先ほど頭を強く打った拍子に思い出した。
俺の名は
年齢は五歳、兄弟は無しの一人っ子。
売れっ子アイドル神木光太と元地下アイドル武玄愛紗との子供だ、
今世の親父は一言で表せばクソ野郎だ。
テレビではいい顔をしているが性格はゲロカス。
ルックスはかなり良くて演技も上手く、ソレで本性を隠している。
家に帰ってきたと思ったらトップアイドルの仮面を取っ払い、母や俺に高圧的に接し、気に入らなかったら殴る。そんな男だ。
母はそんな父親のいいなりだ。
スレンダーな美人だが地下アイドルでは売れず、今では完全に金銭的なものは父親に依存している。だから逆らえないのだ。
あと結婚はしてない。どちらかといえば妾って感じだな。
幸い、金銭的援助は父親から十分に受けられている。
そこは流石トップアイドル。金なんて湯水のごとく持っているということだ。
大半は自分と他の女の為に使っているらしいが、それでも俺らが生活するのは十分な額を振り込んでくれている。そこだけは感謝しとくよ。
けど、ガキが泣くのがうるさいからって殴るのはどうなんだ?
しかし、俺にとっては不幸中の幸いだった。
なんせ、その衝撃のおかげで俺は前世を思い出したのだから。
現在の5歳児の頭に、前世の記憶が一気に流れる。
そのあまりの情報量に俺の脳は知恵熱を出してしまい、活動を一時的に停止した。
その後、俺は高熱を出して一日中寝込んだ。
その日から妙なものが見えるようになった。
気色悪い小人に羽が生えたような生物。
ソイツは至る所でふわふわ飛んでいる。
生き物かどうかすら怪しい物体。ソレだけでも奇妙なのだが、一番おかしな点は俺以外に見えないということだ。
もしかしてアレ、見たらアカンもの?
そう判断した俺は回れ右して避けようとする。
しかし次の瞬間、見えたらダメな奴もこちらが見えていることに気づき、動きを止めた。
ソレと同時だった、俺の逃げ足が強制的に止められたのは。
「!!?」
逃げられない。
見えたらダメな奴の飛行速度は遅い筈なのに。
足が逃げようとしても言うことを聞いてくれないのだ。
何だ?一体俺の身体に何が起きている?
「!?」
そんなことを考えているうちに、見えたらダメな奴は俺に近づいて来た。
逃げられそうにはない。なら、潰すしかないな。
俺はソイツを掴んで地面に叩きつけた。
「ぶへっ!?」
あっけなく倒れる虫みたいな生き物。
けどこれだけでは死なない。なので俺は追撃として踏んづけてやることにした。
「死ね!死ね!死ね!」
何度も踏みつける。
殺す気で、体重をかけて。
「ぎ…ぎ…」
虫みたいなやつが死んだ。
ソイツは死体を残すことなく霧みたいに消えていく。
「……何なんだこいつは」
分からないことが多すぎる。
今の俺の現状、どこの世界に転生したか、この虫は何なのか。
これは、一度整理する必要があるな。