貞操逆転×→性欲逆転世界で配信者してなりきりチャットして女装する 作:坂水木
「……」
「~~っ!!」
「……」
「……ユーリユーリ」
「はいはい。なに?」
涙目&顔を真っ赤にして悶える美人を見なかったことにする。恥ずかしいのと、あと普通に痛かったんだろうなぁと思う。
それはそれとして、意外にも後ろではなく横に立つアヤメへ目を向ける。
「お知り合いなのですか?」
「うーん。うん、一応。灯華さんって言って、知り合いではあるかな」
無垢な眼差しに"エロいことばっかしてきた仲だよ"とは言えない。
耳の横を掻き、そっと逸らした目を前に持っていく。
今日の灯華は一度目の邂逅と異なり、大人しい服装をしていた。
薄い
とりあえず全体的に上流階級っぽさが強い美人だ。
膨らんだ胸部より目を逸らし、うんうんと頷く。別に優理は巨乳好きというわけではないが、ないはずだが……欲求不満なのだろうか。性的刺激が多くて相対的欲求不満になっているのかもしれない。相対的欲求不満ってなんだよ……。
「そうなのですね……」
小難しい顔をして黙ってしまう。可愛い妖精をひと撫でし、再度灯華を見る。ようやく気分が落ち着いて来たのか、赤い頬を仰いでコホンコホンと咳払いしている。
「灯華さん。――この姿で逢うのは、初めてですね」
「あ、あら……」
つい慣れたノリで話しかけてしまった。演技派気取って、声に深みを持たせる。特定の何かを演じているわけではないのでただの遊びだ。
灯華は微妙な反応をし、すぐにふんわりと上品な笑みを浮かべる。アヤメがひだまりなら、灯華は野に咲く花といった笑みだ。自然体で美しく、人好きする表情は男女問わず警戒心を薄れさせる。しかし優理は何も思わなかった。綺麗な笑顔してるぜ、くらい。
「――わたくしとの逢瀬を望んだのは、貴方でしたか」
「いや望んだのは灯華さんですけど」
「ちょっ!?あ、あの……急に普通にするのはやめていただきとうございます!」
「あぁすみません。なんとなく飽きちゃって」
「飽きるのが早すぎます……」
「僕の名前は――」
隣を見て、こてんと首を傾げる少女に耳を塞いでおいてと伝える。未だお名前当てゲームは継続中だ。
「――僕の名前は
毎月毎月百万円とか冷静に考えたら頭おかしい。このゆるふわ美人一人のおかげで優理の年収はプラス千二百万円(税込み)だった。
灯華はぱちぱちっと瞬きし、口元を押さえてくすりと微笑む。お嬢様な仕草にときめく童貞だ。
「うふふ、お気になさらないでくださいませ。貴方様との心の逢瀬がどれほどわたくしの支えとなっていたか……。それだけの、いいえ、それ以上の価値はございました」
「そうでしたか」
「貴方様……か、かさ……ゆ、う……貴方様、わたくし、貴方様を如何にお呼びすればよいのでしょう?」
「別に優理ちゃんでもご主人様でもダーリンでもなんでもいいですよ」
「だだだだダーリン!!」
「まさかそこを選ぶとは……」
「ご、ご主人様……?」
「――」
わざと前のめりになって身を屈めての上目遣い「ご主人様」は超級の破壊力を持っていた。見るからに生まれも育ちも良さそうな大和撫子にそんな呼び方をさせている事実が倒錯的で、変な気分になってくる。嘘だ。いつも変な気分だった。なんだ問題ないね!問題しかないよ!!
「ユーリユーリ」
「ん、うん。なにかな」
呼ばれ、隣を見ると両耳をぺたっと塞ぐ可愛い子がいた。じっと見つめてくる藍の瞳に視線で応え。
「もうお耳いいですか?」
「うん」
言葉に加えて○サインを指で作っておく。
灯華にアヤメを紹介せねばと思い前を見ると。
「……?優理様、そちらの方は……?」
不思議なものを見るように、ライトブラウンの瞳が雪妖精に向けられていた。
ただ見知らぬ他人を見るのとは違う、何か違和感でも持っているかのような目だ。女性が誤認アクセを使っていることが不思議なのだろうか。というかこの人、やはりアクセサリーのこと知っていそうだ。
「あぁ。この子はアヤメ。ちょっと事情があって僕の家で預かってるんです」
「アヤメ、様……」
妖精とえろえろ女性の邂逅である。
「……」
じっと見つめ合う二人に、優理は無言でいた。
この後はアヤメの服を買うために見て回る予定だ。今いるショッピングセンターは洋服系が少ないので、メインは他で探そうと思っている。冬用の部屋着と寝間着と、下着と。あと外出着も冬用でいくつかは欲しい。由梨用衣装で代用もできるので、最低限いくつかの寝間着と下着だけ買えばいいか。
「……うん。灯華さん、灯華さんってなんでこんなところまで来たんですか?ストーキングですか?」
「え?あぁ、うふふ、もちろんストーキングでございますよ」
ニコリと輝かしい笑みを浮かべている。堂々とした変態だ……。
「アヤメ。こういう変な人もいるから、他人に付いて行っちゃだめだよ」
「はい!」
「……何も言われないとまるでわたくしが本当に変質者のようです」
「まるでも何も事実ですけど?」
「うぅ、本物の優理様はお厳しい方……けれどそれも素敵にございますっ」
「……ちなみにどうやって僕のこと見つけたんですか?」
「うふふ、そこは名家の伝手とわたくしの旦那様センサーによります」
「そうですか……」
なんだよ旦那様センサーって。もちろんツッコミは入れない。
いったん聞かなかったことにして、むんむんと唇を尖らせて考えている美少女に声をかける。
「アヤメー」
ほっぺたむにむに。悩んだ顔をにぱにぱ笑顔に変えておく。
「えへへー」
可愛い。アヤメの頬がもちむに過ぎて定期的にもちもちしたくなってしまう。
「服買いに行くよ。このお姉さんが一緒に来るかもだけど、いいかな?」
「構いませんよ!えへへ、ユーリのお友達なら悪い人じゃなさそうです!」
「――優理様」
「はいはい。なんですか?」
「わたくしの頬もむにむにしていただいても?」
「いただいても、じゃないですけど。第一近づいたら灯華さん即離れようとするじゃないですか」
さっきから一歩足を踏み出すと一歩下がり、一歩引くと踏み出してくるを繰り返していた。
意味不明な駆け引きだ。
「そそ、それはあのだって、その、致し方ない事情がわたくしにもございますの」
「そうですか。なんでもいいですけど、買い物一緒に行きませんか?僕も灯華さんとは色々話したいので」
「――――ええ、ええ。優理様となら例え火の中水の中。貴方様のズボンの中まで失礼致します」
「さようなら」
「お、お待ちくださいませっ!!!」
そそそとやたら楚々な動作で追ってくる灯華を後ろに、二人で洋服買い回りツアーと行く。
想定通り現在のショッピングセンターにあまり部屋着はなく、別の建物へ移動することとなった。
外はまだ明るいが、さすがに太陽も陰りを見せ始めている。ソフトクリームを食べるなら今のうちに食べてしまった方がいいかもしれない。都合の良いことに、目指していたショッピングセンターの一階にはフードコートが併設されている。
「アヤメアヤメ」
「はーいっ」
「ソフトクリームを食べたかったりしない?」
「!!食べたいですっ!」
「ふふふ、なら服買う前にそっち行こうか」
「はい!」
「優理様、わたくしは優理様の一口舐めたソフトクリームが欲しゅうございます」
「三人それぞれ違うの買って食べればいいんじゃないですか?」
「え、そ、え。よ、よろしいのですか!?」
「まあ別にいいですけど。アヤメもいいよね?」
「えへへー、いろんな味が食べられるなら大歓迎です!」
「――どうやら、わたくしの人生は今日より始まったようです」
感激している美女と元気な美少女を連れ、のろりと歩いていく。
混雑を抜け、時間も時間だからかそこまで人のいないフードコートへ。
「ユーリ!クレープがあります!」
「さっき食べたでしょ」
「うぅ、そうですけど……」
「アヤメ様、よろしければわたくしが購入致しましょうか?」
「本当ですかっ?」
「うちのアヤメを甘やかさないでください。ほらアヤメ、あっち行くよー」
「……ユーリ」
「え、うん」
「私はトウカについていきますっ」
「へ、あ、え……え……?」
ぱたたっと、仲良く連れ添って歩く赤毛美人と銀髪美少女。銀の尻尾と赤茶の波がゆらゆら揺れている。
取り残されたのは呆然とした顔の童貞、傘宮優理。
ショックが大き過ぎる。これは夢?モカ家でアヤメ寂しい事件と同等のショックを受けた。
――ぷるるる
携帯が震える。のろのろ取り出し耳に当てた。
『優理様、エイラです』
「エイラ……」
電話相手は保護者のエイラだった。
「エイラ……アヤメが独り立ちしてしまったよ」
『理解。優理様。アヤメ様は優理様の手を離れました』
「物言いが直接的過ぎる……」
もうちょっと慰めっぽいものを期待していたのに、普通に精神ダメージを上乗せされた気分だ。つらい。
『冗句。AIジョークです、優理様』
「僕にとってはブラックジョークだったけどね」
『謝罪。失礼しました。しかし優理様、アヤメ様は優理様を見捨てたわけではありませんよ』
「そりゃ見捨てられてたらこんな雑談できないよ」
いくらなんでももっと焦っている。既にアヤメは優理にとって同居人以上の存在だ。具体的にはエッチな漫画に出てくるエッチな妹。
『理解。そうでしたか』
「エイラさ。一応の確認だけど、灯華さんのことわかるよね?」
『肯定。当然です。
「超細かいね。ありがとうね」
優理の知る数十倍は灯華のことを知っていた。
エイラからの恐縮を受け流し、もう一つ尋ねておく。保険だ。
「アヤメさ、灯華さんに心許してるよね。大丈夫?」
『肯定。問題ありません。灯華様は名家出身です。優理様、現在まで続く名家というものは、清濁併せ吞んだ果てに権威を維持しているものです。後ろ暗いことも、忘れるべきことも利用できるものは取り入れている強かな一族です。これでお分かりでしょうか?』
「……」
聞いて、黙り込む。
名家。後ろ暗いこと。忘れるべきこと。エイラがわざわざこんなことを言うのは、それすなわちアヤメと関係があるから。人に知られては困ること……アヤメの出自、アヤメの存在そのもの。
「……わかったよ。名家だから優秀なわけで、
『肯定。その通りです。とりわけ灯華様は目が良いようですね』
「……そっか。共通点あるからアヤメも心許してるのか」
『肯定。アヤメ様が本能的に感じ取ったのかと思われます』
「了解。ありがと」
『返答。どういたしまして、優理様』
まさかこんなところでこんな情報を得ることになるとは思っていなかったが、知っておいて損はない情報だ。
アヤメが
妄言はさておき、仲良くクレープを買っている二人を静かに待つ。
ちょくちょく振り返るアヤメは保護者から離れた子供のようで、なんとも言えない可愛さがあった。手を振るとぶんぶん振り返してくれた。同時に横の美人もひらりひらりと優雅に手を振ってきた。親指人差し指で銃の形を作り、バン!と撃つと胸を押さえて恍惚としていた。なんだあの変態。
――ぷるるる
「ん、エイラ?何?」
『連絡。優理様、お伝えし忘れていたことがあります』
「おお。何?珍しいね」
『謝罪。優理様がお悩みのようだったため、追加でお伝えします』
「う、うん。ありがとう……」
わざわざフォローのために再度話しかけてくれるとは、本当にできたAIだ。前世の社会人優理よりも圧倒的に優秀である。
『連絡。優理様、アヤメ様が灯華様に付いていったのには共感性以外にも理由があります』
「え?そう、なのかな。何?」
『回答。アヤメ様は、優理様が気を許している相手だからこそ警戒せずに付いていったのですよ』
「――……」
『優理様が信頼している相手だと察したからこそ、アヤメ様は灯華様を善人と判断したのです、優理様』
「……う、ん」
こくりと頷く。ちょっと泣きそうになった。
そうか、そうだったか。そうかもしれない。自分の判断はもちろんあったのだろうが、アヤメの判断基準に優理の対応も含まれていたのかもしれない。それは……。それは、少し重く、けれどそれ以上の心地良さに満ちていた。
アヤメからの多大な信頼が重荷となり、背負った重さの分だけ胸は軽くなる。
「……気づかせてくれてありがとうね、エイラ」
『肯定。どういたしまして。優理様が積み上げたアヤメ様との信頼です。これからも大事に積み続けてください』
「あはは。うん。もちろんだよ」
携帯をしまい、クレープを買ってご機嫌な少女と意外に嬉しそうな美人を眺める。
これからも信頼は積み上げていこう。誰かから向けられる信頼はこんなにも……こんなにも嬉しいものなのだから。
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