貞操逆転×→性欲逆転世界で配信者してなりきりチャットして女装する 作:坂水木
「広いです! 大きいです! 高いですー!」
そんな可愛らしい元気な声に優理は頬を緩めた。
優理たちが住む地域は別に田舎というわけではないが、近辺でショッピングモールとショッピングセンターが合わせて四つほど立っている地帯はここだけだった。
駅を中心に東西南北と綺麗に発展しており、もともと西と南北には買い物場所が多かったのだが、最近になって東の開発が進み大規模ショッピングモールが生まれた。
優理がここを訪れるのは久々だ。大学からはそこそこ遠いので帰りに寄ったりはしない。
「お姫様。僕らは西に行きます」
「どちらですか?」
改札を出て、空中廊下の先を指差す。西だ。真反対にショッピングモールの入口があり、どんどんと人が吸い込まれていく。さすがに人間の数は多い。女性女性女性。女性しかいない。少しだけ気が引けそうになる。アヤメと手を繋いで気分を誤魔化した。
「あちらに映画館があるのですね!」
「うん。僕は人に酔いそうなのでアヤメが引っ張ってくださいな」
「! ユーリは私が守ってあげますっ!」
ぎゅっとしっかり手を握り返して前を歩いてくれる。いい子じゃ……。
少女の献身に心癒されながら、空中廊下で床エスカレーターに乗る。雨避けの屋根が嬉しい。歩行者に揉まれず済んでほっと一息だ。
「ユーリユーリ! 床が動いています!」
「そだね。乗ったことなかったっけ?」
「ないです!……たぶん?」
「ふふ、たぶんないよね。じゃあ新体験だ」
「はいっ、えへへぇ」
水溜まりと言い動く床と言い、普段気にしないものを楽しんでくれるとこちらまで嬉しくなってしまう。この調子で今日もたくさん発見をしよう。
優理たちが今いる駅は"三つ葉代駅"と言い、四つの路線が乗り入れる大規模な駅だ。
改札は二つずつで一定の距離があり、ざっくり東西にそれぞれの路線駅がある。
リアラとの待ち合わせ場所は西の三つ葉代駅で、優理とアヤメが通った改札は東の三つ葉代駅だった。歩いて五分ほど。
先ほど以上に混雑している駅構内を通り抜け、リアラがいるはずの西側ショッピングモール入口付近へ。
「おや」
「わ、リアラですっ」
遠く、柱の前に立って待ち合わせをしている黒髪美人がいた。
淡い白のふくらはぎ丈スカートに青系グレイのタイツ、短いお洒落スニーカーは公務員故動きやすさ重視だろう。上は黒っぽい青の長袖シャツ一枚だ。生地はニットっぽくも見える。
髪型はいつものリアラの耳上サイドテール――ではなく、今日は低い位置で結ぶローテールだった。大人のお姉さんでよく見る。
それよりも、頭の上に乗っかったふわっとしたベレー帽が可愛かった。薄く緑が入った白帽子は彼女の瞳の色にも合っている。緑がかった深茶色。大人っぽく可愛らしさも忘れていない、おしゃれ度の高い格好をしていた。
「……アヤメ、リアラさんのところ一人で行ってみて?」
「えー。ユーリも一緒に行きましょう?」
「僕が行ってもいいんだけど……ほら、デート相手にする例のやつ」
「あっ。"おまたせ待った?ううん今来たところ!"、ですね!」
「そうそうそれ。や、ちょっとリアラさん相手に僕がやるのは恥ずかしくて」
「えへへー、じゃあ代わりに私がやってあげます!」
「うん。ありがとうね。これもゲーム体験だ」
「はいっ」
少女を撫で、送り出す。迷子にならないか誘拐に遭わないかと心配しつつ見守る。気分は巣立ちを見守る親鳥。
「リアラー!」
「え、あ、アヤメちゃん!?」
「えへへー、おまたせしました!待ちましたか?」
「ううん。今来たばかりだよ」
「わー! えへへー、リアラならそう言ってくれると思っていました!」
「ひゃう、アヤメちゃん……えと、それ、どういうこと?」
「ふふふー!」
美少女に抱きつかれ困った顔をする美人だ。アヤメが手を振ってくるので、そそくさと近寄っていく。リアラと目が合った。
「こんにちは。可愛いですね」
「あぅ、あのえと……こんにちは。あ、ありがとう、ふふっ」
ぽっと頬を赤くして目を逸らしもじもじするリアラが可愛かった。なんだこの人、超可愛いぞ。
ぎゅっと抱きしめられた銀の少女は目をぱちくりさせ、むぎゅーっと抱きしめ返して嬉しそうだ。こちらも可愛い。
可愛いに可愛いを重ねてエモい。これがエモーショナルか……良き。
「リアラさん。行きましょうか。アヤメも行くよ」
「はい! リアラ、行きましょうっ」
「うん」
リアラとアヤメが手を繋いでいるので、優理は一人だ。悲しい。心の隅でそんなことを思ったからか、当たり前にアヤメが手を取ってくれた。嬉しい。
三人で仲良く映画館を目指す。
三つ葉代駅の西側区域は全体が一種の吹き抜けモールになっているので、映画館までずっとデパート風なお洒落店が一階から四階まで並んでいる。実際に大きなデパートも併設されており、そちらはそちらでいつも盛況だ。
駅を出てある程度人の減った雨道を行く。敢えて屋根のない道を選ぶことで人数はグッと減った。
「リアラさん、今日何見ると思います?」
「え、えっと……恋愛映画、かな」
「それはリアラさんが見たいやつでしょ。いやまあ見たいならそれでもいいですけど……」
「ふふふー、だめですリアラっ。今日はとってもわくわくする映画を見るのです!」
「あぁ、ふふ、そういうのかぁ。うん。私は全然いいよ。二人と一緒ならそれで……すごく嬉しいから」
「まあ暫定なんですけどね」
時間はたっぷりある。
お店を冷やかし、敢えて屋根の下を通らず雨空が近い大通りを行く。
階段を降り、しとしとと傘を濡らしながらモール内へ。
先に買い物や軽い食事、観光も済ませるだろうと思い鑑賞予定の映画はお昼スタートとした。約二時間後の始まりだ。先にチケットを買っておくのがベストだろうが……。
「ユーリユーリ! 高い廊下があります!」
お姫様が指差すそれは前方の空中廊下だった。左右の建物、三階同士を結ぶガラストンネルのようなものだ。そこまで珍しくはない。アヤメにとっては初見だが。
先に行こうと急かすには、少々優理家のお姫様は奔放が過ぎた。
今の彼女の表情を見てしまえば、一瞬でもその自由を奪おうという気は失せる。
「そうだね」とアヤメに頷き、リアラと目で意思疎通して建物内部へ。二人の手を引くアヤメは目をきらきら輝かせていた。
「優理君、今日の昼食は考えてる?」
「いえ、あんまり。リアラさんは?」
「私は……えと、あのね。一応その……考えてきた、よ?」
「へー。それどんなところですか?」
「その、男の人歓迎ってわけじゃないんだけど……いい?」
それはアレか。以前の約束をそのまま持ってきているのか。別に優理は食事全部個室で男歓迎!な場所が良いというわけでもない。最近は女装せず外出していることも多いので、あまり気にならなくなってきていたのだ。ただまあ、気遣いを無下にするのも男の流儀に反する。
「ええ。構いませんよ。アクセも切れる場所は今度、ですね」
「うん。えへへ、ありがとうね」
「いえいえこちらこそ」
食事場所自体は秘密らしい。こそっと唇に人差し指を当てるリアラがいた。可愛いお姉さんだ。
空中廊下を見学し、ちょっとしたウインドウショッピングも済ませる。アヤメがお値段高めのお菓子売り場でぶんぶん首を振り回していたが、購入自体は後にしようと話した。持ち歩くと重いし。目星だけ付けておこう。
「カステラ、クッキー、おせんべい……おまんじゅう!」
「持ち歩ける分だけにしようね」
「えへへー、全部持てます!」
「……アヤメなら全部持てちゃうか。また今度来る時、楽しみ減っちゃうから二個か三個にしようね」
「!!」
目を見開き、盲点ッ!?!? とでも言いたげな顔をする。横でリアラも同じ顔をしていた。なんであなたまで驚くんだ……。
「え、あ、えと……その、ね。また、来れるんだ、って思っちゃって……」
「……人生最後じゃないんだから、また来ましょうよ。リアラさんから誘ってくれてもいいですよ」
「ふぇ!? そそそ、それはあのえとだって、ま、まだ無理か、なぁ……なんて」
可愛くもじもじしている美人の発言へのアドバイスはただ一つ。
「大丈夫、告白し合った仲じゃないですか。食事の十回や二十回いくらでも行きますよ」
「か、回数が多いよぉ!」
何やら顔を赤くしてわたわたし始めたので、わははと笑い飛ばしておいた。
真剣な顔で悩んでいるお姫様へ近寄る。
「ユーリ」
「はい」
「期間限定がたくさんです」
「そうだね」
「困りました」
「そっか」
「はい」
秋のアレコレで悩んでいる美少女だ。頭を撫でておく。
「まあまあ、買うまでまだまだ時間あるから、歩きながら考えておこう?」
「はっ! 名案です! そうします!!」
ということでデパートを出る。屋根から抜け出て傘を開く。
先に一人、外に出てはしゃぐアヤメとは裏腹に、何やら思い詰めた顔のリアラが足を止めていた。声を掛けようと思ったところで。
「えいっ」
「わ……」
「え、えへへ。えと……も、もう入っちゃったから離れないよ。ぁ、えと、で、でもその……ほんとにだめならあの……すぐ出ていきます……」
開いた傘の下、滑り込む形でリアラが飛び込んできた。相合傘だ。
身長が同じなので高さはちょうど良い。顔が近い。睫毛が長い。花の香りが広がる。
頬を染めながら勝手に入ってきて可愛く発言したと思ったら、一人落ち込み悲しい顔をする。なんだこの感情ジェットコースターは……判断が早すぎるし自己評価も低すぎる。
「待ってください」
縮こまって消え入りそうなネガティブリアラの腕を取る。細くて繊細で折れてしまいそうで……離さないよう勢いのまま引き寄せた。
「きゃぅ」
「リアラさん」
「は、はぅあぅ、ななな、なにがどうしてこうなってっ!?」
「リアラさん」
「え、う、うん。ゆ、優理君? か、顔近くないか、な。と、吐息がっ」
「リアラさんエッチですね」
「はぅ!」
エッチなお姉さんと強引に腕を組み、カップルっぽく歩き出す。たどたどしく顔を真っ赤にしているリアラは努めて気にせず行く。
「あー! ユーリとリアラずるいです! 私も腕組みたいですー!」
「ははは、いつも組んで……はないか。映画見る時はずっと腕組んであげるから、今はお預けだよー」
「え。あの、えと、わ、私も優理君とずっと腕組むの……」
「じゃあ映画はずっと二人と一緒です!」
「おっけー」
「え、う、うん……」
できれば優理と腕を組むか手を繋いでいたいと思ったリアラだが、アヤメと一緒となると優理とは席が離れる。アヤメを真ん中に置く形だ。仕方ない。別に嫌なわけではない。むしろ喜んでいるアヤメが可愛らしく、見ていてほんわかする。ただちょっとジェラシーとか寂しさとか恋欲とか性欲とかがあるだけ。
諦めは胸に秘め、少なくとも今はと優理の腕を胸に押し付けた。
「く」
「? 優理君?」
「え? いやはは、なんでもないっすよ」
「うん? うんっ」
妙に上ずった声の優理が可愛くて、くすりと笑みをこぼす。
童貞の童貞らしい感情には気づかないリアラだった。
相合傘でリアラと歩き、傍には子犬のように纏わりつくアヤメを連れて映画館へ。
映画館近くにソフトクリーム専門店があり、アヤメのことだから気づいて買うかなと思ったら案の定だった。館に入る前に外でパクパクと食べている。ペロペロではなくパクパクだ。
「~~♪」
幸せな顔だ。優理は雨降る秋の肌寒い日にソフトクリームを食べる気にはなれなかった。リアラは食べている。アヤメと並んで屋根の下、見た目は似ていなくともちょっとした姉妹のようだ。
「リアラ! ちょこっとくださいっ」
「いいよ。私もアヤメちゃんのちょこっと欲しいな」
「えへへ、交換です!」
「うんっ」
これが尊いという感情……。
日常の大切さを噛み締める。平和な二人を眺め、優理は。
「エイラ。
事前に用意しておいたブレスレット型イヤホンマイクを耳に当て、声を抑え人工知能に問いかける。
『回答。既に監視は始めています。場所の報告はしませんが、問題ありませんね?』
「うん。ノープロブレム。情報収集そのままでよろしく」
『肯定。現状維持に努めます。緊急があればアヤメ様にも報告します。その場合は相談通りに』
「うん。了解」
『応援。それでは映画鑑賞デートをお楽しみください』
「……あいあい。了解だよ」
最近人間味あふれすぎている人工知能に苦笑し、二人の傍へ。
既にエイラの"未来工作"は始まっている。優理にアヤメの現状を共有し、対策を打ち始めたのが第一歩。他にも多くの手は打っているが、アヤメの身柄を狙う組織の存在は優理にとって他人事ではない。
というか、例の男CO配信のせいで「アヤメ・アイリス」の存在がある程度露呈したと言っても過言ではないのだ。遅かれ早かれバレるとはいえ、優理はインターネットにヒントをバラマキ過ぎた。
既にアヤメ――夢人形を狙う輩は出てきている。まだ表立って動いていないだけで、愚かな正義感に酔った者はすぐに焦れて行動に出るだろう。まあそういう者は灯華に伝え潰しているが。
あくまでも日常はそのまま。出来る限りアヤメには何も知らせずすべてを終わらせる。
それがエイラと優理の共通意見だった。
情報力ではエイラが圧倒的に、手札の多さもエイラが勝る。なら足りない物は何か。わかりやすくただ一つ、すべてを壊せる暴力だ。以前からそれを手に入れるための手段は講じてきていた。
未完成とはいえ、最低限一国の軍隊程度なら片手間に消せる暴力なら手にしている。灯華はそれを聞いて「お、おほほほほ!」と変に笑っていたが、エイラは気にしなかった。アヤメのためである。灯華の胃は尊い犠牲となったのだ。実咲はそれを見てお腹を抱えて笑っていた。灯華より早くエイラに協力し始めた裏切りメイドである。
「……まったく、味方で良かったよほんと」
エイラの動きは先回りが凄すぎて高笑いもできなかった。
問、ただの人工知能一つに何ができるか。
答、なんでもできる。
戦闘ドローンとか戦闘ロボとか聞かされてもよくわからかったが、優理家に届けられたおもちゃラジコンを見て頬が引きつった。エイラ曰く、無音式電気銃だとかなんとか。要はスタンガン搭載ラジコンだ。操縦者はエイラである。
とまあ、優理の周りでは着々とエイラによる防衛網が構築されてきていた。家の中は最低限。外は協力者の下、監視カメラと監視ドローンと、衛星情報で逐一更新されている。笑えない情報戦だ。
ちなみに優理は他の協力者のことを知らない。灯華と実咲が関わっていることも知らないし、リアラが仕事場でパートナーにしているAIがエイラに協力していることも知らない。リアラもパートナーAIがそんなことしているとは微塵も知らないので、今日のリアラは本当にほんわかふわふわと優理とアヤメとのデートを楽しんでいた。
「? 何が味方なのですか?」
「ふふ、アヤメとリアラさんがかなー」
「そうですか。私はいつでもユーリの味方です!」
「私もずっとずっと優理君とアヤメちゃんの味方だよ!」
「ありがとう、二人とも。……それはそれとしてアイス増えてない?」
何故かソフトクリームの量が元通りになっている気がして問いかけたが、二人して目を逸らして誤魔化し笑いを見せる。
「いや……構わないけどさ。アヤメは……大食いだからいいか。リアラさん、食べ過ぎてお昼食べられなくなっても知りませんから」
「だ、大丈夫だよ! お腹は丈夫だからっ!」
変なところで自信のあるリアラに苦笑し、安心してニッコリしているアヤメにくぎを刺しておく。
「アヤメ。別に褒めてはないからね?」
「うぅ、わ、わかっています! で、でもいっぱい食べてユーリは嬉しい、ですよね?」
「それは嬉しい」
「えへへー」
どうしてもアヤメに甘くなってしまう優理だった。
でも実際、いっぱい食べる女の子は可愛いから仕方ない。いっぱい食べる君が好き、は普遍の事実なのである。
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