今思えばこの主人公ってかなり悍ましい存在ですね。
「(さて、どうしようか)」
とある南国の無人島。
別荘の寝室で俺は宿儺の指を並べていた。
俺の保有する指は食ったものを入れて十一本。
つまり目の前には合計十本も存在している。
これだけあれば呪霊を引き寄せるのだが、元から俺は引き寄せ体質。
シュールストレミングにドリアンが追加されただけで特に変わりはない。
「(クソ、やっぱ伏黒パパと戦っとければよかったのか? いや、肉弾戦苦手と分かって挑むのもな~)」
伏黒甚爾。
原作で五条悟を追い詰め、反転術式に至る切っ掛けとなった男。
俺も同様に追い詰められる事で反転術式に至れるのではないかと一瞬思ったが、すぐにその考えを捨てた。
俺は決して
確かに小さいころから呪力の特訓をしたり、呪霊や術師との戦闘を進んで行うが、ソレは出来るという確信があるから。
死への恐怖は確かに低いが、死のリスクを冒してまで挑戦するといった方面のイカレはそんなにない…と、思う。
「(ソレにあの人、俺を見るなり逃げたからな。たぶん会う事すら嫌がって逃げられるだろうな)」
俺は一度だけ伏黒甚爾に会った事がある。
十歳の頃、偶然甚爾らしき人物を見かけて近づこうとした。
積極的に原作キャラと会うつもりはないが、一読者であった以上興味はある。
出会ったのも何かの縁と当時の俺は考えて近づいたんだが、その瞬間に逃げられてしまった。
何か気分悪そうな顔して、すげえスピードで逃げて行った。
あの時はビックリした。
確かに、少し興奮して当時急激に上がって来た呪力を制御しきれず漏らしてしまった。
目が赤くなって呪力の籠った視線を向けてしまった。
けど、その程度じゃビビらない筈だろ。
伏黒甚爾は天与呪縛によって最高の肉体を持っている。
本気の“呪眼”なら兎も角、呪力が漏れた程度の視線で体調を崩すなんてありえない。
おそらく俺にも理解出来ない何かを感じたのだろう。
ソレが何なのか聞きたかったが、あの様子だと教えてくれるどころか俺の顔を見ただけで逃げてしまいそうだ。
ああ、そういえば夏油傑もそうだったな。
14か15歳の頃。海外で呪霊狩りをしていると、偶然夏油傑とかち合ってしまった。
獲物は特級。そのまま奪り合いになると思ったが、傑は俺を見るとゲロ吐きそうな程に顔色を悪くして、口を押えて逃げてしまった。普段からゲロマズ呪霊玉食ってる癖に、何を今更吐き気堪えてるんだよ。
まあ、この二人の反応からしてその原因は何となく予想は出来る。
大方、俺が悍ましく見えたんだろう。
「暴力の呪隷、シオン。ただいま再臨しました」
影からシオンが生まれたままの姿で現れた。
前回、うずまきに使用したから呪隷再臨―――生まれ直した。
呪隷再臨。
破壊された呪隷を復活させる拡張術式だ。
従来の呪霊操術では、一度破壊された呪霊は二度と蘇らない。
だが、俺の呪隷操術は違う。俺の体質と拡張術式を併用する事で呪隷を再生させることが出来る。
呪隷を孕ませる子種。
原作で加茂憲倫が呪胎九相図を作る為に利用した、呪霊を孕める女性の男バージョンともいえる体質。
つまり、俺は呪隷との間に子供を作って呪隷を復活させる事が出来る。
字面にすればかなり悍ましい。
呪霊を呪隷という美女美少女に変え、交わる事で支配する。
しかも、孕ませた子供も母親同様に支配し、出産を通じて使い潰した呪隷を復活させる。
客観的に見たら加茂憲倫と同等のクソ外道。倫理の“り”の字もない。そりゃあ悍ましくも見えるわ。
「悪かったな、シオン。あの場では別にうずまきを使う必要は無かった。代わりたっぷりと復活の為の呪力を使った」
「いえ、主様の為にこの身この命を使っていただくことこそ我ら呪隷の悲願。望むのなら如何様にもお使いください」
恍惚とした表情でシオンは言う。
呪隷は俺の為なら命を惜しまない。
むしろそれこそ誉れであり至上の悦びだという。
呪隷とはそういうものだ。
「主様がたっぷりと呪力を込め、呪霊を素材にしていただいたおかげで三日ほどで復活出来ました。感謝の極みでございます」
呪隷再臨には時間が掛かる。
人間も妊娠期間が長いように、呪隷も再臨や新たな呪隷を産むためは人間程じゃないが長い間使役不可能になってしまう。
だが、俺の呪力を込めるか、呪霊や呪隷を材料にして掛け合わせる事でその時間を短縮する事が出来る。
「(本当におかしな術式だな、俺のは)」
呪隷操術は大分異端だ。
例えば呪隷の成長性。
本来の呪隷操術では、呪霊は成長しない。
だが俺の呪隷は成長し、知性と美貌と術式を獲得する。
強くなるには相応の時間が必要だが、俺が多くの呪力を分け与えたり、他の呪霊や呪物を食わせることでその時間を短縮できる。
そうやって俺は幾つも特級呪隷を揃えて来た。
さて、ここでおかしな点が一つ。二級以下の呪霊は術式を持たない筈。なのに何故特級になれるのか。
呪霊と呪隷は違うが、呪隷になったからといって呪霊と大きく離れるわけではない。では何故か。
これは俺の想像だが、二級以下の呪霊は術式の回路のようなものが未発達なせいで術式が使えないのではないか。
呪隷となることで成長し、術式が発達していつか完成することで術式が使えるようになるのではないか。
今思えば呪隷のかけ合わせもおかしな話だ。
普通なら呪霊を融合させたりしたら互いに反発して消滅、もしうまくいっても互いの術式が矛盾を起こしてショートする。
だが呪隷は反発も矛盾もすることなく成立し、成長或いは別の呪隷になれる。
異様。
明らかにおかしい。
俺の術式はあまりにも特殊すぎる。
もし羂索が俺の真の術式を知れば、絶対に奪おうとするだろう。
というか、羂索が本当にしたかった事って俺の呪隷操術じゃないか?
まあ、俺の術式は俺の魂ありきだから俺の身体を奪っても使えないが。
閑話休題。
兎に角俺の術式は異様で、傍から見れば大分悍ましいものだ。
そりゃあ俺の異様さに気が付いたら吐きたくもなるわ。
というか俺って本当に人間か?大分怪しくなってきたぞ。
「(そういえば精神性も大分変化してるな)」
結局、俺は原作に関与する事は無かった。
俺の実力なら星漿体―――天内理子を救えた筈だ。
灰原は生きているが、ソレは呪霊が目当てだっただけで助けたわけじゃない。
現に、夏油傑は彼の死が無くても闇落ちして呪詛師になっている。
原作キャラ救済。
転生したオリ主が特典を使って本来なら死ぬ原作キャラを助ける。
前世の俺はコレが結構好きで、そういった二次創作を楽しんでいた。
前世の俺は呪術廻戦のキャラが好きだった。
理子や灰原や傑たちには生きててほしいと思ったし、ナナミン死亡はマジでショックだった。
けど、今世の俺は違う。たとえ知ってるキャラだろうが誰だろうが死んでもどうでもいいと思っている。
俺はここまで冷酷だったか?
確かに、最初人間が死んでいる現場を見ても大して動じなかった。
両親が呪詛師に殺されても悲しむことは無かったし、その犯人を呪隷にして使役している。しかもソイツはお気に入りだ。
最初は転生の影響だったり、今世の親の虐待のせいだと思ったが、どうも違う気がする。じゃあ何だって話なんだが、ソレも良く分からない。
「主様、復活して早々で申し訳ないのですが…」
「ああ、呪力だな。待ってろ、すぐに…」
「いえ、出来ればその…」
復活の為に空になった呪力を回復させるため、術式を使おうとする。
途端、彼女は赤らめた顔で俺の手を取った。
ああ、そういう事か…。
「分かった。直接胎に呪力を流し込む」
「ありがとうございます、主様!」
俺の呪力を籠める、呪霊や呪物を食わせる、或いは呪隷を掛け合わせる。
それ以上に呪隷を強化や成長、回復などをさせる手段。
簡潔に言えば某型月の魔力供給みたいなものだ。
エロゲみたいな設定だが実際にそうなのだから仕方ない。
まあ、俺にとっては役得だが。
「………いや、その前にやる事があるな」
「え?」
【術式順転:蒼】
【呪力開放:破】
呪力の奔流が巻き起こる。
コレのせいで俺の別荘は跡形もなく吹っ飛んだ。
・呪隷を孕ませられる体質。
文字通りの意味。要は呪霊を孕める人の男バージョン。
しかしあくまで呪隷相手のみであり、呪霊は適用外。というかアイツらに子供を作る機能とかあるのか?生殖の概念すらなさそうだぞ。
この体質は司の魂が怨霊であることから同じ呪霊と言えてしまう為。よって魂が無くなり一度潰されると、再生してもこの体質は戻らない。
・拡張術式:呪隷再臨
一度破壊された呪隷を復活させる拡張術式。
呪隷の魂の一部は司の生得領域に保存されており、他の呪隷の胎内と司の体質を利用して復活させる事が出来、
復活の際は呪隷を孕ませる必要がある為、その呪隷はしばらく安静にする必要があり、出産後の産んだ呪隷も産まれ復活した呪隷も司の呪力で回復する必要がある。
また一度に出産出来る呪隷は一体のみ。まとめて復活させることは出来ない。
産まれ復活した呪隷は破壊された呪隷と同一人物であり、記憶も経験もちゃんとある。
・呪隷の成長性
呪隷は司の呪力を養分として接摂取し、自身の呪力にすることで成長出来る。
よって、調伏時はたとえ四級だったとしても、長く司の呪力を吸収すればいつかは特級になれる上、呪霊の頃は未発達だった術式も発達して術式が使えるようになる。
だが成長性の限界は存在しており、各々違う。ほぼ一級でしかない特級から、里香ちゃんや漏湖クラスの特級まで幅広い。元呪霊の呪隷は元となる恐怖や概念が強ければ、元術師なら術式が強力だったり格式が高ければ、より強い特級になりやすい。
あと、成長するには相応の時間が必要であり、元が弱ければ弱い程時間が掛かる。
勿論、呪霊は特級の力を持っても術式が成長しない。現に呪胎戴天や起首雷同に登場した宿儺の指を取り込んで成長した呪霊、通称虫くんがその証。