『行け我が友と僕たちよ!呪霊をタ誑かし女に変えて支配するハーレム気取りの男を八つ裂きにせよ!』
「やれ」
両陣営の号令で呪隷と呪霊たちがぶつかり合う。
雄弁に呪霊たちを鼓舞するモートと、簡潔に一言だけの司。
どちらが余裕なのかは一目で分かる。
「(けど、流石に多すぎるな。術式持ちが多すぎる)」
体質上、司は多対一の経験はいくらでもある。
他の呪霊を率いる呪霊や、徒党や組織で向かって来る呪詛師。司はソレらを何度も潰してきた。
特級との戦闘経験も十分。むしろ五条悟でさえ超え、呪い全盛期の平安時代にも匹敵するであろう。
だがそんな彼でも、百を超える呪霊軍団と戦うのは初めてだ。
「(少しぐらい手助けしてやるか)」
【拡張術式:呪隷強化】
司が術式を行使した。
呪力を呪隷に分け与える事で一時的に呪隷たちを強化する。
要は味方専用のバフのようなものである
呪隷の一体が剣を振るう。
彼女は毒島冴子。術式は剣から斬撃波を発生させるというありきたりなもの。
しかし、強化されることでその術式は単なる斬撃波から昇華される。
【術式:斬撃 常世孤月・無間・無間】
振るった剣から無数の月のような斬撃波が発生。
ソレは瞬く間に呪霊達を切り裂いた。
『な、なに!?特級だと!?ならば奴を集中的に…』
【術式:発火 壱ノ型 火月】
呪霊たちが冴子を集中的に攻撃しようとした途端、別の呪隷が割り込んできた。
燃え広がる炎。呪隷はソレを操作して更に炎の威力を強め、呪霊を一掃。
中には術式で耐えようとしている一級呪霊もいたが、ソレもお構いなしに焼き尽くした。
井沢静江。
かつては焼死した亡霊をベースに焼死への恐怖が集まって誕生した火災の呪霊。
彼女の術式は炎の発生と操作。術式の威力も呪霊としての等級も、誕生経緯からして強力な呪霊。元は呪詛師でそれほど強くなかった冴子よりも当然強い。
まあ、呪隷となって司の呪力を吸収して特級に至った彼女達にとって、呪隷前の強さはそれほど大きな違いにはならないが。
それからも特級呪隷たちの攻撃は続く。
歌の呪隷ウタ。
かつてはアンチに殺された外国の地下アイドル。
殺された無念が呪具に宿る事で歌の呪霊と化したが、司の呪隷になることで生前の姿に…いや、生前以上の美しさと歌声を手にした。
彼女の術式は魅唱操術。彼女の呪力を込めた歌に魅了されたものを操る術式。一度魅了されると一生彼女の虜になり奴隷と化す。
本来なら二級程しかなかったが、司の呪力によって成長し術式を使えるようになった彼女は特級の中でも特に厄介かつ強力な呪隷となった。
彼女の歌声と術式によって次々と呪霊がモートから寝返り、見方であった筈の呪霊を抑える。その間に他の呪隷が殺していった。
死者の呪隷アカメ。
かつては呪詛師組織の一員だったが、呪隷に殺されることで取り込まれた呪隷。
術式は死者行軍。元は死体を操る術式だったが、呪隷になった上に刀の呪物と融合した事で強化。斬り付けた相手を呪力で従え操る術式に至った。
等級は勿論特級。この術式で次々と斬り付けた呪霊を支配し無力化していた。
蚊の呪隷モスキート。
かつては蚊への恐怖から生まれた呪霊。原作の蝗guyと同じく二級クラスの呪霊だったが、呪隷になることで術式と高い知能、そして美しい姿を手にした。今では蝗guyどころか黒沐死よりも賢い。
彼女の術式は薮蚊操術。自身の肉体を蚊柱に変えることでダメージを分散し、更にこの蚊に血を吸われたものは感染症に侵される。
この術式で彼女は次々と呪霊達を感染させ無力化していった。
「(やはり集団戦はこいつらがいると楽だな。問題は…)」
司の目線の先。
数体いる特級と一級の術式持ち。
彼らの相手は戦闘に特化した呪隷が対処している。
今度は自身の影から黒い玉のようなものを取り出した。
呪霊玉。いや、正確には呪隷玉といったところか。
ソレを複数取り出し、戦っている際中の呪隷に放り投げる。
【拡張術式:呪隷合体】
呪隷と呪隷玉を掛け合わせて合体。
特級クラスである彼女を更に強力な呪隷にした。
呪隷合体。
一体の呪隷をベースに他の呪隷や呪具を掛け合わせることで強化させる拡張術式。
単純な呪力の強化、術式そのものを強化、合体させた術式の組み合わせや併用など、使い方は多岐に渡る。
今回掛け合わせたのは雷の呪隷である姫島朱乃と電雲の呪隷であるキャンディス・キャットニップ
似たような能力だが、だからこそ掛け合わせる事で更に強力かつ多彩な力と化す。
【術式:超電磁粒子砲】
雷雲を操って銃砲を形成。
内部に雷を圧縮させ、雷雲によって増幅させ、圧縮させて荷電粒子砲を発射。
この一撃によって呪霊を一掃。一級たちも術式で身を守る、或いは逃げようとするが無駄。防御ごと貫き、逃げる敵も貫いた。
【拡張術式:呪隷合体】
今度は念動力の術式を持る元呪詛師のフブキと、重量操作の術式を持つルビーローズを組み合わせる。
念力と重力。二つの異なる力が互いを高め、更なる力を発揮する。
【併用術式:我陣引的】
念動力で敵を引き寄せつつ、重力操作で敵の体重を軽くさせる。
途端、敵は面白い程簡単に引き寄せられた。
彼女は巨大な鎌を作業的に振るって敵を一掃。
序でに鎌も重量増加させ、念動力で威力を追加。
一級からの違いなど無いと言わんばかりに切り刻んだ。
『ば、馬鹿な………!? 特級が、こんなに…しかも、更に強化だと!?』
あり得ない。
特級は特別だからこそ特級なのだ。
ソレを十体もニ十体もポンポン出せるなど不可能。
なにせ、彼も自身以外の特級は数える程しか面識がない上、自身を超える呪霊は見たことが無い。
なのにこいつらはどうだ?
自分と同じレベルの呪霊をここまで揃え、更に強化出来る。
こんなにあっさりと出したことから、控えにも更に多くの特級がいるだろう。
再度言う、あり得ない。いくら呪霊を引き寄せると言っても、こんなに大量の特級を従え、更に強化出来る上に、尚且つ自発的に動くなど、どんなインチキ術式をしている!?
「さて、残るはお前だけだ」
『!?』
何時の間にか眼前まで近づいた司。
咄嗟に死の術式を行使しようとするが、呪力によって活性化した彼の目を見て手を止めた。
初見では気づかなかった異様な呪力。
ソレを見てやっとモートはこの男の異様さと正体に気が付いた。
『ああ、そうかそうか!そういうことだったのか!お前は…』
「呪霊をありったけ運んでくれた礼だ。最期は極の番で終わらせる」
【極ノ番:うずまき】
放たれる一撃。
ソレによってモートは言葉を発する前に跡形もなく消えた。
「今日は大量だな」
呪霊を全て倒した後、その場に寝転がった。
この呪霊全てを調伏させなくてはいけない。
縛りの一つだ。
俺や呪隷が倒した呪霊は呪隷となり、調伏の儀を通して俺の支配下となって完全な呪隷となる。
一見すれば本来の呪霊操術の上位互換だが、俺の場合は縛りによって呪隷になった呪霊は調伏して支配下に置かなくてはいけない。
原作では呪霊玉にした呪霊を何が何でも食わなくちゃいけないなんて描写はなかったから、コレはおそらく俺だけの縛りなんだろう。
まあ、やる事は変わらなのだが。
「守美子」
「ハイ」
呪隷の一体、守美子が俺の影から顕われ、帳を解除した。
守美子。漫画の結界師に出てくる墨村守美子に似た呪隷。
性格も言動も本人ではなく呪隷だからか全く違うが、似ているからそう名付けた。
名付けは俺がしているわけじゃない。
呪隷となって俺に仕える事になってから与えられるらしい。
ソレが俺のイメージからなのか、それとも術式そのものからかは知らん。
兎に角、呪隷は俺の知っているキャラの名前と姿で現れ、ガワだけ似てる別キャラになることもある。
まあ、そっちの方が俺もヤりやすいから助かってるけど。
「主様、不遜な事に貴方様を監視していた不届き者は既に消えたようです」
「そうか」
やはり誰かの差し金か。
いくら俺が引き寄せ体質だからといっても、一回で百を超える呪霊に出会えるわけがない。
確かに何度か百鬼夜行に遭遇したり、呪霊が跋扈する呪われた地に迷い込んだ事もあった。
けど、いくら何でもあの大群はない。誰かが糸を引いていたと考えるのが妥当だ。
で、無人のここ一体で張る必要は本来ならないのだが、デバガメを防ぐためコイツに帳を張らせた。
元は結界に秀でた術師だったこいつは、呪隷になることで更に結界術の腕が上がっている。
しかも俺の結界術の師匠。腕は十分信用できる。
「他の者たちも探しておりますが見つかりません。完全に逃げられました」
「そうか。まあいい。今日はとりあえず休みたい」
目星は大体ついている。
むしろ、この手際の良さから逆についてしまった。
「(どうやって捕まえようかな、羂索)」
・拡張術式:呪隷強化
文字通り呪隷を強化する術式。
呪隷と司の間に繋がっているパスを通して一時的に呪力や能力を底上げする。
生得領域内では出来ない為、強化する呪隷は出す必要がある。
・拡張術式:呪隷合体
文字通り呪隷を合体させる術式。
呪隷を合体させる事で呪力や術式を上げたり、術式を組み合わせたり併用させたりすることが出来る。
要はメガテンの邪教の館みたいなものだが、こちらは一時的なモノ。制限時間が過ぎると解除される。
また合体させるには相性があり、合体出来ない組み合わせもある。
一度に合体出来るのは二体まで。それ以上は出来ない。
生得領域内では出来ないので一度合体する呪隷を出す必要がある。
偶に合体事故も起こるので要注意。
強化したいときは呪隷強化で、組み合わせたり併用させたいときは二人同士に操作すれば事足りる為、あまり使う事はない。
・極ノ番:うずまき
呪霊から呪隷に代わっただけで他は原作通り。
だが本来の呪霊操術と違って呪隷を再生出来る呪隷操術では、うずまきは奥義とは成り得ない。