貞操逆転×→性欲逆転世界で配信者してなりきりチャットして女装する   作:坂水木

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ミツボシ捜索班と脱出作戦。

 アヤメの生家にて、AI特製のナノマシンを体内に取り込んだ優理とソニャ。

 特に副作用はなく、注射後すぐに行動してもフラつきも痛みもなかった。

 

 これでこの家にやってきた当初の目的は達成したことになる。

 

 一つ、信号の確認。罠だった。でもなんとかなった。

 一つ、アヤメの在否。罠だった。やっぱりいなかった。

 一つ、優理へのナノマシン注入。成功。

 一つ、ソニャへのナノマシン注入。成功。

 

 敵性AIのメィラという存在を知れたのはもう一つの収穫とも言える。

 能力値的にはエイラ>>>越えられない壁>>>ディラ=メィラといったところか。優理の想像ではあるが大体合っている。

 

 それじゃあ後は帰るだけだ、と三人で顔を合わせる。

 

「帰るだけ、だけど……ディラ、隠し通路って本当にあるの?」

『ありませんよ』

「……だと思った」

「…………ないのですか?」

「……ないん、だ……」

「なんで二人は驚いてるのさ……」

 

 どうせメィラを誤魔化すためにディラが適当言ったんだろうなと思っていた優理だ。実咲とソニャは違ったらしい。

 

「私奴であれば脱出通路は用意しておきます故……」

「わたしの組織も……そういうところは、すごく気にしていたよ」

「……なるほど」

 

 特殊部隊的観点から見るとそういう風になるのか。

 

「まあ、うん。ないものはないから。脱出どうしようか?」

「ディラ様、地上の様子を教えていただくことは可能でしょうか?」

『生家の周辺には少数の人影があります。家屋内部に人はいません。先ほどまで地下への扉を開けようとしていましたが、今は屋外を調べているようです。特に自然公園と街境に人員が集約されています』

「……わたしたちが乗ってきた、車はどう?」

『既に見張られています』

「……どうしようか。二人とも、どうしよう?」

 

 単純に地上に出るだけなら簡単そうだ。出るだけなら。

 

「……ん、強行突破は?」

『可能です。ただし囮は必要です』

「……ソニャを囮にするとかだめだからね」

『ディラはそのようなこと言いませんよ』

「ならいいけど……」

 

 表情を変えないソニャを撫で回しておく。照れ隠しだ。そう思っていたら空いていた右手が奪われ実咲の頭に置かれた。実咲の手によって。

 

「……御主人様」

「あぁうん。はいはい」

「キャーン♡」

 

 両手に花。これはそういうことか……そういうことか?

 

「そもそもディラの作戦聞いてなかったね。ディラはどうするつもりだったの?」

『生家の防衛システムが乗っ取られているのは予想外でしたが、予想内でもありました』

「……ん?」

『エイラによる未来演算として、このようなケースも存在していました。ただしディラはアヤメ様に関連する情報を消されていたため、研究室に入った段階でアクセス権がアンロックされました』

「ほー……」

『演算によれば、ソニャ様と実咲様が揃っていると地下研究室への侵入は100%で果たしています。その後の脱出もまた失敗はありませんが、いくつかのパターンに分かれています。その多くが自動車を利用したもので、特に生家に置かれている自家用車を利用する場合が最多です』

「……車は、家の外にあった黒いの……?」

「ああ、そういえば黒い車あったね」

 

 ソニャの問いにディラは短く『そうです』と答えた。

 

「簡単にしか確認はしておりませんが、見た限り私奴でも運転は可能かと」

「可能も何も、僕ペーパーだからね……。ソニャは……ソニャ車の運転できるの?」

「うん。できるよ……試験は受けてないよ?」

 

 困ったように口元をもにょっとさせる女の髪を撫でる。ついつい十歳の女の子として扱ってしまう。見た目は完全な大人だけど、三歳のアヤメを知っている身としてはその辺慣れているのだ。

 

「運転は実咲にお願いしようね。ね、実咲?」

「構いませんが……が」

「……が?」

 

 敢えて止めてくる。流し目で見てくる。別にそんな色艶示さなくても言うこと聞くのに……。

 

「――優理様、私奴とセック」

「いや無理だけど!?」

 

 全然言うこと聞けなかったわ。そりゃ要求が過ぎる。つい声を大きくしてしまった童貞である。

 

「で、あれば別のお口を……♡」

「はい無理! それもうエッチじゃん! エッチなのはだめ!」

「いけずなお方……ならば、私奴、優理様になでなでされとうございます」

「……うん、いいよ」

 

 なでなで、と。

 お手入れ万全な艶髪を撫でる。指を滑らせ毛先に触れ、そのままの流れ、いつもの癖で頬も撫でてしまう。もち肌ではないが、しっとりきめ細やかな肌は触れていて心地が良い。こちらも丁寧なお手入れを強く感じられた。

 

「んっ……♡」

 

 甘やかな声を聞き我に返る。

 気づいたら実咲が目を閉じていた。身長の関係上、微かに顔を上向きにするだけだが……それがまた距離の近さを感じさせて強い色気を振りまく。

 上記した頬、赤みの強い唇、整った鼻梁に美しい黒髪。シュシュで留められた髪は一房となり肩に届かない辺りまで伸びている。

 

「――いや!? キスしないけど!!?」

「な、なぜ……?」

「なんでそんな困惑した顔するんだ……」

 

 その台詞はこちらのものだ。危なかった。童貞は流されやすいのだ。危うくファーストキスを奪われるところだった。この唇はいつかの未来の恋人に捧げると決めたのだから…………いや待て、そんな存在が現れない可能性も…………いやいや待て、自分にはアヤメがいる。今はいないけど。リアラもいる。キープっぽくて自己嫌悪すごいけど。

 

 アヤメは家族だし、リアラは……近所のお姉さんか。実質家族。

 

 ――いやしかし。

 

 しかし、目の前にソレはあるのだ。まごうことなき美女とのファーストキス。性格は……この世界水準で言えば普通。エッチで変態。親密度はそれなり。優理としての好感度はあるにはちゃんとある。

 

 顔は良くて胸は大きくて……。

 

「まあ、まあまあ、うん」

「うぅ……焦らしプレイは苦しゅうございます……」

 

 意識を戻すと、実咲は本当に悲しそうな顔をしていた。

 癖とはいえ、これは頬を撫でた自分が悪いと謝る。アヤメに対するいつもの流れで、「ごめんごめん」と続けて彼女の額に手をやり髪をずらして口づけをした。

 

「ふぁ……っ!?!?」

「あ」

 

 これも癖だった……。

 頬を掻き、あまり照れていない自分に苦笑する。どうも、キザな行動に慣れてしまったらしい。

 

 顔を真っ赤にして乙女になっている黒髪美女に謝り、ディラと話しているソニャの方を向く。

 

「パパ、終わった?」

「うん。……うん、待たせてごめん」

「ううん。……パパならいつまでも待てるよ、わたし」

「あはは、ありがとう」

「うんっ」

 

 口元を綻ばせるソニャだ。

 ソニャはディラと脱出方法について話していたと言う。外の車を使うのと運転手は実咲だとしても、そこまで辿り着くのが大変だ。敵は減っていても見張りはいるし、相手にはAIのメィラがいる。地下から地上に出た段階ですぐ敵は集まってくることだろう。勝負は時間と速度、そこにかかっている。

 

 ソニャの提案は一つ。大胆だがわかりやすく、効果的な策だった。

 ただし、と優理はそこに一つ行動を付け加える。唇を何度も舌で濡らすソニャは否定したいようにも見えたが、お願い、と頭を撫でながら伝える。卑怯だが、ここは譲れない。ソニャは小さく頷いてくれた。

 

 現実に回帰した実咲も交え、話を詰める。

 作戦を聞いて「しょうがないお人にございますね」と首を振りながらも実咲は頷く。

 

 同意は得た。

 さあ、我らミツボシ捜索班の脱出作戦を開始しよう。

 

 

 

 

「見つけたぞ!! 私の夫だ! 確保しろ!!」

「はぁぁ!? アンタのじゃないけど? 私のだけど!? ていうか上官でもないのに指図しないでくれる?」

「ウチらは男だけでいいからさぁ。もう人形いらないから、男だけ持って帰らせてくれないかなぁ?」

「傘宮優理がいると夢人形アイリスは御しやすいだろう。……それはそれとしてあのちょろそうな男は捕らえる。丁重に、丁重にな」

「私がちょこぉぉーっとお触りしてもいいんですよねー?」

「性欲のある男と言うから、逆に貴様が触られるかもしれんぞ」

「ソニャ!! 貴様、なぜ裏切った!!」

「隊長ー、聞かなくてもあの顔でわかるよー。アレはワタシでも裏切るかもしれないネ!」

「メィラからの連絡はどうした?」

「エイラに撹乱されているようですね。性能は等しいはずですが、理性の強さに差があるようです。大人と子供のような会話が聞こえます」

「やはり自我は不要か」

「ええ。しかし自己進化に個性は必須ですから」

「そうか。……しかし、本当に残っていたのだな、"Era System"。……少し、世界が荒れるか」

「でしょうね……」

 

 飛び交う言葉の雨霰。

 怒声に罵声に歓声に。多くが同業を蹴落とす類のソレであり、見れば拳を交わしているものもいる。皆武器は持っていない。全員素手だ。

 

「いや人多すぎるだろ……」

 

 優理は現在、アヤメ生家の屋根の上にいた。実咲の背中からソニャの背中にポジションチェンジだ。今日は巨乳美女の背に縁がある。寂しそうな実咲とは裏腹に、ソニャは「むふふー」と嬉しそうに鼻を鳴らしていた。

 

 無事男女ペアの合体も完了し、屋根上に登ってすぐ。あちこち屋根にも地上にも、見える見える女性の影。優理の目だけでも既に十人以上は捉えている。

 

 メィラは部隊を集めるとか仲間を連れてくるとか言っていたけれど、こんな大人数は聞いていない。しかもほとんどが一人か二人組だ。どれだけいろんな組織が集っているのだと言いたい。

 

「パパ。……くすぐったい、かも」

「あ、ごめん」

 

 優理はソニャの後頭部に顔を埋めているので、話すとうなじやら耳やらに息がかかるのだ。ソニャは立派な十歳レディなので、パパからそういうことをされると嬉しいし恥ずかしいしもじもじするしエッチな気持ちにもなる。

 

「……ん……お家帰ってからなら、いいよ?」

「……その時、やる気あったらお願いするね」

「うんっ」

 

 機嫌よく頷くソニャには申し訳ないが、お願いすることはないだろうなと思う童貞だ。

 

「あたしの前で……イチャつくなぁああああああああ!!!!」

「そーだそーだ!! 私にもおんぶさせろぉ!!」

「ワタシもおんぶされたーい! 隊長は?」

「……私は……お姫様抱っこがいいかもしれん」

「あ、スナオな隊長……」

「ばっ!? 馬鹿貴様、私は何も言っておらん!!!!」

「どうせならハグしたい!!! そのままイチャラブエロキッスエッチコースへ!!!」

「混乱がひどいな。抜け駆けはできそうもないが……」

「そですねぇ。落ち着くまで待ちます?」

「ああ。急ぐ必要もない。しかし、前も良いが後ろも良いものだな」

「そですね。抱っこ派でしたけど、おんぶもいいですねぇ」

「ああ。後ろから話しかけられるのも…………想像だけで滾ってきた」

「そですね。今夜のお供は決まりですねぇ」

 

 なんだか碌でもない会話ばかりが聞こえてくる。

 久しぶりに性欲逆転世界の真髄を味わっている気がする。最近普通に出かけて遊んだりしてきたせいで忘れていたが、これが平常運転の世界だ。

 

「ソニャ、手筈通りに動ける?」

「うん」

 

 今回、アヤメの生家から脱出するにあたって決めていたことがある。

 

 一つ、撹乱要員はソニャと優理が請け負う。

 二つ、実咲は上が慌ただしく動いたところで、地下から出て家屋内の車のキーを入手する。

 三つ、実咲からの合図があれば即座に合流する。

 四つ、ソニャは優理の保護を優先、撹乱は東から南、西、北、と円を描くように行い、合流地点の目安は東にすること。

 

 これらの中で今大事なのは四つ目だ。既に一と二は動いている。実咲の動向は不明だが、あのメイドなら完璧に動いてくれるだろう。

 

「パパ、離れないでね」

「うん」

 

 ぎゅっと美女の肢体にしがみつき、その穏やかな森の香りに身を委ねる。

 とん、と屋根を蹴り、ソニャは宙を踏む。向かうは東。時間は決められていないが、短くとも五分は稼ぐ必要がある。ディラによれば車のキーの場所は本棚の隠し扉の先の別の本棚の本に挟んであると言う。下から「何故このような七面倒極まることをされたのでございますか……」と嘆きの声が聞こえた気がした。たぶん気のせいじゃない。

 

 「夫が逃げてる!!!」「私のお婿さん候補が!!」「絶対に許すまじッ!! その席は私のモノだ!!」「追え! 傘宮優理を優先しろ!!」等々、たくさんの叫びが聞こえてくる。

 

 リミッターの解除をしてないとはいえ、ソニャは遺伝子操作人間。技術を問わぬ純粋な身体能力勝負ならそうそう負けはしない。ただし、この場に集うは歴戦の捜査員たち。余分な情報に惑わされず、的確な捜査網の下やってきた国家、及び大規模組織に身を寄せる選ばれし精鋭たちだ。

 

「屋根の上をぴょんぴょん跳ねるな! 男の上で跳ねるのがあたしの特権だ!」

「先輩それ夢でしかしたことありませんよね?」

「うっせえ! これからする予定なんだよ!!!」

「ソニャ! ワタシとイバショ交換してっ! ワタシもソッチがいい!」

「貴様はどちらの味方だ! 貴様も裏切るのか!? 裏切り者がどうなるかわかっているだろうが!?」

「で、でも隊長……隊長のカラダはあのカワイイ男側につきたいってイッテルよ?」

「――……まあ、それはそれとして、男をコッチに連れてくればいいだけだろう?」

「ナルホド! さすが隊長! てんさい!」

「わ、わたしの夫が遠くに……こ、これが寝取られ……っっ!?!?」

「私も逃避行したい。男の子連れて逃避行したい人生だった」

「やっぱ男を守る側なのかなぁ。私守られる側に回りたいなぁ。はー、っぱつれえわ、この人生」

 

 精鋭、である。

 無論、ソニャの古巣、ロディグラーシの同輩もいる。何やらアホっぽいことを叫んでいる灰髪ツインテールの女と色素の薄い黒髪ポニテの女こそ、その同輩であったりする。

 

 他にも複数人、数は少ないがソニャと同程度の身体能力持ちはいるのだ。

 

「む……パパ、後ろ何人いる?」

「え。えっと、三人かな」

「ん、ありがと」

 

 囲まれる前に進路を変え南へ。

 後ろに三人、左に一人、運良く右ーー南は空いていて助かった。地上にも幾人かいるが、車を回したりしている相手もいるようだ。屋根上や地上でも未だに蹴落とし合いは続いており。

 

「あ、後ろ一人減ったよ」

「うん」

 

 まさに今、一人蹴落とされたようだ。物理的に空中から地面へ落ちたようで、瓦か壁か、何かが壊れる音が聞こえた。同時に恨み声も。相手は無事らしい。

 

「逃さないよ! わたしの恋人候補くん!!」

「うわ、美人が僕の近くに!?」

「えっ!? やだもう、美人だなんて!」

「どけ! 褒められるのは私だ!!」

「くぅもおお!! 邪魔なんだけどぉ!!」

「お前こそ邪魔だ!!」

 

 もつれ合って屋根から落ちていく二人。シャウトする二人の剣幕に優理は引いていた。

 

「……悪は去った、ね」

「去ったっていうか、勝手に落ちたっていうか……」

 

 今ので屋根上を追っていた二人が消えたので、残りは一人だ。地上は屋根上より蹴落とし合いが激しく、組織同士の抗争(キャットファイト)が止む気配はない。

 

 視界から消えた女性は脳裏からも捨て去り、残った一人に思考を寄せる。

 

「ヤッホー、ソニャ! あとカサミィ……えと、ユリ?」

「惜しい。優理ね」

「ユーリ!」

 

 ぴょんぴょんと身軽に跳んで、無理やり斜めにショートカットしてソニャの横まで来た女、灰髪ツインテールの女性だ。ソニャに似ているが、ソニャより全体的に幼く見える。

 

「ニヒヒ、追いついたよ!」

「ん……ミャオ。久しぶり」

「? ひさしぶり? ワタシと会うの一昨日ぶり??」

「うん? うん。そうかも」

 

 現れた灰髪の女――少女と思わしき人間。名前はミャオと言うらしい。

 

「ユーリははじめまして! ワタシ、ミャオだよ! ヨロシク?」

「え、うん。よろしく」

 

 挨拶は基本とばかりに眩しく笑っている。微妙に思いながらもつい挨拶は返してしまった。

 

「ねえねえ、ソニャはどうしてロディを抜けたの?」

「? パパと一緒にいる方が楽しいから」

「フーン、そっかー。パパ? なんでパパ?」

「パパはパパだよ……?」

 

 この問いは自分にも来ているのだろうなぁと思いつつも、優理とてなんでパパなのかわかっていない。困った。

 

「ユーリはどうしてパパ?」

 

 ほら来た困った。背中に乗っているからわかる。ソニャがそわそわと期待している。どんな答えを期待しているんだ。

 

「えっと……ソニャは迷子だったからね。"生きててえらい"って保護してあげたんだ」

 

 何を言っているんだお前はと自分に言いたい。犬猫じゃないんだぞ。中身はともかく大の大人を保護はないだろ保護は。

 

「むふふふ」

 

 ソニャが喜んでいるからいいか……。

 

「わー! ソニャがご機嫌だよ! そっかそっかー。ソニャ、ワタシたちの中でも一番いっぱい考えちゃうコだったもんねー。お姉ちゃんだし!」

「むふー、そう。わたしはお姉ちゃん。……ミャオも、くる? パパのお家はだめだけど、ちかくならきっと大丈夫だよ?」

「んー……」

 

 スマートな裏切り勧誘術。童貞じゃなきゃ聞き逃しちゃうね。

 ミャオは数秒迷って、ニヒヒと笑って首を振る。この間、二人ともずっと屋根上を並走し続けていた。

 

まだ(・・)いいや! ワタシまでいなくなっちゃうと、ロディのみんなが困っちゃうもんネ! それに、隊長もカワイソウだから」

「ん……隊長は、そうだね。……ごめんね、わたし、急にやめちゃった、かも」

「ニヒヒ、いーのいーの。ソニャはさいねんちょーだからネ! いっぱい苦労してがんばってたのみんな知ってるからネ。これからはワタシたちががんばる!」

「うん。……がんばってね。応援はしている、よ」

 

 あまり話をわかっていない優理だが、ミャオの見た目と流れ的に彼女はソニャの古巣「ロディグラーシ」の一員なのだろう。灰色の髪に青の瞳を見れば、ソニャと同じデザイナーベイビーだと察せられる。

 

 同じ出自で寝食を共にした仲だと思えば、今のやり取りも少しはわかる。優理は口を噤んだ。デキる童貞は余分なことを言わないものなのだ。

 

「うん! がんばるよ! じゃあがんばるから、ユーリとソニャ、いっしょに来てくれる?」

「それはだめ」

「ニヒヒ! そうだよネ。じゃあいいや! ワタシ一人だし、今は見逃してあげる!」

「うん。……隊長に、よろしくね」

「うんっ! じゃあソニャ、ワタシのこと突き飛ばして?」

「いいよ。ばいばい」

「きゃー!! ソニャめー! 羨ましいーー!! つぎはこうはいかんぞーーー!!」

 

 ソニャがぺいっと突き飛ばしたかと思えば、流れるように屋根から落下して消えていった。捨て台詞まで完璧だ。

 

「ミャオ落ちてったけど、大丈夫なの?」

「うん。わたしたちはそんな弱い身体じゃないから……たぶんへいき、だよ」

「そっか。ならいいけど……全然敵っぽくなかったね」

「うん……ミャオはね、わたしの友達なの。ロディ……ロディグラーシの目は……みんなわたしみたいな子ばかりなの」

「うん」

「だからね。……みんな仲間なんだ。必死で……がんばってる」

「……うん」

「……僕にできることはある?」

「ううん。パパでも怪我しちゃうから、だめ。……アヤメが泣いちゃう、よ?」

「それはそうだね……」

「大丈夫。みんないるから。それに、アヤメの件が終われば……うん。少しは変わると思うから」

「じゃあ……今は今を切り抜けないとね」

「うん」

 

 進路は南から西へ。動きが早くて勘違いしてしまいそうになるが、まだ時間稼ぎは足りない。五分から十分程度経つまで、もしくは実咲から合図が来るまで、ソニャは軽やかに宙を駆け続けた。

 ちなみに文字通りお荷物の優理は、想定以上に自分が狙われているという事実――しかもアヤメへの人質以上に別の意味で狙われている(貞操の危機的に)という事実にいろんな意味で小さくなっていた。やっぱり肉食もほどほどが良い、ほどほどが。




書き溜め増えてきたので、たまに土曜日更新入れたりします。

ヒロインが増えても時間経過は遅いので、季節イベント短編集を思案中です。基本ヒロインごと個別のデート形式です。

  • 桜お花見
  • ネモフィラお花見
  • 向日葵お花見
  • 藤の花お花見
  • 海辺観光(夏)
  • 海辺観光(冬)
  • 登山(夏)
  • 大雪巣ごもり
  • 梅雨の公園散歩
  • 秋祭り(本編のお祭りっぽいの)
  • 上記以外、案があればコメントください。
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