貞操逆転×→性欲逆転世界で配信者してなりきりチャットして女装する   作:坂水木

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それぞれの時間。

 モカ家、玄関。

 

「ただいまー」

「お邪魔しまーすっ☆」

「お邪魔しまーす」

「あんたらほんっと遠慮しないわね……いいけどさ」

 

 見かけ日本では一般的な一軒家に入る。

 扉を開けたモカに続き、香理菜と揃って玄関を抜けた。靴は並べて置き、呆れた顔をするモカを急かし家案内を頼む。

 

 両親や妹がいること自体は聞いているが、今日いつ紹介を受けるのか挨拶はどうするのかと詳しい話は何もしていない。

 家に入りリビングはどこぞやと首を回していると、上の階から声が聞こえてきた。

 

 廊下の左側、浅く幅広の階段が上に伸びている。

 優理の前世や今世のマンションとは異なり、玄関からリビングに繋がる道がないように思える。各種開け放たれたドアの先には可愛らしい小物が見え、女性らしさを強く感じる。視界に入った部屋はどれも一人部屋のようだ。

 

「うち、リビング二階にあるのよ。あたしの部屋はすぐそこなんだけど、先に挨拶するでしょ?」

「うん。さすがにねー。親御さんいるのに無断でお泊まりはわたしも気が引けるなー。あ、荷物は置きたいかも」

「モカちゃんのお部屋に荷物置こっか。というか、私たちって今日モカちゃんのお部屋に泊まるの?」

「一応はね。こっちこっち。ぱぱっと置いてさっさと上行きましょ」

 

 促され、部屋を観察する暇もなく鞄を放ってとんぼ返りする。二階への階段を登ろうと思ったところで、上を見て何やら不思議なものを見つけた。

 

「おねえちゃん、みえないーっ」

「しー、静かにする。モカ姉にバレるでしょっ」

「でもみえないよー」

「わかったわかった。あたしの足にしがみついてバランス取りなさい。離しちゃだめだからね」

「二人とも……もうバレてたり……うん」

 

 じっと由梨たちを観察する、香理菜の髪型に近いボブカットの少女。

 髪の長い、それこそモカを若く幼げにしたらそうなると言えそうな少女。

 他二人より一段と小さく幼い、真の子供な少女。

 

 そんな三人が、階段の途中で顔を覗かせていた。あれで隠れているつもりか。顔どころか身体も半分以上見えている。というか、子供は普通に一段下りて姉の足にしがみついてニコニコしている。可愛い。ほっこりする。

 

「あーもう……大人しく待ってろって言ったのに」

「……あ、モカ姉にバレた。うん……逃げよ」

「ちょ、ラテ姉!あぁココ離し――たら危ないから、ほらおいで!抱っこしたげる!」

「わー!マキねえ、だっこうれしい!」

「はいはい――っとやっぱ重くなったわねっ。けどあたし鍛えてるもんっ、余裕余裕。ちゃんと掴まりなさいね!」

「うんっ」

 

 妹を大事にする姉と、姉に甘える妹と。

 心温まる姉妹の日常を目にしてしまった。思わず香理菜と顔を見合わせ、同時にモカを見る。

 

「……な、何よ。妹たちもあたしも、別に変なことしてないでしょ」

「ふふ、変じゃないよっ。でもねー!」

「ふふー、モカちゃんも家じゃ妹に甘いお姉ちゃんやってそうだねー」

「ねー」

「なっ」

 

 ねー、とノリ良く香理菜と意見を合わせる。いやー、あの妹たちあってのモカちゃんかーとおかしな感慨が浮かんでくる。うんうん。善き哉善き哉。

 

「あんたたちは……もうっ、ほら上行くわよ。来なさい!」

「へへー」

「はーい」

 

 どしどしと、照れ隠しに音を立てて階段を上がっていく。相変わらずモカちゃんは可愛い。

 香理菜と緩く笑い合って、挨拶に行くかと二階へ行く。

 

 浅く柔らかな色合いの階段の先は吹き抜けだった。

 天井は高く、ぐるぐると回転するプロペラのような空調が見えた。名前は知らないが、映画やドラマで見たことのある代物だ。三階に続く階段が近くにあり、上の階も二階から見えている。

 リビングルームは広く、廊下と言う廊下はない。一応引き戸で部屋分けはされているらしい。優理の家と同じ仕組みだ。

 

「……広いねー」

「うん。ほんと広いねー☆」

 

 広い二階、広いリビングルームだった。家自体はそこまで、豪邸と言えるようなものじゃないのに、こうも天井は高く遮る壁もないととんでもなく広く感じる。過ごしやすそうな、素敵な家だ。

 

「ほら香理菜も由梨も、ぼーっとしてないで挨拶するんでしょ?……ていうか、パパもママもなんで隠れてるの?いつもはこっちのソファにいるじゃん……」

 

 はぁ、と溜め息を吐くモカの視線の先は、由梨たちのいる場所より右手前、というか手前奥というか。階段を上がってすぐからは見えない場所だった。そちら側から、この世界ではなかなかにレア度の高いバリトンボイスが聞こえてくる。

 

「やぁ、すまないね。どうにも娘初の友人となると、私も緊張してしまってね」

「ごめんねー!モカちゃんのお友達だと思ったら、すごーくドキドキしちゃってっ」

 

 現れたのは、片手に本を携えた背の高い細身の男性と、目に眩しいプラチナブロンドを揺らす巨乳の女性だった。……またずいぶんと、キャラの濃いご両親だことで。

 

「?なに、由梨?」

「ううん、なんでも☆」

 

 愛想笑いで誤魔化した。くぅ!お父さん!その身長ちょっと分けてください!あなた百八十以上ありますよね!?

 前世で数千回は思ったことを、まさか今世でも思うことになるとは夢にも思っていなかった童貞だ。

 

 挨拶は先手必勝。

 ダンディとイケメンの狭間にいるモカパパに対し、物怖じせず優理は前に出る。隣のお友達は近距離で見る生父親に驚いている様子。

 

「こんにちはー!私、傘宮由梨って言いますっ☆いつもモカちゃんにはお世話になっています!今日はお泊まりほんとーにありがとうございますね!私もお友達のお家初めてで、とぉっても楽しみでした!!」

 

 きらりん、っと全開スマイルでご挨拶。

 これぞ女子力。

 

「わー、ご丁寧にありがとうっ。うふふー、うちのモカちゃんがいつもお世話になっていますっ。きゃー、これ言うの楽しみだったんだぁ!」

「えー!ママさんかわいいー!モカちゃんいっつもツンツンしてるから、ママさんくらい素直になってくれたらいいのにぃ」

「うふふふ、モカちゃんはねー。お家でもそうなのよー?昔からずぅーっと照れ屋で可愛いの。学校でも変わらないのねぇ」

「はい☆素直になれない可愛いモカちゃんです!」

「ふふっ、モカちゃんに由梨ちゃんみたいなお友達がいてくれてよかったわぁ」

「えへへー、私もモカちゃんみたいなお友達がいてよかったです」

 

 なんだろうこの人。妙にシンパシーを感じる。由梨が作り上げられた可愛さだとしたら、この人は天然の可愛さだ。言うなれば人工と野生。

 

「ちょっともう!二人で盛り上がらないでよ。勝手に意気投合しないで。妹たちの紹介だってまだしてないんだから。香理菜も……香理菜?」

「……はーい。呼んだ?」

 

 ちら、っと静かになっていた友達を見る。

 なんだか元気がなさそうだった。どうしたんだろうか。

 

「いや……え、なんで元気ないの?疲れた?」

「あははー、さすがにこれで疲れるは演劇サークル舐めすぎじゃない?」

「高校の文学部と運動部みたいなやり取りだね☆」

「お黙り。……はぁ。や、なんていうか本当にお父さんいたんだ、ってびっくりしてたかも?あと、由梨ってすごいなーって改めて思い知られてたかなー」

「あー……」

「む、その目は何かな。由梨ちゃんのキュートさに見惚れちゃった?」

「はいはい見惚れた見惚れた」

 

 ぞんざいな扱い……だけど由梨は慣れている。モカちゃんはいつもこんなものだ。

 お静かにしろの合図を受けてしまったので、しょうがなくお口チャックして周りの観察といく。

 

 モカママはモカと香理菜の話に入りたそうでそわそわし、由梨と目が合い表情を輝かせる。お口チャックポーズを取ると、露骨に沈んでいた。隣のモカパパに慰められている。モカパパを見ると、片眉を上げて意味深に微笑んでくる。なんだこのイケオジ。

 

 曖昧に笑い、視線をずらしていく。高い天井と、広い廊下と、大きなテレビとふかふかそうな絨毯にソファ。家族団欒の気配を感じる。

 

「……ん?」

 

 そのまま視線を左に動かし、階段で見たミニモカちゃんと目が合った。くりくりの目が由梨を見つめている。

 

 

 一方。

 優理がモカ家にてリアル高身長低音男性と金髪巨乳美女、さらにはモカ似の幼女と遭遇していた頃より少し時間は巻き戻り。

 

 アヤメとリアラは「レジェンド・オブ・ルゼル」のオープニングを見終え、初めて&なにげに初プレイな最新作のゲームに興奮していた。

 

「リアラ!すごいですっ!!ゲーム!すごいです!!すごい!!」

「はい、アヤメちゃん。すごいですね……本当に、今のゲームはここまで進化していたんですね。……私たちでルゼル姫を助けなければなりません」

「はいっ。絶対の絶対の絶対にお助けします!」

 

 ぎゅっと手を握りしめ、がんばるぞいと決意するアヤメだ。リアラは静々と瞳の内に覚悟の炎を宿していた。勘違いしないよう言うが、この二人、まだオープニングしか見ていない。本編はこれからである。

 

「えっと……決定はこのAボタンですね。ふむふむー……リアラ、私がコントローラー二個とも持っていていいのですか?」

「構いませんよ。おそらくこのゲーム、一人プレイ用ですから。アヤメちゃんが持っていてください」

「わかりました……けど、あとでリアラと交代しますっ」

「ふふっ、ありがとうございます」

 

 リモコンを持つように一対のコントローラーを握り、ポチリと画面を進める。スタート画面からメニュー画面へ。三つほど表示されたセーブデータは下二つが空き、一番上のデータは赤いハートがずらりと二段になって並んでいた。なんとなくだが、これはコンプリート済みでは?と思うリアラである。

 

 アヤメは見てもよくわからなかったので、ポチポチとボタンを押して行く。

 はじめから。選択。データ。選択。消えます。選択。本当にいいですか。選択。ざっとこのような流れで、アヤメはゲームを始める。

 

「ああ!」

「ぴゃうっ、な、なんですかリアラ?」

「……あぁぁ、私が気を逸らしていたばかりに……」

 

 頭上に疑問符を浮かべるアヤメに、諦めた顔のリアラがしょんぼり状況を伝えていく。すぐさま顔色が悪くなり、藍色の目が伏せられ泣きそうな表情へ移り変わった。

 

「電話しましょうか。優理君なら許してくれると思いますよ」

「はい…………」

 

 電話は繋がらず、即座に飛んできたメッセージでサクッと許可はもらえた。さすがアヤメLOVEな優理である。優しい同居人を持てて嬉しいアヤメだ。好感度がまた上がった。

 

「――じゃあもう一度、です!リアラ、始めますね!」

「はい、始めましょう。――私たちの、ルゼル姫を救う冒険を

 

 妙に気取って言うリアラだが、この場にツッコミを入れる人間はいなかった。

 優理がいれば、もしかすれば”リアラさん結構ノリいいですよね”とか言って赤面する美女が見えたかもしれない。

 

 冒険は始まる。

 冒頭の自動ストーリーイベントが流れ、一般市民Rとして育ったリアンとルゼルの関係性や生活、世界観が描かれる。

 

「リアンとルゼルの関係値はおいくつなのでしょうか?」

「難しいですね。同じ島で育った幼馴染と考えると、やはり関係値はかなり高いと考えてよさそうです。しかし幼馴染は恋愛関係に発展しにくいと有名です。ゲームと言えどそこは定石を踏んでいるようですね。とすると、現段階の関係値は千を最大として百がいいところ――あぁでも、関係値自体は高くてもいいですね。ゴールが曖昧であって、今後の関係性の変化に伴って関係値」

「リアラ!今日は海渡りの儀を行うらしいですよ!」

「え、す、すみません全然聞いていませんでした……」

「ふふふー、私が教えてあげますっ」

 

 乙女的に考え込むリアラと、素直にストーリーへのめり込むアヤメと。

 孤島で生まれ育ったリアンとルゼルの物語は進んでいく。

 

「わ、操作できるそうですっ。えと……えっと、ん、これ二人プレイできるみたいです!」

「そのようですね……。優理君、コントローラーもう一セット持っているのかな……」

「聞いてみましょう!メッセージでいいですか?」

「そうですね。お願いしてもいいですか?」

「任せてください!」

 

 

 

← ユーリ
 ☏ : 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

10月14日(土)11:13

ユーリ!このおうちにはもういっ

こコントローラーはありますか?

 

10月14日(土)11:15

あるよー。配信機材の置かれた横

に白の籠あるから、その中見てみ

なー

 

+     メッセージを送信

 

 

「――らしいです!リアラ、どこのことでしょうか?」

「配信機材と言うとパソコンの近くなので……この籠のことですね。配信用のゲーム機材が揃っているようです……あぁ、ありました!アヤメちゃん、ありましたよ」

「えへへー、なら一緒に遊べますね。ユーリに連絡しておきます!」

 

 

← ユーリ
 ☏ : 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

10月14日(土)11:17

ありました!ありがとうございま

す!リアラも喜んでいます!私た

ちは伝説になります。

 

 

+     メッセージを送信

 

 

 ぱぱっと連絡を終え、ゲームの設定を終えて待っていたリアラと頷き合う。

 さあ、伝説の幕開けだ――――。

 

 

「リアラは妖精なのですね。何ができるのでしょうか」

「アヤメちゃんが進めている間にレジェンド・オブ・ルゼルのホームページを見てみましたが、ゲームの進行に応じて色々とできることが増えていくようです。今はやれることも少ないので、アヤメちゃん――リアンをくすぐっておきましょう」

「わ、リアンがむずむずしています。むぅ……いったいどんな意味があるのでしょうか」

「……いえ、たぶん意味はないです。フレーバー……雰囲気作りかと」

 

「敵です!これが魔物ですね!!えと、えと……えいっ」

「おお、さすが最新機。コントローラーを振るとその通り動きますね。ですが……」

「……あの、リアラ」

「はい」

「何も武器を持っていないので、逃げるしかできませんでした……」

「……武器、探しましょうか」

 

「ふむふむ、魔法ですかー。最初の説明でもありましたが、リアンもルゼルも魔法使いなのですね。ようやく武器……魔法を手に入れられました」

「戦闘魔法です、か。テレビCMでリアンは様々な戦闘方法を持つと知っていましたが……魔法で物理は予想していませんでした」

「えい!えへへー、今度はちゃんとパンチできました!魔法パンチです。魔法使いですね、リアラ!」

「そうですね。……ん、ふふ、どうやら私も魔法を覚えたようですよ。アヤメちゃん、傍の妖精をご覧ください」

「え?わあ……えと、どんな魔法ですか?」

「……ピカピカ光る魔法です」

 

「海渡りの儀は大変でした……。お船の運転はとっても難しかったです」

「そうですね。風に揺れて波に揺れて、まさか私の補助が役立つとは思いませんでした」

「えへへ、リアラのおかげでお船操作も完璧ですっ」

「ふふっ、これからも二人で頑張りましょう」

「はいっ」

 

「うぅ、リアラぁ。ルゼルが、ルゼルがぁ……」

「――……深海に落ちるとは、どういうことでしょうか。いいえ、それよりアヤメちゃん。私たちとリアンでルゼルを救いに行きますよ。リアンを見てください。あの決意に満ちた目を!」

「!……リアン。……そうです、私がしょんぼりしてはいられません!ルゼルを助けるんです!」

「はい……物語も動くようですね。島長のところへ行きましょう」

「はい。ルゼル、待っていてくださいね。私たちが助けに行きますから……!」

 

 

 ゲームに熱中する二人が空腹に気づき、"暇なら買い物行ってね"と優理から言われていたことを思い出すのは、しばらく後の話。




お気に入り感想高評価誤字報告等ありがとうございます。

カクヨム版の方もよろしくお願いいたします。
https://kakuyomu.jp/works/16817330667324170943

年末年始は休日が多いのでたくさん投稿しようかと思います。具体的には8話分くらい。

例えばこんなifストーリー

  • 女性の性欲が薄かったら
  • 優理に幼馴染(女)がいたら
  • 優理に姉妹がいたら
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