陰陽廻戦   作:おがとん

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ストックなんて俺は知らない!

どうもおはようございます。おがとんです。
最近「ストック」を題材にした小話が思い浮かばない・・・

そんなわけでVS甚爾戦です
どうぞ


第7話 壊玉・漆

 

そうか、死ね

 

 理子ちゃんを暗殺しようとした男     伏黒甚爾が悟を殺害した宣言に傑は呪霊操術で応えた。

 放ったのは傑の手持ちの呪霊の中で最高硬度を誇る呪霊『虹龍』と仮想怨霊の『口裂け女』だ。

 『虹龍』は伝説上の()への畏怖から生まれた呪霊で白い東洋龍のような外見を持っている。その名の通り見方によっては身体を覆っている分厚い鱗が虹色に見えることから命名された(と思う)。

 『口裂け女』はもっと分かりやすい。誰もが一度は聞いたことがある都市伝説だろう。

 呪霊は人間から漏出した呪力の集合体。実在しなくても共通認識のイメージは強力な呪いとして顕現しやすいのだ。 

 他に分かりやすいのは『トイレの花子さん』や『()()()()()』などの有名な妖怪や怪談が仮想怨霊として分類される。

 

 それらの傑の手持ちでも戦闘力が上位に位置する呪霊を最初から出してきたとなれば、手心を加えるつもりはない意思表示だろう。

 

 だが、それでは()()()()

 

「薨星宮と忌庫は()()結界。入口に見張りは置けない」

 

 理子ちゃんと黒井さんは別としても、これだけの戦力が敵対の姿勢を示しているのを前にして始めるのがお喋りとは余裕の表れか。

 こちらも舐められたものだね。

 

「扉の位置さえ分かっちまえばあとはザル。この時期から術師は忙しくなるし、今高専は蠅頭が溢れている。外はてんわやんわさ」

 

 饒舌に話し続ける甚爾にまず虹龍がその巨体を活かして身体をうねらせながら襲い掛かる。

 

「焦んなよ」

 

 だがそれを容易く跳躍で躱し、その勢いのまま空中で姿勢を上下反転させながらも寸分違わず銃の照準は傑へ向き、銃声が三発。

 虹龍の突進を躱されたことに微塵も驚かず、むしろ躱して当たり前という顔を見せながら甚爾の銃撃をタコの呪霊で防ぐ。

 

 どうやら依頼達成の為に護衛である俺達を先に排除する方針に変更したらしい。

 幸い跳躍のおかげでそれなりに距離が離れた。行動を起こすなら今が最善だ。

 

「藍、二人を抱えてこの場を離脱しろ。傑も護衛として一緒に行ってくれ」

「馬鹿を言うな!!悟が殺されたんだぞ!?なんで晴明はそんなに冷静でいられる!?」

「悟は生きてる」

「!?」

「ほ、本当か晴明!?五条はまだ生きとるのか!?」

「まず敵の言葉を鵜吞みにしない、これ鉄則ね。俺はあの男以外の伏兵がいないか索敵用の簡易式神を高専中にばら撒いたと言っただろう?」

「あ・・・ッ!?」

「気付いたね。視覚共有して探してたけど、ようやく見つけた」

「それで悟は無事なんだな!?」

「無事とは言い難い。むしろ死の淵に立っていると言って良い状態だ。喉元から右腰を袈裟斬りにされて右足にも複数の刺し傷。極め付けは左頭部に小さいが貫いたような傷もある。控えめに言って瀕死だな」

「そんな・・・ッ!!」

「嘘、じゃろ・・・」

「五条様が、それほどの傷を・・・」

 

 俺から悟の状況を聞いた傑達は顔を真っ青にしながら言葉を失っている。

 このまま会話を続けたい所ではあるが、生憎時間切れらしい。

 "天与の暴君"のお出ましだ。

 

「話の続きだ」

「必要ないよ。貴方の"透明性"には察しが付いてるからね」

「へぇ?」

「呪力からの完全な脱却による呪術的な透明人間。さらに武器として使用する呪具は恐らく物を格納できる呪霊に入れてるんだろう?あとは呪霊自体に自身を格納させて体にしまっておけば高専の結界は素通りできるってカラクリだ。透明人間は臓物まで透明だからね。分かってしまえば単純だね」

「!てめぇ、どうやってそこまで知った?」

「さて、どうやってだろうね?」

「・・・まぁいい。ここでまとめて始末しちまえばいい話だ」

 

 そこで言葉を止めた瞬間、甚爾の姿が一瞬で視界から消失する。

 狙いは、理子ちゃんか!

 

「藍!!」

 

 普段は持ち歩くのが面倒だからという理由で「()()」に仕舞っている呪具を傑の呪霊を呼び出すための黒い渦の見た目をした門の役割にも似た()()()()()入り口を開き、そこから藍に向けて射出する。

 

       拡張術式「亜空」

 

 「無生物にも魂が存在する」という理解から「万物に魂は存在する」と解釈し更に視野を広げて「空間にも魂は存在する」という認識によって生まれた拡張術式。

 空間の魂に干渉することで現実とは別に存在する"亜空間"とでも呼ぶべき場所に接続する。調伏した呪霊や呪符、所持する呪具などを普段は此処に収納している。

 

 射出したのは俺が平安時代に製作した"藍専用"の特級呪具。

 藍の戦闘の手札は体術をメインとした肉弾戦と尾を活用した搦め手。それ以外に応用が可能で虚を突くことが出来る戦闘手段を求めた結果として辿り着いたのがアレだ。

 

 打刀をベースにして藍の毛髪を材料に加えた逸品。

 銘を"変幻"。その術式効果は"呪力の許す限り刀身を自在に伸縮させられる"。

 

 まさに今、理子ちゃんの背後に高速移動し鍔に当たる部分がファーのような装飾が施されている呪具を振り下ろそうとしている甚爾との間にある距離を刀身が埋めていく。

 

「ちっ」

 

 刀身の変化に気付いた甚爾は自身に向けられた一撃が致命傷になることを一早く察知し、理子ちゃんへの攻撃を中断し高速移動で余裕をもって藍の逆袈裟を回避する。

 だが移動した先には先程の突進から攻撃する機会を伺っていた虹龍の姿がある。

 

「うっぜぇえなぁ」

 

 面倒だと言わんばかりの表情ではあるが、虹龍を迎え撃つ動きに淀みは無い。

 藍の"変幻"による刀身を伸ばした一撃を回避した際の勢いを殺すことなく態勢を整えながら虹龍に向かって一歩地面を踏み込み、すれ違うように移動しながら虹龍の口元から胴体を真っ二つに斬り捨てる。

 

ねぇ

 

 傑の呼び出したもう一体「口裂け女」が虹龍を斬り捨てた一瞬の隙を狙い仕掛ける。

 

わた、わタ、わたし、きれい?

「あー」

 

(仮想怨霊・・・質問に答えるまでお互いに不可侵を強制する簡易領域か)

 

 甚爾は今までの"術師殺し"としての経験と元々の生家である禪院家で培った知識から口裂け女の能力を時間を掛けることなく推測する。

 その上で答えを決めた。

 

「そうだな、ここはあえて       趣味じゃねぇ

 

 その答えは口裂け女としては外れだったのだろう。

 口裂け女が右手に持っている糸切り狭に力を込めて少しずつその範囲を狭めていく。それと連動するように甚爾の身体の各所にその大きさを一メートル近くにも巨大化させた糸切狭が配置され、今にも甚爾を切断せんとしている。

 

「そういう感じね」

 

 見えない筈のそれを感覚で理解した甚爾はすぐさま対処方法を実行する。"天逆鉾"で己を囲むように配置された糸切狭を秒も掛けずに瞬時に破壊した。

 

 虹龍と口裂け女をこうも簡単に相手に出来るか。ますます厄介だ。

 

 虹龍を斬り捨てた時に使っていた日本刀にも見えるファーの装飾が施されている呪具       恐らく特級に相当するソレは"釈魂刀(しゃっこんとう)"と言う。

 その術式効果は"あらゆる物の硬度を無視して魂を切り裂く"。

 ただしその効果を十二分に発揮するためには無生物の魂すら観測する目が必要となる。本来ならば術師であろうと不可能な所業をこの男、伏黒甚爾は類い稀な"天与呪縛"による強化された五感により可能として見せたのだ。

 まさしく"天与の暴君"という名に相応しいほどの強さと反則ぶりだ。マジで覚醒した悟くらいじゃないと相手にもならないな。

 

 が、そこはそれ。残念ながら俺は並なんて言葉では収まらない器なもので。

 

 さぁて、いよいよお披露目だ。

 現代では初公開。俺の切り札を一枚切るとしようか!

 

 俺は「亜空」からとある式神を収めた一枚の呪符を取り出す。

 

 

 ところで、安倍晴明が有名になった理由の一つをご存じだろうか?

 

 ゲームやアニメの題材として使われていることも知名度の高さの要因の一つではあるが、安倍晴明が使役する式神の中でも最も有名な存在がある。

 

       ()()()()

 

 安倍晴明が使役していたとされる最強の式神。その正体は晴明が式神として従える事に成功した様々な属性を秘めた非常に強力な()()だ。

 

 「騰虵(とうだ)」   炎を纏った翼のある蛇        

 「天后(てんこう)」   航海の安全を司る女神

 「朱雀(すざく)」   聖獣『朱雀』に相当         

 「大陰(だいおん)」   知恵に長けた老婦人

 「六合(りくごう)」   平和や調和を司る         

 「玄武(げんぶ)」   聖獣『玄武』に相当

 「勾陳(こうちん)」   都の中心を守護する、金色の蛇   

 「大裳(たいじょう)」   天帝に仕える文官

 「青龍(せいりゅう)」   聖獣『青龍』に相当        

 「白虎(びゃっこ)」   聖獣『白虎』に相当

 「貴人(きじん)」   十二天将の主将、天乙貴人      

 「天空(てんくう)」   霧や黄砂を呼ぶ力を持つ

 

 

 だいぶ大雑把ではあるが、これが現代に伝わっている「十二天将」の情報だ。

 実際に晴明が式神として従えているモノと実情が違っていたり、逆に正しい情報もあったりするが、その中でも特に正しく覆しようがないものが1つ。

 

 「十二天将」が一体「貴人」。

 十二体も存在する「十二天将」の式神の中で最強を名乗れるのは唯一()()()だけだ。

 

 いざ、行こうか。

 

 

 

 

 

       突如として、背筋に悪寒が走る

 

「ッ!!」

 

 甚爾は一瞬にして直感した。

 

 「呪霊操術」の使い手と思われる術師を片付けてしまえば後は「星漿体」を殺すだけの楽な仕事の筈だった。

 

 護衛として星漿体の周りにいる三人。その内の1人である五条悟は既に始末を終えた。「無下限呪術」を相手にするのは少し面倒だったが、これで合計五千万が手に入ると考えれば悪くない報酬だ。

 「呪霊操術」の術師も同様だ。如何に強力な呪霊と言えど"釈魂刀"と"天逆鉾"を巧みに使い分けて対処すればどうにでもなる相手だというのはメイドの女を拉致した際に分かっていた。

 だが殺してしまえば保有している呪霊の扱いがどうなるか未知数だったが故に殺しまではしなかった。

 

 唯一の不安要素は式神使いの男。

 

 操れる式神の数もそこまではなく、見た所では体術が()()()様子でもねぇ。対処はまず問題ないだろうと放置した。

 

 だが蓋を開けてみればどうだ?

 

 ()()を抉ってやったにも関わらず平然としている様子から恐らくかなり高度な"反転術式"の使い手だ。「呪霊操術」の術師も綺麗さっぱり傷の影響がない所を見ればまず間違いないだろう。

 しかも恐らく虎の子だと思われる九尾の式神。驚きはしたが、それでも()()()()

 

 全て、問題ない。

 

 その筈だった。

 

 

 

 悪寒の正体は式神使いが何らかの方法で取り出した一枚の呪符。

 アレは()()だ。

 

 視界に入った瞬間には駆け出していた。

 "釈魂刀"と"天逆鉾"を両手に構えそれぞれ全力で振り下ろす。それ以外では対処できないと直感が警報を鳴らしている。

 そしてこの時、オレの脳裏には1人の子供が思い浮かんでいた。

 

(そういえば、"恵"ってオレが名付けたんだったな)

 

 ふと、そんなことを思った。

 

 後から考えれば走馬灯だったのだろう。

 いつ死んでも悔いなんて無いと思っていたが、存外オレにもまだ人間らしい感情が残っていたらしい。

 自分も他人も尊ぶことない。そういう生き方を選んだのに。

 

    恵をお願いね

 

 

 思い出した時には、一歩遅かった。

 

 

 

 

 

「『覇刃顕符(はじんげんぷ)貴爀人機(きかくじんき)』 急々如律令」

 

 

 

 ()()()()オレの身体は両手足が千切れて彼方此方に吹っ飛んでいた。

 

 

 

 

 

       危なかった。

 

 あと一歩向こうの動きが速ければ、手足を無くしていたのは俺だったかもしれない。

 だが、それも終わった。

 

 目の前には両手と両足を切断され地面に倒れた伏黒甚爾がいる。

 

 『覇刃顕符・貴爀人機』は十二体存在する式神で唯一最強を名乗ることが出来る式神だ。

 その能力はシンプルであるが故に対処がまず不可能だ。

 貴人の呪装。それは変幻自在のブレードで攻撃するというもの。ブレードの大きさや数を自由に変えることが出来る。

 『貴爀人機』には()()()()()()()というものが存在せず、術者が攻撃指示を出した時点でブレードはそこに()()

 

 これがどういう意味を持つか分かるだろうか?

 武器が移動という制限に囚われない。

 

 ()()()()だ。

 

 空間を跳び越えて相手に直接攻撃を可能とする『貴爀人機』は防御の概念を完全に置き去りにする。

 対処方法は少ない。

 

 考えられるものとしては空間を跳び越えてきた瞬間を予測し、そのタイミングに合わせて回避する方法か、盾を用意するかだろう。

 

 ぶっちゃけてしまえば、これは未来でも視えてなければまず出来ない。

 未来を視ずに対処を可能とするにはそれこそ同じく()()()()()()()()()()か、もしくは()()()()()()()()()()()()()でも用意するくらいしか思いつかない。

 

 そんなことが出来る奴は早々いないが、完全に捨てきれないから怖いんだよな。

 

 

 閑話休題

 

 

 今現在、俺と甚爾がいるのは薨星宮『本殿』だ。

 戦闘も常に移動しながらだったため、何時の間にか御神木が中央に存在する『本殿』にまでやってきてしまったようだ。

 

「晴明!!」

「晴明様!!」

「晴明!!大丈夫なのか!?怪我はしておらんか!?」

「土御門様!!大丈夫ですか!?」

 

 甚爾の急接近とそこからの"釈魂刀"と"天逆鉾"による同時攻撃を間近で見ていたために、この場にいる全員に心配をかけてしまったらしい。直ぐそばに甚爾がいるにも関わらず全員が全力で走って近づいてきているし、なんなら理子ちゃんに関しては飛び込んできた程だ。

 どうやら、俺もまだまだ精進が必要らしい。

 

「大丈夫だよ。怪我もこの通りしてないから、問題ないよ」

「そうか・・・それは良かった」

「良かったぁ・・・本当に驚いたんじゃからな!!」

「ごめんね理子ちゃん。心配かけちゃったみたいで」

「全くじゃ!!」

 

 これは、相当な"お冠"状態だ。はてさて、どうやって慰めたものやら。

 

「ともかく、ご無事で何よりです。土御門様」

 

 黒井さんに話し掛けられたことで、俺の思考は理子ちゃんを宥める方法を一端保留し会話に応じる。

 

「黒井さんもありがとうございます。今回はあれが一番敵の意表を突くことが出来る方法だったので、ご心配をおかけしました」

「いえ!!土御門様に怪我が無くて良かったです。本当に」

「藍も咄嗟の対応ありがとう。"変幻"を扱うのは相当久しぶりだったろうに、よく反応してくれた」

「勿体ない御言葉です、晴明様」

「傑には悪いことをしてしまったね。虹龍は手持ちでもかなり上位の呪霊だろ?今度似たような呪霊を見つけたら教えてくれ。取り込むのを手伝うからさ」

「あ、あぁ。それは嬉しいが、今は早く悟の所に行って     

 

 未だに生死不明の状態である悟の安否を心配した傑は戻って治療することを提案しようとする。

 が、その前に状況に変化が起こる。

 

「アレ?もしかしてソイツ死んじゃった?」

「!?悟!?」

「五条!?」

「五条様!?」

「よぉ、久しぶりだな」

 

 唐突にこの場に現れた悟の姿に俺と藍以外の三人は驚愕している。

 俺は共有していた式神達の視界から、藍はお得意の気配感知で悟の接近には気付いていたから特に反応は示さなかった。

 

 ・・・・・・ふむ、これは少し危ないか。

 まぁどうにでもするか。これからの呪術高専に()は必要だしね。

 

「悟、"反転術式"をものにしたみたいだね」

「あぁ。元気ピンピンだよ」

 

 俺が話し掛ければ悟は返事をしながら甚爾に刺された頭部の傷跡を左手の親指で二回ほど軽く叩きながら語り始めた。

 

「ソイツに喉ブチ抜かれた時、反撃は諦めて反転術式に全神経を注いだ」

 

 俺と藍以外の面々も気付き始める。

 悟の様子に違和感を感じるのだ。

 

「呪力は負の力。肉体は強化できても再生することはできない。だから負の力同士を掛け合わせて正の力を生む。それが反転術式」

 

 既に理子ちゃんを暗殺しようとした下手人である甚爾は無力化した。ここから反撃は不可能だし、もはやその気力も甚爾には無いだろう。

 にも関わらず、悟の呪力は鎮まるどころか更に昂ぶり始めている。

 

「言うは易し。俺も今までできたことねーよ。周りでできる奴の1人は何言ってるかサッパリだし、もう1人にはコツを聞く前に習得しちまったしな」

 

 誰が見てもすぐに理解できる。今の悟は間違いなく     ハイになってる。

 

「だが死に際で掴んだ。呪力の核心!!」

 

 ここでようやく悟の視線が甚爾に向けられる。

 

「ソイツの敗因は俺を首チョンパしなかったことと、頭をブッ刺すのにあの呪具を使わなかったこと」

「それで一応聞くけれど、悟。彼をどうするつもりだい?」

 

 俺の問い掛けに反応して悟の視線が甚爾から俺に戻される。

 

「どうするって?決まってんだろ     コイツは殺す」

「「「・・・ッ!!」」」

 

 感じたことも無いほどの殺気にも似た"闘気"とでも言うべき気迫と甚爾の殺害の宣言に傑と理子ちゃん、黒井さんは表情を硬くしながら一歩後退る。

 

 現代最強に至る程のポテンシャルを完全に覚醒させた今の悟は血の味を初めて知った吸血鬼が如く、その力を振るいたくて興奮が収まらないのだろう。

 俺にも()()()()()から理解できる。あの状態は一度発散せてやらないと面倒なことになる。

 

 やれやれ、まさかの二連戦か。これは特別報酬でもないとやってられないな。

 

「藍」

「はい、晴明様」

「襲撃者の男の手足と彼が使っていた呪具を拾って、傑達と退避しなさい」

「!それでしたら私も御傍に・・・!」

「今のお前では荷が重い」

「!!・・・・・・ッ承知しました。直ぐに始めます」

 

 俺の断言に顔を強張らせた藍だが、それも一瞬だけで主の命令に従い行動を始める。

 

「おい晴明、何をするつもりだ?」

「今の悟は少し興奮し過ぎているからね。軽く発散させる必要がある」

「その相手を君がすると?」

「あぁ」

「いくら君でも無茶が過ぎるぞ!?悟の術式は知っているだろう!?」

「だからさ。悟の「無下限呪術」を真正面から破ろうとするなら、さっきの男が使っていた短剣の呪具みたいに発動中の術式を強制解除させるか。はたまた"領域展延"のように悟の「無下限」を中和させることで攻撃を届くようにするしかない」

「それが分かっていながら!!」

「そしてここで、俺は三つ目の方法を提示する」

「・・・は?」

 

 俺の言葉に面食らった傑は、一瞬だけ言葉を理解できなかった。

 正確には脳の認識が追いついていないだけで理解自体は出来ているだろうが、まぁこの際どちらでもいい。

 

「へぇ・・・晴明が相手してくれるんだ?」

「あぁ」

「ふ~ん。でも実際どうするワケ?あの呪具と"領域展延"無しで俺の「無限」を突破できるとは思えないんだけど」

「なに、分かってしまえばそう難しいことでもないのさ」

     じゃあ見せてよ。その方法をさぁ!!!」

 

 

 

 

 ここで1つ余談だが、先程の『貴爀人機』の説明を覚えているだろうか?

 『貴爀人機』には()()()()()()()というものが存在せず、術者が攻撃指示を出した時点でブレードはそこに()()

 

 俺はこれを()()()()だと表現した。

 そして悟の術式である「無下限呪術」は収束する「無限」を現実にする術式。自身の周囲に術式によって「無限」を現実化させることで、自身に近づく程低速化し接触出来なくなる為、基本的にあらゆる攻撃を無効化する。

 だがこれは「無下限呪術」の術者に攻撃する際に()()()()()()()()が必要な場合に限られる。

 

「ッ!!」

 

 ()()()()悟の右腕が肘の部分から切断されている。

 

「「「!?」」」

 

 ようやく全員が気付く。

 

 

 移動という概念に縛られない『貴爀人機』は空間を跳び越えて相手の防御を無視して攻撃できる。

 これが意味するのは唯一つ。

 「無下限呪術」とは「無限」を現実化させることで相手の攻撃が()()()()ことで全ての攻撃を無効化している。

 だがここで、()()が発生する。

 

 『貴爀人機』はその刃と悟との間に存在する「()()()()()()()すら跳び越える事を可能にすることを証明した。

 

 

 これにより『貴爀人機』は「無下限呪術」の()()と化した。

 

 

「さあ悟、全力で     遊び尽くそう(呪い合おう)か!!

 

 

 

          今ここに現代最強を決める戦いが、幕を切って落とされた。

 





今回はかなり無理矢理に解釈して拡張術式を作りましたけど、納得していただけますかね?
ニュアンスとしては「八百万の神々」に近いです。
全てのモノに神は宿るという概念を魂で代用した感じになります。

そうしてとうとう出ましたね!十二天将!
これが出したかった!
設定を見た時から思ってました。「あれ?これ無下限呪術破れるんじゃね?」と。
空間跳躍の部分は「貴爀人機」の設定を作者なりに落とし込んだ理解になります。
「いやこれ間違ってるだろ!」とお考えの方は、どう間違っているかをご指摘いただけると助かります。
今の所は設定的に通せるなと考えていますので、独自設定ということでご容赦いただけたら幸いです。

そして次回はお察しの通りVS覚醒五条戦です。
今回のVS甚爾戦があっさり終わっただけに、ちょっと不安です。
しっかり戦闘描写書けるかしら・・・何とかガンバリマス。

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