呪隷操術~呪霊を支配してハーレムを~   作:大枝豆もやし

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今思ったけど、呪力弾みたいなの撃つって術式じゃないんですね。
少年院の虫君とか普通に使ってましたし。


日常・陸

 

 

 とある山間部、司はハイキングコースを歩いていた。

 麓当たりの比較的緩やかで整備された道。

 司は登山道具なしで歩いていた。

 

「……穏やかなとこだな」

 

 自然の空気を楽しみながら歩く司。

 ここ最近ゆっくりした時間を取れなかった。

 呪霊や呪詛師の討伐、敵対組織の吸収や宗教組織の合併、等々エトセトラ。

 好きでしているとはいえ、こうも忙しい日が続けばやはりしんどい。だからこうしてゆっくりするのも悪くない。

 

「さてと、目的地は…」

 

 地図を開いて現代地を確認する。

 前世がスマホ時代だった彼にとって地図は馴染みのないものだが、司として生きていくことでそれにも適応した。今の彼は今の時代に生きている。もう前世ではない。

 

「って、すぐそこじゃねえか」

 

 地図を折り畳み、コースから少し外れて獣道を通る。

 彼の目的はハイキングではない。

 ハイキングコースの途中にある祠。

 その中身に用があった。

 

 宿儺鬼の爪。

 かつてこの地で暴虐の限りを尽くしたといわれる悪鬼。

 ソレを封じたとされている祠に用があった。

 

「(おそらく伝承は宿儺の指。こいつを取り込めばより強くなれる!)

 

 流石の司でも呪物を呪隷に変えることはできないが、呪隷を使って呪物を取り込み、呪力と術式を取り込むことは出来る。故に彼は呪物を集めている。

 無論、術式を同時に使えることは出来ないので、取り込んだ術式は他の呪隷に分け与えるつもりだが。

 

「(あれか)」

 

 そうこうしているうちに祠を見つけた。

 司がそれに手を伸ばす。途端、彼の視界が別の世界へと切り替わった。

 山の景色を継ぎ接ぎにして迷宮化させたような景色。これと似たものを司はつい最近見たことがある。

 

「……先客がいたか」

 

 振り返ると特級呪霊がいた。

 全身真っ白に褌一丁、小さな目が四つ、カンフー映画等で見る辮髪(べんぱつ)の人型呪霊。

 発する呪力からして特級。しかし知能はあまり感じられない。

 

「(特級?……いや、呪物で底上げしているだけか)」

 

 発する呪力が二つ。

 大きなものと小さなもの。

 おそらく、大きい方が宿儺の指なのだろう。

 発生源は胸の中心の窪み。おそらくそこに指がある。

 

 証拠はもう一つ。この領域だ。

 展開されたのは領域展開ではなく生得領域。前回相手にした邪眼の呪霊と似たようなもの。

 領域としては未完成。現実世界と心象世界が混じって不安定な領域。閉じ込める効力も、絶対命中の効力も、コレでは発揮できない。

 

「ウフウフウフ!」

 

 下品に笑いながら褌の呪霊は呪力を解放した。

 本人にとっては準備運動をするような感覚。だが、弱者にとってはソレすら必殺のようなものだった。

 並みの術師では身動きすら出来ず、非術師なら余波のみで即死。その力はまさしく特級。災厄に相応しい力である。

 しかしソレは弱者にとって。強者であり、特級であり、こっち側である者にとっては。司にとってはそよ風のようなものであった。

 

「ウ~~~!」

 

 手を突き出して呪力を弾丸のように発する。

 司はソレを咄嗟に上へ跳んで避けた。

 

「挨拶も無しにいきなりか? 無礼な奴だ」

「ウウ~!」

 

 空中で無防備状態の司に呪力弾を打ち出す。

 単純に呪力を出しただけの攻撃。

 しかし、圧倒的な質量の呪力は、術式など必要としない……。

 

 

 

「へえ、俺と同じ戦い方をするのか」

 

 もっとも、それは格下限定での話。

 司は呪力を纏った腕で呪力弾を弾き飛ばした。

 

「!?!?!?」

「俺もさ、術式はあまり使わずに呪力飛ばしたり固めたりして戦ってるんだよね」

 

 自身の攻撃を軽くいなした司に驚愕する呪霊。

 そんな呪霊に構わず司はぺらぺらと話し出した。

 

「術師とかいいながら大半の奴らは肉弾戦じゃん? おかしいだろ、あれじゃあ術師じゃなくて戦士だろ。だからゴリラ廻戦とか言われんだよ」

 

「いや、アンチってわけじゃないよ? 俺も出来たらやりたいさ。 蹴り技とかかっこいいじゃん、仮面ライダーっぽくて。けどほら、俺ってチビだからどうしてもリーチ足りないんだよね」

 

「だから中距離や遠距離中心になっちまうんだよ。呪力弾撃ったり、呪隷使役したり、呪隷の術式使ったりとか。けど、なんかこっちの方が召喚士(サモナー)っぽいから術式にも合ってるっちゃ合ってるんだけど」

 

 

 

「ガフッ!? ゴホッ!? ガハッ!?」

 

 話しながら呪霊を殴る司。

 小さな体にはとても似つかわしくない程の膨大な呪力。

 ソレから生み出される暴力的なまでの怪力と速度が、荒れ狂う暴風の如き拳と蹴りのラッシュとなって呪霊に叩きつけられた。

 ここまで圧倒的ならばリーチの差など関係ない。一方的な蹂躙だ。

次々と繰り出される黒閃の嵐に、呪霊は呪力を固めて耐え忍ぶしかなかった。

 

 

「ア”~~~~~!」

「おっと」

 

 呪霊が口から呪力弾を吐き出す。

 咄嗟に避ける司。その隙に呪霊は距離を取った。

 

「逃げんじゃねえよ」

 

 再び距離を詰めようとする司。

 しかしその前に呪霊が攻撃を仕掛けてきた。

 両手を突き出して呪力を圧縮し、一気に放出。

 全身全霊の力を込めて、必死になって司を殺そうとした。

 

 文字通り必死。

 少しでも攻撃の手を止めれば死ぬ

 少しでも気を緩めれば殺される。

 呪霊は必死の思いで抵抗した。

 

「なんだ、やれば出来るじゃないか。ほら頑張れ頑張れ!」

 

 だが、当の司は必死の呪力砲(ビーム)で遊んでいた。

 アトラクションを楽しむ子供のように笑う司。

 年相応の笑顔を浮かべて、司は縦横無尽に跳んで遊ぶ。

 

「~~~~!」

 

 ビームを撃つのを止め、今度は弾幕を張ってきた。

 呪力を圧縮するのではなく、散弾のようにばら撒く。

 司の視界いっぱいを覆う呪力の弾幕。

 しかし、ソレでも司にダメージを与えることはなかった。

 

「ビームの次は散弾か。ソレもよく使っている」

 

 呪力をバリアのように覆い、弾幕を防ぐ。

 そのまま司は悠然と歩いて呪霊に接近していった。

 まるで、レインコートを着て雨の中を散歩するかのように。

 

「ぅ……ぐう~~~~~~~~!!!」

 

 呪霊は両手を掲げ、全呪力を集中させた。

 特大級の呪力弾。自身の身体よりも何倍ものサイズ。

 呪霊は全力で呪力を込め、全ての呪力を集中させた。

 

 文字通りの全力全開、文字通りの全身全霊。

 身体の隅々まで呪力を引き出し、全てをぶつける。

 後の事なんて知らない。考えない。

 今はこいつを殺すことに集中する。

 さもなくば、ここで死ぬしかない。

 

「~~~~~!!!」

 

 司目掛けて放たれる特大呪力弾。

 領域が軋む。

 維持するための呪力も使用したせいか、それとも呪力弾の重量によるものか、或いは両方か。

 呪霊は持ち得る全てを込めた一撃を司目掛け繰り出した。

 しかし司は焦らない。呪霊に手を掲げ…。

 

「火力勝負か。いいぜ、お前の得意でやってやる」

 

 特大の呪力弾を、呪力砲(ビーム)が貫いた。

 少しチャージされた程度で撃ち出された呪力の光線。

 しかし、その威力は呪霊が決死の力を振り絞ったソレと同威力であった。

 

 大爆発。

 司の呪力砲と呪霊の特大呪力弾が激突。

 二つの呪力エネルギーが相殺し合い、派手に爆発した。

 衝撃で領域内が揺れ、辺りに罅が入り、土埃のようなものが両者を隠す。

 

「っ!?」

 

 瞬間、呪霊は逃げ出した。

 煙幕によって姿が見えない。逃げるなら今のうちだ。

 狙い通りなのか、それとも偶然なのか。おそらく後者であろう。

 だが、おかげでチャンスが出来たこの絶好の機会、使わないわけがない。

 

 ズドンッ!

 

「………?」

 

 呪霊を何かが貫いた。

 何があったか分からないポカンとした顔で、呪霊は自身の胸を見る。

 呪力で形成された手。ソレが呪霊の胸を貫き、力の源である指を掴んでいた。

 

「ダメじゃないか、折角盛り上がったのに逃げちゃ」

「!!?」

 

 声のした方に振り向く。

 そこにはニヤニヤしている司がいた。

 呪力で腕を形成し、呪霊目掛けて伸ばしていた。

 

「俺の勝ちっていうことで。じゃあ、コレ貰っていくぜ」

 

 呪力で出来た腕を引っ込ませて指を回収。

 力の源を奪われた呪霊はまるで空気の抜けた風船のうように萎んでいった。

 

「遂に手に入れたぜ、宿儺の指!」

 

 

 

 虫くんけっこう強いじゃん。

 

 呪術廻戦で呪胎戴天と八十八橋の時に登場した呪霊。

 劇中で初めて主人公たちと戦った特級。宿儺からは虫呼ばわりされて一方的に蹂躙されていたが、当時の虎杖や伏黒にとっては手も足も出ない圧倒的な格上だった。

 特級の中では最下層もいいとこだが、腐っても特級。おそらく一級術師でも倒すのは難しいんじゃないか?

 まあ、宿儺には瞬殺されて弱いなと言われてたが。

 

「(いや、でも結構強かったぞ)」

 

 あの呪霊、俺の黒閃に耐えやがった。

 手を抜いているとはいえ、術式も呪隷も使わなかったとはいえ。俺の遊び相手に成れたのは事実だ。

 これは俺が弱いのだろうか? それともあいつが特級だったからだろうか。………おそらく両方だな

 奴の戦力は宿儺の指一本分……いや、指の力を使いこなせてない上に知性もない以上、おそらく本来よりパワーダウンしている筈だ。

 その証拠に奴は術式を使えなかった上に、何の効果もないただ呪力を無駄遣いするだけの生得領域を展開していた。いや、あれは展開したというより、してしまったの方が正しいか。

 そんな敵をお遊び半分とはいえ瞬殺出来ないようでは宿儺を倒すなんてまだまだ無理そうだな。

 

「(宿儺挑戦はやめとくか)」

 

 やっぱりこの指は封印しよう。

 呪隷に与えて強化しようと考えてたが、もし宿儺が復活したら一大事だ。

 もし顕現しても指一本分の宿儺ならいけると思ってたんだが、とんだ思い上がり。虫君みたいに瞬殺されるのがオチだ。

 第一、指を呪隷にやっても、術式が破綻する等の事故が発生して暴走したりしたらソレこそ面倒だ。迂闊な真似はよそう。

 

 ポケットに指を閉まってその場を後にしようとする。

 その時だった。

 

 

 

「よお、お前が武玄司ってガキか?」

 

 突如、青い瞳の男が現れたのは。

 

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