少なくとも全てを見通すのは無理っぽい。
もし仮に一瞬で呪力に関する情報全てを読み解けるなら、偽夏油を見た瞬間に呪霊操術の術式だけじゃなく今まで体を乗り換えて奪ってきた術式も全て見通せるということになりますから。
なのに六眼は夏油本人だって言っていると五条悟はあの場面で言っていた。ということは全てを見通せるわけじゃないのではと私は考えてます。
思わぬハプニングだった。
呪霊との戦闘は予想していた。
原作でも宿儺の呪力に誘われて呪霊が出るケースはあったし、宿儺の指を取り込んで呪霊が強くなったケースもあった。
しかし、五条悟との戦闘は完全な予想外だった。
五条悟は強かった。
流石は公式チートキャラ。
今はまだ十四五歳ぐらいだと思うが、それでも十二分に強かった。
あらゆる呪力と術式を見破る六眼に、あらゆる攻撃を無効化する無下限。
成程、二つを揃えている彼は正しく最強だ。
しかし、無敵ではない。
どんなに盤石に見える術式でも穴は存在しており、俺の呪隷操術ならソコを突ける。そのことが証明できた。
六眼は確かに強力だ。
どんなに強い術式でも、どういった術式かバレてしまえば効力は薄れる。
炎や雷を操るとかの強大且つシンプルな術式ならさして問題ないが、タネがバレたら使えない一発ネタのような術式や、手順が必要な術式ならアウトだ。
呪術というのは大抵初見殺しが多い。一度嵌ればアウトな術式。しかし六眼さえあればすぐに対策出来る。アドバンテージはかなりデカい。
だが、そんな六眼でも弱点は存在するようだ。
いくら六眼でも、一目で全ての情報を処理しきれるというわけではない。
原作でも五条悟はケンジャクに封印される際、彼の術式の正体を見破る事は出来なかった。つまり、見破れる呪力や術式にも限りがあるという事になる。
ケンジャクが六眼対策している可能性があるのだが、ソレが出来る以上万能とは呼べなくなっている。結果は変わらない。
よって、俺はそこを突いた。
呪隷操術によって複数の術式を使い、ブラフやフェイントをかけて本命の術式を隠す。術式は直接的な攻撃力はないがシンプルなものを。
もし仮に、本命の術式を馬鹿正直に使っていれば五条悟も気づいただろう。しかしブラフによって情報過多になった五条悟には考える余裕がない。結果、うまくいってくれた。
まあ、殆ど不意打ちみたいなものだけどな。
五条悟を倒せたのは、俺が強かったというだけではない。
俺がまだ十歳にもなってない子供だから油断した。いくらなんでも九歳の子供と本気で戦うのは我ながら無理がある。心の何処かで加減してしまうのは仕方ないことだろう。
奴自身力を原作程使いこなせてなかった。おそらく本格的な戦闘経験もまだ積んでない筈だ。よってまだ慢心のようなものがあったのだろう。
様々な要素がかみ合った結果倒せた。決して俺だけ成果じゃない。
だから、今倒したところで、俺が最強ということにはならないだろう。……今はな。
今はまだ五条悟に届かなくても、何時かは真正面からでもやり合えるかもしれない。
俺はまだ九才。まだまだ強くなれる。
「何故、五条悟を見逃したのですか?」
車の中、横になっていると、呪隷の一体が聞いて来た。
bleachの織姫の姿をした呪隷。俺が初めて使役した呪隷であり、最古参でありよく使っている。
そのせいかよく俺に意見して来る。それ自体はありがたいのだが、最近はちょっとうざいな。後でちゃんと教育しておくか。
「理由は4つある。一つ目はうざそうだからだ。五条悟が呪隷になって使役するのは……なんか嫌」
コレは半分嘘だ。
知っているキャラが女体化して自分に奉仕するのってなんか嫌だろ?
特に五条悟。本編であれだけクソガキムーブしてる奴が美女美少女になって奉仕しますと言ってもうすら寒いものを感じる。
しかし呪隷になっている以上、俺には絶対服従。クソガキな性格は残っているものの、俺が不快な事はしないし、もし俺がその性格を気に入らなかったらすぐ直すだろう。
では、何が嫌なのか。ただ俺に自信はないだけだ。
呪隷にして従えるのは、俺より弱い奴だけ。
あんな小細工で倒しても、俺の方が強いとは言い切れない。だからやめた。
「………」
黙って俺の話を聞く織姫。
どうやら最後まで聞いてくれるようだ。
「理由二つ目、呪術側をまだ敵にしたくない。なんか……面倒くさい」
俺は以前、加茂家の当主を故意でないとはいえ殺してしまった。
現時点で俺は呪術界の敵。だが、全ての呪術師が俺を狙っているわけではない。
加茂家は完全に俺を敵視しているが、ソレに他の御三家が乗っているわけではないのだ。むしろ、仲が悪いから内心よくやったと思ってるんじゃない?
ということで、呪詛師認定こそされているがそこまで本格的に狙われているというわけではない。
だが、ここで五条悟まで殺してしまったらどうなるだろうか。……ガチで狙われる。
今の五条家は五条悟に全振りしている。よってその神輿をやられたら全力でやり返しに来るだろう。
他の御三家や名家たちも流石に重い腰を上げる。御三家当主を一人ならず二人までもやったら、呪術界の面目丸つぶれもいいところだ。よって本気で来るだろう。
呪詛師と呪霊の相手で手いっぱいなのだ。これ以上増やされてたまるか。
やるならせめて今の組織を呪術師組織と同列にするまでだ。そうなっても敵対する気はないけど。
「理由三つ目。術師を殺したくない」
呪術師は俺ら呪詛師と違って市政の為に戦っている。
そりゃあ、彼らも人間である以上、自分の為に戦っている者もいるだろう。というか術師はイカれたもの勝ちなんだから大半はそんな奴じゃないと思う。しかし、中には原作の夏油や七海みたいな人もいる。そんな人を殺すのは流石に……気が引ける。
俺らみたいに好き勝手して死ぬのは仕方ない。けど、中には善人もいるんだ。そんな人たちを私利私欲の為に殺したくない。なんなら、少しでも死亡率を下げるために呪霊を代わりに狩っているまである。
「理由四つ目。……五条悟を踏み台にしたい」
「……踏み台、ですか?」
訳が分からないといった様子で聞き返す織姫。
「言葉通りだ。俺はまだ強くなれる。けど、対戦相手がいなかったら伸び悩むし、何より面白くない」
これが一番の理由ともいっていいだろう。
折角こんな力を手に入れたのだ。どうせなら思う存分に振るいたい。
思う存分戦って、呪隷をどんどん増やして、極めるところまで極めたい。
けど、雑魚狩りだったり知能のない敵ばっかりと戦うのは何時か飽きが来る。
偶には対戦プレイもしてみたんだ。
「五条悟は対戦プレイヤーだ。俺が強くなるための踏み台であり、より楽しむための遊び相手だ」
「今度も俺が勝つ。そしてまた強くなる。
「ッハ!?」
気が付くと、俺はベッドの上にいた。
見知った天井、見知ったインテリア。間違いない、俺の部屋だ。
何で俺はここにいる?あいつとの戦いはどうなって……。
「俺は……負けた、のか」
思い出した。
俺はあのガキに負けたんだ。
まだ十歳にもなってないような、アイドルみたいな顔をしたガキに。
「は…ハハッ……!」
悔しい。
俺の方が断然年上なのに負けた。ガキ相手に俺の強さが否定された。
むかつく。
俺こそが最強でありソレが当たり前だった。勝つ事が日常だった。なのに否定された。
恥ずかしい。
俺は選ばれた存在だと思っていた。誰も俺に触れられない。この世でたった一人の人間だと思っていた、なのに否定された。
だというのに何故だろうか。
「は…ハハハ……アッハッハッハッハ! ハッハッハッハッハ!」
なのに俺は何で笑ってるんだ?
ああ、そうだ。俺は嬉しいんだ。
初めて人間に合えた。
俺以外の、異なる人間と。
最強というのは退屈だった。
誰だろうと勝つのが当たり前、誰でも届かないのが当たり前、誰も触れらえないのが当たり前。
つまらない、退屈だった。
けど、ソレも今日で終わりだ。
やっと見つけた、俺以外の人間を。
俺に届き得る力を持つ人間を。
「武玄司、お前は絶対に………」
「五条悟、お前は俺が……」
「「この手で倒す」」
武玄司は五条悟を対照的にした感じをイメージしてます。
常時発動する青い六眼→呪力が活性化した際の赤い目
白髪→天使の輪のように反射する黒い髪
御三家生まれで甘やかされていた→一般家庭生まれで虐待されていた
生まれた時から最強→呪霊を倒してレベルアップ
御曹司→野生児
背が高い→チビ
こんな感じです。