ"と想いを叫ぶ1人の少女の嘆きさえ聞こえないと言うのなら
「もっと皆と色んな所に行って、色んな物を見て・・・もっと!!」
そんな世界は、俺がぶち壊してやる。
「大丈夫だよ、理子ちゃん」
内に抱えた本心を吐露してくれた理子ちゃんの頭を、俺はそっと撫でる。
「君はもう偽らなくていい。我慢しなくていい。もっと我儘を言って良いんだ」
「・・・もっど黒井と一緒にいだいっ・・・ッ」
「・・・ッ!!お嬢様っ!!!」
涙で溢れた理子ちゃんの顔を優しく拭いながら、黒井さんは理子ちゃんを精一杯の力で抱きしめる。
それを見た傑は唖然としながらも意味を理解できたのか、その顔には力強い意思が秘められているのが分かる。
反対側を向いているソファに座っているため悟の顔は見えないが、その拳には今までにないくらいの力が込められているのがよく分かった。
そうだ。俺は諦めてなんかやらない。
覚悟しろよ世界。これから始めるのは奇跡でも偶然でも運命でもない。
どれだけ意地汚くても、どれだけ泥臭くても、どれだけ地獄の底に這いつくばっていても。
これは1人の人間が、悲劇を背負わされた少女を救うために、世界に真っ向から抗い立ち向かう
ただの
感想と評価をお待ちしております
特にヒロインとか決めてないけど、いる?
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いるにきまってんだろ!!
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いや、独身ルート一直線!!
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どってでもいいわ
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作者のお好きにどうぞ!