貞操逆転×→性欲逆転世界で配信者してなりきりチャットして女装する   作:坂水木

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二人で買い物。

 駅のホームで電車を待つ。

 平日の微妙な時間に電車を待っていると、曖昧な郷愁に襲われる。

 

 市民的で、庶民的で、電車に乗って通勤通学を当たり前にしていた時代。

 揺らり揺られて、毎日同じ行動を繰り返していた。晴れの日も、雨の日も、曇りの日も雪の日も。懐かしき我が前世。

 

「……」

「ユーリ?」

「……んー、どうかした?」

「……ユーリ、寂しい目をしていました」

 

 寂しい目をしていたのか。

 隣を見て、優しい顔をする少女へ曖昧に笑う。

 

「ユーリユーリ」

「うん」

「私が撫でてあげますね」

「――……」

 

 手を伸ばして、そっと頭を撫でてくれる。

 喜べばいいのか、泣けばいいのか。複雑なまま、これが母性かと胸中で呟く。

 

 バブバブすればいいのかもしれないな……。

 定期的にASMRで味わう感覚を振り払い、感謝を告げて過去の情景は放り捨てた。年下の少女(三歳)に頭を撫でられてバブバブするなんて成人男性にあるまじき姿だ――しかし待て。それを一種のプレイだと思えば世界から赦される気がする。聞こえる。"いいよ"。聞こえる。"いいんだよ"。聞こえ――るわけないだろバカか。バカだった……。

 

 妄想は止めて、大きな音を立ててやってきた電車に乗り込む。アヤメは結構興奮していた。優理の家にやって来る時使ったはずだが、当時は緊張と驚きの連続で周囲を見渡す余裕なんてなかったらしい。しょんぼりしてはいなかったが、とりあえず頭を撫でてあげた。

 

 電車を乗り継ぎ数十分。

 都会と言えば都会だが都心ではない。そんな立ち位置の街に降り立つ。改札を出て人混みを抜けると、広い青空に疎らな雲が浮いていた。高いビルがぽつぽつと並び立っている。

 

「最初は寝具を見に行こうか……アヤメ?」

「は、はい」

「どうかした?」

 

 はぐれないよう手を繋いでいたが、今は隣でなく優理の背に隠れるよう位置取っていた。

 振り向いて、びくりと肩を揺らす少女と話す。藍の瞳が揺れている。

 

「ぁ、え、えと。あの、ユーリ……」

「うん」

「人、い、いっぱいです……っ」

「あぁ……」

 

 理解が及んだ。

 そうか、それもそうか。

 

 元気いっぱいで身体も丈夫で、明るく眩しくなんにでも興味持って楽しげに見えるアヤメではあるけれど、この子はまだまだ幼い子供だった。経験したことのない人混みに気圧され、気後れしてしまうのも仕方ない。優理だってずっと昔に、きっとそんな経験をした。もう覚えていないほど昔の話だ。

 

 優理と違い、アヤメにとっては今が初めてだ。お買い物もつい先日初めてしたばかり。

 それなら、不安を秘めた少女に今優理がしてあげるべきことは。

 

「――よーし、アヤメアヤメ」

「え、は、はい……」

「僕についておいで。手握っててあげるから!僕の背中だけ見て、大丈夫になったら外も見ればいいさ」

「あ……ユーリ……」

「ふふ、それともお子様なアヤメはおんぶしてあげないと歩けないかな?」

「むっ、私は子供じゃないですっ。ユーリと一緒なら……一緒なら、大丈夫です!」

「そっかそっか。じゃあ手繋ぎ直して……行こうかー」

「ん!」

 

 喜怒哀楽が明確な少女の小さな手を引いて、ぴったりとくっついてくる感覚を背に覚えながら歩いていく。

 不安だろうが心配だろうが、いつかの優理が親の手を引かれて歩いていたように、今のアヤメも親――ではないが優理がいる。

 

 まさか童貞のままこんな立場につくことになるとは思っていなかった。しかしまあ……そう悪い気分でもない。

 

 ゆっくり歩き、最初の目的地である寝具屋、もとい家具総合店に辿り着く。

 建物に入ってすぐ、人混みは薄れ全体的に広々とした空間が出迎えてくれる。

 

「ええっと見る物は……」

 

 携帯を取り出そうとしたら、横から顔を出した元気な子がにぱっと笑んで教えてくれる。

 

「机と絨毯と私のお布団ですっ」

「そうだった。ありがとう。ふふ、もう大丈夫なんだね」

「え、えへへ。ありがとうございます。ユーリ。ユーリは……ユーリでした!」

 

 なんとなく意味はわかる褒め言葉だった。照れる。

 耳の横を掻き目を逸らし、行くよと告げて店内を歩き始める。

 

「ふーんふふらー♪」

「おっと、天明の杖のテーマソングかな?」

「はいっ。えへへールゼルのお歌です」

「小声なの偉いよー」

「えへ、私、偉いですっ」

 

 ご機嫌な美少女と共に店内を行く。気分は伝説の魔法使いリアンだ。

 

「アヤメはルゼルのメインテーマソング、たぶん聞いたことないよね?」

「!知らないです!」

「なら今日帰ったら聞こうか。知ってると知らないとでちょこっと気持ち変わるからね」

「はいっ。ふふー、楽しみが増えました」

「そりゃよかった」

 

 足取りの軽い少女にふりふり揺らされる手を見て、"僕も美少女と手を繋ぐことに慣れたものだな"と感動を覚えながら寝具コーナーへ。

 

 敷きパッド、タオルケット、枕、毛布、羽毛布団。他ベッドやマットレスのサンプルがあったり。

 

「聞いてなかったけど、アヤメって今の布団で満足してるの?」

「していますよ」

「そっか……」

 

 してるのか……。

 

「ま、まあ見て損はないからね。寝心地大事だし」

「そうなんですね!ユーリ、一緒に選びましょうっ」

「うん」

 

 手始めに枕から。

 そば殻とか、パイプとか、ふわふわ綿とか、固めの布とか、マイクロファイバーとか。

 家で優理やアヤメが使っているのは固めの綿が詰められたパイプっぽい何かが入った市販の枕だ。高価でも安価でもない。いわゆる普通の物。

 

 前世、優理は祖父母の家で夏休みや年末の休みにパイプ枕で寝ていた。古く、しゃらしゃらと音が鳴る枕だった。

 年を取り、色々なところへ行った。いろんな種類の枕で寝た。ふわふわのホテル枕も、旅館のほどよく固い枕も、低反発も高反発も、ひんやりしたりあったかかったりする枕だって。けれど、気兼ねなく安心して眠れたのは家の枕と、祖父母の家のしゃらしゃらした枕だけだった。

 

 それはきっと、寝心地以上に眠りにつく環境が大事だったからなんじゃないかと思う。

 

「――枕、良いと思うのあった?」

「……よくわからなかったです。ユーリはどうやって今の枕を選んだのですか?」

「なんとなくかな。だから今のままでいいなら、今使っているやつでもいいよ」

「じゃあ……えと、私、ユーリとお揃いのままでいいです」

「そっか」

 

 はにかむ少女を優しく撫で、さらさらな髪を撫で流す。

 

「なら次か。布団は……アヤメ、ベッドじゃないままでいいの?」

「むぅ……」

 

 困った顔だ。優理も同じ顔をする。

 どうしよう。リアラとアヤメの隣同士お泊まり会を見てしまってから、一緒に隣で寝たくなってしまった童貞だ。それこそ手を繋いだりしたい。"寂しくて入ってきちゃいました!……だめですか?(うるうる涙目)"とかされたい。

 

「へへへ」

「?ユーリ?どうかしましたか?」

「――いいやなんでもないよ」

 

 キリリと表情筋を引き締める。だらしない面を晒してしまったようだ。

 話を戻して。アヤメの隣で寝るには今のベッドを解体しなければならない。敷布団で寝るならさすがに邪魔だ。ダブルベッドやクイーン・キングサイズのベッドを買うのは現実的でない。学生を終えて引っ越しでもしたら……考えてもいいか。

 

 ベッドのままか。布団に切り替えるか。悩ましい。

 

「ユーリー。ベッドじゃなくていいですけど、私ユーリのお隣で寝たいです」

「――へへっ、僕ら、気が合うみたいだね」

「えへへー。ユーリも同じ気持ちですか?」

「うん。僕もアヤメの隣で寝たら毎日お泊まり会みたいで楽しいだろうなーって考えてた」

「やたっ。ユーリユーリ、ユーリもお布団に……私がベッドに……?」

「あ、やっぱりそこで悩む?」

「むむむ……どっちがよいのでしょうか……」

「そうなんだよねぇ……」

 

 困った困ったと二人並んで、時折見つめ合ってくすくす笑って時間を無駄にする。

 まるで家具に悩む新婚夫婦のような――ついに僕も新婚生活家具お悩み童貞卒業か……。童貞の妄言である。

 

「うーん、答え出ないし、いったん家のベッド横に除けて床で寝るか。マットレスは余りあるからね」

「はい、はい!!えへ、えへへぇ。ユーリとお泊まり会ですっ」

「ふふっ」

 

 とろけた笑みの可愛い雪妖精だ。

 枕は不要、ベッドも不要、羽毛布団はアヤメ専用の未来布団があるので不要。タオルケットも謎布団のおかげで不要と考えると、残りは毛布か。ふむりと頷き、アヤメの手を引いて毛布エリアへ行く。

 

 優理の家にあるお客様用布団は残り一組であり、厚めの掛け布団はあれどふわふわ毛布はない。アヤメ用も存在しない。あるのは優理が使ってきた愛用の毛布だけ。

 

「毛布は買おうか。気に入りそうなの探してみな。手触りの確認できるから感触確かめてね」

「はいっ」

 

 優理の手を離し、てとてと毛布選びに入る。柔らかく温かな感触が離れて異様な喪失感に襲われる童貞がいたが、銀の少女は後ろに気づかず毛布に夢中だ。

 

 小声とはいえ結構はしゃいでいた気もするが、さらっと周囲を見渡して誰も気にしていないことに小さく頷く。これも五感誤認アクセサリーの力だ。その場に上手く紛れる力は、少しばかりのはしゃぎようも目立たなくしてくれる。

 

 そもそも人の数が外ほど多くないと言うのもあるが、それ以上に割と皆お喋りして見て回っていた。店舗全体の空気が明るく、高級志向じゃないだけ客も気楽でいられるのだろう。

 

「ユーリー」

「はい。……お、もう決めた?」

 

 アヤメの下へ向かい、薄桃色の毛布をさわさわしている少女を見つける。淡い花柄っぽい、可愛らしくも穏やかさを感じさせる柄と色をしている。

 

「これがいいと思いました」

「そうなの?二枚くらい買おうと思ったけど一枚でいいんだ」

「えっ!」

「……言ってなかったね」

「もうっ、ユーリぃ!」

「あはは、ごめんごめん。ほら、僕買い物袋取ってくるからもう一つ選んでな」

「むむぅ……わかりましたっ。もう一つ選んじゃいます!」

「ふふ、うん」

 

 可愛らしくむくれていたのも一瞬、ぱっと笑顔になって毛布選びに戻っていった。

 大物を入れる用の買い物袋を取りに行きながら、優理は口端に笑みを浮かべて呟く。

 

「やっぱ、笑顔だよなぁー」

 

 ユツィラリスナーも言っていたが、やはり男を釣るには笑顔だ。

 

 

 薄桃色と薄水色の毛布二つを店員に預け、寝具からカーテンや小物家具、絨毯を扱うエリアに場所を移す。

 

 大きな物に囲まれ楽しそうなアヤメにほんわかする優理だ。

 

「絨毯ね……」

 

 ぐるぐる見渡して目が回ったのか、"ゆーりぃ"とよたよたするアヤメを支え撫でておく。

 無限にじゃれているといつまで経っても買い物が終わらないので、縦置きされている絨毯の群れを眺める。丸く筒状にまとめられており、柄自体はサンプルとして横に正方形の布が置かれている。試しに触ってみるとつるっとした滑らかな触り心地だった。

 

 家の調度品はPCデスクと下着タオル入れカラーボックスと座卓、ミニ本棚だけなので部屋の家具バランス的なものを気にする必要はない。色合いも茶色ばかりで、しいて言うなら今使っている座卓用絨毯が薄いグレイカラーなだけだ。

 

 座卓も買い替える予定なので、どうせならファンシーなパステルカラーを選んでもよいかもしれない。

 

「ユーリ。何かお悩みですか?」

「うん?うん。絨毯の色、何がいいかなーって」

「絨毯ですか。……ユーリは何色が好きなのですか?」

「んー、色々好きだよ。お茶の緑も夕焼けの橙も、空の青も桜の桃も。ふふ、アヤメの目の藍色も好きかな」

「……えへ、ユーリ。いつも褒めてくれます。私もユーリの色好きですっ」

「あはは。僕なんてどこにでもいる普通の色だよ?」

「ふふふー、ユーリは知らないんですね。ユーリの目はスモーキークォーツと言うのですよ!」

「え……え、スモーキー……なに?」

「スモーキークォーツですっ」

「クォーツ……宝石だっけ。エイラ、教えてくれる?」

『回答。スモーキークォーツは日本語で煙水晶と呼ばれる水晶の一種です。宝石と言うのも間違いではありません。濃淡はありますが、黒から茶を主な色としています。トパーズやガーネットよりも暗く透明度があります。光に透かすと太陽がくすんだ褐色に見えるため、煙水晶と名付けられました』

「詳しくありがとう」

『肯定。どういたしまして、優理様』

 

 耳から携帯を離す。相変わらずエイラが便利過ぎて困る。そのうちエイラ依存症になってなんでもかんでもエイラ頼りになってしまいそうだ。気をつけよう。

 

 スモーキークォーツについて知識を得たので、ニコニコして待っていてくれたアヤメを見る。笑顔が可愛い雪妖精だ。優理もニッコリしてしまった。

 

「えへへー」

「ふふ、スモーキークォーツなんてよく知ってたね」

「ユーリのことじっと見ていたら綺麗だと思ったので、エイラに聞いてみました!ユーリ、水晶みたいで綺麗ですよ」

「う、ぁ……ありがとうね、うん」

「えへへぇ」

 

 誤魔化しなでなでだ。

 かっこいいとか可愛いとかエッチとか、そういう褒め言葉はユツィラと由梨で慣れているが綺麗はなかなかない。結構な面映ゆさがある。

 

 耳の横を掻き、けふけふ咳払いをして絨毯のことに戻る。

 

「えっと……絨毯どうしようか?考えたけど、ごろごろするなら派手じゃない方がいいかもなぁって思ったんだよね」

「そうですね。私もお茶みたいに落ち着く色がいいです」

 

 パステルカラーも可愛くて良いが、ごろごろだらだらするなら目に優しい色が良い。それこそ和室の障子とか畳のような、ほっとする色合い。

 

 同居人からの同意も得られたので、手触りを確かめつつ一番ふわっふわで丈夫で柔らかさが長持ちしそうなものを買うことにした。大きさはそれなり。優理のPCデスクまでは届かないが、人が四人ぐらいは横になれそうなサイズだ。これならちょっと大きめの座卓を買っても問題なく載せられるだろう。

 色は目に優しいライトブラウン。お茶はお茶でもほうじ茶カラーを選ばせてもらった。

 

 絨毯を店員に預け、残りは大物家具の座卓だけ。

 エリア移動を挟み、いろんな家具に目を奪われているアヤメの手を引き歩く。最初はドキドキした手繋ぎも、こうして引っ張っていると子を連れる親の気分だ。恋人繋ぎをしていないからかもしれない。

 

「……」

「ユーリ?」

「あぁうん。なんでもないよ」

 

 つい手を凝視してしまった。不思議そうな顔をするアヤメを撫でて誤魔化す。にぱっと笑ってくれた。可愛い。

 緩く頭を振って思考を追いやる。急な恋人繋ぎはちょっと妙に気恥ずかしかった。こちとら童貞ぞ。そないえっどいことできっとおもか!?

 

 エセ方言紛いな考えは置いておき、座卓である。

 絨毯をほうじ茶色にしてしまったので、座卓は深みのある茶色が良い。パステルカラーとはいったい何だったのかと言いたくなるが、長く使うものは目に優しい物の方が良い。優理の経験則だ。

 

「アヤメはどんな机買いたい?」

「机ですか?ユーリと一緒に座れるならなんでもいいですっ」

「うぅ、アヤメは可愛いなぁ」

「え、えへへー」

 

 少女の純真さによよよと泣き真似する優理だ。

 アヤメの回答は参考にならなかったが可愛かったので良しとする。

 

 座卓の大きさはどの程度が良いのだろう。最低でも三人分の食器類は載せられるようにしたい。今後を見据えると四人か。四人で座って、飲み食いできてまだ余裕があるくらいがよい。

 

「ふーむ……」

 

 考えて、考えて、考えて。

 手慰みに美少女と手遊びしながら考えて。

 

 指相撲は手のひらサイズで完全勝利し、両手を使ってずるし始めた可愛い子とじゃれながら考えて。

 

 答えはでなかったので、お店のサービスを利用することにした。

 

「――すみませーん。家具の相談なんですけど」

 

 頼るべきは、やはりプロフェッショナルである。

例えばこんなifストーリー

  • 女性の性欲が薄かったら
  • 優理に幼馴染(女)がいたら
  • 優理に姉妹がいたら
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