呪隷操術~呪霊を支配してハーレムを~   作:大枝豆もやし

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たぶん、大半の術師は呪隷見ても欲情しないと思う。
だって呪霊だもん。


日常・肆

 

「ククク、馬鹿共が。俺の術中にこうも容易く嵌るとはな」

 

 何処にでもあるようなビジネスホテル。その一室で呪詛師毒島孝は笑っていた。

 

 彼ら呪詛師の計画は漁夫の利を得る事。

 司が心霊スポットを訪れて呪霊狩りをするのは知られている。

 実際、Qに所属する前から活動しており、初期はそうやって戦力を強化してきた。

 そして今回、呪詛師たちはそこを突いた。

 Qに心霊スポットの情報を流して司をおびき寄せ、呪霊と戦闘して勝利した直後を呪詛師たちが襲撃をかける。

 しかも、現地の呪霊は用意した呪物によって強化されている。

 おそらく特級レベルまで強化されており、領域展開は使えずとも生得領域を展開出来る程にはなっているであろう。

 誘導した心霊スポットの地の利。流した情報よりも格段に強い呪霊。そして待機している呪詛師集団。

 三重の罠。ここまでやれば倒せる筈だ。

 だが、孝はそう考えていなかった。

 

「(おめでたい奴らだ。その程度であの五条悟と見紛える奴が倒せるかよ)」

 

 彼はたった一度だけ司と出会ったことがある。

 呪詛師集団Qに仕事の斡旋をした際、一目見た程度だが、格の違いを理解するに十分だった。今の幼い彼相手でも勝てないと理解する程度には。

 

「(あいつをどうにかするには情報が必要だ。術式、呪力量、呪力出力! 少しでも多くの情報を!)」

 

 司の術式は呪霊操術だと思われているが、孝はそう考えていなかった。

 そんな生易しいものではない。もっと特別な、五条悟の無下限呪術に匹敵するような術式だと。

 司自身の戦闘力もまだよくわかっていない。本人はあまり戦わず、操作系の術式から本体はソレほど強くないと噂されているが、そんな甘い考えも孝は持ち合わせていなかった。

 術式同様に本人の戦闘力も隠している。最低でも自身の呪霊を従えさせる程の実力を。

 今回、呪詛師たちの誘いに乗ったのはそれらを明らかにするためだった。

 

「(しかし、呪霊を女に変えるなんて何考えてるんだ?……いや、そういう術式の縛りか?)」

 

 自前のPCで現場から送信された映像を眺める。

 画面に映るのは美女美少女の姿に変わった呪霊達。

 その姿になった途端、呪霊は等級が上がり、知性も見せだした。

 おそらくこれが武玄司の強さの秘密の一つなのだろう。

 呪霊を強化する術式。これなら特級クラスの呪霊を数体持っていることの説明がつく。

 

「しっかし、よく呪霊なんて抱けるな。気色悪ィ」

 

 呪霊……いや、呪隷の肉椅子に座る司を見てそう呟いた。

 どれだけ煽情的な姿をしようが、所詮は呪霊。むしろ、変に綺麗な方が取って食われそうで逆に怖い。

 美しい花には棘がある。裏の世界ではよく言われる言葉であり、女で破滅した同業は腐るほど見てきた。

 ましてや呪霊。人間の女ですら危険なのに、人を呪うだけの存在など抱くどころか触れたくもない。

 まあ、個人の趣味性癖などはどうでもいい。今は武玄司の調査だ。

 

「(あのガキを倒せるクラスの呪詛師なんてまずいない。なら、術師を頼るか)」

 

 呪詛師は正式な訓練が受けられない以上、どうしても正規の術師と比べて質が劣る。

 中には才能のみで強くなった天才もいるが、それでも上澄みのレベルは圧倒的に呪術師の方が上。

 第一、呪術師側には特級呪霊を容易く祓う特級呪術師がいるのだ。呪詛師や呪霊に任せるより、そっちにやってもらう方が確実だ。

 

 少しでも多くの情報を引き出し、ソレを正規の術師に売る。

 うまくいけば司を術師が倒し、返り討ちに遭っても更に情報を引き出して売れる。

 どっちに転んでも得になる。このまま裏で動いて行けば……。

 

 

「随分と色々考えるな。そんなに俺が怖いか?」

 

「!!?」

 

 突然、背後から幼子の声が聞こえた。

 孝は慌ててその場を跳んで下がり、得物である刀を取る。

 

「て、テメエは……武玄司!?」

 

 背後にいたのは、心霊スポットにいる筈の司だった。

 何故ここにいる? 呪霊や呪詛師はどうした? じゃあ画面に映っているコレは何だ?

 様々な疑問が一気に湧いてくるが、一番重要なのはそんなことではない。この場を凌ぐことだ。

 

「て、テメエどうやって!?あの呪霊は即死級の術式が使える筈なんだぞ!?邪視の術式を呪物で強化してるのに!」

「あ、やっぱり?じゃあ即祓って良かったな」

「………は?」

 

 司の言葉に、一瞬孝は呆けた。

 

「なんとなくヤバい術式ってのは分かるんだ。野生の勘って言う奴か? あ、これ目を合わせたら死ぬなって。だから目を瞑って回避したんだ。呪隷たちにも目を瞑れって命令してな」

 

「術式が目によるものだと分かれば簡単だ。目を瞑ったまま戦う。幸い俺の持ち呪隷にイルカみたいに反響定位(エコーロケーション)使える呪隷がいたからな」

 

「ここまでいったら攻略したも同然だ。それ以上は無かったから数の暴力で潰せたぞ」

 

 

「………は? な、なんだそりゃ?」

 

 司の話を聞いた途端、孝の口から震えた声が出た。

 何で知らない術式の対応策を知っている? 何ですぐに攻略法が出せる? 何でそんな真似が出来る?

 あり得ない。相手の術式を即時見抜き、即時対策を立てるなんて、そんなのまるで……。

 

「(五条…悟じゃねえか!)」

 

 六眼と無下限術式の抱き合わせの呪術師、五条悟みたいではないか。

 

「く…クソ!ふざけやがって!」

 

【術式 迎刃而解】

 

 

 ヤケクソ気味に、机に掛けていた刀を引き抜き、術式を発動させた。

 刀全体に纏わる風のような斬撃波。

 これが毒島孝の術式の効果。要するに禪院扇の斬撃波バージョンである。

 

「はあっ!」

 

 裂帛の気合いと共に振り下ろされる刀。

 斬撃波を纏い、切れ味もリーチも上がっている。

 いつ降られたのか分からない熟練の剣術が司を切り裂く……。

 

【術式 呪力剣】

 

 

 切り裂く事はなかった

 司の手には、いつの間にか握られていた刀。

 呪力で作り出されたソレがいつの間にか振り落とされ、斬撃波のみ切り裂いた。

 

「かっこいいけど、弱いな」

 

 

 圧倒的な差。

 術師としての格の違い。

 ソレを感じながら、孝はいつの間にか奪われた刀で斬られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 所変わって高級ホテルの一室。

 Qが保有している一つのそこで、司は手に入れた呪隷に『褒美』をやっていた。

 お化粧して、飾りつけして、望むようなことをしてやる。

 その最中であった、呪隷の一体が司に質問してきたのは。

 

「主、貴方は一体どこまでお見通しだったのですか?」

 

 呪隷の一人が司に質問してきた。

 艶やかな黒い長髪に、背中越しでもはみ出して見える女性の象徴。

 彼女は毒島冴子。先程まで毒島孝だった男から変えられた呪隷である。

 つい少し前までは司の命を狙っていたというのに、今では媚びた笑顔で彼を見上げていた。

 

「全部だよ。最初から呪詛師がコソコソしてたのは分かってた。だから、ソレを利用させてもらった」

「……自らが囮になって我らをおびき寄せるということですね」

「ああ、序でに餌も期待していた。とびっきりのをな」

 

 最初から司は全部知っていた。

 呪詛師の企みも、毒島孝の真の目的も、呪霊が強化されている事も。

 流石にどうやって呪霊が強化されているか、どんな呪詛師が配置されているかまでは解明していなかったが、呪詛師の位置やどんな呪霊かはなんとなく分かっていた。結果、呪詛師たちの企みを利用し、逆に強化呪霊と呪詛師たちを纏めて呪隷にした。

 では、どうやって知ったのか。ソレは実に単純な理由だった。

 

「そもそも、司暗殺計画の発起者も、賞金掛けたのも俺自身なんだよ。ソレを餌にして情報集めて、返り討ちにしてたんだ。けどその情報は回らないように操作してる」

 

 そういう事である。

 

 

 司の向かう心霊スポットがバレたのは、司が呪詛師をおびき寄せる為にその情報をばら撒いたから。その為に諜報が得意な呪隷を使って宣伝した。

 

 司の術式が呪霊操術と思われているのは、司が呪隷の存在を隠す為にそう思わせたから。その為に呪霊のフリをさせ、呪詛師を騙してきた。

 

 司が未だに呪詛師から狙われているのは、司の戦闘に関する情報に手を入れているから。敢えて弱くみせさせることで更に獲物をおびき寄せてきた。

 

 

 全て司の思惑通り。

 自身にとって都合の悪い情報は伏せ、見せてもいい情報や都合のいい情報だけ流している。

 全て司が撒いた餌から起因しており、司が都合のいいように誘導した結果こうなった。

 

「けどまあ、そろそろ無理が出て来たな」

 

 いくらなんでも短期間で呪詛師を殺し過ぎた。

 流石にそろそろ呪詛師側も司を倒せないことに気づくであろう。

 だから、今度はこっちから仕掛ける。

 

 今まで幾人もの呪詛師を呪隷に変えてきた。

 彼女たちから仲間や組織の情報を聞き出し、ソレを元に罠を仕掛ければ、いくらでも呪詛師を回収できる。

 何なら、彼女たちに直接殺させるのもいい。このようにやり様はいくらでもあるのだから。

 

「じゃ、明日やっていくか」

 

 呪詛師組織のリストを片手に、司は年相応の笑みを浮かべた。

 

 

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