「やっぱり駄目か」
北米の山荘。
司は眼前の肉塊を見てため息を付いた。
宿儺の指を植え付けた人間の末路。
あまりに強い毒性と呪力から、呪力に耐性のある術師ですらこのザマ。
これでもう十二回目。特に今回のは特級術師クラスはあるというのに。
やはり主人公である虎杖悠仁や伏黒恵は特別だったようだ。
「かといって俺が食っても意味ねえんだよな…」
司も指を喰らっても死なない稀有な人間の一人である。
だが、ソレでは意味がない。
彼が宿儺の指を取り込んでも宿儺が復活する事はなく、逆にその呪力を取り込んでしまうのだ。
これは彼の魂が怨霊であり、肉体が呪力に対して過剰に適合するが故の弊害である。
取り込んだ指はまだ一本だけだが、その気に成れば全て自身の力に出来るであろう。
「ご主人様、そこの肉塊以上の呪詛師はもうこの国にはいません。やはり呪術師を狙うべきかと」
司の背後に控えるスーツ姿の女性。
敢えて一回り小さいサイズでスタイルを強調しており、Yシャツからはこぼれんばかりの爆乳が動く度に震えている。
シオン。司の呪隷の一体であり、彼の秘書のような立場にいる。
「そうか…。けど術師も似たり寄ったりだろ?わざわざ他国を敵に回してまで確率の低いギャンブルをやりたくないな」
「おっしゃる通りでございます。主様の慧眼に感服致しました」
司は今、海外にいた。
この世界は呪術廻戦と違い、海外も日本同程では無いが呪霊被害がある。
いや、むしろ治安が日本より悪い分、凶悪な呪霊が発生しやすくなっている。
原作と違っている点の一つ。天元の影響で日本に呪霊や呪術師が生まれやすくなっているとあるが、この世界では緩和されているらしい
まあ、天元自体原作でもよく分からん存在だったから設定が少し変わっても司は特に思わないが。
閑話休題。
司は海外で呪霊を集める事にした。
日本は既に狩り尽くしたといっていい。
歩けば必ずと言って良い程呪霊が集まって来るのだ。
呪隷を率いて日本一周すれば、その内その地域の主な呪霊は一掃してしまう。
後は五条悟の存在が大きい。彼がいる限り、呪霊も呪詛師も下手な動きは出来ない。
そういうことでより活発で五条悟がいない海外に拠点を移した。
海外でも面白い程に呪霊や呪詛師を狩れた。
少し曰く付きや伝承のある場所に行くと呪霊が現れ、呪隷に倒させる事で呪隷に変えていった。
政府も司を歓迎した。
少し援助するだけで特級クラスの呪詛師を味方に出来る上に、呪霊の軍団が積極的に呪霊を狩ってくれるのだ。
日本の御三家のうち一家を敵にしているが、そんなことは海外の者たちにとってはどうでもいい話。
安全に呪霊を狩る彼の力はどの国からしても魅力的であった。
こうして、彼は数多の呪隷を獲得。その過程で新たな発見もあった。
司の体質。
どうやら彼には呪隷との間に子供を作れる体質らしい。
原作にも登場した呪霊の子供を孕める人間の男バージョン。
しかしまんまというわけではなく、彼との間に生まれる子供は呪隷であり、母親と似たような術式をもっている。
これも司の魂が怨霊であることが関係していると推測される*1が詳しいことはよく分かってない。
ただ、この体質のおかげでより強力な呪隷を集められたのは言うまでもない。
司は強くなった。
より多くの呪力を、より多くの呪隷を、そしてより多くの経験を積み、己の力へと変えて来た。
しかし、そんな彼にも一つだけ出来なかったことがある。
反転術式だ。
他は問題ない。
自然と出来るようになった。
拡張術式、極の番、結界術、式神術、簡易領域、そして領域展開。
専門的な知識や技術が必要なものは生前術師だった呪隷から学び、理解して己のものにした。
出来ないのは反転術式だけ。これだけは他の元術師だった呪隷も使えず、発動する気配すらない。
司は呪いに愛され祝福されている。
呪隷を集めやすいのも、呪力の扱いが異様に上手いのも、呪力を上げやすいのも、全てはそのおかげ。
術式そのものが彼に奉仕する為に存在し、呪いが彼に愛を伝える為に用意したものだと言って良い程。
しかしそんな彼でも…否、そんな彼だからこそ、呪いの反対である反転術式を苦手としている。
別に支障はない。
医者の呪隷やソレで作った呪隷、或いは病いや傷に関する呪隷を使って傷病に対処する事は出来る。
故、反転術式に拘る必要性はない。
しかし、だからといって習得しないという選択肢は彼にはなかった。
「(こいつを克服できない限り、俺はこのままだな)」
要は頭打ちになってしまった。
体術も生前武術や忍術などに精通した呪隷から教わることである程度は克服している。
残すは反転術式。現状を打破するにはコレを覚える必要がある。
司の術師としての勘が言っている。
これ以上強くなるには反転術式を克服する必要があると。
更に術式反転を習得することで、手札は劇的に増え、術式そのものが次の段階へと至れると。
「さて、どうしたらいいか…ん?」
司は呪霊の接近を感じた。
特級が1体、準特級が3体、一級が9体、他にも雑魚がわんさかと来ている。
『呪霊の支配者を気取る男が貴様か!?』
山荘の外から声が響く。
英語圏だというに司の耳には日本語に聞こえた。
おそらく呪霊特有の意思疎通機能か何かが働いたのだろう。
『こんな辺鄙な場に住まわされているとは、呪霊の支配者も大したことはないな!』
司のいる山荘には何もない。
あたり一面は荒野で、山荘以外に人の気配どころか人工物すらなかった。
この山荘はこの国の政府が用意したもの。
司の呪霊を引き寄せる体質はかなり強力。ただそこにいるだけで一月すれば呪霊が跋扈する呪いの坩堝と化す。
よって彼は特定の場所に長居できず、点々と拠点を変えてきた。
だが、元から呪いの地に住めばどうか。
人が誰一人存在せず、元から呪いに汚染された地。
いくら呪いが集まっても周囲に被害を出すことはない。
むしろ厄介かつ危険な呪いが自分から処分されに集まってくるのだ。
毒を以て毒を制す。災い転じて福となす。これ以上にこれらの諺が合う状況は早々ない。
「さて、じゃあ日課の呪霊狩りだ」
司が山荘から出て呪霊と対面する。
瞬間、呪霊たちは立ち止まって見入ってしまった。
絹のように滑らか且つ白い肌。
エンジェルリングを描く艶やかな黒髪。
黄金比に揃った顔のパーツとその配置。
この数年間で少年から青少年へと成長した身体も同様。
相も変わらず…否、成長して更に増した美貌と色気に、呪霊は人間が相手でありながら目を奪われた。
まあ、彼が見惚れたのは司の外見だけが原因ではないのだが。
『………ッハ!? き、貴様が司だな!?』
正気に戻った呪霊が叫ぶ。
人間と蛇と髑髏を掛け合わせたかのような痩せ細った相貌。
無風で靡く黒い襤褸ローブはまるで闇を直接身に纏っているかのよう。
『俺様の名はモート!この地の呪霊を束ねる呪いの帝王だ!』
『若造風情で呪いの王を僭称する痴れ者が! その無知と愚かさを悔いて果てるがいい!』
先手とばかりにモートとその軍勢が動き出す。
司もニヤッと笑いながら呪力砲を打ち出そうとするが、ソレをシオンが制止した。
「なりません。貴方様は我らの主。我らでどうとでもなる相手に貴方様が動いては沽券に関わります」
「………そうか」
シオンに言われて司はあっさりと引いた。
代わりに、彼は次々と呪隷を召喚していく。
「真王の俺にたどり着きたいのなら昇って来な、偽りの王」
「若造がぁ!」
早速モートが仕掛ける。
口から放たれる緑色の極太光線。
ソレを別の呪隷が地面から石の壁を創り出して防いだ。
『ほう、やるな。俺様の術式は絶死。如何なる存在も俺様の前では屍と化す!』
「なるほど、死と滅びの呪霊か。確かに強力な術式だ」
光線が当たったと同時、ボロボロと崩れる石壁。
ソレを眺めた司は術式に当たりを付ける。
『ククク…。怖いか、若造?だが、俺様だけに構ってる暇はないぞ?』
彼の言葉と同時、四方八方から術式が飛んできた。
雷や炎などのシンプルなものから、災いや、デバフなどの間接的なモノや抽象的なモノまで。
ソレを司は呪隷をさらに多く召喚。彼女たちにやらせる。
「成程、数だけは多いな」
「ちょうどいい、今までの復習といこうか」
ずっと長い間放置して申し訳ございませんでした。
というのも、この先どうやって主人公を動かすか悩んでました。
①主人公を強くし過ぎて戦いが成立しにくくなった
②手札が多すぎて使いにくくなった
③呪隷に人格を持たせた結果、キャラとして動かしにくくなった
④知らないのにガワだけで呪隷を選んで失敗した
⑤他作品のキャラを呪隷にすると被る能力が多くて選別が面倒
⑥呪術回線の世界観が合わなくなった
⑦そもそも主人公の動く理由が分からない
以上のことから続きが書けなくなって別のに逃げてました。
打ち切りに近いですが考えてたネタや設定吐き出すまでお付き合いください。