呪隷操術~呪霊を支配してハーレムを~   作:大枝豆もやし

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日常・参

 

「クソ、あのガキのせいで商売あがったりだ!」

 

 とある薄暗い施設。

 円卓状の会議室で人影が話し合い……否、怒鳴り合いを行っていた。

 

 議題は武玄司と彼が率いる呪詛師集団Qについて。

 しかし結局答えは出ずにいた。

 

「クソ、あいつ等さえいなければ」

 

 彼らは己の力を楽しんでいた。

 年々活発になる呪霊の相手で術師は手一杯。

 上手く立ち回れば、術師の隙を突いて呪詛師は楽に稼げた。

 彼らは自由だった。自由に力を振るい、自由に弱者を虐げ、自由にあらゆるものを奪っていく。そんな自由がいつまでも続くと思っていた。

 武玄司と彼が率いる呪詛師集団Qが台頭するまでは。

 

 九歳児でありながら、司は強い。

 文句なしの特級。五条悟という生まれ以ての最強がいるが、司はソレに匹敵するのかというぐらい強かった。

 しかし、それ以上に厄介なのは、彼が所属している組織である。

 

 呪詛師同士が徒党を組むことは少なくない。人間である以上、全ての仕事を一人で賄うのは不可能。故に群れるのは自然の流れであった。

 しかし、所詮は烏合の衆。呪詛師というものはどいつもこいつも自分勝手で我儘。ちゃんと組織として機能しているかはかなり怪しい。

 そもそも術師という存在そのものの絶対数が圧倒的に少ない為、どうやっても小規模な集団にならざるを得なかった。

 また、呪詛師は呪術高専のような正当な訓練を受けた者が殆どいない。

 正規の訓練を受け、正式な鍛錬を積んだ呪術師ですら通常は2級か1級レベルが頭打ち。当然ながら独学でそのレベルにたどり着いた呪詛師など稀有もいいところ。特級クラスの呪詛師?そんなもの作中でも夏油だけだろ。

 質も量も共に正規の術師を下回る。ソレが呪詛師というものである。

 ただ一つ、呪詛師集団Qを除いて。

 

 Qも他の呪詛師集団同様に烏合の衆であったが、最近になって力を付けだした。

 呪詛師集団でありながら統率を取り、他の呪詛師を吸収して完全に支配下へ置いている。結果、Qはどの組織よりも大きく、忠実な術師を揃えた巨大組織となった。

 あり得ない。敵対していた筈の術師が忠実になるなんて。まだ呪霊を調教する方が安上がりである。

 そもそも、Qの術師たちも司のような子供に従うこと自体ありえない。

 一体何が起きている。あり得ないことが多すぎる。

 分からないことだらけ。話し合いをしても解決策など出る筈もなく、こうして言い合いに発展してしまった。

 

「まあまあ皆さん落ち着いてください」

 

 そんな中、一人の呪詛師が割って入った。

 彼の名は毒島孝。殺しを生業とする呪詛師である。

 

「資料では武玄司の術式は呪霊操術とありますが、私は違うと思うんですよね。いくらなんでも呪霊が強すぎるし、呪詛師が洗脳されたように命令を聞くのもおかしいんですよ」

「そんなの分かり切っておるわ!だからソレが何なのだと話してるんじゃ!」

「ええ、ですがここで話してもらちが明かない。なら、突いてみるしかないでしょ?」

「「「?」」」

 

「ちょっとした罠を仕掛けました。そこで結果を見ましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真夜中の道路を一台の車が走っていた。

 黒塗りの高級車。如何にもソッチ系の会社の御偉い方が乗っていそうな車。

 スモークガラスなので車内は見えない。しかし外見通り豪華なのは想像に難しくなく、実際にそうであった。

 車内でありながらバーがあり、スーツを着こなしている女性がウィスキーを嗜んでいた。

 顔や体に火傷の跡が残っている金髪の美女。

 鷹や鷲のように鋭い目をしており、スーツ越しでもしなやかな肉体をしているのが伺える。

 彼女の名はバラライカ。最近巨大化している呪詛師組織の頭領である。

 

「ボス、こんな辺鄙な場所にあなたが直々に行く必要があったのですか?」

 

 彼女は隣に座る小さな子供に話しかけた。

 組織の長であるバラライカからボスと呼ばれる少年。

 武玄司。彼こそが真のボスであり、彼女たち呪隷の主人である。

 彼はメイド三人を侍らせ、その一人の膝の上に乗っている。

 彼は左右に控えているメイドたちから口移しで与えられる果物や菓子を、彼女たちのサービスと共に堪能していた。

 

 組織の主は司であり、バラライカは仮の頭領。

 管理や労働は彼女たちが行い、支配者である司はソレを堪能するだけ。しかしそれで充分だ。

 司は力があっても知識や経験はない。故、面倒ごとは元呪詛師や呪術師の呪隷たちに任せていればいい。奴隷たちは主人の為に働き、奉仕して貢ぐのが幸せなのだから。故に、今回も司の命じられるまま呪霊を回収するつもりであった。

 しかし突然言い出したのだ、司も向かおうと。

 別にソレ自体は良い。主人の前で役立てるのは呪隷にとっても嬉しい。しかし、急な同行については疑問を抱かずにはいられなかった。

 

「ちょっとした勘だよ。今回は何かある」

「勘、ですか…」

 

 それ以上は言わない。

 彼女たちは呪隷。疑問に思うことはあっても主人を疑わない。

 

「っと、そろそろ付く頃か」

 

 窓越しに外を見ると、目的地が見えてきた。

 心霊スポットと噂されているダム。そこにいる呪霊が今回の目的だ。

 

「じゃ、行こっか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とあるダム。

 心霊スポットとなり呪霊のたまり場となったそこで、司は呪霊集めをしていた。

 次々と湧いて出てくる呪霊を祓い、吸収して己の力に変えていく。

 わざわざ探す手間は必要ない。司の引き寄せ体質によって誘蛾灯の如く寄ってくるのだから。それらを潰しまわればいい。潰す手数にも困ることはないのだから。

 

 

【術式 式神召喚】

 

【術式 氷人形】

 

【術式 狐火】

 

 司の操る呪隷たちが呪霊達を狩る。

 呪隷としての姿ではなく、呪霊の姿で。

 力は制限されてるが、それでも彼女たちは強い。

 炎で、氷で、雷で、毒で、刃で、弾が。あらゆる攻撃手段で呪霊が呪霊を殺していく。

 その様を司は黙って眺めていた。

 彼の側には二体の呪霊。おそらく特級クラスであろう。

 今、司が操っている呪隷は呪霊としての姿で戦っている。

 彼女たちがいる限り、呪霊が司に届くことはない。

 

 だが、今回ばかりは勝手が違った。

 

「!!?」

 

 突然、妙な気配を感じてダムの水底のほうへ振り向く。

 何も見えない。当然だ、光一つないダムで底なんて見えるわけがない。

 だが、司には観えていた。目で見るよりもハッキリと。

 

 いる。

 とんでもない大物が。

 この間倒した海の呪霊よりも強大な呪霊。

 制限は掛かっているが、それでも二級以上はある呪隷たちでは勝てない程の。

 そんな大物の存在がなぜ術師の目についてないのか。思いっきり呪力垂れ流しだというのに、なぜ気づかなかったのか。いくつかの疑問がわくが、今はそんなのどうでもいい。

 

 その力が欲しい。

 

 その力(障害)を乗り越えて、その力(宝物)を奪って、その力(権利)を己の物にしたい。

 

「下がれお前ら。今の状態じゃ勝てない」

『あ、主様!?』

 

 テレパシーで伝える。

 今は呪隷ではなく呪霊のふりをさせている。故に話すつもりはなかった。………つい、さっきまでは。

 

「……いや、もういいか。やっぱ取り消し。お前ら、呪隷の姿解禁だ。思いっきり暴れてもいいぞ」

 

 何故なら、もう隠す必要はないのだから。

 

 司が許可を出した途端、呪隷たちは本来の姿に戻った。

 呪霊の姿から呪隷の姿へと。制限を取っ払って本来の力を発揮した。

 

 

 狐の呪隷、羽衣狐。

 

 死者の呪隷、赤目。

 

 生贄の呪隷、朱乃。

 

 暴力とDVの呪隷、紫苑

 

 次々と呪隷の姿へと戻り、その真価を発揮していく。

 これで露払いは万全。主人である司は眼前の敵に集中出来る。

 

 

【生得領域 三千邪眼】

 

 

 瞬間、司達は辺り一面が邪眼で睨まれている領域に閉じ込められた。

 




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