『汝の願いを言え』
ふわふわとした微睡みの中、頭の中に声が響いた。
ゆっくりと目を開ける。
見えたのはオタグッズに溢れた俺の部屋……ではなかった。
眼前に広がるのは極彩色の世界。
瞬間俺はすぐに気づいた、これは夢だと。
『汝の願いを言え』
再び声が響く。
景色も意識もはっきりしてないのに、その声だけは聞き取れた。
「(じゃあ、アニメの世界に転生させてチーレムでも叶えてくれよ)」
声に答えず、頭の中で回答する。
どうせ夢だ。本気にする必要なんてない。そう思っていた。
『よかろう。どんな特典がいい?』
「(え?)」
一瞬頭の中を覗かれたような気がして驚いたが、すぐに俺の夢だから当然かと答えを出す。
受け答えが出来るなんてけっこうリアルな夢だな。じゃあ、夢の中だけでも叶えてもらおうか。
アニメや漫画の世界に転生。二次元オタクなら一度は夢見た展開だ。
けど、特定のアニメの世界は嫌だな。そしたら他のアニメのキャラに会えない。
『成程。作品そのものではなくキャラクターを好むか。では好きなキャラクターを作り出せる力を与えてやろう』
お、分かってるじゃん。
頭の中ですら答えを出していないのに、この夢は俺の願望を言語化してくれるのか。本当によく出来ている。
『では、汝はそのキャラクターと何がしたい?』
わかり切ったことを聞くな。
男が好きなキャラにやりたいことなんて一つ。セックスに決まってるだろ?
強い女キャラをチートパワーで屈服させるのが全世界男子共通の夢だ。
『成程。では存分に征服し、支配するといい』
よっしゃ! じゃあどの世界でもいいから好きなキャラを呼び寄せてセックスさせてくれ!
そんで、チートパワーで逃げられないようにして、れーぷするんだ!
あ、勿論俺が満足するまで続けるから!
『よし、汝の縛りが決まった』
え?縛り?何のこと?
『汝が望む才能を与える代償に縛りを課す』
その言葉が聞こえたと同時、俺の意識は闇に沈んだ。
この世界で最初に俺が感じたのは痛みだった。
父親らしき男に殴られ痛む頬。
対する父親は鬱陶しそうな目で俺を見下ろしていた。
母親は何もしない。
部屋の隅に怯えて蹲っているだけ。
よく物語とかで母親とは子の為なら人も殺せるというが、この女は該当しないようだ。
気が済んだのか父親はこの家から出ていく。
ソレでやっと母親が俺に抱き着き、泣きながら謝罪の言葉を投げかけた。
だが、どれも俺には響かなかった。
この女が愛しているのは父親であって俺じゃない。
父親に似た俺を通して父親を想っている。
あの男も、この女も、そして俺も。
本当にどうしようもない屑ばかりだ。
だから、こうなったのも当然の事だったかもしれない。
燃え盛る我が家。
父も母もあの中で火葬されている。
俺を縛る邪魔な存在は燃えて無くなったんだ。
行こう。
俺を閉じ込めていた牢獄は壊された。
自由になった俺を縛るものはもう何もない。
力がある。
使う術も身に着けた。
ソレらを活かす経験も重ねてきた。
強くなった俺なら一人でも生きていける。
俺はもう自由だ。
思う存分にこの世界を堪能しよう。